1981/05/12

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94 参議院・建設委員会

住宅・都市整備公団法案について

生活を考えた公団住宅を

 「ウサギ小屋」と欧米で酷評されるわが国の住宅事情を象徴するのが、住宅公団の「高・遠・狭」の問題です。その住宅公団が宅地開発公団と統合して「住宅・都市整備公団」として発足することになり、建設委員会を中心に国会で議論がなされました。

 江田議員は五月十二日、参院建設委員会で質問に立ち、「住宅に関する国民のニーズが多様化し、新公団はそれに応えねばならない。身障者の利用しやすい住宅を造るとともに、ゴミのりサイクルなどを通じた新しいコミュニティーづくりが必要だ」と提案しました。さらに利子補給金の膨張に伴う公団経営の悪化を指摘し、その改善を要求しました。


○江田五月君 住宅・都市整備公団法案についてはもうかなり長い時間にわたって同僚委員からいろいろな質問がなされました。質問のポイントも多岐にわたっておりますので、余り重複しないように聞いてまいりたいと思いますが、いままでの質問とお答え等を伺っておりますと、住宅・都市整備公団を新たにつくるというこのことには二つの意味があるんだ。一つは行政改革という意味、もう一つは住宅・都市整備というような、この行政の遂行に当たって新たな需要に新しく行政を展開をしていく、そういう行政の新たな展開という目的を持っているんだ、大ざっぱに言いましてそういう二つの目的があるというふうにうかがえるかと思うんですが、そういうことでよろしいですか。

○国務大臣(斉藤滋与史君) 先生御質問のとおりでよろしいかと存じます。
 従来やってまいりました住宅・都市政策に加えてこれを機能的、総合的に、なお昨今のはなはだしい都市化の中において整備ということを図っていかなければならないという問題。したがってその都市整備の機能の中においても従来のような街路区画整理というようなことでなく、そこに住環境を加えて、公園というような問題も一つの重点課題としてつけ加えたわけで、先生御指摘の考え方で、私はそのような方向で今度の問題について取り組み、御提案申し上げ、御理解をいただくことをお願いいたしておるところでございます。

○江田五月君 そこでまず、そうしますと行政改革ということについて、この住宅・都市整備公団の設立がどのような意味を持っているのか、どの程度有効なのかということについて伺っていきたいと思いますが、いま行政改革いささか行革フィーバーと称せられるような一種の流行になってきたわけですが、第一次臨調の答申にはこの二つの公団の統合というものは入っていなかったわけですね。これは入らないのが当然で、当時は宅地開発公団が存在していなかったわけです。しかしその後、この現在の行政改革の動きに向かっていろいろな主張が出されてくる。

 最初に恐らく、まず昭和五十四年、政策推進労働組合会議、これは民間の労働組合の結集体であって、政策を労働組合サイドから提案していこうというそういうものでありますが、この政策推進労組会議が行政改革の提案をしたときには、すでにもう宅地開発公団と日本住宅公団の二つの公団を統合しようというものが入っていた。あるいは昭和五十二年から内閣においても、まとまるところはいまと違いますが、いろいろな形でこの二つの公団については議論がなされていたと伺っておりますし、どうもこの二つの公団の整理というのは、あるいは統合というのはいまの行政改革のいわば一番最初の段階から問題になっており、しかも、この一年ほどの間に幾つかの行政改革的な措置がとられてまいりましたが、この行政改革の初期の段階における一つの措置であろうと思われます。ここで行政改革の実が上がらないうまくいかないというようなことになったら後々の行政改革に大きく響いてくることになろうかと思いますが、行政改革という観点におけるこの新公団の設立が持っている意味についてどういう御認識をしていらっしゃるのかを伺っておきたいと思います。

○国務大臣(斉藤滋与史君) このたびの新公団法をお願いしたその一つの柱は、行政改革が一つの柱になっていることは事実でございますけれども、いま先生の御指摘のようなプロセスはありますが、もちろん効果的なものを考えてお願いしておるわけであります。むしろそれは一つの柱であって、やはりあくまで新公団の目的とする主たる柱は住宅、宅地供給であり、都市整備であると私はそのように認識いたしておるわけであります。したがって、別にどちらにウエートを置くというわけではございませんけれども、それによって生ずるであろう機構の面につきましても、でき得る限り御指摘のような面に向かって簡素化と効率化というものを図っていくというようなことであろうかと思います。そのことによっていま政治の重要課題である行政改革というものは、この新公団のウエートの問題については一つの柱、バランスではありますけれども、そのことによって主たる新公団の目的でないというように私は認識してお願いをいたしておるわけであります。具体的なことについて、どのような行政改革ということにつきましては政府委員の方からお答えさせますが。

○江田五月君 主たる目的か従たる目的か、どうも行政改革というのが従たる目的だとおっしゃるにしては、主たる目的の点で一体なぜ宅地開発公団を日本住宅公団と統合して行政を進めなければいけなくなったのか。宅地開発公団をつくったときには、宅地の供給というものを日本住宅公団その他既存の機構で行っていたのではとても間に合わない、新たに一つの機構をつくって、いわば住宅の供給と都市圏における宅地の供給とを車の両輪として二つの車で遂行していかなければ、効率的、機能的行政が行えないというようなことをおっしゃっていたんだろうと思いますが、それがわずか五年少々の間で、なぜ今度は一つでなければ機能的に行えないということになっていくのか。どうも何かこう、もちろん行政需要というものは刻々変化をしていくわけではありますが、ちょっとあっちへ手を出してみたりこっちへ手を出してみたりというような感じがしないでもない。やはり行政改革というものが一つあるから、行政手法についてどういう手法でやっていくかということにプライオリティーの変化が起こってきたというようなことがあるんじゃないかという気がするんですが、いかがでしょう。

○国務大臣(斉藤滋与史君) 行政改革が土とか従とかということでないわけで、そこら辺誤解のないようにお願いをいたします。
 行政改革が一つのきっかけになった重要な柱であることは事実でございます。なかなか苦しい答えになるわけでありまして、六年前に確かにいろいろと皆さん方の御意見、反対の御意見の中で発足いたしたわけでありますが、六年前の時点は時点として、私たちはやはりそれが一番よろしいという方法で御提案申し上げ、御理解をいただいて法案を通していただいたわけでありますが、その後の都市化の状況、国民住宅、宅地の諸問題、この五、六年の間の非常な変動につきまして、やはり行政改革という一つのきっかけをもってなお整合、統合して機能的にやるという判断に基づいて、御批判はありますがあえて発足に踏み切ったわけで、その点につきましては、六年前の状況と現在の状況というもののプロセスを考えていただきながらひとつ御理解をいただきたい、このように考えるものでございます。

○江田五月君 そこで、さあ行政改革という目的に一体どの程度新公団が資するんだろうかということですね。行政改革ということになりますと、まず何よりも本当に効率的、効果的行政が行えるということになるんだろうかどうだろうか。行政の重複、むだというものを省いてスリムになっていくということができるんだろうか。役員あるいは職員、そういう観点から一体何かの改革が行われていくんだろうか。いろいろな事務処理のエクイプメントの点などでも何かの改革が行われていくのかどうか、あるいは事務処理の流れの点などでもどういう改革があるのか。ちょっとどういった改革になっていくのかをお教え願えますか。

○政府委員(川上幸郎君) ただいま大臣が申しましたように、今回の公団の統合は新しい行政需要に応じました公団をつくりたいというものでございます。したがいまして、まず行政改革を契機としておりますが、役員でございますが、役員につきましては、現在の日本住宅公団と宅地開発公団との合計数は二十四名になっております。これを四分の一減じまして、なお新しい行政需要でございます都市公園の整備、この問題がございますので、結果といたしましては十九名ということにいたしております。

 それから、次に、職員でございますが、現在おられる職員の方、これは決して解雇をいたしませんけれども、新公団は新しい行政需要が生じてまいりまして、都市機能更新型都市再開発事業、根幹的な都市公園の整備等の事業が新たに付加されております。これらにつきまして既存の公団の組織、技術力、このようなものを有効に適切にしまして対処してまいりたい。こういたしますれば、結果といたしましては行政改革に応ずる、こういうふうになると考えておるわけでございます。

○江田五月君 役員の問題、四分の一減じてプラス一とおっしゃるわけですが、どうも行政改革、従たる目的ならこの程度かもしれませんけれども、おっしゃるにはそう改革になっていないような気もする。しかし、それぞれにいろいろな事情もおありでしょうから、そんなに減らしてしまえというのもなかなかむずかしいことではあろうと思いますが、副総裁が二人ですね、これはなぜ二人要るんですか。

○政府委員(川上幸郎君) 現在両方の公団が持っております機能を統合いたしますとともに新しい業務を追加するわけでございます。その場合におきまして、住宅公団が果たしております役割り、宅地開発公団が果たしております役割りを考えますと、総裁を補佐いたしまして、たとえ副総裁の分担は今後の問題でやりますが、住宅部門、宅地部門とそのおのおのが機能する、そのおのおのにつきまして総裁を補佐する副総裁が必要ではないかと思われるわけでございます。

 なお、ちなみに、宅地開発公団が発足いたします前におきまして、日本住宅公団におきましてそのような必要性から副総裁を二人置いたという経緯もございます。

○江田五月君 総裁の仕事がたくさんあるからそれを大きく分けて、従来日本住宅公団がやってきたことと宅地開発公団がやってきたことと二種類のものがあるので、それぞれを補佐する者が一人ずつ要るんだと。補佐する者が一人ずつ要るのならば補佐される総裁も二人要るんじゃないかというような気がしますが、いかがですか。

○政府委員(川上幸郎君) 新しい公団をつくりまして新公団総裁が全部の業務を統括するわけでございます。その場合におきまして、当然事務分担に応じまして副総裁二名を置き、さらには理事を十九名置く、このような組織で運営したいと考えているわけでございます。

○江田五月君 どうも余り理屈にならぬ理屈のような気がしますが、いろいろ御苦労はあることだと思います。

 職員の点で、これはもちろん解雇というようなことではなくて、いまの職員の皆さんをそのまま雇用して続けていっていただかなければいけないわけですが、しかし、それにしても二つの公団をまとめますと、たとえば総務とか人事とか経理とか管理部門でかなりむだが省けるといいますか、省力化ができるんじゃないか。いまの人を首を切るようなことは、これは何をか言わんやですが、あるいはいまの役員のことにしても、いまはいろいろな事情があるにしても、これから先この定員でずっといかれるのか。それとも今後の見通しとして住宅・都市整備公団、新たに生まれる新しい公団自体の行政改革というものを何かいまお考えでしょうか。

○政府委員(川上幸郎君) ただいま先生から御指摘ございましたように、職員につきましては総務、経理等の共通部門がございます。しかしながら、新公団におきまして先ほど申しましたように、業務型の都市再開発、公園等の新しい事業が付加されるわけでございます。したがいましてこれらの定員が必要となりますので、ただいま出てまいります総務、経理の共通部門の定数は当然新しい業務の方の定数に振り向けたい、このように考えるわけでございます。

 なお、新公団発足に際しまして、それらを勘案しましても効率的に事業が運営できるように最大限行政改革の趣旨に沿った機構というのは考えてまいりたい、このように考えておるわけでございます。

 でございますが、その後におきましては、その後の事業の模様、また今後の公団のあり方、それらを勘案いたしまして考える。このようになるかと存じます。

○江田五月君 それにしてもいろいろ批判も強いわけですし、役員のことについては将来数をしぼって、もう少し数を少なくしていくというようなことをこれから検討をされなければいけないんじゃないかと思いますが、どうですか。

○政府委員(川上幸郎君) 先生御指摘のとおり、公団の組織のあり方がその公団の業務に応じまして適切である、かつなお、その行政改革の趣旨に沿ったものであるといいますことは当然なことだと思います。しかしながら、新しい公団と申しますものは既存の住宅公団の業務に対比いたしてみましても、業務型都市再開発の機能、公園整備の機能、それから交通等の機能といろいろ付加されるわけでございます。これらを勘案いたしまして十九名と決めておるということでございます。でございますが、公団の理事全体のあり方と申しますのは、当然他公団の例等も考えまして、今後の公団の業務量また公団の事業の進行方向等につきまして十分検討していきながら今後いろいろ考えてまいりたい、このように考えておるわけでございます。

○江田五月君 先ほど大臣からもちょっとお話がありましたが、宅地開発公団は命がかなり短かったわけであります。宅地開発公団をつくるときにどういう誤りがあったか、だれに責任があるのかという議論もいろいろありますが、それをいまここで追及をしてもどうも仕方がないんです。しかし今後のために、一体なぜこういう朝令暮改的な印象を与えるようなことになったのかということを振り返ってみておく必要はあるだろうと思います。

 宅地開発公団の設立によって三大都市圏中心の宅地の供給ということを図るのでなくても、日本住宅公団の拡充とか、あるいは現在御提案になっているような総合的な機能を持つ新しい公団を設立するということを宅地開発公団設立のときに考えることができなかったんでしょうか、その点を伺います。

○政府委員(宮繁護君) 宅地開発公団の発足の当時の状況を考えてみますと、当時の人口、産業の非常に集中の著しい三大都市圏におきまして、単に住宅用の敷地を提供するというのではなくて、新しい市街地の形成を図りながら宅地を大量に供給することが緊急の課題であるという認識のもとに、一つは公共施設あるいは交通施設等の整備について、日本住宅公団よりさらに強力な機能を備えております宅地開発事業を専門に行う新たな機構が必要である、そういうことです。二つには、日本住宅公団には住宅供給という大きな任務に専念させる必要がある。また管理の問題も当時非常に重要な問題として出てまいっておりました。そういうことをいろいろ勘案いたしまして、一つの選択として新しい宅地開発公団を設立したわけでございます。

 それから、六年という短い日時であったかもしれませんけれども、やはり四十年代と五十年代の六年というのもある意味から言いますと、いろいろの価値観の変化とかあるいは経済の成長の伸び率の変化、その他大変大きな変革もこの六年間に生じてもまいっておるようにも考えます。そういうような意味合いで、先ほども大臣からもお話がございましたように、この宅地開発公団が六年間にいろいろ体験いたしました新しい手法等もここでさらに再認識をいたしまして、総合的な居住環境づくりという観点から住宅、宅地の供給と都市整備とを総合的に推進していく必要がある、こういった観点から、今日の選択としては国民の行政改革に対する御要望等も踏まえまして二つの公団を廃止して新しい公団をつくる、こういう考え方でこれから取り組んでいこうといたしておるわけでございます。

○江田五月君 六年前に宅地の供給を新しい専門の機構で進めなければいけないという緊急の必要があると同時に、住宅の供給は日本住宅公団が専門的にこれに当たる必要があるんだというふうにお考えになった、その後価値観が変化し、経済環境が変化した、そこでこれを一緒にする必要があるんだ、どうも言葉が並んでいるだけで、そこに本当に行政に対する厳しい覚悟とか情熱とかということが感じられないんです。価値観の変化と言いますが、それは価値観はときどきの時代の移り変わりで変わっていくわけですが、こんなに公団が二つになったり一つになったりというほど大きな変化があるようにも思えない。経済成長の動向が変わったとおっしゃいますが、これはもう四十七年当時を境にして一つの時代が終わり、新しい時代に移ってきているわけです。

 行政改革ということも、ちょっと時代の推移というものを見ていくと、いたずらに経済規模の膨張にあわせて行政がどんどんふえていくということではいけないんだということはわかるはずなんでありまして、どうも先の見通しのない行政の典型のような気がする。だれを責めるというわけじゃありません、国民みんながいろんな意味で先の見通しを持たずに、あるいは持てずにこの数年過ごしてきたわけで、いまもなかなか先の見通しが持てないというむずかしい時代に入ってきているわけですから、別にだれかを責めるということではないんですが、それにしてももうちょっと先の見通しを持たなきゃいけない、もう少し行政というものについて真剣に情熱を持って対応していかなきゃいけない、そういう反省をする材料に今回の事件といいますか、この一連の推移が役立たなきゃいけなんじゃないかという気がするんですが、これはどうですか、

○国務大臣(斉藤滋与史君) 御指摘の向きよく理解をいたします。確かに反省の材料とすることにいささかもやぶさかではございません。ただ、その時点における認識というものに対する考え方の相違ではなかったかと思います。いま局長からも答弁ありましたように、これは字句の羅列という厳しい御批判ありましたけれども、そうでなく、当時三大都市圏における過密化の速度、人口、産業の集中の激しさからやはりそれなりの対応を真剣に考えてやらざるを得なかった。しかし、余りにもこの五、六年というものの変わりようというものについて結果的に見通しが誤った先見性についてどうだということの御批判もいただいてもやむを得ないような結果にはなったわけであります。それほどやはり目標が変わったということで、あえて御批判も顧みず、行政改革という一つのきっかけで御指摘の部分を十分考えながら新発足をしなきゃならないというようなことで御提案申し上げているわけで、それはそれなりの価値観を御認識いただいて、ぜひこの問題についてはそうした面からもひとつ御理解をいただきたい、このように考えているものでございます。

○江田五月君 しかも、宅地開発公団が、ほう、りっぱな成果を上げたなあというほどの成果を上げていればまた話も違うかもしれませんが、いろんな事情があるにしても十年間で三万ヘクタールに着手をするというのが、どうも五十一年いっぱいで四千五百ヘクタールにしか着手が及んでいない、数字がそういう数字だったと思いますが、こういう実績の点からもなかなか厳しい世間の批判があるんだということを認識しておいていただきたいと思います。

 さて、そこで日本住宅公団について伺っていきますが、日本住宅公団二十五年、戦後の、住宅がとにかくもう絶対的に不足をしていて、住む家がないという事態に対応して公共的に住宅を大量に供給をしてこられたわけですが、どうもいろんなメリット、デメリットがあるんだと思います。この二十五年、簡単で結構ですが、住宅公団が行ってきた仕事について一体どういうメリットがあり、いまどういうデメリットが残っておるのかということについてどういうお考えでいらっしゃるか、伺いたいと思います。

○政府委員(豊蔵一君) 日本住宅公団は、昭和三十年に発足いたしましてから、住宅不足の著しい大都市地域におきまして耐火性能を有する住宅の供給、また宅地の大規模な供給、さらには健全な市街地を形成するといったような事業を行ってきたわけでございますが、昭和五十四年度末までの二十五年間に、住宅約戸八万戸の供給を行いましたし、また宅地につきましては二万六千ヘクタールの宅地開発を行うというようなことで、住宅難の緩和に大きく貢献をいたしました。また、良好な居住性能の住宅の供給も新しいパイオニアとして評価されると思います。また、良好な居住環境を有する住宅団地というものを民間に先駆けてつくり、健全な市街地を造成してきたということも評価されるのではないかと思います。

 しかしながら、また一面、先日来いろいろ御指摘をいただいております長期未利用地の問題であるとか、あるいはまた保守管理住宅の問題であるとか、そういった計画と実際の進捗とがそごを来しておるといったような問題につきましては、決して円滑な運営とは言えませんので、そういった点につきましては、問題点として現在なおいろいろ検討をすべき事柄として残されているというふうに考えております。

○江田五月君 住宅政策というものは、あるいは住宅行政というものは一体何かということなんですね。いまのお話ですと、耐火性能を有する住宅あるいは宅地の大量の供給、住宅難を緩和し良好な居住性能を有する住宅を供給し、良好な居住環境を有する住宅団地をつくってきたということですが、私は、住宅行政というような分野においても、ただ国民に住む物を提供していく、入れ物を提供していくということだけで一体いいんだろうかどうだろうか、住宅行政というような行政の展開を通じても、やはりそこに一つの連帯ある社会をつくっていくといいますか、心の通った共同体をつくっていくといいますか、そういう、ただ物にポイントを合わせるだけでなくて、人間の、人間にふさわしい共同社会をどうやってつくっていくかというようなことに一つのポイントがなければいかぬのじゃないかという気がするんです。

 そういう点から考えますと、確かにいまおっしゃった住宅公団のこれまでの業績を認めるにやぶさかではありませんが、これを評価をしたいと思いますが、同時に、従来のわが国の地域共同体が、まあ悪口で言うとコンクリート長屋ですか、これの大量の出現によって壊れて、しかし、まだ新しい都市型の共同体を生み育てていくところまで至っていない、非常に均一化された大量の孤独な群衆が都市に生まれて、その人たちの間で新しい連帯というものが生まれてきていないという、そういう感じがするのです。住宅公団の住宅、宅地供給行政のメリットは、そういう意味から考えますと、一つの都市型の生活様式を生んだということはあると思いますが、しかしデメリットで言えば、古い共同体を壊した上に新しい共同体をつくるということができていないというような、だから隣は何をする人ぞ、ピアノの音がちょっと聞こえてきたからといって人を殺す、あれは住宅公団であったかどうか、ちょっとあの事件そのものがどこであったか忘れましたが、あるいは場所によっては自殺のかっこうの場所になったとか、これはその後対応をいろいろされたことと思いますが、そういうようなことがあるのではないかという、そういう住宅行政の一つの切り口というものがこれから必要になってきているんじゃないかと思いますが、いかがですか。

○政府委員(豊蔵一君) 私どもといたしましては、住宅政策の一つの側面であります住宅の供給という立場から考えました場合には、すべての国民が経済の成長、発展の段階に応じまして、その家族構成、世帯成長の各段階、居住する地域の特性等に応じまして、良好な住環境のもとに安定した生活を営むに足りる住宅を確保することができるようにするということが基本的な目標として掲げられ、それに基づきまして各五カ年計画を策定いたしまして建設を進めてきておるところでございます。

 また一面、そういう中で、ただいま先生から御指摘ありましたように、急激な都市化の中で大規模な団地をつくっていくということが、ある意味では従来の地域社会と違ったものができてくるというような経過はなかったとは言えません。しかしながらこれはまた、今後ますます進むでありましょう都市化の中で、お互いのコミュニティーをどういうふうな新しい時代に即応したものとしてつくり上げていくかという事柄でもあるわけでございまして、これは今後の各行政全般の施策の中で対応していくと同時に、また国民、社会全体の問題としても、時代に即応した共同生活のあり方といったものをつくり上げていく必要があるんではなかろうか、私たちも将来の課題としてこれは考えていかなければいけないことだと思っております。

○江田五月君 大臣にもいまの点をちょっと伺っておきたいのですが、共同社会をつくっていくというような仕事はみんなの責任だ、国民みんなの責任で、あんまり国なり公団なりが先に立って、こういう社会をつくれと言ってつくられてもこれはたまったものじゃない。しかし、いまの建設行政あるいは住宅公団の姿などが、一つのあるべき共同社会を国民みんながつくっていくのについて阻害要因になるようなところもあるんではないかという、これはもっと後で具体的に検討していきますが、実は気がするのです。総論といいますか、大ざっぱな考え方として、建築行政、住宅行政というものが、これまでは確かに物をどんどんつくって与えていくということでよかったかもしれませんが、今後何かいままでと少し違ってくるんではないかという点について、どういうお考えをお持ちですか、伺っておきたいと思います。

○国務大臣(斉藤滋与史君) 特に前段の先生の御意見、全く私も同感でございます。局長から先にお答えしてもという心づもりでいたくらい私も全く同じような考え方であります。公団のお話もまさにそのとおりでありまして、ただいままで住宅政策が確かに数にこだわったことは確かであります、これは御案内のように、戦後四百万という絶対不足数を何とかしょうということで、鳩山内閣のとき、昭和三十年に住宅公団がてきたわけで、先ほど御答弁申し上げましたように自来二十六年、ようやく百八万戸ということであります。したがって、どうしてもつくるものは数にこだわったために画一的なものがあって、大変部屋があっても住む環境というものについて考慮がやや欠けたきらいがあったわけで、そこでまさに御意見どおり、もうそれではいけないと。したがって、住宅そのものとあわせて環境をよくする。ここに、今度の法案の中にも、「健康で文化的」という表現を特に使ったのはそこにあるわけでありまして、これからは都市整備も、もちろん不燃化を含め防災という面もありますけれども、住宅も質の向上を図るとともに、環境も快適な環境の中で安定した毎日が送られるようというようなことにもう変わる時限である。したがいまして、今度の公団発足につきましても、そうした面に重点を置くというような指導をしながら進めてまいりたい、このように考えているのでございます。

 とにもかくにも、都市化の中で人間生活が少しでも潤いのある、ゆとりのある、そしてお話のようにもう十年、二十年もいても隣がだれだかわからないようなことであってはならないんで、それは話し合いの場がないからそういうことになってしまうんで、そうしたことも含めて、御指摘のような考えのもとにこれからは進めてまいる所存でございます。

○江田五月君 私、いまここに一冊の週刊誌を持ってきておるんですが、「週刊新潮」ことしの四月二十三日号に、山本夏彦という人が「写真コラム」というのを出しておりまして、「住宅公団三つの大罪」と書いてあるんですね。二十五周年を迎えた住宅公団、「大々的に祝うはずのところ、さすがに恥じてそのことがなかった。」と最初から非常に厳しい書きようでありますが、罪を列挙しておくと、「スケールを小さくした。」と言うんですね。「団地サイズといって、四畳半強の部屋を六畳と偽った。六畳強を八畳とあざむいた。悪質な不動産屋もよくしないことを公団はした。スケールというものは勝手に動かしてはならぬもので、それを取締る側の「官」が動かしたのだから、「民」は勇んでそのまねをした。次いで天井を低くした。」「各階から少しずつ高さを盗めば、九階を十階にできるからである。」「員数をあわせるためである。軍隊は員数さえあっていればよしとした。公団はその伝統を奪って、」と。こうして「日本中の天井は低くなった。もう一つ、押入をなくした。」「和室だと各室に押入が要る。洋室なら要らない。そのぶんを去ると広く見える。」こうやって「家具をまたいでくらすくらしを、住宅公団は日本国民に強いたのである。鼻がつかえる天井の下でくらすくらしを同じく強いたのである。住宅公団はその気がなく、日本人の生活を根底からゆるがす一大文化的事業をなしとげた」――非文化的と言いたいところなんでしょうが。「罪万死に値する。」と、こう書いてあるが、どういうお感じですか。

○委員長(宮之原貞光君) これは総裁だな。澤田総裁に、あなたのところの功罪が大きいから……。

○参考人(澤田悌君) 国の住宅政策あるいは建設行政に関する問題でありますから、私から全面的にお答えするのがいいのかどうか疑問でもありますが、特に委員長から御指名でございますので、お答えをいたしたいと思います。

 先ほど大臣からもお話がございましたが、戦後非常な住宅難の時代に、国民に一刻も早くたくさんの住宅を供給しようという、そういう方針からいろいろな施策が行われたものと存じます。当時の日本の国民生活のレベル等にそうかけ離れたものではなかったと、私客観的に見ておるのであります。やむを得ず予算の制約あるいは数の要求等の結果、いまから批判すればただいま御指摘のような非常に厳しい批判が出てくるであろうと思います。思いますが、戦後のあの悲惨な住宅事情の経過の中において行われた一つの歴史的事実として私は受けとめるべきもの、と同時に、その後の日本経済の向上、国民生活の発展、それから諸情勢の変化、住宅に対するニーズの大きい変化等に、もう少し的確に、もう少し早く対応できたならばそういう御批判も幾らか緩和されたのではないかというふうにも思う次第でありまして、そういう事実を住宅公団としては、公団のいままでの二十五年の功罪の中に十分認識いたしまして反省をいたしております。

 そして今後は、国民の本当のニーズに応じた、しかもそれがわがままを許すものではない範囲において、的確に国の住宅政策の御指導のもとにこたえてまいりたいと、かように考えておる次第でございます。

○江田五月君 私は、やはりこれも行政というものの本当に基本的な考え方といいますか、行政の心といいますか、国民に、小さくてもいいだろう、狭くてもいいだろう、天井が低くてもいいだろう、とにかく住宅をどんどん提供していくという、それも一つの大切なことですが、一方でやはり、戦後新しい国をつくっていくのに、国民皆そろって高い志を持っていこうじゃないか、将来を考えていいストックをみんなでつくっていこうじゃないか、「武士は食わねど高ようじ」じゃないけれども、長い先のことを考えて、いまは苦しくてもみんなで一緒にがんばって、いいストックをつくろうじゃないかというようなことも行政の心構えの中にひとつ要るんじゃないか。何か国民とともにこれからの日本を一緒につくっていこうという心構えに欠けて、そのときそのときの移ろい行く需要に安易に対応するだけに終始してきたというようなところが、言葉はちょっと厳しくてごめんなさい、しかし、どうもそういうことがあるんじゃないかという気がこういう点でもするんですね。

 住宅公団の団地がすぐにそのうちにスラムになってしまうよということは、もう前々から言われていた。いまこうして厳しい指摘になっておりまして、ひとつこれからの方向を踏まえて、これまでの反省ということを大臣からも伺っておきたいんですが。

○国務大臣(斉藤滋与史君) 先生のお言葉を拝承しながら、つくづくと歴史の変遷を私は走馬灯のように考えたわけであります。御指摘の週刊誌も私はすぐ見ました。関係者に回し読みしてこんな話もしたわけでありまして、大変恥ずかしい限りでございます。しかし、いま歴史の変遷という言葉を使いましたけれども、やはり戦後の衣食足りないころは、とにもかくにも食えればいい、食があれば今度は着る物、そしていまようやく住宅と、その住宅も、先ほど申しましたように、とにかく住む家すらもない方々が四百万戸不足するということで、とにもかくにも行政を預かる役所としてはあえてそうしたことに踏み切らざるを得ないような状況にあったのではなかろうかと思います。

 しかし、それがいいとは言いません。いま見て御批判を受けるような形になったことではありますけれども、そういうことを踏まえてこれからの住宅という問題につきましては先ほど御答弁申し上げましたように、やはり潤い、ゆとりのある、そしていままでは、規格以下にしたようなものをむしろゆとりのあるような形でやるという、それだけ日本も余裕ができたし、勤労者の方々あるいは一般国民の方々の住宅事情もそういう面へきておると思いますので、先生の御意見を踏んまえ、そうしたことを図りながら、過去のそうした悪い時点については行政というものも全く考えなく、新しい発想で住宅事情対策というものを考え、またそれがもうすでに遅いかもしれませんけれども、その時点だというようなことでやってまいりたい、このように考えるものでございます。

○江田五月君 法案が成立していないわけですから、まだできたとは言えないわけですが、しかし、御提案に係るこの新しい公団で新たに住宅・都市整備行政を展開していこうとおっしゃっているわけでありますから、ひとつこれからのこととしてじっくり考えていただきたいと思います。

 ところで、いまの点について、この狭隘ないわゆる団地サイズと言われる住宅がたくさんあるわけですが、これは一体、さあ新たにつくるものは別として、これまでできているものはどういうふうにこれからされるんでしょうか。このままでそれぞれ活用されていくのか、あるいは多少の手直し、改修というようなことをお考えになっておるんでしょうか、どうでしょうか。

○参考人(救仁郷斉君) 昭和三十年初期につくりましたいわゆる二DKを主体とした住宅でございます。現在のところ非常にまだ需要がございます。これは新婚のお二人の方々にとっては非常に需要がございます。したがって、いま直ちにどうのということではございませんが、将来だんだん住居水準が上がってまいりますと、そういった二DKの狭いものはたとえば単身の方に開放するとか、あるいは場合によりますと二戸を一戸に改造をするとか、あるいはこれは技術的には可能でございますが、その前に増築するとかいろいろなことをやってまいりたい。いわゆるテラスハウスと申しておりますが、二階建ての連続の住宅がございますが、これ等についてはもうすでに数年前から増築を実施しております。

 今後そういういろいろな形で、情勢の変化に対応しながらやってまいりたいというふうに考えております。

○江田五月君 さて、住宅公団の財政についてちょっと伺っておきたいんですが、住宅公団の財政の仕組みというものはある程度伺っております。そしてこれまでは、借入金の推移についてはこの委員会でも数字を伺っておりますが、あわせて住宅建設費補助金あるいは政府補給金、要するに制度がちょっと違いましたから、以前は利子補給金そのものというわけでもなかったのかもしれませんが、いまの利子補給金に当たる一般会計からの補助の数字がどういうふうな推移をたどっているかということをお示し願います。

○参考人(星野孝俊君) ただいま御質問のように、現在は利子補給制度をとっておりますが、住宅公団創設のときには利子補給制度をとりませんで、出資金により金利を補てんするという制度をとっておりまして、設立当初より今日までの間に総額で九百七十五億円余の資本金をちょうだいしております。

○江田五月君 利子補給金の受け入れの数字の一覧はお答え願えないんですか、

○参考人(星野孝俊君) 利子補給金の受け入れの状況でございますが、四十年から四十六年までの間は、まとめて申し上げますとこの間に九十億三千六百万、それから四十七年度に七十八億七千九百万、四十八年度には百五億六千四百万、四十九年度が百三十四億四千二百万、五十年が百七十一億二千四百万、五十一年が二百三十六億四千七百万、五十二年が三百五十八億三百万、五十三年が五百二十一億五百万、五十四年が七百四十七億二千九百万、五十五年が九百六十億一千六百万でございます。

○江田五月君 いまおっしゃるようなお金が利子補給金として一般会計から日本住宅公団の財政の方に出捐がなされているわけですが、何かすごい伸び率なんですね。どんどん伸び率がよくて、そして住宅に政府が力を入れているということになるのかどうか。利子補給金というものがどんどん伸びていくということになって一体どうなるんだろうか。

 住宅公団が国鉄、健保、食管の米の三Kの第四の、これKじゃありませんが、第四のKになるんじゃないかというような指摘がありますが、この利子補給金を見ても、ここでちょっと計算してみますと、対前年度の増加率が四十八年が三四・〇七%、四十九年は二七・二四%、五十年が二七・三九%、五十一年は三八・〇九%、五十二年五一・四一%、五十三年が四五・五三%、五十四年が四三・四二%、五十五年が二八・四九%、すごいことになるんで、こんな勢いで利子補給金がふえていくということは、これはいいんですか悪いんですか。あるいは特殊な事情でこういうふうにふえておるけれども、今後はそういう方向でもない、一般会計の伸び率とそうかけ離れないような数字に次第に安定していくんだというようなことになるのか、その辺の見通しを伺いたいと思います。

○政府委員(豊蔵一君) ただいま御指摘の日本住宅公団に対します利子補給金につきましては、住宅公団が借入金につきましては主として財政投融資資金を主体としてこれを運用しておりますが、その金利とそれから実際に供給いたします住宅、これが一般には金利を五%として家賃を計算いたします。それからまた、面開発であるとか市街地再開発等の住宅につきましては四・五%として計算をいたしますが、その差額につきまして国が利子補給をするという仕組みになっております。

 したがいまして、管理されます戸数がふえるに伴いまして長期にわたってこれは回収されるものでございますので、その間の利子補給金がある程度ふえていくということは、仕組み上当然のことであろうかと思われます。しかしながら、また一面におきまして、財投金利が高い場合には当然その差額は大きくなりますし、また御案内のように、オイルショック等によりまして建築費等が急騰いたしました場合にはその金額が非常に大きなものとなりますので、管理開始されます段階におきます金利差というものも金額としてはふえてまいります。そういったようなことがありまして、五十二年度以降等に供給されます住宅等につきましては、建設費が高騰したということがあって利子補給金がふえているというような問題があったように思われます。

 しかしながら、今後のことを考えますと、なかなか予測がむずかしゅうございますけれども、一応経済が安定して運営されるという前提の中で公団の今後の建設されます住宅も、第四期住宅建設五カ年計画に基づきましてある程度安定的に推移するというふうに考えられますので、増加する率は安定していくというふうに考えております。

○江田五月君 この問題なかなかむずかしいことではありますが、利子補給金の方は税金から出ていく、したがって国民みんなの負担ということになる、家賃は受益者が負担する部分になる、そこの間の調整の問題だろうと思いますが、余りバランスが崩れてしまってもいけないし、もしバランスが崩れていつまでも三〇%、四〇%というような高率で伸びるようなものなら、制度の立て方に何かどこかの工夫が要るんじゃないかとか、何か制度がおかしいんじゃないか。それをすぐ家賃の方にはね返らせという話をしているわけじゃないんですが、将来のこととしてちょっと十分推移を見きわめて検討していかなきゃいけないと思いますが、いまお話だと伸び率がこんな三〇、四〇というような数字では将来伸びていかないんだということですから、これは将来を十分見させていただきたいと思います。

 さて、新しい公団、都市公園をつくっていくんだとかあるいは再開発を行っていくんだとか、そういう新しい仕事をやるんだということですが、なぜ一体そうした再開発とかあるいは都市公園の整備とかというような仕事をこの新しい公団がやらなきゃいけないのか、あるいはやることに意味があるのかを教えてください。

○政府委員(升本達夫君) おただしのように新公団の新しい業務といたしまして、一つは都市公園の整備それから都市機能更新を目的とする再開発事業という二つの仕事をやる予定をいたしております。

 そこで、なぜその必要があるのかというおただしでございましたが、都市公園の整備につきましては、すでに前回の法案の御審議で、新たに今年度スタートいたします新五カ年計画によりまして、今後都市公園の整備をさらに図っていかなければならない段階にあることは御承知のとおりでございます、

 そこで、この新五カ年計画に基づきます都市公園の整備に当たりまして、私ども特に二つの点で新公団に仕事を引き受けていただきたいというふうに考えているわけでございます。

 その一つは、最近の公園に対する需要が大変高度化と申しますか、広域化と申しますか、かなり広い地域から人を集めてレクリエーションの需要に供するというような目的を持つ公園、すなわち、それを広域的な目的を持つ公園機能に着目しまして国営の公園ということでやっておりますけれども、この国営の公園を今後整備をいたしてまいります場合に、かなり広域的な目的を持ちますために、いろいろな多様な公園施設の整備を行わなきゃならない。その場合に、その施設というのはかなり高度な需要に対応するものでございますから、一つは、受益者負担というような意味も含めましてこれは利用に当たって料金を回収できる施設じゃないか、こういうように考えたわけでございます。

 この場合に、そのような施設を整備いたします場合に、従来ですと国費、地方公共団体の費用でやっておったわけでございます。これを財投資金を利用してそのような施設整備を図ってまいりたいということでございまして、この場合にはこの財投資金が使えるような団体で整備を図ることが望ましいんではないか、このような観点から、新公団に国営公園の有料施設整備という役割り分担をお願いしているわけでございます。並びに、今後地方自治体におきまして都市公園の整備をさらに進展して進めていかなければならぬわけでございますけれども、御承知のとおり、地方公共団体がかなり組織的にも微弱なところ、資金的にも弱いところが多々ございます。これらの都市公園を適確にバランスをとって整備をしてよいりますためには、やはり組織面、技術面あるいは資金面でこれを助成していくという必要があろうかと思うわけでございます。その助成の団体こして新公団の業務に期待をいたしておるわけでございます。都市公園整備についての新公団の役割りはおおむねそのようなところを考えております。

 それから、再開発事業でございますけれども、再開発事業は現在の大都市、特に既成市街地の状況につきましては御説明申し上げるまでもない状況でございます。防災面あるいは交通面あるいは居住環境面、あらゆる面から再開発がかなり広域にわたって、しかも緊急に必要とされる状況にあるというふうに考えております。この再開発事業を推進してまいりますのはもっぱら第一次的には地方公共団体の責務でございますけれども、何分にも大変この要請が強うございまして、この状況、現状にかんがみまして、新公団にひとつその点の御助力をお願いしたいというような考え方に立ちまして、特に都市機能の更新を目的とする再開発事業を新公団の業務に期待している、こういう関係でございます。

○江田五月君 いまの御説明の中に、地方公共団体からの委託による都市公園の整備ということもありましたか、ちょっと聞き忘れたのですが……。

○政府委員(升本達夫君) 御説明いたしました。

○江田五月君 そうですね。
 そうすると、公園の整備ということについて、一つは財政合理性の面からのお話と、もう二つは、新公団に公園整備を行い得る技術者のストックがあるんだというようなことだろうと思いますが、それほどの技術者のストックを新公団が持つということになるんですか、その具体的な見通しといいますか、計画といいますか、そういったものがあれば明らかにしてください。

○政府委員(升本達夫君) 新公団の組織の内容につきましては、現在のところまだ確たるものを持ち合わせておるわけではございませんけれども、建設省もしくは外郭の団体等を通じまして、現に都市計画関連の技術者がいろいろ職務を行っているわけでございますけれども、こういった手なれた仕事を持つ人たちを公団の業務のかなめに入ってもらって、ただいま申し上げたような公団の責務を遂行してもらえるように配慮したいというふうに考えている次第でございます。

○江田五月君 新公団に公園整備の専門家がおるんだと、そういう一つの人の集団が国営公園の有料施設もどんどんつくり、委託を受けて地方公共団体の公園もつくっていくと、非常に何か効率的なようにも聞こえますが、一方ではどうも、特に地方公共団体の公園、都市公園もそうでしょうが、いろんなバラエティーというものが公園には必要なんじゃないだろうか。

 どこへ行っても同じような公園が日本じゅう並ぶというようなことになってしまったら、これははなはだおもしろくないわけでしてね。どこへ行っても同じようなかっこうの池がある、春はツツジが満開で、秋はモミジがどこへ行っても、多少の季節の違いはあるけれども、はらはらと散ってと、そういうことでは困るんで、やっぱりそれぞれの地方ごとに、あるいはそれぞれの公園ごとに特殊性のあるものがたくさんできていかなきゃいけない。一つのところでまとめてある人の集団があっちへ行きこっちへ行き、向こうへも行きで、ずっと公園をつくっていくということでそうしたバラエティーが確保できるのかどうか、何か少し不安があるんですがね。

○政府委員(升本達夫君) 都市公園の整備に当たって、地域の実情に即した需要にマッチする公園の整備を図らなければならないことは御指摘のとおりと存じます。

 しからば、そのような公園が整備される保証がどういうふうにあるだろうかというおただしかと存じますけれども、ただいま申し上げました地方公共団体から委託を受けて公団が実施いたします都市公園の整備、これは都市公園の整備でございますから、まず都市計画決定が先行するわけでございます。各その地その地におきます都市計画、これは四ヘクタール以上の大規模なものを予定しておりますから、決定権者は知事でございますけれども、知事が具体の場所について具体の公園の基本的なプランを都市計画をもって決めます。その場合に十分地元の市町村と相談をして決めるという制度になっております。あるいは居住者の意見を拝聴しながら決めるということになっております。

 したがいまして、そういう手続を経て決められた公園を実際にその細部の設計をし工事を行う、これを公団が引き受けるわけでございます。いわば都市計画決定の意思を公団が実現する、そのようなふうにお考えをいただきたいと思います。したがいまして、その過程において十分その地元、地に合った設計、基本構想に基づいた設計施工が行われるものと私ども考えておりますが、さらに実施段階に当たって御趣旨が貫徹するように、よく監督をいたしてまいりたいと考えております、

○江田五月君 公団の側は公園をつくる施工者であって、お客さんは自治体、お客さんの方の注文がそれぞれに変わるはずだからといったって、やっぱり実際に仕事をする側がいろいろアドバイスもするんでしょうし、実際仕事をするときに仕事をする者の裁量で決められることもたくさんあるでしょうし、ひとつ画一化というようなことをなるべく避ける方向を注意していただきたいと思います。

 同時に、都市公園整備五カ年計画で都市公園を整備をされていくわけでありまして、そういう五カ年計画の中での仕事ということになるんでしょうが、一体新公団がやる仕事というのは、その都市公園整備の全体の仕事のうちのどのくらいの割合を受け持たれることになるんでしょうか、

○政府委員(升本達夫君) 都市公園整備の新五カ年計画の総投資額二兆八千八百億円の中で、先ほど御説明申し上げました国営公園の整備費の総額が千五十億円予定をいたしております。そのうち三百九十億円をその有料施設整備費に充てたい、かように考えておりますので、いまのところの予定では、この三百九十億円が財投資金等によりまして公団が受け持つ事業量というふうにお考えいただければと思うわけでございます。

 それから第二点の、地方公共団体からの受託でございますが、これは受託業務でございますので、確定的には数字を申し上げる段階にございませんけれども、五カ年期間中に、これはもう目の子でございますが、大体七百億円ぐらい、個所数で二百カ所弱、これは設計の委託等も含めまして個所数を計算してございますが、二百カ所弱というような予定をいたしております。

○江田五月君 話が変わりますが、ことしは国際障害者年でありまして、障害者の皆さんの完全参加と平等というスローガンで国際的に障害者対策をやっていこうという年であります。住宅公団と障害者とのことに関してはもういろいろなところでいろいろな議論がされておりますが、さらにいま一度障害者にどういう温かい目を注いでいただけるのか、

 障害者対策というのは恐らく三つのポイントがあろうと思いますが、一つはいわばハードの面といいますか、公団が提供していく住宅がどれほど障害者に配慮がなされたものになっていくかということ、これは障害者用の住宅をどういう配慮でつくっていくかということが一つある、と同時に、健常者用の住宅にどれだけ障害者のための考慮が払われるのかという問題がある。障害者の完全参加と平等ということは、障害者の皆さんに、害者の皆さんはここにいなさいよという場所をつくるということだけでは済まない。障害者の皆さんが健常者と一緒に社会生活ができるということになっていかなきゃならない。障害者は障害者だけが友達じゃない。健常者も健常者だけが友達ではない。障害者が健常者の友達を持つ、健常者が障害者の友達を持つ、当然のことでありますが、いまの住宅公団の提供しておる住宅というものは、障害者の方が健常者の友達を訪ねようと思っても訪ねるに非常に不便ですね、まず無理じゃないでしょうか。

 たとえば、車いすの人が何とか抱え上げられて健常者の人の住宅に行く。トイレだって障害者に使えるようなトイレになっていない。これはなっていないのを改造すればいいが、改造できるような構造にもいまなっていない、あるいは障害者用の住宅ということになると、これはなかなか財政の負担も大変でしょうが、いま中の壁なども入居者の好みに応じていろいろ動かし得る、あるいは入居者の好みに応じて壁をどういうふうにつけるかを決めていくというようなことがだんだん技術が開発されておるわけですが、障害者、健常者両方に使える、あるいはどちらの人のためにも用いることのできるようなそういうパーツを開発するようなことができないだろうか。これは汎用性のあるパーツの開発というようなことになるかもしれませんが、というようなこともひとつ検討していただきたいと思います。いまの障害者対策のハードの面、それからもう一つはソフトの面で、これは障害者の方々にどれだけ入居に便宜を図っていくかという問題だと思いますが、この二点についてまずお答えください。

○参考人(救仁郷斉君) まず、お尋ねのハード面でございます。ハード面では、健常者の方のところに身障者の方が遊びに行かれるというようなために、まず建物の外回りでございますが、歩道の縁石の切り下げとかそういったことが、新しいものについてはもちろんでございますが、古いものについても必要に応じて改修を行ってきております。

 それから、建物の中に入りますいわゆるアプローチでございますが、これにつきましては、いわゆる一階のエレベーターのところまでは階段とスロープを併設するというようなこともやっております。そして階段、エレベーターをお使いいただく。ただ、中層の場合にはエレベーターがございませんで四、五階までは階段でございますから、これはちょっとやはりいまの技術では無理ではないかというふうに考えております。そういった措置をとっております。

 それから、建物の中、住宅の中でございますが、これはあらかじめどういう身障者の方がお入りになるかということが確定しませんと、設計というのはなかなか実際上むずかしゅうございます。そういったことで、できるだけ先生がおっしゃいました、後で改造のしやすい設計を考えるというような検討はこれから必要ではないかというように考えております。
 それから、もう一つの御指摘の、いわゆる汎用性のある器具でございますが、これはいろいろなことが考えられると思います。ただ一番基本的に問題になります便器、それからおふろでございますが、こういったものは基本的にその器具そのものではなくて、便所の広さなり浴室の広さというものが非常に大きく関係してまいります。したがいまして、部分的ないろいろな汎用性のある器具ということが考えられるかと思いますが、ちょっとそういった浴室、便所につきましてはなかなかそう簡単にはいかないんじゃないかと思いますが、なお検討さしていただきたいというように考えております。

 それから、ソフト面でございますが、これにつきましては、たとえば賃貸住宅につきましては募集戸数の一割の範囲内ではございますが、一般の方々よりも、大体当選倍率が五倍になるような形で、これは老人世帯と一緒でございますが、優遇措置を講じております。
 また、住宅をお選びいただく場合でも、一階とかあるいはエレベーターのとまる階とかいうような階を優先的にお選びいただけるようにしたいというようなこと。それからまた、お入りになってから不幸にしてそういった身障者になられた方々等につきましては、いまの一階とかエレベーター階とかいうところに住宅を移りたいとおっしゃる場合には、優先的にそういったこともやってきております。

 そういったことで、いろいろなソフト面につきましてもやってきておりますが、いままで分譲住宅についてはそういった優遇措置はしておりませんでしたが、建設省の御指導もございまして、今後分譲住宅につきましてもそういったソフト面の対策を講じたいというふうに考えております。

○江田五月君 この障害者の問題は、同時に、いま日本が迎えようとしております高齢化社会に一体どう対応するのかという問題と、技術的な面ではかなりダブるところがあろうかと思います。いまの部屋の中の構造の問題あるいはアプローチの問題、あるいはソフトの面で高齢者の皆さんにどういう便宜を与えていくかということ、新規にお入りになる方でなくて、いままでもうすでに公団にお住まいの方々でも高齢者、いろいろな考慮の必要な方々にどういうふうな温い配慮をしていくかということ、これも障害者の方々への配慮とあわせてひとつ間違いなくやっていただきたいと思います。

 そして同時に、障害者については、今度は公団が障害者の雇用をどの程度なさっていらっしゃるかという問題がありますが、いま住宅公団、宅地開発公団それぞれに身障者の雇用の達成率というのはどの程度になっておりますか。いまの要望に対するお答え、障害者だけでなくて高齢者の方々へも温い配慮をということについてのお答えとあわせて数字をお聞かせください。

○参考人(有賀虎之進君) お答え申し上げます。
 現在、住宅公団におきましては身体障害者の方々の雇用には積極的に努めておるところでございますが、先生御承知のように、法定の雇用率は一・八%でございますが、私ども現状におきましては一・六二%まで努めておりまして、法定雇用率にあと一息というところでございます。具体的には、一・八%と申しますと約九十名でございますが、現実には八十一名の雇用という状況になっております。

○参考人(志村清一君) 宅地開発公団は、法に基づく法定雇用数は六名でございますが、ただいまのところは三名相当、半分でございます。従来も身障者等の雇用のために努力をいたしておりましたが、これからも十分努力いたしまして何とか満配にいたしたいとかように考えております。

○参考人(有賀虎之進君) なお、先生のお尋ねのこれからの話でございますけれども、先ほど申し上げましたように積極的にやっているところでございますけれども、さらに今後学校とか職業安定所とかそういったところに対しましても積極的に働きかけまして、この一両年ぐらいの間に目的の達成率までに努めたい、こういうように努力したいと思います。

○参考人(救仁郷斉君) 老人世帯につきましても、先ほどの身障者の世帯と同じようなソフト面、ハード面の対策をとっております。公団におきましても、現在公団が管理しております住宅につきまして、世帯主が六十歳以上の世帯が昭和五十五年の調査によりますと賃貸住宅で五・四%、それから分譲住宅では四・八%というように五年前の五十年に比べましてそれぞれ一・二%ふえております。そういったことをあわせまして、たとえばお年寄りになられて手すりをつけたいといった模様がえが必要な場合にはできるだけ御協力申し上げてまいりたいというように考えております。

○江田五月君 そこで、身障者雇用率の達成をどうしてもやっていただかなければならないわけですが、これは建設省は非常にこの成績が悪いですね。建設省関係の雇用率対象の法人が七つあって、いずれもこれは三月二十六日の予算委員会で大臣からお答えをいただいておりますが、この達成ができていない。きょうは五月十二日ですから、きょうまでに達成しているかとお尋ねしてもなかなかむずかしいことだと思いますが、これから一体どうされるおつもりであるか、これは大臣の方に伺っておきたいと思います。

○国務大臣(斉藤滋与史君) いまお話がありましたように、さきの委員会で御指摘を受けたわけで、当然こうしたことにつきましては積極的に配慮するのが私たちの責務でございますので、法定数という問題もございますが、それを乗り越えて十分な配慮で、とにもかくにも障害者の方々に門戸を開放して積極的な対応をやってまいる所存でございます。

○江田五月君 さて、大分時間もたってまいりましたが、話を冒頭の話との関連に戻しまして、住宅公団あるいは今度できます新しい公団が住宅を供給してまいりますと、これは好むと好まざるとにかかわらず一つのコミュニティーをいろいろな場所でつくっていくわけです。コミュニティーの少なくとも基礎をつくっていくわけで、これが本当にコミュニティーになっていくのかどうかということが非常に大切なことではないかと思いますが、人間いろいろなライフステージといいますか、子供からずっと成長して青年期、結婚して夫婦が二人、小さな子供ができ、子供がずっと大きくなって中学、高校、大学、それぞれに全部巣立ってまた二人と、そういうライフステージがあって、それぞれの段階で住宅に対する需要、ニーズが変わっていくわけです。

 そうしたことを考えてみると、一つのコミュニティーがある一つのライフステージの人ばかりによって占められているということはやはり不健全なんじゃないだろうか。世の中というのはいろんな人がおるんだ。障害者の場合にもそういうことですが、障害者があれば健常者もいるんだ。新婚夫婦もおればお年寄りの夫婦もおるんだ。高校、大学生が暴れ回る、そういう――大学生になると暴れるかどうか、余り暴れても困るかもしれませんが、そういう家庭もあれば、幼稚園、小学校低学年というようなこういう子供を抱えた家庭もあるんだ。それぞれがお互いに助け合いながら、足りないところを補い合いながら、あるいは余った能力を人に提供し合いながらつくっていくのがコミュニティーになっていくわけです。

 さあそこで、どうも住宅公団の大量な住宅の供給というのは、同じような建物をたくさんたくさんつくることによって何かそういうコミュニティーのバラエティーというものを壊してしまう、あるいはそういうバラエティーをつくることを阻害していくというようなことがあるんじゃないだろうか。これからの公団の建設の方向として、ひとついろんな建物を大きいもの小さいもの、いまそれは多少のバラエティーは一ありますが、もっといろいろなライフステージの人が、いろんな家族構成の人が一つのコミュニティーをつくれるような、そういうことをお考えいただかなきゃいけないんじゃないかという気がいたしますが、これは一つの提案ですが、どうお思いになりますか。

○参考人(救仁郷斉君) 先生の御指摘は私どもも非常にごもっともだというように考えております。従来、昭和三十年代から四十年代の初期の高度成長期にかけまして、先生の御指摘のように、どちらかと言うと規格住宅をとにかく提供するんだというような考えが強くあったことはこれは否定できないと思います。しかし、四十年代後半からやはりそういったコミュニティーづくりということが非常に重要な問題だということから、いろいろなバラエティーのある住宅をつくっていこうという計画は徐々にやってまいりました。しかし当時でございますから、一戸当たりの平均規模というものがそう大きくございませんので、やはりバラエティーにも限りがございました。最近になりまして、建設省の方でも相当広い面積、平均床面積をいただいておりますので、非常にそういったバラエティーのある住宅がつくれるようになった。たとえば多摩ニュータウンでございますと、これは新住事業でございますが、一戸建てから高層まで、それも一DKから五LDKまでいろんなバラエティーを持った町づくりをしております。今度東京でやります大きな、たとえばグランドハイツの開発にいたしましても、一DKから五LDKまでいろいろなバラエティーを持って建設してまいりたいというふうに考えております。

○江田五月君 物の考え方なんですね。いまここに八〇年度の「日本住宅公団年報」というものがあります。三十ページにごみの空気輸送システム、地域暖房給湯システムというものが書いてありまして、大阪市の森之宮第二団地のことが図解をしてある。ごみを団地の一角にあるごみ投げ入れ口でぼんぼん投げていけば、それが空気輸送管ではっと真空パイプで輸送されて、焼却場にぽっと全部行ってしまう。そこで廃熱ボイラーで焼却をする。その熱を使って地域的に給湯をする、暖房をする、温水プールをつくる。非常にすばらしい地域をこうやってつくっていくんだということであります。これも一つの考え方だと思いますが、どうも私はこの考え方でどんどん進んで、それが本当にお互いの共同体をつくっていく道なんだろうかなという多少の疑問を感ずる。

 私たちはこれまで便利さを一生懸命に追い求めてまいりました。とにかく便利であることはすばらしいことだということでありましたが、しかしたとえば、いまゴミニティーというような言葉があるんですね。コミュニティーをもじった言葉でゴミニティー、ごみを一体どうやってお互いの共同体の中で一緒に力を合わせて処理していくかというようなこと、ごみの処理を通じて一つの共同体をつくっていこうというような物の考え方、こうしたことがかなり大切な物の考え方になってきているんじゃないか。そうなりますと、いまのごみの投げ入れ口、だれでもどんどん放り込んでいいですよ、全部真空でぱっと運んでと、お返しはお湯になってきたり暖房になってきたり、それも程度問題だという気がするんですが、住宅公団のように好む好まざるにかかわらず一つの共同体の外観をつくり出すわけですから、やはりそこにはそこで今度はふさわしいコミュニティーをみんなでつくっていこう。もちろんこれは公団の責任もあるでしょうが、同時にそこに住まわれる居住者の皆さんの自治活動に対する理解、自覚といったものも必要でしょう。

 これもだれの責任とか、だれが悪いとかいう話でなくて、一緒に連帯のあるコミュニティーをつくっていこうじゃないかということを、もっとごみの問題にしても清掃の問題にしても管理の問題にしても、いろんなことを通じて考えていかなきゃいけないときが来ているんじゃないか、自治機能というものを温かく助成し誘導していくという、そうしたことが必要なんじゃないかと思いますが、この物の考え方のことについて伺っておきたいと思います。

○参考人(救仁郷斉君) 先生のお考え、私も同感でございます。森之宮はそういった真空集じん、地域暖房というような形でたまたまやっておりますが、ほかのことにつきましては資源の再利用というようなことを含めましていろいろな方策があり得るのではないかと思います、ただ基本的には、私どもはその市町村のごみ収集のいわゆる方針と申しますか、それに基づいていろいろな計画を立てているわけでございます、そういった意味では、私どもは市町村のそういったごみ収集の方向に沿っていろいろな施設をつくっていくということでございます。

 ただ、先生御指摘のように、最近になりまして、そういった市町村のごみの収集以前に、お入りになっている方々が自主的に学校単位あるいは管理組合単位に再生できるごみの収集を自発的にされまして、そして植栽に、あるいは学校備品の購入とかいろいろなことに役立てておられるというそういった活動もふえてきております。そういったことは非常に好ましいことでございますので、そういったことに必要な器具等について御要請があればできるだけこたえてまいりたいというように考えております。

○江田五月君 リサイクルのことと同時に、もう一つはいわゆるエネルギーのこともあると思うんです。一つの共同体の入れ物をつくるわけで、いまエネルギーについてどういう考え方をとっていくか、どういう方向を歩んでいくか、国民全員いろんな考え方もありましょうし、みんなで知恵をしぼっていかなきゃいけないときが来ておるわけですが、私は一つの考え方としては、小規模な小さなエネルギー源をそれぞれに活用していくというようなこともわれわれ考えていかなきゃならぬのだろうと思います。雑木がたくさんとれるところではもう一遍雑木を燃やすというようなことも必要になってくるでしょう。小さな水力発電をやって、ある村の一部分だけ、あるいはある種類の電力だけをそれで賄っていくというようなことも必要になってくるでしょう。

 そういったことを考えるときに、公団がつくり上げる共同体の中で、たとえば街灯ぐらいは風力発電でやれるじゃないかとか、浄化槽に必要な電気あるいは水をタンクにくみ上げる電気、こういう電力はそれほど質のいい電力でなくても、ボルトがいつも安定してずっと続くというような電力でなくても何とかなっていくわけです。質の悪い電力の使い道というのもいろいろあるわけですから、そういうエネルギー開発というようなことも公団として、これから新公団でやることによって新しい共同体をつくっていく道を歩めるんじゃないかと思いますが、どういうお考えでしょうか。

○参考人(救仁郷斉君) エネルギー問題は非常に大きな問題でございまして、ただ私どもがいままでやっております中高層のいわゆるアパートと申しますか共同住宅につきましては、これは本来そういった省エネルギー的な効果を非常に持っている。一つは、建物の断熱性能というのが非常にいいわけでございまして、そういった意味から省エネルギーの形になっております。それから、立体化することによりまして都市のいわゆる交通輸送エネルギー、これの非常に節約に役立っているのではないかというふうに考えております、先生の御指摘の、そういったローカル的ないろいろな細かいエネルギーの利用ができないかというようなことでございます。公団につきましては現在、先ほどの森之宮を初めとして、まずいわゆるごみ焼却による余熱の利用ということをすでにやっております。東京でもグランドハイツあるいは品川沖等でもう次の計画を進めております。

 そのほか、いわゆる太陽熱の利用でございます。これは一般的にいろいろな方式があるわけでございますが、これにつきましては実験段階から実用段階へというような形で現在検討を進めております。

 それから、風力発電による屋外照明灯につきましても、試験所の方で鋭意開発を進めておりますが、これは実用化にはもう少しかかるんじゃないかというような感じがしております。

 そのほか、これは非常に特殊な例でございますが、東京で最近開発を検討しておりますのは、東電の高圧ケーブルが近くを地中を走っておりまして、その熱が非常に出てまいります。その熱を利用していわゆる地域暖房に使えないかということで、これは恐らく実用化ができるということで現在検討をしております。

○江田五月君 さらに、賃貸の場合には公団が貸し主になっているわけで貸し主の義務に包摂されていくでしょうが、分譲の場合には共同住宅の管理というものを一体どういうふうにしていくのか。

 公団が分譲していく、ある意味では公的に共同住宅を分譲してつくっていくというものが一つの見本になって、民間の分譲住宅の管理の模範をここで示していくというようなことがあるいはできたらいいなと思うんですが、これは民間の分譲住宅の管理の面とあわせて、たとえばエレベーターにしても壁にしても、あるいは浄化槽にしても水の設備にしても、そのほか一人一人が責任を持って管理する部分でないいわば共用部分といいますか、こういう部分はいずれは時間がたつと保守あるいは修繕、あるいはつくりかえその他が必要になってくるわけで、まあ壁の塗りかえぐらいだったら簡単ですけれども、エレベーターをつけかえるということになるとこれは大変なことになるので、そういう事務をだれが取り扱っていくのか、そういう仕事をどういうお金で出捐していくのか、どういうふうにそういう基金をつくっていくのか、だれに負担をさしていくのか、もし年なり月なりに割ってずっと所有者に負担をさしていくとすると、その集まった金をだれが管理していくのか、物価の上昇によって目減りしていくのを一体どうするのか、運用をどうしていくのか、いろんな問題があると思います。

 ちょっと時間がもう余りなくなってしまいましたが、こうした共同住宅の管理ということについてどういうお考えでどういう段階にいまあるか、大ざっぱで結構ですけれども、方向だけを示しておいていただきたいと思います。

○政府委員(豊蔵一君) 御指摘の分譲共同住宅の管理につきましては、最近非常に社会的な関心を集めております。日本におきましてはこういったような居住様式というものがまだ比較的歴史が浅いといったような点もございまして、そこにおきますところの共同居住ルールというものが十分確立されていないというような点、あるいはまた、建物が区分所有されておりますためにその維持管理に関する意思決定というものが円滑に行われにくいというような問題があろうと思います。

 私どもどいたしましては、これらの管理の適正化を図りますために、一つには管理組合の設立を奨励したい、二つ目には、居住者の方々の合意形成が円滑に行えるような合理的な管理規約というものを普及をいたしたい、三番目には、将来大規模修繕という問題が起こってまいりますが、そういったことに備えまして資金の適切な積み立てを重点とした財政的な基盤づくり、こういったようなことの三点を中心といたしまして今後私どもといたしましては関係業界等を通じて指導するとともに、現在行政指導の指針となるべき標準管理規約の作成を行うため鋭意検討を進めさしていただいておるところでございます。

 なお、住宅公団におきましてはそういった点に十分着目しまして、管理規約の策定また管理組合の設置といったようなことにつきましては、分譲される際に指導しておられて、一般の民間のマンション管理よりは相当進んだ状態にあるというふうに考えております。

○江田五月君 さて、住宅公団が住宅を供給していくような、建設していくような場合には、これは公的な機関ですから、経済状況が変わってもいろんな困難が途中で起こってきても、工事を途中でやめにしてほったらかしてしまうというようなことはないんだろうと信じております。それでも保守管理住宅というようなことになって、この保守管理住宅の保守管理が一体どういうふうになされているのか、そこに危険が放置されているというようなことがないのかどうか心配にはなりますが、住宅公団の場合と比べると、民間の場合にはこうやって工事の途中で状況の変化が起こって工事がストップしてそのままになってしまう、法的関係は何とか整理をつけてしまうとしても、社会的に見ると未完成のままで工事が放置される、危険が放置されるというようなことがいろんなところにあるわけです。

 先般私は、コンクリートパイルが打ち込まれたままで放置されて、そこに小学校入学直前の子供が落ちて死亡するという事故についてお伺いしましたが、そのときに、今後こういうことがないように対応を検討するというお話でしたが、どういう検討をされてどういう措置を講ぜられたかを御報告願います、

○政府委員(宮繁護君) 三井製糖株式会社の岡山工場の原糖の野積み場拡張予定地におきまして発生いたしました死亡事故に関連いたしまして、過日当委員会におきまして先生から御質問、御指摘をいただいたところでございます。

 これにつきまして、建設大臣からの指示に基づきまして私どもの方では関係建設業者の団体に対しまして、まず第一点といたしまして、工事の目的物を契約に基づき未完成のまま発注者に引き渡す場合には、公衆災害の防止のためにとるべき安全措置について発注者と十分打ち合わせをすること、また第二番目といたしまして、この打ち合わせに基づきまして所要の安全措置を講じた上、工事目的物を発注者に引き渡すよう傘下の会員に周知徹底するよう、五月七日付をもちまして指導通牒を出したところでございます。なお、同日付で都道府県知事に対しましても、知事許可にかかわる建設業者に同趣旨の指導をするように通知をいたしました。

 なお、関係省庁、二十七省庁でございますが、そのほか地方建設局、関係公団、電力会社、ガス会社等の主要な発注機関に対しましても、このような場合適切な措置が講じられるように協力をお願いいたしたところでございます。

○江田五月君 この事故について質問をしました際に、私は、ほかにもたとえばマンションなどについて似たようなことがあるんじゃないか、建設の途中でどういう事情か工事が続行されないことになって危険が放置されているというようなことがほかにもあるんではないかということに触れておきましたが、建設省がどういうふうに事態を把握なさっているかというところまで詰めては聞いておりませんでした。ところがその後、これは一部新聞の地方版でありますが、「マンション野ざらし三年半」という見出しで私が指摘したような事案が報道されておりました。岡山市竹田町大川上二百九十六の一というところに十一階建てのマンションをつくっていたんだけれども、四階まで建ってそれでストップしてしまった。子供らの危険な遊び場になっていたり、ここでシンナー遊びをしているとか、ウンカが大発生するとか、浮浪者が住みつくとか、雑草が生い茂るとか、付近の住民が本当に困っているという報道なんですが、この事案についてこれはどういうことだか把握かされておりますかどうですか。同時に、どういう対応が考えられるか検討を願いたいと思うんですが、どういう対応になるか御報告をお願いします。

○政府委員(宮繁護君) 御指摘の件につきましては、昭和五十六年の五月一日付の朝日新聞の岡山版にその旨報道されていることを知りまして、大日工業株式会社から事情を聴取いたしました。

 会社からは第一点として、御指摘のマンションは昭和五十三年の十二月に未完成のままNKプレハブから購入し、現在転売する交渉を進めているということ。

 また、二番目には、大日工業は安全対策のために当マンションの周囲に有刺鉄線を張りめぐらし、第三者がみだりに敷地内に立ち至らないように措置をいたしますとともに、必要に応じて雑草刈り等を行っているとの説明を受けたところでございます。

 なお、同社に対しましては、今後マンションの管理につきまして一層十分の努力をいたすように十分注意をいたしたところでございます。

○江田五月君 有刺鉄線なんていうのは、子供にとってはこれくぐるためにあるようなもんでしてね、子供が有刺鉄線が張ってあるからというのでそこをくぐらないようなことになってしまったら、これはもう日本の将来はないというとちょっと大げさですけれども、やっぱり子供は危険なところで遊ぶことによっておのずから危険に対処していく能力を身につけていくわけで、有刺鉄線を張ってありますからよろしいですというわけにはいかないですね。ひとつ事故が起きてからあわてるんではこれは後の祭りということですから、遺漏なきょうにお願いをしたいんです。

 このマンションの問題、ここは新聞の報道によると市の建築指導課は「手を焼いている」というふうに書いている。「手を焼いている」じゃこれは済まないわけで、今度の通達がここの場合にぴたりと当てはまるかというと、これは既往のことでもあるし、今回の指導通牒ではなかなかうまくいかないんだろう。建築基準法、建設業法、宅地建物取引業法、いずれかの法律あるいは複数の法律でうまく指導ができるかどうか十分検討をしていただきたいんです。それでうまく対応ができればいいんですが、対応できるかできないかは別として、こういうように危険物が建築土木の工事に絡んで放置をされているときに、いまの法体系というのはうまく対応できる場合もあるけれども、できない場合もかなりあるんだ。そういうものについて市民は民法七百十七条ですか、事故が起きてから初めて賠償を請求するというような道しか残されていない。

 そこで、これはかなり一般論になりますが、いろいろな理屈をつけて差しとめ請求とかいろんなことを考える。差しとめ請求というのは、本来日本の法律がこれまで余り知っていたものではないんで、裁判所も非常に苦労をしてこれに対応できるものは対応しよう、それでも限界がいっぱいある。私はやはりこのあたりでそろそろ、危険が放置されているような場合に、民法の事後的に損害賠償ということではなくて、そういう危険を事前に除去していくというような新しい法律の制度、法律の一つの分野というものをわれわれ開拓していかなきゃいけないんじゃないかという気がしておるんです。この前のときもちょっとお尋ねしましたが、もう一度建設大臣にお尋ねをして、ちょうど時間になりましたので、質問を終わります。

○国務大臣(斉藤滋与史君) 法律論で、これはもう先生の専門で教えていただかなければなりませんけれども、昨今のような複雑多様化した近代社会の中で余りにも危険に遭遇するその機会が多いわけで、これは委員長さんにお願いする筋なのかもしれません、委員の方々にお願いするのかもしれませんけれども、やはり危険防止法というか、何か特別な角度から立法化するぐらいの措置が必要かもしれません。この点につきましては、いささか法律専門家でないので自信もございませんが、そうした面でひとつ考えさしていただきたいと、かように考えます。


1981/05/12

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