1981/03/18

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94 参議院・公害及び交通安全対策特別委員会

マツクイムシの特別防除について

 高度経済成長末期、西日本一帯を中心に拡がった松枯れはここ数年、北海道などわずかの道県を除いて、ほぼ全国的に蔓延しています。

 これに対し政府は、昭和五十三年に「松くい虫防除特別措置法」を制定し、これまで約二百七十億円の補助金を使って特別防除(空中散布の法律用語)を実施してきましたが、松枯れは増加し、法制定時前の約二倍の二百万立方メートル以上となりました。

 一方、この空中散布による直接被害が全国各地で発生し、その効果や安全性をめぐって批判が相次いでいます。

この問題に関し十八日、江田五月議員は、参院公害・交通安全対策特別委員会で政府に対し、(1)「特別措置法」の最終年度である昭和五十六年度に松枯れを徴害に終息させるとの目標達成は、ほぼ不可能 (2)松は大気汚染など種々の要因で弱くなっている (3)空中散布だけでは松枯れは防止できない (4)環境庁は、空中散布が生態系の破壊の可能性があることを認識し、松枯れ対策に多大な関心を示せ――などの点を質しました。

 江田議員の質問に対し、林野庁黒川指導部長は、「空中散布は松枯れ予防の一つの方法であり、他に伐倒などの予算増もお願いしている」「専門家からなる『松くい虫防除問題懇談会』で検討中。近く結論が」と答弁しました。

 さらに江田議員の「国土保全は、松だけに頼らず、長期的視点から樹木の変遷を促進することも考えよ」と真剣な対策を求めました。

 また江田議員が農薬の問題に触れたのに対して鯨岡環境庁長官は「農薬で土壌や河川が汚染される」ことを認め、「今後、林野庁とよく話し合う」と約束しました。


○江田五月君 長丁場で、しかも答弁にいろいろ神経を使わなければならぬ質問が続いたようでありましてお疲れと思いますが、もうしばらくおつき合い願いたいと思います。

 先日は環境庁長官の方からごりっぱな所信表明を伺いまして、そういう方向で大いにがんばっていただかなければならぬ。恐らく国民こぞって長官の手腕に期待をしているところだろうと思いますが、なかなか現実には日本の環境というものはいろいろな困難を迎えていると思います。いままでの皆さんの御質疑もそのことをあらわしておるわけですが、多少私は観点を変えて、日本の山といいますか森林、これをいろいろ伺ってみたいと思います。

 戦後の高度成長の中で、日本人の生活様式、行動様式が相当変わりました。山がいま大変な状態になっているのじゃないかというようなことが言われる。特にそういう中で松に対する被害というものが非常な勢いで広がりました。昭和五十二年にそうした松枯れに対する対策として松くい虫防除特別措置法が成立をした。これはもう改めて言うまでもありませんが、林野庁の方でいろいろ試験をして、どうもどんどん松枯れが広がっていくのはマツノマダラカミキリという虫が運ぶマツノザイセンチュウという線虫のせいではないかというので、このマツノマダラカミキリを殺すために薬剤を空中から松林にまくということですね。薬剤はスミチオンとかNACとかというものがあるということですが、とにかくそういう薬をヘリコプターで空中からばっと松林にまくわけですから、これはやはり環境にいろいろな影響が出てくることは当然考えられるわけです。

 そういうわけでこの法案が出されて、いよいよ国会を通るという段階でも、当時の環境庁長官と農林大臣とが、環境に大変な被害の出てこないようによく注意してくださいとか、もし何かいろいろ困ったことが起こったらやめてくださいとかというような合意をおつくりになった。あるいは国会の中でも環境に対する影響というものを心配して、そうした点を含む附帯決議をつけたというようなことであって、マツクイムシの特別防除と言っておるわけですが、この特別防除については、環境庁としても当時は大変な関心をお持ちであったことは間違いないと思います。よもや鯨岡環境庁長官におなりになって、この特別防除について環境庁側としては関心を失ったというようなことはとうていあり得ないと思うのですけれども、ひとつその点をまず確認をしておきたいと思います。

○国務大臣(鯨岡兵輔君) 江田先生、日本における森林だけでなしに地球的規模でいっても、今世紀の末までに森林は四〇%減ると、権威あるレポートにそう書いてある。国内の方でも大分その減り方があります。このごろ林野庁なんかが大分骨折ってくれまして、植林もありますから、世界的な状態よりはずっとパーセンテージはいいでしょうが、お話のマツクイムシ、これは全然われわれは考慮を薄くしているというようなことはありません。だって、あれでしょう、日本を代表する木は何だと聞けば、桜と答える人もいるかもしれませんが、松と答える人、このどっちかでしょうね。桜と答えるか、松と答えるか。桜の方が花が咲くからちょっと多いでしょうね。しかし、それは松と答えたってそんなに外れじゃない。その松がどんどんだめになっていくのですから。私ごとを申し上げてなんですが、私はちょっと東京の離れたところに家を持っていますが、千葉県で十年ぐらいの間に松が全部だめになってしまいました。このことについては非常な熱意を持っておることを申し上げておきます。

○江田五月君 松が枯れていくことに対する関心と、もう一つマツクイムシに対する対策として、空中から薬をまくということについての関心とですね、その二つが恐らくあるだろうと思うんですが、いずれに対しても環境庁はテークノートしておるんだということですね、それでよろしいですね。

○国務大臣(鯨岡兵輔君) そのとおりでございます。

○江田五月君 そこで、どういう関心の持ち方か。まあこの特別防除に関しては林野庁の方からいろいろ報告を受けておるんだという程度のことなのか、あるいは報告を中まで読んできちんと解析をして、そしてときどきは問題点等を指摘して検討しておるんだというようなことまでいっておるのか。あるいはもっと、こういうことをいままでしてきたんだというようなことがあるのか、そこをちょっと伺いたいと思います。

○政府委員(正田泰央君) 基本的な私どもの姿勢につきましては先ほど大臣が御答弁申し上げたとおりでございますが、特別措置法ができます際に、先ほど先生がお話しになられましたように、特に環境庁の自然保護の面からいたしますると重大な関心を示しまして、これは間違いのないところでございます。この法律の効果あるいはそういった技術的なこと、すべてについて関心を示したわけでございますが、結論といたしましては特別措置法の制定について賛成の意を表したのでございます。しかしながら、いかんせん、マツクイムシの特別防除、その方法が航空機による空中散布ということでございまするから、確かに植物及び動物に与える自然環境の保全の見地からすると重大な影響があるということで、林野庁ともいろいろお話し申し上げ、また今後どうするかということも御相談したわけでございます。そこで、私どもでも一応調査をやってもみました。しかし、なかなかむずかしい調査でございます。そこで、特に林野庁がそういった専門でございますので、先生御案内のような五十二年度から毎年調査をしていただいております。私どもの方ではその報告をいただいて、特にこのままでいいのかどうかという意味合いにおきまして、技術的な開発といったものについて新しい分野はないかどうかとか、そういったことを行っております。林野庁の方でも御解析なさっておりますし、私どもの方でもその解析に基づいて判断をいたしておりますが、大体ベースが地方の解析及び評価の上に立っておるものですから、いろいろな技術の評価がございます。私どものかつての調査もそうでございますが、現在の段階ではやはり長期的に物を見たい。特に私ども自然保護の仕事を行っております。それで自然保護の基礎調査もやっております。しかも、あと二十年間、今世紀が終わるまで調査したい調査項目もございます。特にこういった分野はそうでございます。したがいまして、この空中散布の効果と申しますか、効果というよりは環境に対する影響について見ておりますると、確かに一時的にはいろいろ動植物の影響もあります。しかしながら、数年たって回復するとか、あるいは一年後に回復するとかいう、まさに生態系そのものの動きと申しますか、そういったものも顕著に見られます。したがって、私どもの方では、先生の御質問に対してちょっと先走った話になるかもしれませんが、長期的に物を見ていきたいということで、林野庁の資料に対してはそういう姿勢でもってやろうと思います。

○江田五月君 そこで、林野庁の方に少しお伺いをいたしますが、松くい虫防除特別措置法をお出しになるときには、ここにいまその当時第八十回国会の関係資料というものを持っておるのですけれども、発生原因については、鋭意究明に努めてきたところ、その結果、近年――この五十二年から見て近年ですが、ようやくその原因が解明されました。すなわち、線虫類の一種であるマツノザイセンチュウがマツクイムシの一種であるマツノマダラカミキリを介して健全な松の樹林に侵入し、次々に松を枯死させるのであります。また、これを防止するためには、マツノマダラカミキリが羽化脱出してマツノザイセンチュウを健全な松に運ぶ時期に松の樹冠に薬剤を散布してマツノマダラカミキリを駆除する方法が有効であることが明らかにされたのでありますと、こうなって、そして条文の第三条には、いまのこの原因の解明と対策の発見をもとに、「農林大臣は、昭和五十二年度以降の五箇年間において松くい虫が運ぶ線虫類により松林に発生している異常な被害が終息することとなるように」基本方針を定めなければならないと、そういうような規定を置いて、そして五年で終息させる、そういう意気込みで取り組まれたと理解をしておりますが、さあ五年で終息するということは一体どうなっておりますか、五年で終息しそうですが。

○説明員(黒川忠雄君) いま御質問がありました時限臨時措置法でございますが、五年間で終息させるという目標のもとにスタートしたわけでございますが、最近の被害状況を申し上げますと、五十一年、五十二年と被害が減少してきておったのでありますが、五十三年度に非常に爆発的にふえまして、五十四年度もそれを超してふえたというのが現状でございます。五十五年度はまだ九月末までの被害状況しかわかっておりませんが、九月末現在で、五十四年と対比しますと約七割程度に減っております。われわれとしましては、いまその原因がマツノザイセンチュウ、マツノマダラカミキリが運ぶ材線虫だということが四十三年度から六年度までの国立林業試験場のかなり綿密な試験の結果判明したわけでございまして、そういったものに対しまして、もちろん特別防除法で空中散布をやるわけでございますが、空中散布も一つの方法として有効である、あるまとまった森林につきまして空中散布ができるようなところにつきましては、散布する時期等的確にやれば効果があるということをいろいろ確認いたしまして実施に踏み切ったわけであります。

 それで、五十三年度に非常に爆発的にふえたという理由につきましては、われわれは、非常に高温で雨が少なかったというのが一番大きな原因ではないかと考えておるわけでありまして、五十二年度からその特別防除によりまして空中散布をやっておりますが、非常に爆発的にふえたのは、たとえば茨城県で七十万立方というような被害が出まして、これが全国の約三分の一を占めているといったような異常な被害になっておりまして、それが空中散布をやっていない個所が大部分でありまして、空中散布をやったところにつきましては防除効果がかなりあったところが多いわけでございます。そういったことが現状でございまして、最初に御質問のありました五カ年で終息できるかどいうことにつきましては、五十五年度は、確かに昨年の九月現在で七割ぐらい、約三〇%減っておりますけれども、当初目標としましたような終息が五十六年度中にできるかということは容易ではないというふうに考えております。

○江田五月君 異常気象というようなことがあったことは確かですが、その異常気象が環境庁にとってプラスであったのかマイナスであったのか。立場によって恐らくいろいろな意見がありましょうね。けれども、いずれにしても松枯れの一つの機序が解明きれたのだ、こういう対策があるのだ、空中散布をやっていれば、空中散布はいろいろな問題があるだろうけれども、五年間がまんしてもらえば、そうすると松枯れはもう五年で終息できるんだという、それができなかったことは、これは事実なんじゃないですか。容易ではないというふうにいまお答えになりましたが、容易でないどころか、もう終息という、二十万立方メートルぐらいに抑えるということはとうてい不可能と言えるのじゃありませんか。来年になってからやっぱりだめでしたということをおっしゃいますか。いまからだめなようですねというふうにおっしゃいますか、どうですか。

○説明員(黒川忠雄君) 大変むずかしい御質問でございますが、われわれとしては、やはり来年のこと、未来のことを確定的にお答え申し上げるわけにはまいりませんので、まあ容易でないというふうな表現で申し上げたわけでございますが、被害の状況が、先ほど申し上げましたように、五十一年は八十万立方程度まで減少しておったのが五十三年度から二百万立方メートルを超えているというような状況で、五十五年度は、今年度は二百万を切るであろうという見通しでありますけれども、しかし、当初目標にしましたような状態の終息ということは、あと一年間で容易ではないというふうに考えております。

○江田五月君 異常気象になると、なぜ一体松枯れが爆発的に増大するのかということですね。恐らく、林野庁のお立場からすると、異常気象になるとマツノマダラカミキリがふえるとか活発になるとか、マツノザイセンチュウがふえるとか活発になるとかというような理由をお挙げになるのでしょうが、そのほかにも異常気象のために、松が気象自体によって弱ったということもあろうかと思いますが、そのことはお認めになりますか、どうですか。

○説明員(黒川忠雄君) 御指摘のとおりでございまして、マダラカミキリが非常に繁殖をするということ、あるいは材線虫がやはり繁殖するということもありますが、それ以外に特に水が少ないという、高温ももちろん関係いたしますが、降水が少ないということは松が弱るわけでありまして、実は材線虫が枯らす原因だということが発見される前に、やはりわれわれはキクイムシ、カミキリムシ類がその原因だというふうに考えて、いろいろ対策も立て研究もしておったわけでありますが、そのカミキリ類、特にマツノマダラカミキリが産卵いたしますのは、健全な木ですと、やにが非常に多いわけでありまして、これは産卵いたしましても卵が死ぬ率が非常に多くて、なかなか繁殖できないということでございまして、いまのマツノザイセンチュウとの共生的な関係といいますか、そういったことで材線虫が松の中に入りますと松が弱ってまいります。そこにマダラカミキリが産卵するというような循環をいたしまして、非常に爆発的にふえていくといったようなメカニズムがある程度解明されておるわけでございまして、必ずしも虫だけというわけではない。松がやはり弱るということも原因の一部ではないかと思っております。

○江田五月君 松が弱る原因というのは、高温とか雨が少ないとかということももちろんありましょう。五十三年の異常気象のときにはそういうことがあったでしょう。同時に、大気が汚れてきているとか、あるいは酸性の雨が降ってきているとか、いろいろなことで松は弱るわけで、そういう点から環境庁としても松が弱っていること自体について非常に大きな関心を持たなければいけないということが言えると思うのですが、ちょっとそれはおいでおいで、さて、そこでですね、いま林野庁は空中散布も一つの方法だというふうにおっしゃいましたですね。ということは、これから松枯れに対してどういうふうな対応をしていくのかということとの関連で言えば、空中散布もあるけれども、そのほかのこともいろいろと考えていくのだ、努力をしていくのだということを意味するのですか、どうなんですか。

○説明員(黒川忠雄君) 現在でもマツクイムシの駆除につきまして空中散布オンリーというわけじゃないのでありまして、特に五十六年度予算でいま要求しておりますのも、伐倒して駆除するといったような予算も増額していま要求中でございます。そういった意味で、空中散布する場合に、たとえば養蚕とか魚の養殖とかというようなところが介在しておりますと、空中散布が非常にむずかしいというか、ある被害が起こるということがございますので、そういった点からもなかなかできないところがありまして、あるいは非常に初期の状況で単発的に出るというようなところは空中散布で、また団地になっておれば予防というようなことでやれますけれども、それができにくいところもあるといったいろいろな状況がございますので、空中散布はやれる条件のところでやると一つの方法だと申し上げたわけでございます。

○江田五月君 空中散布をやることのできないところというのもたくさんあるわけですね。そして、いまのように非常に広がってまいりまして、それを全部空中散布でやったら、これはもうそれこそ日本じゅうの松林をすべてスミチオンづけにしてしまわなきゃならぬというようなことになる。スミチオンという薬あるいはNACという薬、これはBHCとか昔のパラチオンとかいう、それはどの毒性はないんでしょうが、それでもやはりいろいろな毒性を急性、慢性ともに持っておるわけで、こんなものを日本の松全部にどこもかしこもまがれたら、これは環境庁、たまったものじゃありませんね。どうお考えになりますか。

○政府委員(正田泰央君) 先ほど先生がお話しになりました点で、確かに松枯れ及び松の林地における相対的な衰退と申しますか、そういった現象が起こっておるわけでございますが、確かに大気の汚染、そういったものもありましょうが、やはり何と申しますか社会経済の変化と申しますか、そういうことによって松林、林地、そういったものの管理のパターンが変わってきておるということも大きな原因じゃないかと思うのでございますね。したがいまして、長い目で見ると、松といういわば象徴的な木が日本において将来どうなっていくのかという問題が一つあるわけでございますね。

 そこで、いまの空中散布による動植物の被害というのが別途ございます。私どもが当初この法律ができますときに重大な関心を示したゆえんのものももちろんそこにあるわけでございまして、まず何はともあれ人体に対する被害、これは厚生省の所管でございますが、一番大きな問題がございます。それから動植物がそれに並んで当然あるんですが、これのやり方、特に空中散布は一般農薬と同様に、まき方と申しますか、時間、地域あるいは気象、そういったものの条件をよく考慮してからやるという技術も相当大事だと思いますね。それから相当広範囲でございますから、当然空中散布によって線虫が死ぬということもありましょうが、いわば薬ですから、それはある程度の一般の目に見えない小さな植物、動物に被害があることも当然でございますね。ですから、それが過度にもちろんならないように、また現状以上にそういった被害が出ないようにということは、林野庁ともこれは担当者ベースでよくお話ししております。

○江田五月君 この薬をまくと昆虫とかいろいろな線虫とか一斉にやられてしまう、そういう松林に住んでいるさまざまな小動物あるいは植物にとっては、原爆を頭から落とされたようなものだというような表現をする学者もいるようですが、しかし、それは比較的短期にまたもとへ戻るんだというようなことをおっしゃっている。いまも環境庁の答弁の中にそういう趣旨の言葉が出てきた。林野庁の方でも恐らくそういうことだろうと思いますが、そうすると、比較的短い期間でもとへ戻るならば、マツノマダラカミキリもマツノザイセンチュウももとに戻るのじゃないか、もとのもくあみになってしまうのじゃないかという疑問が起こるのですが、これは林野庁はどういうふうにお考えなんですか。

○説明員(黒川忠雄君) われわれがいま空中散布をやっておりますのは、こういう爆発的に非常にふえていく、それが先ほど申し上げましたマツノマダラカミキリとマツノザイセンュウによる蔓延でありますが、マツノマダラカミキリが成虫になって松の材の中から出てまいりまして、一番上の松の葉を食べるわけです。そのときにマツノザイセンチュウが体についておりまして、口を通してその松の中に入っていく。それが入りますと松が弱って枯れてくる。そこへ後でマツノマダラカミキリが産卵すると……

○江田五月君 答えは短くしてください。

○説明員(黒川忠雄君) 繰り返しでございまして、そういった中で空中散布によりましてそれを予防するということでありまして、われわれとしましては、被害が本当に減ってきて、やれるのならば伐倒して駆除するといったようなことを併用しなければ、やはりなかなかその防除はできないだろう、だから空中散布はあくまで予防的な措置であるというふうに考えております。

○江田五月君 そうですね、空中散布をしたところで、どっちみち伐倒駆除をしなければいけないし、空中散布だけに頼っているのじゃ、それでまた自然が壊れてしまうようなことのないようにするのじゃ、またもとのとおりになっていくわけで、昔からやはりマツノザイセンチュウもマツノマダラカミキリも、一部にはよその国から入ってきたんだというような説もあるようですけれども、大体日本にいたものでしょうし、あるいは少なくともいまではどこにでもいるものですわね。そうすると、そういうものがいながら、しかし激暑型にならずに微春型で推移していくようにしていくためには、ずっといつまでも薬をまき続けなきゃならぬ対策というのは、これは余りほめた対策ではない。幾らスミチオンであろうがNACであろうが、毎年毎年まいておれば、毒性は少ないからといってもやはりだんだんたまっていくわけで、スミチオンの場合には残留毒性というものがかなりあるのだ、一年半だか二年だかたっても、なお五PPmでしたか幾らでしたか、数字はちょっと忘れましたが、かなり残るんだというようなこともある。そこへ毎年毎年また追い打ちをかけていくようなことになると、これは自然の破壊にどうしたってつながるわけで、さて、そこでこの特別措置法は、五年の時限立法、来年の三月三十一日には切れるわけですが、これをどういうふうにされるおつもりですか。

○説明員(黒川忠雄君) おっしゃるとおり、時限立法でありますので、来年の三月三十一日まででございます。この取り扱いといいますか、今後のマツクイムシ駆除をどうするかということにつきまして、われわれ役所の中だけで考えるのもいろいろむずかしい面もございますので、各分野の専門家によりましてマツクイムシ防除問題懇談会というのをただいま開催いたしておりまして、マツクイムシ防除対策全般についての御意見を聞いているところでございます。それがまだいまのところまとまっておりませんが、これは何も特別措置法をどうするこうするという直接の問題を話し合う懇談会ではございませんでして、今後のマツクイムシ駆除についての基本的な考え方をいまいろいろ御意見を聞いているところでございます。これによりまして、われわれは今後どうすれば一番いいかといったことを判断していきたいと思っておるわけでございます。

○江田五月君 その懇談会の日程的な見通しですね、これはどういうことになりますか、何月ごろにどういうふうにしてというようなこと。

○説明員(黒川忠雄君) ただいままでに五回懇談会を開いておりますが、遅くとも四月の末ごろまでには取りまとめをお願いしたいというふうに思っております。

○江田五月君 その懇談会の結論を得て、もうこれで特別措置法は終わりにするのだということならば、別に何もする必要はないけれども、また続けるのだというようなことになれば、いろいろの関係方面の意見の調整等が要るんでしょうが、その場合に、環境庁長官、続けることになるのかどうだか、ならない方がいいと思いますが、四月末ごろをめどに懇談会でこの検討をするに際して、環境庁の側からの意見の具申というようなものをおやりになるつもりはありませんか。

○国務大臣(鯨岡兵輔君) これは詳細は局長から答えてもらいますが、やはり日本を代表する植物ですから、法律をつくってまで防除しようとしたんだけれども、まだ防除ができない。今後も安心できないということになればやはり何かしなきゃならぬと思います。何かしなきゃならぬと思いますが、まだ林野庁の方から私どもの方は相談を受けておりませんし、これから相談を受けて環境庁の立場で考えていきたい、こう思っています。

○政府委員(正田泰央君) 懇談会にも、環境庁の現役ではございませんが、かつての幹部が出席しておりますので、相談をしながら審議に参加しているということでございますので、今後ともそういうふうにしたいと思っております。

○江田五月君 そういうことで間違いのない結論を出していただきたいのですが、いまもお聞きのとおり、四年前に特別防除をやったら五年で終息するんだと言われたようにはなかなかいかないのですね。しかも、この空中散布に伴って必然的に起こる自然破壊というのも、これももとへまた戻るとしても、いつまでも繰り返していたら一体どうなることかというようなこともある。それからまた、まき方がときどき間違うことがあるのかないのか、間違ったと言われるようなことはときどき起こるわけですね。

 つい最近も何か愛媛の方で余り好ましくないまき方があったというようなことをおっしゃっている方がいらっしゃる、お聞きになっているかどうか。あるいはまいた薬がいろいろなところへ飛んで行っていろいろな影響を及ぼすと。滋賀の方では繭、蚕が育たなくなったというようなことをおっしゃっている人もいる。これは林野庁としては当然知っていることだと思いますけれども、そうしたようなまき方の問題が、人間ですからどうしたってトップで思っていたとおりのことにはなっていかないので、多少横へずれたりするわけで、そうすると余りそうほめたやり方ではないな、もっといろいろなやり方があるのじゃないか。

 たとえば松は確かに桜に次いでというか、あるいは桜と並んで日本国民の大好きな木ではありますが、しかし、もし日本のいまの自然の大きな変遷の中で、変遷ということを言うのが学問的にどうなのかということもいろいろありましょうが、もし、松はやはりだんだんもたなくなってきたのだ、ツバキとか、あるいは雑木のたぐいとか、そういうものにだんだん変わっていく過程にあるのだというようなことならば、あるいは松を守るために自然破壊を物すごくやらなきやならないけれども、もしそれを杉とかヒノキとかに変えるならば大丈夫だというようなことになるならば、そうしたような日本の国土の木の生え方を大きく変えていくというようなことも政治として、行政として考えていかなきゃならぬことじゃないかというような気もするので、先ほど長期的に二十世紀全般にわたって見ていきたいというようなお話もございましたが、林野庁としても、日本の山をどういうふうにしていくのかについてかなり幅広い、そして先の長い見通しを持ってやってもらわないと、すぐに松が枯れました、薬をまきますというだけでは困るという気がいたします。

 そういうことで、いままでいろいろな事例を見ておりますと、あるいはこの効果を見ておりますと、ちょっと五十六年の実施は見合わした方がいいのじゃないかというような気もする、そういう意見もあるのですが、林野庁、そういうつもりはありませんか。

○説明員(黒川忠雄君) 五十六年度につきましても、先ほどちょっと申し上げましたが、五十五年度と同じ事業量を計画して現在予算要求をしておるわけでございまして、その他の伐倒して駆除するというような方法は五十五年度よりはふやして要求しておるわけでございます。現在、確かに薬剤散布についてのトラブルというのも全然ないというわけではありませんが、われわれとしては、そういうことは絶対起こさないようにというふうに指導いたしておるわけでありますが、そういった意味で五十五年度の被害が五十三、四に比べていま減ってきておるわけでありまして、ここで予防措置として、五十六年度につきましてもマツクイムシ防除の一環としての空中散布というのは実行したいと考えておるわけでございます。

○江田五月君 おやりになるならばせめて五十六年度については特別防除をやる前と後との生態系の変化みたいなものをかなり綿密に調査をしながらやるとか、あるいはまいた場所とまかない場所との違いを相当綿密にきちんと調査をしながら、五十六年度はひとつその後の方向を決める上での資料を豊富に取りそろえるんだというようなこともあわせてやるんだというような、いわば試験をあわせてまくんだというような気持ちでやっていただかなきゃ困ると思うし、そういう意味では、五十六年度の散布は環境庁の方もかなりくちばしを入れながら、林野庁と環境庁とが技術的に提携をして資料を集めながらまくというようなことをお考え願えないかと思うんです。それと同時に、長官、農薬というものについてはかなり環境影響というような観点からのチェックが乏しいような感じがしておるので、ひとつ農薬全般を見直そうというようなおつもりはありませんかどうですか。その点を伺って質問を終わりたいと思います。

○国務大臣(鯨岡兵輔君) 段々のお話を承っておりまして、なかなかこれから忙しい大変なことだなと思います。マツクイムシで松がやられてしまうことはいやです。これは景観の環境としても耐えられるところではありません。ですから林野庁もひとつせっかく勉強して、日本の代表的な松がなくならないように努力してもらわなきゃなりませんが、そうかといって薬品をのべつまきゃいいんだというものではない。それによって人が健康を害されたらこれはとんでもないことでございますし、また地面へ入れば土壌が汚染されます。そこへ雨が降ってくればそれも水に流れていって水が今度は汚染されますから、それは大変私どもの方の仕事にもろにかかってくるわけであります。時限立法でやりましたけれども効果がないということになれば、これでただやめるということでなしに、やるにしてもどういうふうなやり方、いままでのやり方でできなければどうにかしたやり方をしなきゃならぬ。そのやり方によっては、いま申し上げましたように、いろいろ私の方に直接影響してくるのですから当然これはよく話し合ってやっていきたい、こう思います。


1981/03/18

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