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 新井将敬さんの自殺について
 [1998年2月23日(月)]

 日興証券との証券取引法違反事件で逮捕許諾請求が出されていた新井将敬さんが、2月19日昼、宿泊中のホテルで首吊り自殺をしました。ベッドの下には短刀も残され、ウィスキーの空きビンが散乱していたとのこと。衆議院がその日の本会議で、逮捕許諾の議決をする直前でした。

 新井さんは、若手の論客として知られた代議士で、私もテレビなどで席を同じくしたことも多く、好感を持っていました。心から哀悼の意を表します。

 彼の日頃の言動とその実態とのくい違いが衆目にさらされることになり、本人の性格からも、居直って知らぬ顔ともいかず、自ら命を断つ道を選んだのでしょう。厚顔無恥の政治家が多いなかで、自らの美学に殉じた形ですが、自殺を美化してはいけません。

 今回の容疑は新進党時代のことですが、自民党時代にも株で2億円を超える利益を上げていたことが判っており、政党間のののしり合いは目くそ鼻くその類です。

 大蔵省出身の代議士で証券会社と特別の関係があったから、無担保で1億円借りられたり、一年半で4100万円利益を上げられたりしたのでしょう。それを当然のことと思い、自分の立場の重さを自覚せず、利益供与の要求はしていないと胸を張るのでは、やはり国民の感覚とは大きくかけ離れており、国民が主人公の政治をする人とはいえません。

 今回の自殺は、検察庁が、彼の前日の言動のなかにあるサインを見落とし、一時行方を見失った間のできごとでした。身柄確保は、捜査機関のもっとも重要な職責の一つです。故意に自殺の時間的ゆとりを与えたとは思いませんが、手ぬかりがあったのではないでしょうか。逮捕状請求は、証拠隠滅を図っていたので、問題ないと思います。

 テレビで彼の母親が、みんなやっているのになぜうちの子だけが…と絶叫していましたが、正直な反応でしょう。このようなことをしている政治家が多いのです。経済の活性化のため政治家も株を買うべきだとか、株をやらなければ経済のことは判らないとか、著名な政治家による不規則発言が続いていますが、とんでもないことです。「政治銘柄」とかいって、選挙前には株価操作で選挙の資金を得る政治家がいるのです。株取引に血眼になったバブル時代の反省は、どこへ行ったのでしょう。

 ・政治家については、現職の間は株取引を原則として禁止すべきです。
 ・借名口座はすべて、ルール違反ですから公開すべきです。
 ・政治家の資産公開制度を改め、株取引の経過等も含めるべきです。
 ・大蔵省の疑惑徹底解明と財政・金融・徴税の分離も断行すべきです。

 新井事件と大蔵省汚職を重ね合わせると、政治家と官僚と業界(政官業)の癒着構造がはっきりと見えてきます。このような利権構造を一掃するため、政治のあり方を大きく変えることが急がれます。これが、彼の自殺を犬死ににしない道です。

江田五月

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