2016年1月20日

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 参議院代表質問 参議院議員 難波奨二


平成28年1月20日
平成26年度決算に対する質問

民主党・新緑風会
難波 奨二


 民主党・新緑風会の難波奨二でございます。私はただいま議題となりました平成26年度決算について、会派を代表して、安倍総理並びに関係大臣に質問いたします。

(スキーバス事故)
 冒頭に、さる15日未明に起こりました長野県軽井沢町におけるバス事故で亡くなられた方々のご冥福と、負傷された皆様の一日も早いご回復をお祈りいたします。
 ツアー会社ならびにバス会社が、法令により厳しく処罰されることは当然であります。しかしながら、このような痛ましい事故が起きた背景には、過度な規制緩和による競争激化が要因の一つと考えられます。平成12年の貸し切りバス事業への規制緩和は、新規参入の事業者を激増させ、運賃の下落を招くと同時に、適正な価格による契約が行われないため、雇用環境の劣化等を招き、ドライバー不足により、慢性的な過労によって事故が引き起こされるという悪循環が生みだされました。
 安全がないがしろにされることは絶対に許されません。そのためには、過度な規制緩和を改め、行政による指導と監視の強化が必要と考えます。
 前途有為な若者たちの命を奪った、このような事故が二度と繰り返されぬよう、再発防止策について、総理にお聞きします。

(急激に下落した株価)
  次に、総理がアベノミクスの成果であると胸を張る株価について質問いたします。
 今年に入ってから、2営業日を除いて東京株式市場の日経平均株価は下落し続けております。
 菅官房長官は18日の記者会見において、このような現状に対して、「市場の変動に左右されず、内外の情勢を注視しながら、必要な政策を着実に進めていく」と発言されていますが、株価の下落基調は止まりません。
  円安誘導などにより、高騰してきた株価が、投資マネーの減少、原油安や中国経済の減速など、海外における要因で下落してきたことについて、今後どのような手段で対応されようとしているのか、一連の株価下落をどのように受け止めているのか、また、株式市場における「アベノミクス相場」の終焉が近付いてきたとの認識はありますか。総理、お答えください。

(臨時会の召集見送り、平成26年度決算の提出時期)
 さて、安倍総理が、野党の憲法53条に基づく臨時国会の召集要求を無視したことは、明らかに憲法違反であります。
 平成26年度決算は、本来ならば、昨年秋に臨時国会を開催し、提出されるべきでした。本院では決算審査を重視しており、決算審査の充実を図るため、与野党合意の上、決算の早期提出を内閣に求めてきたからです。その結果、平成15年度決算以降は11月20日前後に決算が提出されるようになり、決算審査の充実が図られてきました。
 にもかかわらず、私たちの臨時国会召集要求は無視され、決算の提出は1月まで遅れました。総理は、参議院の要請は無視しても構わない、予算ならまだしも決算の審査は重要ではないと考えているのでしょうか。
 決算審査を重視してきた参議院を軽視していることに対し、安倍総理に猛省を促すとともに、決算審査に対する総理の認識を伺います。

(財政状況の実態、国の債務の抑制)
  次に債務抑制策について伺います。平成26年度一般会計決算は、25年度比で新規国債発行額が4.9兆円の減となるなど、一見すると財政改善が進んでいるように見えます。
 しかし、ばらまき的な予算編成によって、税収の増加分を国の債務抑制へと結び付けられず、多額の債務負担は将来世代に先送りされているのが実情です。その結果、26年度の新規国債発行額は38兆円と依然として高い水準にあり、累積債務残高は、平成26年度末において1,053兆円にも上り、税収の約20年分もの規模となっております。
 将来の世代に債務負担を先送りすることは許されません。実効性のある国の債務抑制策と利払い費の増加への対応について、総理、お答えください。
 

(プライマリーバランスの対GDP比の黒字化)
  平成25年8月に閣議了解された中期財政計画によると、32年度までに国と地方のプライマリーバランスの対GDP比の黒字化が目標に掲げられ、昨年6月に閣議了承された骨太の方針においてもその方向性は堅持するとされています。しかし、昨年7月に内閣府が公表した試算によると、経済が再生するケースにおいても32年度のプライマリーバランスの対GDP比の黒字化は見込めないという結果が出ており、政府内での見解が一致しておりません。
 このような事態は、政府内における債務残高の抑制に対する見通しが全く現実にそぐわないことを表している証左ではありませんか。
総理はそれでもなお32年度のプライマリーバランスの黒字化を達成できるというお考えなのでしょうか、お答えください。

(社会保障費の増大と財政再建について)
  平成26年度決算において、社会保障関係費は30.1兆円となり、歳出決算総額の30.5%を占める規模となっております。また、少子高齢化の進展の中で、今後も更なる社会保障関係費の増加が見込まれ、その財源をいかにして確保するかということはまさに喫緊の課題であります。
  我が国の財政は債務残高が1,000兆円を超えるという危機的な状況の中、総理は衆議院予算委員会等の場において、「社会保障分野の抑制も聖域ではない」と述べられております。
  しかし、憲法が第25条で保障する生存権や第13条で保障する幸福追求権は、国民一人ひとりがこの国で尊厳を持って暮らしていく上で必要不可欠な権利であり、これらの権利がおろそかにされることは断じてあってはなりません。
  財政再建と増大する社会保障費の財源確保という二律背反する時代的制約の中で、ナショナルミニマムやシビル・ミニマムをどのように確保していくのかという点に関して、総理の見解を求めます。
 

(企業減税と内部留保)
  安倍政権は、消費増税によって国民負担を求める一方で、度重なる税制改正により、法人実効税率の大幅な引き下げを行っております。
  実施した企業減税が本来の目的であるべき企業の設備投資や労働者の所得の向上に結び付くことなく、26年度の内部留保額は25年度に比べ8.1%増加して354兆円と多額にふくらんだにもかかわらず、設備投資額は1.6%増、給与総額は1.4%増に留まっております。
  税制改正が単に企業の内部留保を増やす結果になっている現状に対して、その是正のためにどのような手段を講じる必要があると考えているのか、また、政府与党の一部に意見があるとされる内部留保課税について、その適用の可否を含め、総理、お答えください。

(外国人投資家による国債の買い入れ)
 平成27年9月末時点において、国庫短期証券を含めた国債1,039兆円のうち、外国人投資家による保有は約1割に相当する101兆円となっております。特に国庫短期証券においては141兆円のうちの55兆円が外国人投資家に保有されています。そのシェアは約4割と非常に高いものとなっております。
 そもそも日本国債の信頼性は、その大半が国内で消化されていることに由来しています。しかし、株式市場から逃避した投資マネーは、比較的安全な資産とされている円や日本国債に向かっています。外国人投資家による国債の保有は、投機的な要素が強く、金利の上昇や不安定化につながるおそれはないのか、外国人投資家の国債保有に対する総理のご認識を伺います。

(特定秘密保護法と会計検査院)
  特定秘密保護法に基づき秘密指定された文書に関して、会計検査院から要請があれば提供するように定める通達を内閣官房が昨年の12月25日に関係機関に発出していたとのことです。
  通達内容は、法案提出の際に整理しておくべき課題であったとともに、2年以上にわたって放置された事態は、安倍政権の会計検査院軽視の姿勢の現れ以外の何物でもありません。
  これほど長い間適切な措置が執られず、検査院からの指摘を受けて後手の対応となったことについて、菅官房長官に説明を求めます。

(決算に関する各目明細書の作成)
  決算審査においては詳細かつ明確なデータが必要不可欠なものであることは論を待ちません。
 平成26年度決算では、一般会計における歳出決算額98.8兆円に対して、特別会計における歳出決算額は、390.2兆円となっていますが、両会計の間には重複額などが含まれているため、歳出の純計額は226.7兆円となっております。
  両会計間における重複額の存在などにより、各施策における予算額や執行額が非常に分かりにくいのが現状です。
 このような決算審査における問題点の解決の方法として、かねてより決算書の各目明細書を作成することを提案させていただいているところでありますが、その必要性は政府においても共有されていると認識しております。
  総理は昨年の本会議で「実務的な問題も含めて検討を行っているところ」と答弁されていますが、決算の各目明細書の作成と国会への提出に向けた具体策の検討状況について、お述べ下さい。
 
 
(旧外地特別会計に係る決算処理の放置)
  政府が戦前に設けた旧外地特別会計のうち、終戦間際の昭和19、20年度の2年度分の決算が、約70年を経て本年1月4日、今国会に提出されました。
  当該決算は、当時の予算書、日本銀行の国庫金出納記録等を踏まえて可能な限り記載したにすぎない、いわば不完全なものであります。実際に決算書の中身を見ましても、歳入、歳出の合計額については記載があるものの、歳入、歳出ともに各科目の内訳についてはほぼ空欄となっており、そもそもの妥当性、適正性を検証することはできません。
  その取扱いについては、決算委員会においても協議いたしますが、通例の「是認」とは決し難い案件であります。
  両年度決算書の不備に関する政府の説明責任について、麻生財務大臣、お答えください。

(おわりに)
 質問を終えるにあたって一言申し上げます。
 少子高齢化による、人口減少と税収減という難問への答えは大変困難なものであります。現在、政府のいう景気回復の実感は全国民に共有されておらず、また地域間格差も生じています。このような中、国や行政の支援が全国民・全世代に実感できるような予算編成が求められています。そのためには公平・公正な富の分配や税の再配分が極めて重要と考えます。
 政府が編成した予算が適正に執行されているかを監視し、財政民主主義を推し進めるためには、本院における決算審査の充実と、次年度予算への反映が必要不可欠であることを指摘して、私の質問を終わります。                    

以上


2016年1月20日

参議院代表質問 参議院議員 難波奨二

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