2016年1月7日

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1月7日 参議院本会議代表質問 参議院議員 前川清成


参議院本会議代表質問

平成27年1月7日
民主党・新緑風会
参議院議員 前川清成

 参議院奈良県選挙区の前川清成です。
  質問に先立ち、北朝鮮の核実験に断固抗議します。そして、政府の対応を総理に伺います。

 さて、新しい年、参議院での最初の質疑です。先ず総理にお尋ねしなければならないのは、臨時国会のことです。
  憲法第53条は、臨時国会に関して、「いづれかの院の総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。」と定めています。
そして参議院においても、昨年10月21日、総議員の4分の1を越える84名の議員が議長宛に召集要求書を提出しています。それにもかかわらず、何故、昨年、臨時国会の召集を決定しなかったか、そして、それは、いかなる憲法解釈に基づくのか、お答え下さい。

  安倍総理が「憲法」と「法の支配」に不誠実ではないか、安保法案を巡っても大きな議論となりました。
  集団的自衛権の行使は憲法に違反すると歴代自民党政権も繰り返して述べており、戦後70年間確定した憲法解釈です。ところが、安倍内閣は一昨年7月1日、この憲法解釈を閣議決定だけで、つまり自分たちだけで変えてしまいました。集団的自衛権を行使したいが、憲法が邪魔になる、そこで、憲法によって縛られているはずの国家権力自らが、自分たちだけで憲法の意味を変えて、その縛りを緩めてしまう、もし、これが罷り通れば憲法は存在しないのと同じです。
  私は、その立場に立ちませんが、集団的自衛権の行使が必要ならば、先ずはこの国会で正々堂々と憲法改正を提案するべきです。
  そして国会で議論を尽くした後、主権者である国民の国民投票を仰ぎ、国民もまた集団的自衛権が必要との判断を示したなら、改正された新しい憲法の下で、安保法案を提出する、これが「法の支配」です。
  総理、安保法案は順番も間違っていたとお考えになりませんか。
 
  総理は、選挙前はいつも「経済優先」と唱えながら、2013年の参議院選挙が終わるや、特定秘密保護法、2014年の衆議院選挙が終わるや、安保法案を強行採決しています。
  総理は、4日の年頭会見で、夏の参議院選挙においては憲法改正を訴えると述べておられますが、現行憲法の、どこを、どのように改正しますか。
  また安倍政権は公明党との連立を維持しながら憲法改正を目指すのですか。あるいは、「おおさか維新」と共に憲法改正を目指すのですか。
  総理に伺います。

 憲法が国家権力を制限するのは、国民の自由や平等を保障するためですが、昨今のヘイトスピーチは少数者に対する露骨な差別です。そこで、昨年5月、私たちは、ヘイトスピーチを禁止する議員立法を提出しました。法務委員会における質疑では与党議員もヘイトスピーチを野放しにできないと述べています。そう言いながら、与党は法案の採決を拒否したため成立には至っておりません。
  総理、何を躊躇っておられるのですか。
  今国会でヘイトスピーチ禁止法を成立させて、国家の品格を示すべきではないでしょうか。
  我々の議員立法に修正すべき点があれば、ご指摘下さい。

 さて、今般の補正予算には、アベノミクスの効果が及ばないことを理由に、かつ個人消費を下支えする名目で、低所得の高齢者約1130万人に対して、1回限り、一律3万円を支給する「臨時福祉給付金」が盛り込まれています。
  しかし、アベノミクスの恩恵が及んでいないのは高齢者だけですか。地方に、中小零細企業に、全ての働く人々に、とりわけ非正規労働者に、ひとり親家庭に及んでいますか。
  総理に伺います。

 また1回限りの支給が消費を下支えするのでしょうか。
  2009年、麻生内閣は総額2兆円を「定額給付金」としてバラまきましたが、内閣府の家計調査を踏まえた分析によると、そのうち消費に回ったのは25%に留まっており、個人消費を僅か0.2%押し上げたに過ぎません。「太平洋に目薬」でした。
  麻生財務大臣、臨時福祉給付金としてバラまく3600億円のうち、どれだけが消費に回るのか、そしてどの程度GDPに寄与するのか、結論だけでなく、その根拠も併せてお答え下さい。

 財政法第29条は、「特に緊急に必要となった経費を支出するため補正予算を作成することができる」と定めています。
  補正予算に盛り込んでまで、大急ぎで、今年5月、6月にバラまく理由は7月の参議院選挙対策ですか。
  総理、お答え下さい。

 「参議院選挙対策」と言えば、軽減税率にも言及せざるを得ません。
  低所得者対策を名目に、軽減税率の導入が与党間で合意されましたが、例えば、飲み水に関して、高所得者はペットボトルのミネラルウォーターを購入することが多いと思います。低所得者は水道の水で辛抱しています。それにもかかわらず、ミネラルウォーターは8%、水道水は10%ですか。
  何故軽減税率が低所得者対策になるのか、財務大臣に伺います。

 食品全てが対象ならば、1匹100円のサンマも、10グラムで何万円かするキャビアも軽減税率です。高所得者は、食費に関しても、より多くのおカネを割くことができます。軽減説率を食品全般に適用する結果、高所得者の方がより多くの恩恵を受けます。軽減税率は低所得者対策になりません。
  そこで、総理に提案します。
  低所得者に限って、直接現金を、継続的に支給する、いわゆる「給付付き税額控除」を実施してはいかがでしょうか。既にアメリカ、イギリス、フランス、スウェーデンなど10ヶ国以上で採用されています。より少ない予算で、効率的な低所得者対策になります。継続的に給付することで個人消費も下支えします。

 麻生大臣、軽減税率の対象として食品が選ばれたのは、何故ですか。毎日の暮らしに欠くことができないからでしょうか。
  それならば、地方では、自動車がないと、仕事にも、買い物にも、病院にも行けません。自動車やガソリンも生活必需品です。
  そのガソリンには消費税のほかに揮発油税、地方揮発油税、石油石炭税が課せられており、ガソリン価格を1リットル120円で計算した場合、その合計は50.7%にも達します。
  キャビアが8%で、おじいさん、おばあさんが病院へ通うためのガソリンには消費税と併せて約6割です。
  麻生大臣、キャビアとガソリン、どちらが命を支えていますか。

 以上の通り、軽減税率に関しては、何が公平、公正か、一義的に「線引き」することは不可能です。その結果、またしても各業界団体の陳情合戦を招き、癒着と、利権の温床になります。
  総理、それでも軽減税率ですか。 

 地方では生活必需品とも言うべき自動車に課せられる自動車取得説に関して、2013年、与党税制改正大綱では消費税を10%に引き上げる際に廃止することが明記されました。
  しかるに、今般の与党合意では「自動車取得税」は廃止されるものの、地方財源への配慮を名目に「環境性能割」なる新税が、やはり自動車取得時に課せられます。これでは名前が変わっただけです。地方財政にも配慮することは当然ですが、自動車取得税は総額1096億円です。
  これに対して、消費税が8%から10%に引き上げられる際、地方消費税も1.7%から2.2%へ、地方交付税は1.4%から1.52%へと引き上げられます。
この結果、地方の財源は2兆1000億円も増加します。したがって、名前を変えて自動車取得税を存続させる必要はありません。
  総務大臣にお尋ねします。

 昨年、国内の新車販売台数は504万台と、リーマンショック直後の水準まで落ち込みました。消費税が10%に引き上げられた後、さらには生産年齢人口の減少が今後も続く中、国内の新車販売台数についてどのように予測しておられますか。
  万一自動車産業までが空洞化してしまったなら、我が国の経済、雇用に与える影響は極めて甚大です。名前を変えた「新自動車取得税」を導入するべきではありません。
  経済産業大臣の見解を伺います。

 軽減税率が導入されたなら、1兆円程度の税収が失われます。その穴埋めには、社会保障を充実し、低所得者対策に充てることが予定されていた4000億円が使われますが、軽減税率が低所得者対策にはならないこと、既に述べた通りです。
  総理、本末転倒ではないですか。

 そして、まだ足りない6000億円はどうするのでしょうか。
  財務大臣、財源をお聞かせ下さい。

 総理、そもそも何のための消費税引き上げだったのでしょうか。 
  2012年、民主、自民、公明3党は、消費税を引き上げ、その増税分は全て社会保障費に充てると合意しました。
  少子高齢化が進展した結果、社会保障の財布は毎年50兆円も赤字を積み上げています。このままでは年金も、医療保険も、介護保険も続けてゆくことができなくなります。
  極一部の富裕層は、年金がなくても、医療保険がなくても困りません。
  これに対して、大部分の国民にとって、年を取っても、病気になっても、失業しても、安心して暮らしていくために社会保障は大切です。大切な社会保障を守り、そして充実させるための消費税引き上げでした。軽減税率で税収が浸食され、その分、社会保障費が削られたとき、最も困るのは低所得者です。
  総理、社会保障の持続可能性と、そのための財源についてにご説明下さい。

 併せて、総理に提案があります。
  消費税引き上げに当たって国民の納得が得られないのは、せっかくの消費税が何に使われているか分からない、つまりは税金の使い道に関する不信があるからではないでしょうか。
  ついては、消費税として支払った分が、そのまま社会保障として返ってくることがガラス張りになるよう、消費税10%分全額を社会保障特別会計に組み入れて、他の一般財源と区別してはいかがでしょうか。

 最後に、もう1度、総理にお尋ねします。
  2012年11月14日、当時の野田総理は党首討論において、消費税を引き上げる、つまり国民に痛みをお願いする以上、国会議員も身を切るべきだ、2013年の通常国会で議員定数を大幅に削減すると約束するなら、衆議院を解散してもよいと提案し、安倍総裁は議員定数の大幅削減を約束したため、野田総理は約束通り11月16日に衆議院を解散しました。
  既に3年が過ぎています。私は総理を「ウソつき」と言いたくありません。
  何時までに約束を果たすのか、お答え下さい。
なお、答弁次第では、再質問の可能性があること、付言し、代表質問と致します。


2016年1月7日 1月7日 参議院本会議代表質問 参議院議員 前川清成

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