民主党・新緑風会の江崎孝です。
会派を代表して、「地方税法等・地方交付税法等の一部を改正する法律案および地方財政計画」について質問いたします。
我が国は人口減少という大きな波に襲われ、ただでさえ深刻な地域の衰退がさらに加速するという危機意識のもと、昨年夏突然、地方創生が叫ばれ、年末には「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」が閣議決定されました。そして問題の多い15ヶ月予算が組まれ、地方行政にとってふってわいたような「まち・ひと・しごと創生事業」への政府の加熱ともいえる政策誘導が進められています。周知のように人口減少は突然、始まったわけではありません。少子高齢社会の到来は数十年前から不安視され、1990年台後半には生産年齢人口の減少が始まり、2008年には我が国人口がピークを迎えるに至っています。しかし、時の政府はそれまでの公共投資中心の再配分構造を見直さずに、市場原理、競争主義の名の下、大店舗法の改正や規制改革による地方の公共交通の劣化などを生み、ますます地方を疲弊させたのです。政権を長期に担った自民党の責任は極めて重いと言えます。
このように考えれば、現在の危機が、付け焼刃的な「まち・ひと・しごと創生事業」などで解決できるものではないと断言できます。むしろ自治体消滅の危機のみをあおり、もって地方にその責任を押し付け、選挙対策的な予算バラマキ事業に自治体を追い詰める今のやり方は言語道断であり看過できるものではありません。 |
| まず、地方税法の改正についてお尋ねします。 |
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安倍政権の法人税実効税率を引き下げる方針のもと、地方税である法人事業税の所得割が引き下げられます。黒字企業はこれで減税されますが、一方でこれでは地方税の減収となるため、その見合い分として外形標準課税の付加価値割を引き上げるとしています。
増税分の内訳をみると、現行0.48%の付加価値割を来年度0.24引き上げて0.72%に、28年度以降さらに0.24引き上げて、今の倍の税率の0.96%にするとされています。
承知のとおり外形標準課税分は収益に関係なく課税されます。その中でも付加価値割は法人経営の中で給与報酬を多く払っている法人ほど高くなる性質を持っています。労働集約型の法人つまり雇用者を多く抱える法人ほど納税額が高くなるのです。この改正では労働集約型の事業で収益率がそれほど高くない法人ほど増税になります。
そんな典型例が日本郵政株式会社です。日本郵政のユニバーサルサービスの展開は、正に人が担っています。同社の試算によると、来年度が30億円、再来年度以降は65億円の増税となります。
国内企業のうち、黒字はおよそ3割、その多くは大企業であり、赤字企業の多くは中小です。そして地方の企業の多くが中小企業です。
地方で、収益が上がらない中でも頑張って、人を多く雇っている法人ほど増税になる。
これは地方に雇用を増やすという「まち・ひと・しごと創生事業」の方針とはかけ離れています。中小企業がさらに萎縮していくに違いありません。
このような国の法人税減税策は許されるものではありません。特に地方税も巻き込んだ法人税減税のやり方はさらに地方を疲弊させることでしょう。高市総務大臣の見解を伺います。
また政府税調の議論では、課税ベースの拡大のため資本金1億円未満の中小企業にも外形標準課税制度の導入が検討されたと承知しています。今回は見送られたものの、今後引き続き検討を行うようです。資本金1億円未満へ適用対象を拡大すれば、地方の中小企業の倒産、廃業は間違いなく増大するでしょう。地方税を所管する総務大臣としての見解を伺います。 |
| 続いて平成27年度地方財政計画とそれをベースとした地方交付税法改正案について質問いたします。 |
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私はこれまでことあるごとに、地方財政計画は原点に戻るべきだと主張してきました。それは三位一体改革以降の地方の財源確保のため、パッチワーク的な財政対策が重ねられてきたからであります。平成19年度の「頑張る地方応援プログラム」、翌年度の地方再生対策、21年度以降の別枠加算と地域雇用対策に始まる歳出特別枠、一昨年度の「地域の元気づくり事業」に昨年度の「地域の元気創造事業」など。財源獲得のための折衝のために必要な方策だったのでしょう。そして今度は、待ってましたとばかりに地方創生事業となりました。
本来、地方財政計画の本旨は、地方交付税法第3条にもとづいて地方の行政について「合理的、かつ、妥当な水準を維持する」ことであり、標準的行政水準の経費とこれに見合う歳入を見込んでのものであるはずです。つまり普遍的な経費を確保するものです。
財源保障のために、国が場当たり的に政策をつくり、その経費に無理にあてはめる財源を積み上げるということを強めれば強めるほど、地方財政計画の本旨から逸脱します。
地方自治制度そのものも揺るがしかねません。今計画はさらにその色彩が強まったものと危機感を抱かざるを得ないのです。
まず地方交付税制度の大転換とも言える法定率の改正です。これほどの大改正が秘密裏に行われたことは極めて問題と考えます。秘密に行った理由はいったいなぜか。これほど重要な改正は、地方自治体の意見も含め検討を進めるべきものであり、なぜ「国と地方の協議の場」の活用などを行わなかったのか、総務大臣の見解を伺います。
今回の見直しでは、法人税の法定率を現行の34%から33.1%に引下げるとともに、所得税の法定率を32%から33.1%に引き上げ、たばこ税を交付税対象からはずし、酒税が50%に引き上げられます。これにより、法定率分として900億円の増額が見込まれています。わずかですが確かに増収となります。しかしこれで良しとするにはいきません。
1954年の地方交付税制度発足時から、法定率の原資に求める性質として「伸びるという伸張性と安定性」にありました。これは元自治省事務次官の石原信雄さんが「新地方財政調整制度論」で述べていますし、この考えはこれまで一貫していたはずです。しかし総務省は今回の法定率改正理由を、「安定性の向上と充実にある」として伸張性には触れていません。なぜ今年、あえて伸張性が省かれたのでしょうか。総務大臣、お答えください。
都市と地方の税の偏在性が問題になり、平成20年度に地方税である法人事業税の一部を地方法人特別税として国が召し上げ、地方法人特別譲与税として国が配分する制度が創設されました。東京都などの一部団体が反対したのは記憶に新しいものです。
地方自治体の課税権を否定し、新たな国税を誕生させたことには問題があります。
そもそも、地方六団体は、「地方の財源を地方間で取り合う制度をやめるべきだ」と主張し、地方法人特別税制度を廃止した上で、消費税引き上げの抜本改革と併せて、地方税である法人住民税の一部を国税化し、代わりに安定性の高い国税の消費税を地方に移すという「税源交換」を要求しています。地方税の偏在性を解消し、安定性の高い消費税を交付税原資とするもので、総務省も異論はないはずでした。
しかし今回のように国税である法人税と所得税の原資配分率の取り替えを「安定性向上と充実」が図られたとしたのでは、将来の消費税増税時において税源交換議論ができるでしょうか？
地方が主張する税源交換の要求を総務省自らが放棄したともとれますが、いかがですか。
さらにいえば、本来交付税原資ではない地方税である法人住民税を、わざわざ国税化して交付税原資を充実させておきながら、一方で、国の法人税の法定率を引き下げることは矛盾しています。法人税の法定率を引き下げる必要は無かったのではないですか。合わせて総務大臣の見解をお聞きします。
法人税が持つ、景気が良くなれば税収が伸びる、つまり伸張性が高い財源であるという特性も重視すべきです。一方、雇用の低賃金化が進行し、生産年齢人口も減少するなど、むしろ所得税の伸びしろの方が容易に期待できません。
財務省にしてやられた感がありますが、所得税、法人税どちらかを重視するのではなく、地方自治体の意見を聞きながら、伸張性、安定性双方の重要性を踏まえた対応をすべきではなかったでしょうか。総務大臣にお尋ねします。
今年1月30日の経済財政諮問会議で4人の委員連名で出された説明資料では、「都市圏以外における地域経済に占める地方行政サービス、社会保障サービスの割合は、需要面で40%、供給面で25%を超えており、この分野の活性化が地域経済の再生に不可欠」とされています。つまり新たな産業を起こすよりも２つの対人サービスの充実の方が、即効性もあり、不可欠ということです。
だとすれば「まち・ひと・しごと創生事業」が、地方行政と社会保障という2大公共サービスの活性化につながることが、重要となりますが、どうでしょう。答は否であり、さらに地方が疲弊しかねない問題多い事業であると指摘せざるを得ません。なぜなら、同事業に係る普通交付税の算定に、標準的な財政需要ではなく、職員数の削減率、人件費の削減率といった行革算定が組み込まれているからです。
より人を減らし、より賃金を安くした自治体の方がより多く交付税を貰えるとは話しになりません。
雇用削減では、人的サービスである2大公共サービスの活性化には繋がりません。地方の雇用を30万人増やすことを目標にしている「まち・ひと・しごと創生事業」の方針とも全く持って矛盾します。
行革算定は地方の縮みを加速させ、何のプラスにもなりません。すぐに中止すべきだと考えますが、総務大臣のお考えをお聞きします。
「まち・ひと・しごと創生事業費」の算定による政策誘導は極めて問題ですが、どうしても進めるのであれば、成果指標の一つである若年者や女性の就業率を、正規雇用の就業率に限定するなど、良質で安定的な雇用を評価する仕組みを取り入れるぐらいの覚悟が必要だと考えますが、総務大臣の見解を伺います。
このような矛盾多い算定に血道をあげるのではなく、昨年、安倍総理が施政方針で触れた地方の公共交通の再生のような経費に、むしろ光をあてるべきです。
今日、地方の疲弊の要因の一つが交通問題です。全国あらゆる地域で交通政策の重要性が一段と増しています。地方で普及率が高い軽自動車を増税しておきながら、一方で、一昨年、成立した「交通政策基本法」に地方自治体の責務を明記したにもかかわらず、公共交通再生経費を普通交付税として財源保障しないなどはまさに地方いじめではないですか。総務大臣、お答えください。
以上述べてきたように、今回の税改正法案や地方財政計画は、地方の現実を無視し、国の主張を前面に押し出すものとなっています。
本計画では国の一般会計からの繰り入れ額は確実に抑制されており、公債費の減少をはじめとした地方の努力分で捻出した財源がなければ、一般財源は間違いなく減額となっていたはずです。そもそも交付税総額確保に地方の努力が伴うとは言語道断です。ナショナルミニマムの財源保障の責任の所在はいったいどこにあるのでしょうか。総務大臣の見解を伺います。 |
| 地方創生によって一時的・臨時的に地方財政が充実したかのようにみえますが、今後の政府の財政再建議論など状況次第では、地方財政の大幅削減にいつでも転換できる内容になっていることこそが問題です。
地方財政計画の本旨に立ち返り、歳出特別枠や「まち・ひと・しごと創生事業費」など一時的・臨時的な経費に依存することなく、地域交通をはじめ地方自治体に必要な普遍的な財源を確保し、そこから組み立て直す作業を怠れば、地方の再生など夢物語となることを指摘して私の質問を終わります。 |