2008年7月31日

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週刊文春 各界著名人が選んだ私だけの「世界遺産」 より抜粋

 私の「世界遺産」 岡山県・長島

 父との思い出を辿る人もいる。岡山が故郷である参議院議長の江田五月さんは、岡山県・長島を挙げた。

 「長島には国立ハンセン病療養所が二つあります。患者の皆さんは、国の政策によって親兄弟から引き離され、長年偏見に耐えながらの生活を余儀なくされてきました。しかし自ら立ち上がって国に訴訟を起こし、ハンセン病問題解決のために制度も変わりました。長島は長い闘いの歴史を見つめてきた島なのです」

 本土からすぐなのに、島への交通手段は昔、櫓漕ぎ舟だけだった。そこで人間回復の証としての橋をつくろうと「長島大橋」が架かって二十年。島と地域社会とに交流が生まれ、入所者はハンセン病の歴史の語り部として、子どもたちに史実を語り継いでいる。

 「私がはじめて長島を訪れたのは小学校高学年の頃。めったに家に帰らない父(三郎氏)に連れられてでした。当時は患者の皆さんと交わることはまかりならんと、施設内に入る時には石鹸で手を消毒し、白衣を着て入る決まりだった。父はそんなこと何もせずに、どんどん患者の中に入っていった姿が印象的でしたね。
 今も年二回は島を訪れますが、地域社会にひらかれた島の様子を見る度に、ようやくここまで来たなという感慨を深くします」

2008年7月31日発売 「週刊文春 8月7日号」掲載


2008年7月31日

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