1970/02/21

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63 衆議院・予算委員会


○中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 総括質疑を続行いたします。江田三郎君。

○江田委員 いま中国問題が非常に重大であるということは、あらためて言うまでもないことであります。総理は、日中の問題を七〇年代の問題だと言っておられますけれども、やはり七〇年の問題という考え方をされてしかるべきではないかと思うのです。最近の米中の会談その他から見まして、あるいはアメリカの経済界の動きなどを見ましても、やはり日本としてももっとテンポを速めて、七〇年代ということでなしに、七〇年の問題として考えるべきじゃないかと思います。

 そこで、こういう問題の解決には、双方の信頼感というのが大事なことは申すまでもないわけであります。そういう観点からしますと、総理が選挙中に日中問題に対して発言されたこと、これもたびたび変わりましたが、選挙が終わってからの発言と相当の食い違いがあるわけであります。たとえば、選挙中には、大使級会談の場所にいたしましても、中国側の都合のいいところでいいんだ、その時期は早ければ早いほどいいということを大分で言われている、あるいは水戸におきましては、日中関係の改善は双方で努力する問題だが、まず日本側で努力をする必要がある、こういうなかなか前向きの発言をされたのでありますが、その後、選挙が終わり、国会が始まりますと、どうも後退という印象が強い。きのう小坂君に対する答弁などを聞きましても、何か抽象的な、ことばでは前向きにも解釈できるような点がありますが、しかし、具体的な問題になると、小坂君が牛の問題から飛行機の問題からいろいろ触れたけれども、一つも前向きにはなっていないのであります。

 こういうふうに総理の発言が変わってきたのは、何に基づいておるのか。私はやはり台湾の抗議あるいは圧力というものを考えざるを得ないのであります。この点につきましては、たとえば一月二十四日の日本経済新聞によりますと、台北の二十三日発のロイター電として、「日本政府が国府に対して中国と大使級会談を行なうつもりはないと確約したと述べ、さらに日本は中国との貿易に輸出入銀行の資金を使用することはないだろうと語った。」というようなことが出ておる。あるいはその他の現地の新聞、ニュースを見ましても、同じようなことが出ておるのであります。そうして一月十六日、これは朝日新聞でありますが、これを見ますと、「板垣大使からの報告によると、蒋総統は、わが国が中国との政府間接触を考慮していることに言及し、慎重の上にも慎重を期待するという国府側の意向を表明した」これについては外務大臣が総理に報告して、総理も意見一致を見た、こういうことも出てくるのであります。あまりにも台湾というものの圧力、こういうものが、少なくともニュースの面から見ると、出過ぎてくるわけなのであります。これは私どもは真偽のほどはわかりませんけれども、たとえば、共同声明において台湾の緊急事態の問題が出た。これにしても日本側からむしろこのことを希望したんじゃないかということさえわれわれは聞かされるのであります。私は、総理があくまで自主的判断の上に立ってやられたと思いますが、しかし、先ほど読み上げた新聞などを見ますと、どうも台湾の圧力というものがわれわれには強くのしかかってくるのでありますが、これについての総理の御見解を承りたい。

○佐藤内閣総理大臣 ただいま御指摘のように、仲よくしていく、つき合っていくという、それには相互の信頼、同時にまた相互の理解が必要でございます。ただいま江田君は、相互の信頼が必要だと言われたが、これは私は同時に理解も必要だ、こういうことをつけ加えていらっしゃるのだと思います。

 そこで、ただいま中華民国政府、これは政府といたしましても、サンフランシスコ条約以来の正式に承認した政権でありますし、これとの関係は私どもとくと考えなければならない。また、中国大陸自身に北京政府のあることは、これは厳然たる事実ですから、中華民国もそこまでは力は及んでおらないのですから、これははっきり申し上げまして、現実を無視しはしない。そこで問題になりますのは、やはり何といっても中国大陸というものは大事なんだ、そういう意味から、もっと積極的な、前向きな姿勢でこれと取り組め、かように御指摘になりますことは、これは私も、同様、同感でございます。ただいま申し上げておりますように、ただいまの状態におきましても、いままでの質疑応答、さらにまた施政演説等でもその関係は明らかにしたつもりであります。そこで、私はもう一つつけ加えておきたいのは、先ほども韓国、朝鮮半島の問題について触れられました。しかし、私どもが承認しておる国と承認しない国との間に差等のあるのはやむを得ないじゃないかという話をいたしました。どうも中国の場合に、中華民国と北京政府との関係、これは支配しておるその地域あるいは人口等の点で問題にならないじゃないか、かように御指摘になりましても、私どもは一たんこれを承認し、国際的な親交を結んだ関係がありますので、これを容易に変更するという、そういうわけにもいかないものがあります。したがって私は、こういう事柄に触れないで、とにかく仲よくできる方法はないもんだろうか、かように実は思っております。わが党の大先輩、松村謙三さんがお出かけになる、あるいはわが党の古井君がその前にも出かけられる、こういうことで、ただいまこれらの二人の方が訪中されるその機会に、私どもの考え方を十分理解されるようにしてもらいたいもの、そういうことをよく説明もし、理解もされていただきたい、かように実は思っております。

 いろいろ具体的な問題はございますけれども、それらの点は、また後ほどそれぞれのお尋ねに応じて、お答えしたいと思います。

○江田委員 この松村さんなりあるいは古井さんが出かけられる、これには相当おみやげが預けてあるのだ、いまの総理の発言からいきますと、そういう含みに受け取れましたが、具体的な内容はよろしいけれども、そう解釈してよろしいか。

○佐藤内閣総理大臣 そのおみやげということが一体あるかないか、これは別として、私どもが仲よくしたいという、いわゆる敵視政策というようなものでないことだけは、はっきりさせたいのです。したがいまして、私は、日中貿易の拡大等についてはあらゆる努力をしたい、かように思っておりますので、その点を申し添えておきます。

○江田委員 それは抽象的なことになると、たとえば政経分離は近ごろ言ってないじゃないかとか、あるいは中国の対日三原則は反対ではないというようなこともきのう言われておるわけでありまして、なかなかそういうことばではどうにもならないので、具体的なことが必要になってくるわけです。

 そこで、いま総理は貿易の拡大を望んでいるということでありますが、その問題になると、どうしても吉田書簡あるいは輸銀資金の問題が出てくるわけでありまして、昨年のこの予算委員会におきましても、私はこのことを相当強く総理に要請をいたしまして、蒋介石総統のほうは、吉田書簡は中日平和条約の補完文書であるというようなことを言っているけれども、それはどうかということについては、あなたは、そうではないということも言われました。だから、そうこだわる必要はないと思うのでありますが、どうもこの問題になるというと、ケース・バイ・ケースということで、いつも逃げておられるのですが、それじゃ、ケース・バイ・ケースということは具体的にどういうことなのか。たとえば倉紡のプラント、これは輸銀資金が使えた。それならばニチボー、いま名前は変わっておりますが、ユニチカですか、これが同じようにプラントの輸出の申請をされた場合には、これは当然許可されるものと見ていいですか。

○佐藤内閣総理大臣 いままでは、それは断わっております。

○江田委員 いままでは断わっていることはわかってます。しかし、ケース・バイ・ケースということはどういうことなのか。ケース・バイ・ケースということは、あなたの得意の、事前協議についてはイエスもありノーもあるということと同じように、イエスもありノーもあるということだろうと思うのです。ノーばかりじゃないんだろうと思う。そこで、そういうものが具体的な条件できまってこなきゃならぬ。だから、倉紡の条件と同じようなユニチカの条件が出てきた場合には、これはケース・バイ・ケースからいえば、当然許可しなければならぬという、論理的な必然性を持ってくるわけなんです。あるいは日立の貨物船の問題もあります。だから、そういうケース・バイ・ケースということは、ただことばだけで、オール・ノーということなのか、そうでなしに、こういう条件の場合にはイエスということになるのか、それならそれでその基準というものを示してもらわなければ、いままでのようにケース・バイ・ケースだ、しかし内容はオール・ノーだということになれば、先方と貿易の商談のしようがないということになるわけで、あなたが貿易の拡大を望むと言うんなら、当然このことに前向きになってこなければ、先ほど来の発言と関連しないことになりやしませんか。

○佐藤内閣総理大臣 江田君も御存じのように、そういう点がケース・バイ・ケース、いわゆるケース・バイ・ケースできめる、こういうことでございますから、具体化しないと、こういう場合はどうだ、こういってお尋ねになりましても、そういうような仮定の状況で答える筋のものではない。吉田さんが言われたように、仮定の問題には答えませんというようなことは私は申しませんが、ケース・バイ・ケースというものはそういうものじゃなくて、やはり具体的な問題について、そのときに判断するということでございます。

○江田委員 ユニチカの問題なんかは、具体的にはっきりしているじゃないですか。これは、あすでも申請されたら、どうしますか。

○佐藤内閣総理大臣 そこで、先ほども答えたように、いままではお断わりしておりますと、はっきり申しております。

○江田委員 いままではそうだったんだ。少なくともあなたが、古井君なりあるいは松村長老が向こうへ行かれるについては大いに期待しているんだと言う以上は、何かそこに、私が表現したおみやげということばは適切でないとしても、何かがなければならない。そういうことについて私は、いまのケース・バイ・ケースをここで具体的にそれ以上言えないというんなら言えなくてもよろしいが、しかし、そういうことについても配慮があるということだけは考えてよろしいか。

○佐藤内閣総理大臣 先ほどから非常に抽象的な私の気持ちをそのまま申した、これじゃどうも不十分だ、そういうところでもっと具体的に話をしろというのが、ただいまの江田君の御意見だと思います。私は、先ほど来申し上げておりますように、古井君が出かけるにいたしましても、ただ貿易拡大を期待すると言うだけで、そう簡単にものごとが運ぶとも思いません。いろいろそこらに折衝の困難さがあるんじゃなかろうか、かように思っております。しかし、そういうものが具体的にどういうように発展するか。これは政府もやはりそういう点で、具体的な発展ぐあいで考え方をきめるべきじゃないか、こういうことを申しておるので、ただいまの状態で、とにかくわからないとおっしゃるのは、全くわからないのがほんとうだろうと思います。これは私がわかるように割り切った話をしておりませんから、そのとおりでございますけれども、それより以上、ちょっと申し上げることもいかがかと思っております。

○江田委員 私の聞くところによると、古井さんは相当不満を述べておられたように聞いたのでありまして、どうも団十郎もいいですけれども、もう少し国民の前にものを言うという態度をおとりになったらどうですか。あなたが議会制民主主義だ、民主主義擁護ということを言われるなら、国民にもっと語りかけるという態度が、何よりも必要だろうと思うのであります。

 そこで、問題を変えまして、例の国連の重要事項指定方式については、これはことしは態度を変えられるお気持ちはありますか。

○佐藤内閣総理大臣 ただいまいろいろ慎重に考えております。

○江田委員 米中会談の成り行きを待っているということですか。

○佐藤内閣総理大臣 必ずしもそういう意味ではございません。しかし、私どもは、いままでの提案国あるいはその節、代表国として説明するとか、こういうような点については、含めて、これからどういうように取り扱うべきか、ただいまの段階、まだ態度を決定するのは早い、さように思っておりますので、十分慎重に考えるつもりです。

○江田委員 先ほども触れましたように、選挙中の総理の発言は、こちらから何かやる番だということを言っておられるわけです。それはアメリカの態度を待つということでもないでしょう。あなたの御自慢の、大国としてもっと自主性を持って、こちらから積極的にやる。だから、たとえば大使級会談にいたしましても、ただ大使級会談を先方が望むならやりましょうということでは、こちらから積極的にということじゃないので、大使級会談をやるならば、どういう原則でやるんだということがはっきり出てきて初めて話が進むわけでしょう。たとえば、中国の対日三原則を認めるという立場もあるでしょう、あるいは平和五原則という立場もあるでしょう、あるいは日本政府も参加してつくったバンドン十原則という立場もあるでしょう。私は、そういうことをきちんとすることが、こちらからという積極的態度だと思うのでありまして、こういう問題について、ここでこれ以上の押し問答はしませんが、もっと国民の前によくわかるように、前向きの態度をとってもらいたいと思います。

 そこで、私は内政問題に移りたいと思うのでありますが、……

○佐藤内閣総理大臣 あえて答弁は要らないというような言い方で、きめつけられた判断でございますが、私の選挙中の態度と今日の態度が非常に変わった、こういう印象を述べておられます。しかし、私は、みずから考えながら、変わったと思っておりません。ただいまも大使級会談、これが双方で納得がいくならば、そういうまた適当な場所――どこでなければならぬとは、かように申しませんが、そういうこともすべきではないかと思っております。私は、商社の五人を釈放し、さらにまた一人の新聞社の方、鮫島君を帰されたこと、これを高く実は評価しております。あと七人残っておる。これらも同じようにぜひ解放してほしいと思うし、私どもが政府間で交渉するようなのは、こういうような点に相互の誤解があり、相互に不安を持つ、こういうようなことをなくすることがまず第一ではないか。先ほど、江田君も相互の理解が必要だということを言われましたが、私は、そういう立場でものごとを進めていかなきゃならないと思います。

 そこで、ただいまのような条件、これこれの条件を了承しろ、こういうような話でなしに、その政府間で話が始まる、そういうこと自身に非常な期待がかけられるのではないだろうか。私は、米中間のただいまのワルシャワ会談というものは、直ちに成果を生み出すとは思いません。いままでは米中両国の主張は並行線だった、かように思います。しかしながら、その主張が並行線であるにかかわらず、とにかく話し合いは行なわれておる、そういう雰囲気こそ国際緊張を緩和するゆえんではないだろうか。そういう意味で、私は歓迎すべきじゃないかと思う。そういう意味で、私どもも努力すべきではないだろうか、かように思います。

 これはもうすでに北京政府自身がただいま抑留した者、その六人を帰した今日でありますから、政府側としてさらに積極的な接触を保ちたいという気持ち、これは率直に申し上げて可能かと思います。しかしながら、いままでのところ、他の外交、第三国における接触等では、なかなか門戸はかたいというのが現状でございます。しかし、私どもは、なお忍耐強くぜひとも政府間の折衝が始まることを実は期待しております。そういう意味で政府を鞭撻されることもたいへんありがたいことですが、そういう機会をつくることについても、御協力を願いたいと思います。

○江田委員 この問題はこれ以上、時間もありませんから、触れようと思いませんが、ただ一言、言っておきたいのは、アメリカの場合には、政府が主導権をとって米中の関係の改善をはかろうとしておる。そうしていま民間がこれに乗ってこようとしておる。そうして民間の経済界は、あるいはパンアメリカンの問題もありますが、日本にある合弁会社などを通じて、積極的に動こうとするような姿勢を取り出す。ところが、日本の場合は逆じゃないでしょうか。民間がいつも耐え切れなくなって先頭へ立つ、政府がそのあとから、なかなか容易に腰を上げないが、しかし、上げるようなことばだけは出しておるという、この姿勢をもっと変えてもらわなければならぬと思います。

 私は、そこで内政問題に移りたいと思うのでありますが、総理が就任されたときに、その前でありましたか、そのときか、言われたことは、社会開発を重視するんだということだったわけです。ところが、その後の民間の固定資本の伸び、社会資本の伸び、これを比べてみますならば、社会開発というのは、総理の最大の公約にもかかわらず、非常におくれておるということは、これはもう周知の事実であります。しかも、問題は、どの問題をとってみても、容易ならぬことになってきたわけであります。私は、外交問題について、残念ながら総理と見解を異にする。このみぞが相当あることは認めます。しかし、この内政問題については、もっとお互いの共通項があるようにも思うのです。この間、成田委員長の発言に対する総理の答弁は、その後改められましたから、そのことには私は触れませんが、どうかひとつ、内政問題について、党の立場でなしに、国民の立場でお互いに解決に努力をしたいというわれわれの気持ちを率直にくみ、かつ、応じてもらいたいと思うのであります。

 そこで、まず第一は、農業の問題なんであります。これは各国とも、農業の問題にはてこずっておるのでありますが、いま米の過剰からいたしまして、たいへんなことになってまいりましたが、まあ生産制限の問題はうまくいくのかもしれません。しかし、あの十一万八千ヘクタールという減反の問題については、これは具体的にどうしようというのですか、何か自信がありますか、あるいは具体的な方法があるのですか、このことをまず伺いたい。

○佐藤内閣総理大臣 ただいま内政の問題について両者の間にみぞを起こさないように、国民の幸福をもたらすような政治をしてくれ、こういうことで、そういうことをやるなら社会党も支援するにやぶさかでないというような意味の発言があったと思います。私は、わが党だけで政権を担当し、野党の諸君の主張を無視するような考え方は持っておりませんし、今回の予算を編成するに際しましても、各党からそれぞれの意見を徴しまして、そうして採り得るものは採用したつもりでございます。しかし、全部が野党の方々の考えがそのまま入ったとも思いません。そこで、社会開発の問題は、私、主張はいたしましたものの、たいへんおくれてきている今日の状況。これこそほんとうに社会開発が必要な時代になってきた、はたしてそれに手がつけられるか、よほど勇気を持たないとこれはだめではないか、こういうただいまの御鞭撻、これもありがたく私ちょうだいしておきます。

 そこで、国内の問題で、農業問題、これがいま当面する一番大きな産業改革の問題だと思います。したがいまして、施政方針演説でも農業だけを取り上げて、実は一項目を置いたわけであります。私は、この問題が成功するかしないか、これこそただ単に農業者だけの問題じゃなく、国民全体の問題としてのコンセンサスが可能なのかどうか、こういうことじゃないかと思います。したがいまして、あらゆる面において、いわゆる農業者といわず農業者でないといわず、すべての国民が十分理解して、そうしてこれに協力する、たいへん長くなって恐縮でございますが、ということを実は念願しております。

 そこで、ただいまの減反問題、これは私ども知恵をしぼった結果が、やむを得ない、実は最終的な結論でありまして、何とかしてこれを実現したいと実はいま念願しておる次第であります。

 私は、米が過剰ないまの時分にこそ、農業の近代化と積極的に取り組むいい時期じゃないか。私ども、もう余裕がないようなとき、食糧に不足しておるそのときだと、なかなか基本的な改革にも取り組めないわけです。余剰だと、そういう際こそ積極的に取り組むべき一番いいチャンスじゃないか、かように実は思って立ち上がっておるわけであります。ずいぶん無理な問題でありますが、同時に農業者、各種団体、さらにまた地方自治体等の協力を得ましてぜひとも実現したい、かように考えております。

○江田委員 非常にむずかしい問題であることは言うまでもありませんが、それにしてもあの十一万八千ヘクタールという問題の出し方というものは、あまりにも無責任であり、思いつき過ぎるんじゃないかということ。あれには一億円の調査費が出ておるようでありますけれども、具体的にどうしよう、だれにやらそうとするのか、一向にわからないわけなんです。たとえば、もし各自治体ごとにこの減反をやるということになれば、これは一体都市計画との関係はどうなってくるのか。たいへん矛盾が出てくるじゃないか。スプロールになってしまいましょう。だから、たとえば将来農業の近代化をはかるんだ、だからこの際農道というものを大幅に拡幅しなければならぬのだ、そのための土地をまず先行的に自治体に持たすというのなら、それも一つの方法です。農道だけでなしに、道路の拡幅もあります。新設もあります。それならそれで、それに対するところの資金の裏づけをどうしてやるか。あるいは縁故債でやるのか、何でやるのか、そのときに利子補給をやっていくのか、そういうことが出てこそ、自治体としてもあるいは農業者団体としても協力のしかたがあるわけであります。こんなこと何もなしにやれといっても、私は成功するはずはないと思うのであります。そうして、その結果はどうかということになれば、この予期したところの百五十万トンというものはなかなか困難でしょう。そのときに一体どうなるのか。農林大臣はすでに、現行の食管法のもとにおいても無制限に買い上げる必要はない、こういうことを言われたのでありますが、これは農民にとってはたいへんなショックでしょう。総理、考えてごらんなさい。一つの法律のもとで、たとえ自分が供出を完了した後においても、二升か三升かの米を持っておったら、それで食管法違反でひっくくられたじゃありませんか。今度は一体どうするんです。無制限に買わぬのだということになれば、余った米はどうするのです。余った米を持っておったら、やっぱり食管法違反でひっくくるのですか。ひっくくらないとすれば、一つの法律の適用というものがこれほど百八十度違っていいのかということになります。まさに法軽視を政府みずからが先頭に立って奨励するようなことになりはしませんか。私はそういうことをもっときちんきちんとやっていかなきゃ、農民にしたところで自治体にしたって、協力のしかたがないじゃないかと思うのであります。こういう点をどうお考えになるか。あの食管法の農林大臣の解釈というものはあれでいいのか、農林大臣はあれでいいと言っているんだから、総理はどうお考えになるかをお聞きします。

○佐藤内閣総理大臣 ただいまこの農業問題で具体的な提案もございました。たとえば、農道をつくれ、さらに農道の拡幅をはかれ、あるいは町村道を整備しろ、こういうような話が出ました。私どもの計画のうちにも、そういうことが入っております。これは申すまでもなく、ただいま機械化の時代で、いろいろの機械を使っておりますが、いままでのようなあの農道では機械が十分に使われない、そういうこともございますから、これはやはり農道の整備はしなきゃならないと思う。また耕地整理なども、通年施行というようなことも考えられます。これらも、もちろんそのうちの一つであります。さらにまたいまの農地法自身も、そのままはなかなか適用しにくいのじゃないか。農地法自身の改正は、前国会にも出したのでございますが、これあたりもやはり農地法の改正を十分考えないと、都市における、あるいは都市近郊における農地の利用などにはいろいろ不便があるようであります。したがって、これらのことについても私は思いをいたさなければならないと思います。

 私は食管法自身についても、その根幹は維持するということは申しました。しかし、食管法自身をそのまま厳格に適用するということは申しておりません。私は今回の農業問題、それこそは農業革命の問題だ、ほんとうに大事な問題だ、かように思いますので、これは各界の御理解を得て、そうしてこれを遂行するのに失敗のないようにそろえていきたいものだ、かように思います。したがいまして、ただいま御提案になりました農道一つ、そういうこともやはりそれぞれの皆さん方の御意見もとくと承って、そうしてこの改革を遂行してまいりたいと思います。

○江田委員 来年の問題じゃないんですよ、ことしの問題なんです。そろそろ農民は種の用意をしなきゃならぬときなんです。そういうときに、そういう思いつきもあるならばよく知恵を承りまして……それでは済まぬじゃありませんか。ことしどうするかという問題なんです。だから、こういう問題を出すなら出すで、調査費を一億円つけたというようなことでなしに、こういうことに対しては具体的にこうするということがなきゃならぬ。たとえばいま申しましたような、総理がたとえば農道の拡幅や新設について賛成なさるという場合には、そのときにはこれからでも地方債の発行その他についてちゃんと手配をされますか、何もないじゃありませんか。

 さらにもう一つ、答えにくいことかもしらぬけれども答えていただきたい食管法の問題。一つの法律で、同じような米を持っていることが、あるときには食管法違反で監獄にぶち込まれ、あるときにはそれが許されるというような、こういう法律の解釈があっていいのかどうかということなんです。法の解釈も弾力性があるといったって、あまりにも百八十度違い過ぎるじゃないかということなんであります。これでいいのかどうかということなんです。――いや、農林大臣はよろしい。総理。

○倉石国務大臣 私の発言が出ておりますので、誤解のないように申し上げます。
 先日、参議院の本会議で前川旦君の御質問に対するお答えが大きく新聞に取り上げられたわけであります。あれは法の解釈、運営の精神について申したわけでありまして、つまり食管法を改正しないで買い入れ制限ができるのかという趣旨の御質問であります。したがって、法律それ自体からは、その限りにおいては、これは差しつかえないことであるというふうに理解しておる、こう申し上げたのでありまして、ただいまここでお話を承っておりますと、いかにも政府がそういうことをやるたてまえであるように聞こえますので、私どもいま、さっき総理もお答え申し上げておりますように、鋭意百五十万トンの生産調整にみんなで努力をしている最中でありますので、そういう買い入れ制限をやるとかなんとかということは全然考えてもおりませんし、それはまたその百五十万トンの生産調整の結果を見て、それからいろいろ研究、考慮しなければならない、そういうことを申しておるので、あれは法律の解釈論上、この限りにおいてはそういうことは差しつかえない、こう理解しておるという説明をいたしたわけであります。

○佐藤内閣総理大臣 農林大臣からお答えしたので御理解いただけたと思いますが、どうも不十分だ――私が説明するとまたもっとわかりにくくなるかわかりませんが、御承知のように食管法で、売り渡し義務を農民にやはり省令で規定してございますから、そのものは守らなければならない、その規定された売り渡し義務は完全に遂行してもらわなければならない、かように私は思います。したがって、いま言われるような、ある者は買うが、ある者はつかまえるとか、こういうものでないこと、これはひとつ御理解していただきたい。
 ただ、問題がありますのは、ただいまのような食管法のもとでそういう特別な規制を、買い取り義務といいますか、そういう面で特別な規定ができるかどうか、ここに政府の責任が一つあるだろうと思いますので、そこらはさらに検討を要するのではないか、かように思います。したがって、御指摘になった点を全面的にとやかく申すのではありませんが、そういう問題のあることを申し添えておきます。

○江田委員 やはりこういうことは国民によくわかるようにしていかなければ。とにかくかっては供出の割り当てがあるわけです。たとえ供出の割り当てを完了したあとでも、残った米を何升か持って町でうろちょろしておれば、それで食管法違反でひっくくられたわけなんです。今度は農林大臣の解釈からいくと、一定量しか国は買わぬという。そうすると米が残るわけです。その残った米――かつての米もいまの米も同じことなんでありまして、それを持って歩いておる。歩かなければ今度はどうにもならぬのであります。自主流通米とは違いますよ。そういう法制局長官あたりの官僚の知恵で答弁するからいけないのです。大体農林大臣のだって、あなた、ほんとうはそう思っていないでしょう。農林官僚の書いた作文を読んだだけでしょう。それとも、そうでないというのならば、ここで十一万ヘクタールの問題にしても、できないようなことを出しておいて、そうして食管法というものをなしくずしにやってしまおうという深謀遠慮に基づいているというか、陰謀といいますか、そうとしか解釈できないわけなんであります。

 そこで、こういうことについてはもっと農民が安心できるような態度をとってもらわなければ、この日本農業の改革は――あなたはいま革命だと言われた。まさにそうなんです。それだけに、ほんとうに衆知を集めなければならず、政府自身が農民の信頼を受けるような、そういう姿勢がなければどうにもならぬわけで、今度のことはつつけば幾らでも問題点はありますが、あまりにも思いつき過ぎる、全体が思いつき過ぎるといわなければならぬ。

 そこで、きのうの閣議におきまして、農政推進閣僚協議会の総合農政の基本方向というものをきめられました。私はなぜいまごろ出すのだろうかと聞きたいのであります。米のこういう非常措置をとる前にこれが出なければならぬのじゃないですか。しかも、この基本方向というものは、読んでみたところで、これで安心はできないでしょう。いろんなうまいことが書いてあります。常識的に思いつくようなことがずらっと並べてある。しかし、一番肝心の、たとえば自給率をどの程度にするのかということはない。自給率をあまり下げないようにしようということでごまかしてあるだけ。あるいは農業の近代化をやるのだといったところで、そのための資金はどうするかということは何もないわけなんです。もう農業基本法以来、農民諸君は抽象的な農政の文章に飽き飽きしているわけです。具体的にどうするかということなんです。

 たとえば、こういう問題についても、自民党の中にも具体的な討論があったはずです。われわれ社会党も農業の十カ年計画を立てています。あるいはあなた方が敬意を表せられる松永安左エ門さんのところの産業計画会議におきましても、自給度を七八%として、八兆八千億をかけて日本農業の近代化をやろうという具体的な青写真が出ている。こういうものが出てこなければ、安心していけないということなんです。たとえば農民年金の問題、これはこれから農業を去る人の問題なんです。これから農業をやろうという若い諸君に対して、何の魅力のある政策があるのかということなんです。こういう総合農政の基本方向に基づいて、いま私が申しましたような具体的な青写真を出す用意があるのか、あるとすればいつまでに出すのか、その際、たとえばいますぐにでも言えることは、自給度というものはどの程度にするのか。果樹をやれ、畜産をやれといったところで、いまアメリカの大きな乳業資本や畜産資本との合弁会社が国内でできる、果樹についても同じようなことが行なわれる中で、何をやっていいかわからぬじゃありませんか。まさにこの農政の切りかえは革命的だという。革命的だというが、あなたの言う革命的というのは、一つも前向きの革命じゃない。農業を滅ぼすという革命じゃありませんか。どうお考えですか。

○佐藤内閣総理大臣 農業を滅ぼすようなことは考えておりません。私はもっと生産性の問い近代農業をつくることが必要なんじゃないか、かように思います。これはもうしばしばいわれることですが、たとえば価格一つとって、その点から見ましても、どうして日本の米は国際価格の倍もするのか、これは近代化されておらないからだ。そこらに無理があるのだ。過去の食糧不足であったことを考えると、やはり米作に非常に熱意を示した、そういう結果、だんだん米の値段が高くなった。これは私は、これだけでもう目的を達したのだから、責めるべきではないと思います。しかしながら、今日この段階になってきて、そうして米がこれだけ余る、余剰米ができる、そういうことを考えると、やはりその価格一つとってみましても、もっと近代的な産業に農業をしなければならないと思います。私はそういう意味でいろいろ努力しておるのだと思います。

 先ほど、関係閣僚協議会がいまになってやるとはおそいじゃないか、こういうおしかりでございます。私は、いまになってやったことがおそいか早いか――これは早いとはいえませんが、おそいかどうか、このことよりも、中身をみんな協力して、そうしてこの問題と取り組もうというこの姿勢をやはり買っていただいて、どうもおそいじゃないか、もっと早くやれ、こういっておしかりを受ける、ほんとうにそのむちがほしいように思いますから、そういう意味でおしかりをひとつお願いしておきます。

○江田委員 おそい、早いだけじゃないのですよ。こういう抽象的な作文では、農民諸君が読んでみたところで、またかと思うだけだということなんです。

 そこで、たとえば国際農業において日本がどういう分担をしていくのか、あるいは日本の国内において地域的にどういう農業の部門を分担していくのか、それについては自給度はどの程度、そうして必要な資金はこうだ、これについてはこうする、そういうものが出ない限りは、前向きにこれから農業をしようとする諸君は全く希望を持てないということなんであります。今度の作文がおそい、早いはどうでもよろしい。あんな作文なら一年前に出ておったところで何にもならぬので、だからそういう具体的な青写真をどうするかということを私は聞いたわけでありますが、これはまあ答えはないでしょうから、いずれこういう問題については予算委員会で同僚の議員からさらに追っかけた質問がありますから、この問題だけでなくて、次へ進みたいと思いますが、その次は公害の問題。

 公害の問題がもう放置しておけない段階にきたことは言うまでもありません。特に、アメリカにおいてニクソン大統領がずいぶん思い切った措置をとっているということは、これまたわれわれが高く評価しなければならぬと思うのであります。

 ここで、日本の国内の公害問題について、総理は依然として人間の命や健康と経済との調和ということを考えておられるようでありますが、それで解決がつくかということなんであります。たとえばこれは宮澤通産大臣、この間群馬県の安中の東邦亜鉛の工場の許可を取り消されました。これはなかなか思い切ったことだと思うのです。そういうことが必要なんじゃないのか。ところが、その宮澤さんにしても、きょうはよくないです、これは。この読売新聞だけじゃなしに、ほかの新聞をごらんなさい。「欠陥電子レンジ 通産省は業者保護 六割から有害電磁波 だが、製品名はあかさず」これじゃだめですよ。東邦亜鉛というのは小さい会社だからやれたんですか。電機製品というのはあまりにも影響が多いからやれないのですか。依然として通産省というものが国民の立場に立っていないのじゃないかということなんです。そういうことについて、やはり公害というものは企業責任ということで処理する以外にはない。公害の解決できない企業はつぶれたらいいんです。企業がつぶれるからといって、国民の命や健康あるいは自然を破壊する権利はないはずなんであります。それをきびしく取り締まることによって、企業自身もほんとうの技術革新ができるわけなんです。そのことをゆるめることによって、かえっていつまでも問題は解決つかぬのでありまして、こういう点についてどうするのか。宮澤さんのごときはニューライトなんというようなタイトルを持っておるのだから、もう少しきっちりやったらどうかね。

○宮澤国務大臣 企業は、社会の構成員でございますから、社会に対して責任があるという考え方を私は持っております。就任以来そのことを最も大切な施策の一つと考えております。先ほど安中の問題を御指摘になりましたが、それも、そういう考え方をだんだんに定着させていこうという気持ちから出ました行政でございます。いままでそういうことがあまり自覚されておりませんでしたので、にわかに全部を全部企業が直ちにいまからでも負担をせよということは、実際問題としてむずかしい点があるかもしれません。したがって、国もいろいろな財政、税制等で援助もするが、しかし企業は社会に対してやはり社会をよごさない責任があるという考えを定着させてまいりたい、こう思っておるわけであります。

○江田委員 まあそれが総理の方針でもあろうと思うのでありまして、従来のように企業との利益の調和ということでは問題は解決つかないのだ、それがもうアメリカの公害対策の中にはっきりあらわれてきているわけで、たとえば川をよごした会社をどんどんと告発する、ずいぶん思い切った処置をとっている。今度の外務大臣の演説の中に、「環境整備、都市問題など世界的な悩みであるいわゆる現代社会の問題についての国際協力にも積極的役割りを果たしてまいりたいと存じます。これらの新しい分野こそ、人類の福祉のためにわが国民の創意を生かすのに最もふさわしいものと考えるのであります。」なかなか野心的な発言を外交演説でしておられるのですが、すでに御承知のように、国連におきましても近く世界汚染防止会議の準備会が開かれることになっておりますが、一体こういう国際的な分野において日本が新しい働きをしたいというのは具体的に何を考えておられるのでありますか。私ははなはだ皮肉ではありますけれども、この国連が本格的取り組みをするという紹介をした記事、これは朝日新聞です。この中にこういうことが書いてある。「とくに先進工業国における産業公害に重点を置き、異常な経済成長を遂げた日本の公害対策の遅れなども、代表的な悪い例として、今後長く論議のマトになるものとみられている。」こう書いてある。外務大臣の言う国際的協力というのは、こういうことをしてはならぬという悪い例としての協力をしようということなんです。そうでないとすれば、具体的にどういうことがあるのか、聞いておきたい。

○愛知国務大臣 ただいま御指摘のような見方をするところもあるわけですけれども、同時に国連その他の国際的な機関あるいは研究機関等におきましては、日本のように非常な経済成長を示した国で、しかも国土が狭小な国において、しかも人口が相当多い国において、公害問題についてどういうかまえ方をし、どういう研究をしつつあるであろうかということについて、相当の期待を持っている向きがございます。ただいまのところでは、これは率直に申しますと、大きな期待を持たれることは、こそばゆいところもございますけれども、しかし、そういったような日本の特殊な地位にかんがみて、また、日本のそうした研究の分野あるいはその扱い方ということについて、日本らしい考え方や今後の取り上げ方もあろう、そういうことを国際的にも大いにひとつ協力の場に持ち出してもらいたいということも最近非常に起こっておりますので、日本としては意欲的に積極的に、まずみずからの問題を片づけながら、やはり世界的にも参考になるようなことについて共同の研究をし、こちらも与えるところもあるかもしれませんし、また与えられるところも多いであろう。とにかくこれは新しいこれからの人類社会の問題として、大いにひとつ新分野として開拓を積極的にしていきたい、こういう意欲を表明したつもりでございます。

○江田委員 一ぺんに謙虚になられて拍子抜けでありますが、悪い例として参考になるようなことは、いいかげんでやめてもらわなければならないわけです。

 そこで、いま通産大臣もやはり企業の責任ということをもっと強く、人間の健康や命ということをもっと大事に――これは厚生大臣もこの間テレビを見ておりましたら、今度は水の番だ、水についてどうも企業利益というものが先行しておったが、そうではない形に持っていきたいのだということを言われましたが、これは総理も先ほどうなずいておられたから御異存ないところだと思いますが、それならば公害基本法というものを、これを修正なさいますか。

○佐藤内閣総理大臣 いま御意見を伺っておりまして、産業と人類福祉との調和、こういう表現は当たらない、そのとおりだと思います。私はお互いのしあわせのために産業は奉仕すべきものだ、また科学技術も奉仕すべきものだ、かように思います。私は月旅行自身が無意味とは申しませんが、アメリカ自身で月旅行、あのために非常な巨額の金を使ったということ、やはり顧みてどれだけの効果があるだろうかというそういう分析をしておるとも聞いております。私は確かにお互いの科学技術の進歩、これはやはり人類の福祉につながるようにしなければならない。そういう大きなことは別として、とにかく身近な問題で公害をはっきりさせて、そうして公害の責任を企業責任、そういう点に追い込む、こういうことはもっとはっきりしてしかるべきだと思う。しかしながら、企業の責任全部でまかなえといっても、なかなかできない状況もあります。したがって、私は企業者の負担の分担、こういうようなこともあろうかと思いますので、ここらのところは十分実施の状況等を見まして、しかる上で公害基本法というものが取り扱われてしかるべきじゃないかと思います。私は、いま直ちに改正を約束するというよりも、やはり産業とお互いの福祉との調和というよりも、もっとそれを高めて、そうして産業の発達こそ国民福祉に奉仕するものだ、こういうような考え方までいかないと、問題は解決しないだろう、かように思います。

○江田委員 やはり公害の問題は、まさにこれは革命的な解決方法をとらなければ、どうにもならぬところへ来ている。私が最初に申しましたように、六〇年代にこの積もり積もった問題が、どの問題一つとってみても、農業も公害もあるいは土地問題も、すべてがそういうところへ来ているということなんでありまして、やはりここに大きな価値転換といいますか、一つの抜本的な考え方を変えていただかなければならぬときが来ていると思うのであります。

 そこで、たとえば今度の予算を見ましても、厚生省の公害対策費が十億足らずふえた。しかし片方では、脱硫装置については国民の税金から補助金が出るというようなことは、やはり何としても素朴な国民感情としては割り切れないものが残るわけなんです。そういうところは当然自分の技術によってこれを改革しなければならぬ責任があるわけなんだから、だれだってよごれた石油で空気をよごしていいという権利はないのですから、もっとそういう点についてはっきりした姿勢をとってもらいたいと思いますが、今度の自動車の排気ガスの問題、これはなかなか進歩です。りっぱなことをおやりになりました。ただしかし、これで解決はつかぬということだけは覚えていただかなければ、あれをやったところで、それでは窒素酸化物の問題はどうなるのか、鉛化合物の問題はどうなるのか。それだけではなしに、自動車がふえるという問題なんであります。ふえていったら一台一台の規制をどんなにしたところで総量としては一酸化炭素にしろ何にしろ、たいへんなことになってくるわけなんでありまして、これを考えたならば、やはりこういう公害規制というものは、年々基準を高めていかなければならぬということが一つ出てくるわけです。煙突一本は規制しても、煙突の数がふえれば何にもならぬことなんです。そこらに、新しい観点から基準についても考え直していかなければならぬということがある。同時に、この自動車の問題なんかは、一体自動車中心の、特にパーソナル・モービリゼーション中心の都市の交通というものは、これでいいのかどうかということが当然出てくるわけなんでありまして、やはりもっと自動車を少なくする以外には、解決がつかぬのではないか。高速道路をつけてみたところで、すぐ低速道路になってしまうというこの現状をどう考えていくのか。そこにやはり公的輸送機関というものをもりと中心にものを考えていかなかったら、そういうことに転換を考えていかなかったならば、都市問題というものは解決ができぬのだということなんであります。どうも従来の政府の行き方を見るというと、そういうことではなしに、要するに高速道路をつければそれで解決つくように、そういう方向へ持ってこられたことが大きな間違いじゃないのか。

 さらには、都心の人口をどう減らすかという、あるいは職住近接という問題もあるわけなんです。大きな三十八階の高層ビルができるが、三十八階のアパートをつくることをなぜお考えにならぬのか。あるいは三多摩のニュータウンができる。そこへ都心のオフィスを、たとえば第一生命が行ったように、そういう行き方というものは、そういうところへ職住近接の形で向こうへ持っていくこともできれば、こちらでやることもできるし、いろいろなことがあるのだが、そういうことについてもっと考え方を変えていかなければ、どうにもならぬのじゃないのか。そこに自民党は民間デベロッパー方式というものをとっておられるけれども、あの民間デベロッパー方式では解決がつかないのじゃないのか。やはり公というものが先頭に立たぬ限りは、たとえばマンションができて、その隣にマンションができて、そこに住んでいる人はだれか。バーのホステスさんが多いとか少ないとかいう評判があります。そんなことはどうでもよろしいけれども、とにかくこの状態では、都市問題というものはどうにもならぬところに来ておるということを考えていただきたい。

 私は、時間が制約されておりますから、そういうことについては、総理も官房長官もうなずいておられるから、そういう措置ができることを期待いたしますが、もう一つは、土地問題なんです。これをどうするのかということなんです。やはり土地問題についてはわれわれがかねがね言っておるように、一つは自治体の先買い権を認めるということ、そうしてそのためには交付公債を認めるということ、そこまでいかなかったら解決がつかぬということなんであります。もう一つは、土地の増価税をどうするかということであります。いわゆるキャピタルゲインの問題は、土地問題だけではなしに、株式の利得の問題にも出てまいりますが、株式のことはあと回しにいたしまして、まず土地の増価税というものをどうするか。たとえばイタリアでやっておるように、土地の評価がえが行なわれるたびに、そこに増価税を取るということが行なわれますならば、投機的な土地所有やあるいは売り惜しみというものは、これは避けることができるわけなんであります。最近の土地問題の調査を見ましても、大体供給量が足らぬということではなくて、そうではなしに、投機的な所有とそうして売り惜しみとがこの問題の解決を妨げているということなんでありまして、そういうときに土地が評価がえで上がってくれば、そのときにはその利益について税金を取るのだという措置ができれば、それがなくなるわけなんです。あるいはさきに申しましたところの自治体の先買い権、これは民間デベロッパー方式だといって民間にまかしたところで、都市の問題というものは、やはり自治体がやらなければだめなのでありまして、私は、民間のそういう事業というものを否定しようとは思いません。民間は民間でやられたらよろしい。自治体だけで、公だけでできるとは思いませんけれども、やはり中心は自治体がやっていかなかったら、理論上は減歩をして道路をふやすとか、緑地をつくるということが考えられても、実際問題としてはできないじゃありませんか。マンションができて、次にマンションができて、どこに一体緑地やあるいはゆとりがあるのか。そういう問題は解決つかないのでありますから、その二つの問題について思い切った措置をとられるかどうかをお伺いしたい。

○佐藤内閣総理大臣 先ほどから都市政策をじゅんじゅんと説かれました。私どもも共鳴する点が非常に多い。ただいまも言われるように、オフィスが高くなる、住宅も同じような高さのものをつくれと言われるが、今度は住宅公団も十五階まではつくるようになっております。だんだんお説のようになるだろう。あるいはまた、中心だけに事業が集まらないで、ニュータウン、先ほど御指摘になった第一生命のような新しい住宅あるいは事業組織、そういうものにだんだん変わっていくだろう、かように思います。

 ことに、全般としての自動車を減らせという、これはもうすでに外国のニューヨークあたりでもやっておるように、個人の自動車が入ってくる余地がないということ。ロングアイランドに行って見ますと、もとは自転車が置かれておった場所に自動車が置かれておる、そうして鉄道で通っておる、こういうようになっておりますので、やっぱり大量交通機関の必要なものはあるようであります。

 まあ、これらの点は、長くなりますから御迷惑をかけてもいかぬので、簡単に同感の意を表明しておいて、さらに御鞭撻を賜わるようにお願いしておきます。

 そこで、土地の問題について、自治体の先買い権の問題についてお触れになりました。今回の農地の処理の問題にもやはりこれは関連してまいります。また、都市の土地問題から申しましても、これが非常に関係してきます。現金で支払うことがはたしていいかどうか、そこらに一つの問題がある。これが交付公債その他の方法で片づけられることができるかどうか、こういうことも考えておかないと、やはりともするとインフレ傾向になりがちですから、そういう点は十分気をつけなければならぬと思いますが、いずれにしても、先買い権の制度は、これはひとつうまく運用したいものだと思います。私は、別に皮肉を申すつもりではありませんが、先買い権はひとつ有効に使って、そうしてりっぱなものにしたい、かように思います。

 また、この土地の増価税、固定資産税で毎年評価がえをするというそういうこと、なかなかできないだろうと思いますが、いま三年ごとにやっている、やはりその三年ごとの評価がえ、それに基づく固定資産税、そういうものがやはり地価の抑制には役立つのではないだろうか。かように思いますが、さらにそれをもっと短縮しろとか、こういうような御意見もあろうかと思いますが、よく研究したいと思います。

○江田委員 この物価問題とか土地問題というのは、総理もずいぶん懇談会とか協議会とか審議会とかというものをおつくりになったと思うのです。物価問題懇談会もあれば何やら各大臣の諮問機関としてまで、どれだけあるのか私よくわかりませんが、実はそういうものがどういう答申をし、それをどう処理されたかという一覧表を、これはあとで出していただきたいと思っておるのでありますが、特に物価問題にいたしましても、やはり土地問題の解決がなければ物価問題の解決はできない。そうして土地問題については、いままで都留さんのところだとか、いろいろなところから答えが出ているわけなんで、問題は総理がやるか、そのとおり、あなたが言っておるとおりやるかやらぬかだ。私は、もしこの席で総理が過密都市においては自治体の先買い権を認める、それに対しては交付公債の制度をとる、あるいは土地の評価が上がったならば、その値上がりを税として取る、これを二年以内にやるのだ、きょうそのことを一言おっしゃってごらんなさい、それで問題は解決つくのですよ。そこまで来ているということなのです。これはもう供給はある。供給の条件はありながら、売り惜しみやあるいは投機的に土地を持ったことが妨げをしている。たとえば商事会社という名前のものがある。かつてあなたのところの大臣は、土地は商品でないと言ったが、その商品でないはずの土地をどんどん買いあさっているじゃありませんか。それがいま金融引き締めで参っているでしょう。ですから、いま総理がきちんと前向きにこれをやるのだということをはっきりおっしゃれば、土地問題というものは大きく解決の方向に行くということを私は申し上げる。何もかにもあるのだ、ないのは総理の決断だけだということがいまの段階だということを申し上げておきます。

 さらにもう一つ、基地の整理ということがいま問題になってきたのでありますが、この基地をどう使うか。たとえば練馬のグラントハイツの問題などあります。こういうことについて、もしあそこに住宅をつくるということならば、七階ないし十二階のものをつくれば、人口収容力にして約四万くらいのものが収容できるのじゃないか、こういう計算もあります。その他立川もあります。いろいろなところがありますが、一体こういうような米軍の使用から解除された基地のあと地利用をどうするのか。これは私は、当然自治体に渡すべきだ、住民要求を中心にして優先的に、こう考えるべぎだと思うのでありまして、このために代がえ地が要るから、その代がえ地の費用を自治体に求める、地元に求めるというようなことは、これはあってはならぬことではないかと思うのであります。

 いま、たとえば横浜におきましても、本牧地区の例を見ましても、国が坪三千円で買い上げたところ、これが今度解除になれば、国は今度はこれを七万円でなければ売らぬというようなことがいわれておる。こんなことは何としても納得できない。三千円で買ったところなら三千円で渡したらいいじゃありませんか。権力をもって取り上げられた土地なんであります。あるいは根岸の競馬場のあたりに森林公園をつくるといっても、国は公務員住宅優先のような考え方をしておられると思いますが、要するに、もっとこういうような基地の整理にあたっては、自治体に優先権を与えるという考え方をとっていかなければならぬのだ。それによって、いわゆる職住近接によりこの都市問題の解決の芽が出てくるのだと思うのでありまして、そういうことについてどうお考えになるか。私の時間がもうちょっとですから、総理、答えを簡単に頼みます。

○佐藤内閣総理大臣 たいへん重大な問題ですから、簡単に答えるのは……。
 ただいま基地を返してもらう、これは住宅公団がこのあと地を使うという、そういうことも一つの条件になっております。ただいま自治体にという強い御要望がございますが、ただいまそこまでは考えておりません。自治体、国、これは一体として考うべきものだと、かように考えますので、そこを誤解のないように願っておきます。

○江田委員 国という立場もありますけれども、しかし、もともとああいう土地が基地として収用された過程は、どういう経過をたどったのかということも考えてみなくちゃなりません。特にやはり、たとえば米軍が引き揚げた、そのあとは自衛隊が入るのだというようなことでは、私ははなはだ残念なことになると思う。米軍が使うにも不適当なようなこの都心にあるような基地を、そのあと引き続いて自衛隊が使うなんということは、全く国民の立場を無視していると思うのでありまして、やはりもっと国民生活、あなたの足らざる社会資本、この辺で補うことを考えられたらどうですか。

 それから、さっき答弁がありませんが、どうです。土地問題について一言、佐藤の一声かツルの一声か、何の一声でもいいが、きちんと言う勇気はありませんか。ないのはあなたの勇気だけだと言われておるのだが……。

○佐藤内閣総理大臣 これも積極的に前向きで検討をいたします。
 それから、いまの自治体の問題は、こだわるようですが、やはり国というものは自治体の積み重ねでございますので、やはり国の利益は自治体だけで考えられると、国というものが別に存在するわけでもございませんので、そこらは一体として考うべきだ、これは申し上げておきます。

○江田委員 私は、ただそういう問題だけでなしに、総理が民主主義ということを言われる、議会制民主主義ということを言われるが、民主主義の根源はどこにあるのかといえば、やはり自治体を大事にするということから民主政治というものは生まれてくるんだ、この認識をよくお考え願いたいのであります。やはり自治体というものは何のかんの言って――まあ大蔵大臣なんかに言わせると、自治体はぜいたくだというようなことを言うのでしょうが、そうではなしに、やはり自治体というものは住民の目が光るのです。一番監視が行き届くんで、ちょっと変なことをすれば、すぐ問題になるのです。やはりこの地方自治というものをもっと大事に考えていくこと、特に都市づくりなんかはこの自治体中心ということを考えなかったら、本物にはならぬ。形はできても住民の精神の会話はない、空疎なものになってしまうのだということなんであります。

 まだいろいろ申し上げたいことがありますが、私の持ち時間が参りましたから、あと同僚の議員から質問するでしょうが、まあ外交問題についても、われわれはただイデオロギーだけで言っているのではない。きょう私が言っておることは、イデオロギーで言っているのではないのです。現実的な処理の問題として言っているわけなんです。国益の問題として言っているわけなんです。あるいは国内問題についても、時間が十分ありませんから、はっきりあなたの合意を取りつけてはいまませんが、おおむねは意思の疎通はあったと思うので、そういうことについて、やはりあなたのほうももっとその態度で――それをことばに表現しようとするとまたあなたは反発するから、ことばには表現しませんが、その態度でやってもらうことを申し上げて、私の質問を終わります。(拍手)

○中野委員長 これにて江田君の質疑は終了いたしました。


1970/02/21

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