1958/02/21

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28 参議院・農林水産委員会


○江田三郎君 この前の委員会のときに、大臣にちょっと質問をしかけてそのままになっているわけですが、この前お尋ねしたのは、農林省の方で農業白書を出されて、それからそれに基くところの基本政策というものが発表された。そういうこの農林白書というようなものは、私は重大なものだと思うので、ただ無責任な作文ではないと思いますが、それを見ますというと、一番大きくクローズ・アップされるのは、農業の所得が低いという点、それで今度の、あなたがこの間農林水産行政についての基本的な考え方を当委員会においてお述べになりましたが、それを見ましても、一番初めに取り上げておられるのは、生産性を向上して、他産業と均衡のとれた所得を確保するということに置いておられるわけです。ところが、一方において、政府の方で長期計画を発表なさった。その長期計画でいくというと、農業は、今後五カ年間における農業の生産の伸びは、他産業あるいは国民全体の消費水準の伸びと比べてみるというと、農業と他産業との所得が、均衡がとれるという方向ではなしに、むしろ逆な方向にいっておるのではないか。そこで、もしそうでないと言われるなら、その生産水準の向上だけでなしに、他に何かそれを補うものがなければならぬはずだ、そういう点についてどうお考えになっているかということをお尋ねしたわけですけれども、はっきりしなかったので、ここからきょう始めることになっておりますから、一応皮切りにお願いいたします。

○国務大臣(赤城宗徳君) 御指摘のように、農林白書にもうたつておりまするし、また、実際そうだと思うのでありますが、農林水産業が生産の面においても、あるいは所得の面においても、他の第二次、第三次産業に比べまして立ちおくれをいたしているということは、いなめない事実だと思うのでございます。そこで長期計画を立てて、その長期計画に沿うて農林水産業の進展をはかつているのでありますが、その点におきまして、この間もお話がありましたが、三十七年度までの国内生産の、国民所得というものの伸びの計画が、第二次産業等においては七・二であり、第一次産業等においては三である。依然として生産の伸びが差を生じているじゃないかと、こういうことが御指摘になられている点だと思うのでございますが、これはもう私から申し上げる必要もないと思いますが、農林水産そのものの実態といたしまして、生産の伸びが急速にいかないこと、あるいはまた第二次産業等と比較いたしまして、差が生じており、その差を全くなくするということは、実態からいって非常に困難だと、こう思います。これは生産の問題でございます。しかしながら、その差をなくしていくということ、あるいはまた国民の、あるいは農林水産面の所得をふやしていって、所得の面におきまして今の異常な差を縮めていくというようなことは、私どもといたしましても当然考え、また、そういう政策を立てていかなければならないと考えております。

 そこで、生産面におきましては、そういうような関係から、鉱工業との生産における差を全然なくするということはできませんが、今のような目標をもって、三十七年度までに農林水産業の生産面を上げていくということにつきまして、私どもも農林自体としても考えまた、予算面においてもそういう措置をとつていくという方法を講じているのであります。
 しからば、そういう生産面だけの方にそういう政策を推し進めていくといたしまして、所得面といいますか、生活水準向上という面についてはどういうふうに長期計画がなっておつて、また、それに農林水産の政策がどういうふうに沿っているか。また、それが沿い得ないということがあるならば、何かはかに方法があるか、こういうことかと存じます。生活水準、消費水準等の伸び方につきましては、生産の差は今のようにありますけれども、三十七年度に至りましての計画から見ますると、就業人口等が、他産業の進展等に伴いまして、農林水産の就業人口は八十五万ほど他産業に吸収されるというふうな見通しをいたしておるのであります。そういうような関係からいたしまして、この生産所得等を割つていきまするというと、農林水産関係においては一二五、他産業においては一二三、こういうような計画の見通しを持っておるわけであります。

 なお、立つたついででありますので、一言づけ加えさしていただきまするというと、長期計画が統制経済下の長期計画でありませんので、この長期計画が巨細にわたって数字的に裏づけがされておらないわけであります。計画策定の意義が、五カ年後における望ましい日本経済の姿を描いて、それに到達するために果されなければならない政府、企業、国民の努力に目標と手がかりとを提供する、こういうふうな意味をもちまして長期計画を立てておりまするし、また、計画の性格といたしまして、自由企業、自由市場を基調とする態勢のもとにおいて経済運営の指針となるべきものである。従って、経済の全分野にわたって詳細な計画、目標を掲げて、その一つ一つについて厳格な実行を期することが、この計画の意図するところでもなく、わが国経済の実情にも沿わないというようなことからできている長期経済計画でありまするので、数字的にこまかくあげて、一々についての計画の裏づけというものを、残念ながら持っていないのであります。この上地基盤等、その他、農林水産等につきまして、所々にその目標を掲げてありますけれども、数字的によって裏づけがあまりされておらぬということは、御承知のことでしようが、一言つけ加えさしていただきます。

○江田三郎君 大臣自身が、この政府の長期計画というものは五カ年後における望ましい姿を描いただけであつて、そんなに確たるものでないということを言われれば、何をか言わんやということになるわけです、本来まあわれわれは、こういう長期計画なんというようなものは、あなた方が考えておられるような自由経済のもとでは不可能だ、こういうことを考え、どうしてもこれは社会主義的な計画経済でなければできないということを考えているわけですが、あなた方はしばしば長棚計画を振り回わされる。長期計画を帳り回わされるだけでなしに、あなたの説明の中でも、あるいは農林白書の中でも、他産業と農業との所得の均衡ということを盛んに言われる。そうすると、今、大臣のお話のように、これは五カ年後における望ましい姿を描いたんだという注釈をもってならいいでしようけれども、国民一般の耳にはそうは響いてこないので、とんでもない羊頭狗肉ということになってくるわけです。

 そこで、そういうことは別にして、この今おつしやいました五カ年計画、昭和三十七年までに就業人口が農業の方面において八十五万減るのだ、こういうことが実際考えられるでしようか。それじゃあ一体この神武景気が謳歌されたときに、農業の就業人口は幾ら減つたのか、そうして最近の一体経済の長期見通しというものは、なかなか甘いものじゃないと思うのです。海外の模様を見ても、なかなか深刻なものがあるわけです。かりに、世界的な景気の上昇があるとしたところで、それがすぐに二次産業、三次産業の方へ一次産業から就業人口が変り得るかどうかということになれば、私どもは非常に疑問だと思うのです。やはりオートメの問題もあるし、いろんな企業の合理化という問題が出てくるわけです。こういう八十五万というようなものは、神武景気の中の、あの就業構造の変化を見ても、とうていこれは考えられないことじゃないか、あなたは、一体その点を、まともに八十五万というものが、農業の就業人口が減るのだと……。一方農村における自然増というものがある。それも考えなければならない。自然増を入れて八十五万減るということが正気で考えられますか、それはどうですか。

○国務大臣(赤城宗徳君) この長期計画には直接私が参加したわけでもありませんが、これには参加して協議をしたことになっているのであります。(笑声)
 八十五万の就業人口が農林水産から他産業に吸収されるという見方につきましては、いろいろ御議論があることだと思います。神武景気というようなことも、ちょっとした神武景気で、これも神武景気のでこぼこもあったと思うのでありますが、この計画がこまかい点についての数字的の裏づけがないといたしましても、この見通し、この目標に進んでいくということになれば、今の就業人口の吸収ということが、鉱工業方面でもあり得るという建前について、今の八十五万が農林水産業の方の就業人口が減るという見通しを、この建前からは持っているのであります。

○江田三郎君 大臣あなたそれはちょっと苦手ですから、僕もあまり言わぬです。やはりあなた人柄ですから、あなたとけんかしようというのじゃないですから、ただこれは、国民経済の将来を考えたら、一次産業の就業人口が減って、三次産業、三次産業がふえるということは好ましいことです。好ましいことですけれども、それは今後五カ年あたりには、農村における自然増を考えてみると、さらに自然増があっても八十五万減るのだということは、架空の数字に過ぎない。それはあなたが直接にやったのじゃないからということで、いいですよ。だから、そのことは私申しませんが、実際にはこれは困難です。そこでどうしても農業における所得を幾分でも他産業の所得の水準に近づけようということになれば、やはりあなたがここに掲げているような生産基盤の強化ということと、それからその次に何がありましたか、経営の改善とか、あるいは流通面の問題というような問題が、もっと本気にやられなければ、どうしてもできません。それにしてもこんなものをやったって、なかなか農業の所得水準がそう上るといいうことは、私考えられませんが、ただ生産基盤の強化という面でも、ほんとうにあなた方がそう考えているのかどうかということを疑問に思うわけです。生産基盤の強化ということには、いろいろの問題があります。たとえば土地改良もあるだろうし、あるいは畑地の問題もあるだろうし、あるいは機械化ということもあるわけです。しかし、ここ当分は、どうしたところで農業就業人口はそう減らないのですよ。そうするというと、もっと新しい農民の働く場を作っていかなければならない。鉱工業なり三次産業の面でなしに、農村の中でもっと働く場を作る以外にないと思うのです。そこで広げていくということですね。たとえ経営内容は高度化しても、もっと働く土地を広げていくということを第一次に考えなかったら、なかなか問題は片づかないと思います。そういう点はあの白書なりその他の中にも書いてありますように、日本の国上の中の上地の利用率が非常に低い。農林省自身でもすぐ手のつく所が百万町歩といい、あるいは百五十万町歩といい、残っている所があるということをお認めになっているわけです。さらに農林省の百万町歩とか、百五十万町歩という考え方でなしに、もっと大きな数字をわれわれははじき出すことができるわけです。それは、たとえば傾斜地をどう使うかという新しい利用法を考えれば、答えはいろいろ出るわけですが、そういうことについて、今年度の予算がここには書いてありますよ。しかし、本年度の予算でどういう裏づけがあるかということなんです。第一に、新規開墾は一体どうですか。一方において百万町歩、百五十万町歩というのが、すぐにでも手がつく所があるのだといいながら、新規開墾は一体どういう計画をお持ちになっておるのですか。昨年度に比べてどうですか。これは大臣の所管ですから、はっきりしておりましょう。ふえたのですか、減るのですか。

○国務大臣(赤城宗徳君) まあ土地基盤の確立というようなことはけっこうなことだが、そう期待も持てないのじゃないか、こういう御指摘もあったかと思います。しかし私どもは、今もお話がありましたように、既耕地につきましてずいぶんひどい所も御承知の通りあるのでありまするから、既耕地の上地改良というようなことを進めていき、ことに私どもも今までの欠陥だと思いますが、国営とか、県営とか、団体営とかの仕事のテンポといいますか、ズレ、これも相当出ておるのであります。こういうようなズレを極力なくしていくというようなことによって、既耕地に対す上地改良を進めていくということは、そこに一つの、生活水準も上げると同時に、人口の収容力といいますか、土地の生産性が上り、あるいはまた労働の生産性も上るというような形になりまするならば、人口の収容力も増すというようなねらいをもちまして、農業水産の基盤の確立強化というようなことで、それぞれの予算の措置をいたし、またズレを直すというようなことでやっておるのであります。

 それからもう一つは、今お話のように、土地の面積の増大をはかるということが必要だと考えております。そういうことでありますので、干拓等につきましても、非常に費用がほかよりかかるようなことでありますので、そういう必要もないじゃないかという一部の議論もあったわけであります。土地の造成という面から、そしてまた、農業の投資効果といいますか、投資効率というものは、そうほかのもののようにすぐ出てくるものでもないのを、ほかのもののような考え方で、すぐに効率が出てくると考えるのは間違いだというような議論もありまして、干拓等も昨年より少し予算面では多いのでありますが、そういうことで干拓も進めております。

 今直接お尋ねの開墾の方でありますが、開墾の点につきましても、やり方において既入植者のまずいことなどの是正をし、新しい入植等につきましては、また新しい方法によって直していくつもりでおります。それじや具体的に面積がどれくらいふえるような計画で行なっておるのか、こういうことでありますが……。

○江田三郎君 減るということだけ知っていりゃいいです。

○国務大臣(赤城宗徳君) 御承知の上で聞かれると思いますが、三十三年度の事業面積を申し上げますと、上地改良において百三十七万町歩、開墾において二十二万町歩、干拓において三万町歩、面積にいたしましてはその合計で百六十二万町歩を予定いたしております。

○江田三郎君 あなたの今のお等えで、たとえば土地改良などをするというと、人口の収容力がふえるのだと、しかし、そうじゃないと思うのです。上地改良をしたところで、農業への就業人口をふやし得るということじゃなくて、それは農業経営が改善されるというだけのことです。今までよりも多少生産量が上って、その一軒々々をとって見ると、生産量は上ってき、あるいは所得が向上するということであって、すぐにそれが人口の収容力をふやすというようなことではないわけです。人口の収容力をふやすんだ、就業人をふやすんだということになれば、やはり新しいものを開いていくということ以外に、私はあり得ぬと思うのです。これはもう大臣も御承知の通りです。ところが、新規開墾というようなことになってくるというと、あなた方は非常に消極的になっておられる。ただ既入植地の手直しというようなことはやっておられますけれども、新規の開拓ということになるというと、非常に消極的になっておられる。これはどういう原因があるのか。われわれが考えられることは、最近の地主攻勢が強くなってきた。農地の補償問題など出てきたそこで、開拓予定地についても農林省として非常に消極的になってきて、むしろ予定地として買い上げになっておる所を、もう一へん地主へ返そう、こういうような動きさえ私はあるのじゃないかと思うのです。そういうことと、私が一つ大臣にはっきりお聞きしたいのは、一体日本の食糧問題というものをどうお考えになるかということです。あなた方は原価計算をなさって、海外の方が安ければそれへ持っていくということなのか、あるいはそうではなしに、原価計算では合わなくても、国内の増産ということに持っていくのか。食糧自給ということは、これは非常に困難であると思いますけれども、そういう方向へ持っていくのかどうかということなんですね。そこで私たちは、やはり農業の百面では過剰就業の状態を考え、農村における潜在失業者が何百万という、こういうことを考えていき、しかも急場速に他産業に農業の就業人口を振りかえるわけにいかぬということになるならば、やはり農業という場で、新しい働く場所を作る以外にないんじゃないか、しかも、そうすることによって輸入食糧を少くすることができれば、今の、一応最近は貿易じりは黒字になりましたけれども、やはり将来なかなかそう楽観できるものではないと思うのです。やはりそういうような外貨の貿易じりの改善という面からも、そういうことが考えら参れるので、これは決して農村だけの利己的な考え方でも何でもない。一つ、もっと国内の食糧増産をするということを基本的に考えていかなきゃならぬのじゃないか、そのためには、もっと開墾ということをお考えになったらどうか。しかも、土地改良とか何とか言われますけれども、結局土地改良をやっても、それは一体農村のどういう階層が一番喜び得るのかということです。農村における零細経営にあえいでおるところの、半ば潜在失業のような状態が、土地改良によってどれだけの利益を受けるのか結局土地改良によって一番大きく利益を受けるのは、農村における少くとも中以上の経営をやっておる人々の問題です。ところが三百万とか、人によるといろいろな大きな数字を言いますけれども、そういうような潜在失業の問題があるわけだ、これをどうするかということが、あなた方も御承知の通りの一番大きい問題だと思うので、その点から見ると、自民党の農政というものは、三割農政ということをずっと言われてきましたけれども、結局その線ばかりを追っかけているんじゃないか。私は、この三割農政さえだめだということを、あとでまた言いますけれども、零細農の立場というものは一つもお考えになっていないんじゃないか、そういう気がするのですが、その点についてあなたのお考えをお聞きしたい。

○国務大臣(赤城宗徳君) 海外の農産物の生産のコストが、安いということならば、外国から農産物を輸入していく方がいいか、そういう政策かというような点にお触れになったのでありますが、率直に申し上げまして、そういう考えも一時あったように思いますが、私といたしましては、その考えとは逆でありまして、こういう零細農を特徴としている日本といたしましては、農業生産物のコストが高くつく。しかし、これは低くしたいとは思いますが、現実において高くついていることは、諸外国との比較においてはっきりしています。だからといって、日本国内における食糧の、今のお話のように完全なる自給ということは困難であるといたしましても、総合的な食糧の増産をはかっていくことが、日本の農政としてとるべき方針である。安いから外国から入れるというような考え方は、私はとっていないのであります。今の外貨の問題などにも関係がありますけれども、基本的に、やはり国内で総合的に食糧の自給度を高めていく、こういう方針をとっているわけであります。そこで、私どものとっていることに対して、一つ御批判があったようでありますが、上地改良というものは、上層農家に非常に有利といいますか、恩恵とは申しませんけれども、有利で、零細農に対しましては、それほどの効果がないじゃないか。人口の収容力ということも、これはあまりないんじゃないか、こういうことでありますが、私は、やはり一つは単作地帯もありまするし、…にいたしましても、よく整理された岡山のような所は別といたしましても、整理されないで単作地帯として放っておかれるものが非常に多いのであります。こういう所がL地改良をされて畑としても使えるということになれば、江田さんのお考えのように、その名目的な面積はふえないといたしましても、実質面においては田と畑になるということで、これはやはり耕地面積がふえたというようなことにもなる。五反歩ではなかなか家族が養えない。五反歩が田畑と両面に使える。それから畑が畑地灌漑されて、田のように、非常に収穫の保障もできてくるというようなことになりますれば、名目的な面積は同じでも、実質面積においてはやはり耕地がふえたと同じようなことになれば、実質的な耕地の面積の増加ということでなくても、やはり土地改良によって人口の収容力もある程度増す、こういうふうに私は見ておるのであります。ただ、今お話のように、土地改良というものが上層の農家に非常な効果が持たれるという見方でありますが、そういう面も多分にあるかと思いますけれども、少い面積の農家も、その地区の中においてやはり上地改良がまさるということになりますれば、その効果は、厚薄はあるといたしましても、やはり効果はあるというふうに考えておるのであります。もっとそれ以上に、零細農家に対しては、開墾等によってそこへ入植するといいますか、新しい農業の場を求めさせる方がなおいいことだというような御意見でありますが、私もそう思います。でありまするので、開墾等につきましても、これも御承知の通り、大規模といたしましては、機械化開墾というようなこと、あるいは北海道等におきましても、非常に未開発でありまするので、そういう方面にも開墾を進めてねるのでありますけれども、それからまた、単独に開墾ということでなくて、総合開発とか、土地改良という大きな中における開墾ということも出てくるのであります。開墾を推し進めないのは、地主勢力等によっての気がねといいますか、そういうことによるのじゃないか、こういう御指摘でありましたが、そういう考え方でこれをちゆちょするというような気持は持っておりません。面積等においてそうふえてはおりませんけれども、開墾可能面積結について、また財政的な考え方から、開墾につきましても相当力を入れていきたいと、こう考えております。

○江田三郎君 私は何も土地改良について消極的な効果しかないということを言っているのじゃない。あなたが言われるように、土地改良をやったら一毛作田が二毛作になって、人口の収容力がふえるということは、少し大げさ過ぎると思う。ただ、それは経営の改善になると思う。しかし、今まで一家族で作った一毛作が、二毛作田になったからと言って、二家族が入れるというような、そんなばかな話はない。やはり一つの農家の経営が改善されるということになるだけだ。だから、ほんとに八十五万というものを農業から差し引いていかなければ、とても所得の均衡までいかぬ、追っかけていくことができぬということをあなたの方でお考えになっているなら、もっと新規の開墾を考えなくちゃ仕方がないんじゃないかということを言うわけです。ところが、増反開墾の方は多少ふえているようですけれども、新規の入植というのは、むしろ昨年に比べて減っている。これは、地主勢力なんかに屈するのじゃないと言われますけれども、しかし、もしそうでなければ、あなた方当局が、最近開拓について口ではいろんなことを言われるけれども、非常に消極的であり、むしろ好ましくないと思っているのじゃないか。たとえば、私は先だって大臣に個人的に申しましたけれども、岡山県における日本原の演習地――駐留軍が使っておった――これが大蔵省に返還になった。そこで、大蔵省はこれをどうするかということ、あの日本原の土地については、農林省御自身は大きな開拓計画をお持ちになっておった。ところが、大蔵省から今度は防衛庁へ移管がえになって、すでに兵舎が、建築物が今できておりますけれども、これは、この間の衆議院の内閣委員会の論議を見ても、手続をせずしてやっているのであって、防衛庁の方が違法だということになっているわけです。ところがこの問題についても、一体広島における審議会において、農林省はどういう関係を持っておったのか。私の聞くところによるというと、事後になって、同日追加議案としてこの問題を取り上げたということで、農林省の岡山事務当局はまるでノー・タッチだということを聞いている、これじゃ全くなめられてしまっているじゃありませんか。これでもしあなた方が平然としているなら、あなた方は開拓について一体どういう熱意があるのかということを聞かざるを得ない。予算の関係ですぐできないというなら、できないでよろしい。しかし、少くとも農林省というものが開拓の計画を持っているのに、それを無視されてほかの方で協議をされて、あとでこの問題はこの間の会議でやりましたからと、こういう事後通告を突きつけられるということは、全く日ごろから農林省というものが、新規開墾についての熱意がないということを、はっきり実証していると思う。そこで私は、そういう問題はそういう問題として大臣にお聞きしたいのは、あなたの方のこの間の話を聞いておりますというと、土地利用調査をやられるということを聞きました。一体日本の土地利用というものを、基本的に、あなたはどういう方向へ持って行かれたらいいとお考えになっているのか。私が今申すまでもなく、あなた方の農林白書でも取り上げられているように、日本における農耕地の面積が全国土の一五%である。これは一体――これはもう大ざっぱな数字ですよ、こまかいことはあなた方は調査しなければわからぬと言われますけれども、いやしくも農林大臣として大きな構想として日本の国土の何パーセントくらいが農業に利用できるのだ、そういう見通しを持っておられるか。何パーセントくらいが広い意味の農業に利用でき、何パーセントくらいは山林として置かなければならぬということについては、いやしくも農林大臣としては、一つの抱負経倫を持っておられると思いますので、それについてのあなたの考えをお聞きしたい。

○国務大臣(赤城宗徳君) その前に、先ほどのお尋ねの中で、ちょっと私の方から申し上げておきたいことがあるのでありますが、三十三年度の予算におきまして入植戸数が二千五百戸でしたか、昨年より入植の戸数が減っております。これは、減らしました理由は、旧入植地におきましては、戦後の緊急開拓でもありましたし、入植してもなかなか農業に就業するまでの期間が長かったのであります。耕地等の整備ができませんので。そういうことで、せっかく入っても、営農不振というような例がありましたので、新しい入植計画につきましては、機械開墾の様式などを入れまして入植と同時にすぐ仕事ができるようにした。それから面積等も広げるようにした。それから資金なども極力融通するようにした。いろいろの方面で、戸数は減っておるのでありますが、入れば、今までのようでなく、営農がよくやれるように、そういうねらいで予算を措置したのでありますが、もっと戸数をふやしたかったのでありますが、予算の都合で入植戸数は減りました。入って行くものにつきましては、前よりもずっと、いい条件のもとで農業をやっていける、こういう方針でやっておるわけであります。

 それから千土地利用の関係で、今年の予算におきましても、土地利用の調査ということをやることにいたしておりますが、これにつきましては、もちろん耕地もありますが、耕地だけではなく、御承知の通り畜産、畑作というようなことも政策として取り上げておりますので、草地改良というようなことに適しているものについては、飼料の自給化という問題から、草地の造成ということに力を入れたいということで、この方面の予算なども、昨年よりはよけいに出しておりますが、草地として残すものは草地、また森林としてこれを拡大造林といいますか、新しく植林するというような場合には森林として使う、あるいは耕地として、田畑として使うのに適当するかどうか、こういうような農業全体の目的から見て、どういうふうにその土地を利用した方が最もいいかという調査をするということにいたしているわけであります。そこで、日本の耕地は合一五%くらいであるけれども、どのくらいに目標を、大ざっぱな目標でも持っているかということでありますが、これは農林白書等にも開墾可能面積とか、要土地改良土地というような面積などを掲げておいたのでありますが、開墾可能地としては、私どもといたしましては、目下面積といたしましては百万町歩、干拓可能面積といたしましては九万町歩、こういう目標で政策を進めておるのでありますが、耕地としてどれくらいまで持っていけるかというパーセンテージにつきましては、今何パーセントというような数字をちょっと申し上げる材料を持っていません。面積につきましては、そういうふうな目標であります。

○江田三郎君 開墾が百万町歩とか、干拓が九万町歩とか、あるいは要土地改良地区はどれくらいあるとか、これなら別に土地利用調査の必要はないわけです。もうすでにあなた方の農林省で今までいろいろ調査をされて、その答えは出ているわけです。私が今あなた方の方が土地利用調査をやられたというのは、現在すでに農林白書でも書いているように、食糧の供給力が少いのだ、あるいは生産性が低いのだとか、いろんな日本の農業の五つの欠陥というものをあげておられるわけです。こういうような農業白書を出しておって、土地利用調査をやられる以上、もっと根本的に旧来の調査でなくて、新しい角度から、日本の国土をどう総合的に利用したらいいかというこをお調べになるのが、今度の仕事だと思う。もしそうでなければ、あらためて土地利用区分、あるいは土地利用調査をやる必要がないわけです。そこで、たとえば山林についても、今の百万町歩という開拓可能地ということだけでなしに、もっと、たとえば傾斜地を收草地にするにはおよそどのくらいまでいけるかというようなこと、あるいは果樹園にできる所もある。いろいろな問題があるわけです。そういう問題について、藤山さんが農林大臣になったというなら、これは聞いても無理だと思うが、あなたのようにほんとうに農業をなさって、長い間、農政について関心を持っておられる人なら、およそ将来の構想として、日本の全国土の中で、木材はこれだけ要るから、およそこのくらいの面積は要るだろう。このくらいのものは耕地に持っていけるだろう、このつくらいのものは草地、その他に持っていけるだろうという一つの見取図は持っておらなければならないと思います。またそうでなければ、農林大臣の資格はないと思う。私は、そういう見通しを聞いているので、今あなたは、農林省がすでに調べられたところの開墾可能地百万町歩、干拓可能地九万町歩というようなことを言っているが、それは事務当局の答えです。大臣の答えをして下さい。

○国務大臣(赤城宗徳君) 私がお答にした上地利用調査ということは、もちろん今、江田さんがおっしゃられた総合的な面から土地利用の調査をするということを申し上げたつもりであります、例にも引かれましたが、傾斜地につきましては養蚕もできるだろうし、そういう所には桑を値にるというようなことも必要でありましようし、あるいは高地における畜産というようなこともやらなくちゃならぬし、また、段々畑等につきましては耕作が非常にむずかしいのであります。こういう所につきましては、道路や、その他についていろいろ考えなくちゃならぬ、こういうふうに、総合的な土地利用についての調査をする、こういう意味で申し上げたのであります。後段申し上げましたのは、耕地として何パーセントくらいのものを目途としているか、大臣としてそのくらいの頭はあるだろうということでありましたので、現在までの調査において、開墾可能地といいますか、開墾をしていけるような面積、あるいはまた、土地改良の必要な土地というものについては、こういう数字があると、これは申し上げる必要もなかったのでありましょうが、パーセンテージを今持っておりませんでしたから、そういうことを申し上げたわけであります。

○江田三郎君 だから結論的にいえば、農業白書というものと、その後に出てくるところのあなた方の基本政策は、まだ多少関連はありますが、しかし、実際の政策というものは何らつながりがないということですよ。しかし、いやしくも農林省は農業白書をああいうふうに天下に公表された以上は、このしりぬぐいをする私は責任があると思う。そうでなければ無責任である。そういうことについて白書は白書、政策は政策というまことにばらばらだと思うのです。そういう点、時間がありませんからあまり詳しいことを申しませんが、この生産基盤の拡充強化という点について、私どもは残念ながら、ああいう白書の出ている方向とは、政策とはまるで違っている、あるいは経済の長期計画ということが目標としているところから見ても非常に違いがきているということを言わざるを得ぬのですが、さらにこの流通血の問題についてもまるで方向が誤まっているのではないかと思うのです。たとえばこの流通面の政策として出ているのを見るというと、今度酪農基金の問題があります。それからさらに農産物の流通の改善のために農林中金や、あるいはその他の金融機関から、そういう方面への融資の道を講ずるような法律改正をなさろうということが出ております。しかし大臣、これをお考えになって、たとえば今でもこの決算委員会において農林中金から日本農工ですか、何かああいうような問題が出ておりますけれども、一体農産物を扱う流通機構に対して中金あたりは融資を積極的にできるような施設はどこへやるのですか。ほんとうにはっきりとした実力のある会社なら中金から借りなくても資金はちゃんとどこからでも借りますよ。今までの中金あたりの行き方は、あるいは公庫あたりの行き方を見てみると、もしそういう道を開けば必ず政治家のひもがついたものか、あるいは二流、三流会社の方に融資するだけにとどまると思うのです。そんなことで流通機構というものが改善できるものじゃないと思います。しかもこれは、大臣も御承知のように、最近における系統預金が減ってきておる。なぜ減るかということです。これについて、あなたはどういうお考え方をしておられるか。これは、私はいろいろ原因があろうと思いますけれども、系統資金として預金をしたところで、それが中央へ集まって農林中金の段階になり、あるいはその前の県信連の段階でもよろしいけれども、どこへ一体その金が流れていくかということです。農民の汗とあぶらの金を系統農協、単協を通じて集めて、その金が農業以外の方へ使われたならば、一体だれが一生懸命になって系統預金をふやさなければならないという努力をしますか、そこに私は地方の単協なり、あるいは信連の諸君のレジスタンスが出ていると思うのです。意味がないと思うのです。ほかのかに持っていかれるなら高金利を追っかけてどこまでも行った方がいいのではないか、その方がよほど農協の経営が改善されるのではないか、それをさらに今度のように農林中金法をかえたりなんかするこの措置というものは、ほんとうにあなたはこれで流通機構が改善されるという確信を持っておられるか、もしこういうことをおやりになれば、もっともっと系統金融の方の利用率が減ってくると思うのです。預金が減ってくると思うのです。しかもこういうようなところへ貸し出しをしたところで何らこの流通機構の改善になるものじゃないということは、私は総括的に考えているのですが、その問題はどうですか。

○国務大臣(赤城宗徳君) 流通機構につきましては、今まであまり手を触れておらなかったのであります、農林政策といたしまして。しかし、私からくどくど申し上げる必要もないと思いますが、今まで農業も生産面に非常に力を入れてきましたが、流通方面はおろそかにされて参りました。農業におきましても商業的農業の部面が非常に開けてきておりますので、流通機構方面において農民の所得を支持していくということが必要だというふうに考えて流通機構に触れるのは今までタブーのようにされておったのでありますけれども、農林省としてもこの方面に力を入れろというようなことで乗り出したわけであります。でありますので、これによって流通機構が全面的によくなるとは私ども常々考えておりませんけれども、いろいろな、血から流通機構を改善していきたい。まあ、共同出荷とか、共同販売とか、出荷調整とか、これは大へん奇抜な政策ではございませんが、そういう方面やら、丸東の問題などがあったからというわけではありませんけれども、中火市場の改正と、こういうことも考えてきたのであります。そのうちで、今御指摘の系統の金融を系統外に貸し付けるというようなことはやるべきものではないと思うのであります。中金の問題等につきまして法律的にいえば、それは法律的に違法とは言いますまいけれども、寝際の現われから見ますならば、非常に問題のある貸付方であり、それがまた焦げついているということでありますので、私どもといたしましても、これは全く遺憾千万であり、中金のあり方としてとるべき方法ではないと私は考えております。

○江田三郎君 ちょっと大臣、冗談じゃありませんよ。今度法律を改正して、系統外へどんどんできるような改正案を出しておるじゃないですか。

○国務大臣(赤城宗徳君) そこで、私の方でそういう点から法律の改正を考えておりますのは、中金ではないのであります。農林漁業金融公庫のことで法律案を改正したいということで追って御審儀を願いたいと思うのでありますが、それはこういうことなんであります。

 御承知の通り、農産物の価格支持をいろいろな面からいたしておるのでありますが、まあ米麦、繭あるいはまた価格安定の農産物というものもあるわけであります。そこで、系統へ金融するということは当然でありますが、農産物の価格安定に符与する、こういうようなことに対しましては、農林漁業金融公庫からも金融の道を広げてもいいじゃないかそれで特に考えますのは、カンショ、バレイショ等澱粉につきまして価格支持政策を行なっておるのでありますが、このカンショ、バレイショ等が相当増産されておりますけれども、これは一面においては飼料等に転換させていきたい、こう考えております。現在におきまして、そういうものが相当増産され、これにつきましては、昨年も価格を一昨年と同じように据え置いて、ということで価格を支持しておるのでありますけれども、しかしこれは、やはり消費面もふえなくちゃなりませんし、そういう点から考えますというと、結晶ブドウ糖といいますか、これを砂糖化するというようなことが必要であります。それは一面からいいますというと、さっき国内食糧の自給度を増した方がいいというお考えもあり、私どももそう考えておりますので、砂糖の面から考えましても、北海道におきましてテンサイ糖というようなことをやっておりますが、やはりカンショ等からも砂糖化した方がいいというような考え方を持っております。こういうふうにいたしまして農産物の価格安定に寄与すること、こういうふうにしぼりまして、そういうことに対しては融資の道を広げていくということが必要である、こういう観点から、農林漁業金融公庫の中で農産物価格安定に寄与するというようなことでありまするならば、金融の道を広げていくのもいいことじゃないか、こういうような観点から改正案を提出しようという、こういうことであります。

○江田三郎君 私の誤解かもしれませんが、しかしあなたは、この間説明された説明書によると、この印刷物によると、第十ページには、以上の施策に加えてこの際中央卸売市場の業務の改善のため中火卸売市場法の一部を改正し、また農林中火金魔及び農林漁業金融公庫より農林水産物の流通合理化に資する資金を融通する道を開くため、こう書いてあるので、あなたは法律をお出しになるなら、私はこの通り受け取らざるを得ない。
○国務大臣(赤城宗徳君) 私も不注意にそういうことを説明したかと思いますが、農林漁業金融公庫だけでありまして、訂正さしてもらいます。

○江田三郎君 そこで、そのように農林漁業金融公庫の問題にしても、私どもはもっと流通機構改善ということは、どこへ重点を置くかということは、生産団体に重点を置くのでなければできるものではないと思っておるわけです。流通機構を強化する、強化すると言ったって、しからば中央市場の問題を見ても、その他の問題を見たところで、とてもうまくいくものではないのです。現に、たとえば今年の天候の関係か何か知りませんけれども、野菜がただのようになったということは、どこに原因があるのか、これを流通機構を改善さえすれば、これは一体防ぎ得るのかどうかということになると、根本問題は生産の場にあるわけです。もっと計画的な生産、計画的な集荷、そういうところにあるわけで、ほんとうに流通機構を改善するなら、むしろ生産団体の方へ重点を置かなければならぬと思う。あなたの政策は逆な方向だと思うのです。もちろんあなたの言われるように、余剰澱粉の砂糖化というようなことになれば、これはなかなか生産団体の小さなものでできるわけではありません。しかし、そういうことについてほんとうにあなたできますか。そういうことが今ずっと言われましたが、その政策をおやれになれますか。澱粉を、たとえばブドウ糖化した場合に、一体今度は澱粉の相場をどうしたらいいのですか。澱粉の相場は据え置きだと言われるのですが、澱粉の相場を据え置いたときには、一体ブドウ糖の生産は成り立ちますか。澱粉の相場を据え置いて、ブドウ糖の相場をさらに支持してやろう、これが一つの成り立つ企業として金融しょうというならば、砂糖相場を変えなければならぬ。砂糖相場を変えるときにどういう措置をとりますか。今でも砂糖工業の超過利潤ということが問題になってきたわけでしょう。現に、日新製糖が、古い話ですが、最近問題になっておる。そういうときに、さらにカンショ糖の相場を上げなければならぬ、上げなければブドウ糖が成り立ちませんよ。これ以上超過利潤が出るような措置を野放しにするわけにはいかんでしょう。しからば超過利潤というものは、たとえば食管とかその他のところで吸収させるということをお考えになっておられるのか。せっかくの思いつきでありますから、あなたのおっしゃったことですから、もっとこれは詳しく聞いてみたい、これはどうですか。

○国務大臣(赤城宗徳君) 一面においては、澱粉の価格を下げるというような考え方も一つの方法としてあると思います。

○江田三郎君 それじゃ、農産物の価格支持じゃないじゃないか。

○国務大臣(赤城宗徳君) そういう考え方もあろうかと思うのでありますが、私はブドウ糖にするという工業の方を進めていくということを考えております。そこで、現実に事業に従事している者とか、あるいは学識経験者とかそういう者を集めて、実は今澱粉価格対策について、そういうことをする場合に、生産農民にいろいろなものを転嫁しないで、どういうふうにこの事業が成り立つかというようなことで、検討を続けてもらっているような状態でありますので、今直ちに澱粉を下げるのだとか、どうこうという、こういう結論を持っているわけではございません。

○江田三郎君 せっかくこの法律を変えてそうして改正しなければならぬというのは、それは一体どこに問題があるのかといえば、あなたは一つの大事な例として澱粉の問題をおあげになった、ところが澱粉の問題はどうするのだと言って突っ込んでいくと、まだこれは学識経験者を寄せて研究中であるからということで、海のものとも山のものともわからない。そういう根拠の薄弱なものに基いてこういう法律を改正することができるかどうか。国会のわれわれが、それを簡単に同意を与えるわけにいかないじゃないか。さらに流通機構の問題について、私どもは、たとえば会三番問題になるところの畜産物の問題について、あの取引方法を変えていくのだということで、たとえば大きな冷蔵庫の問題なんか出ておりますけれども、ああいう畜産物の一つの流通機構の改善の問題にしても、私は農林省は非常に卑怯だと思う。たとえば家畜取引法をお変えになった、そうしてオープンのせり市場を作った、ところが、私は岡山県の例を引きますけれども、周橋にりっぱな家畜市場を作った、ところが広島においてはどうかというと、今まで通りの、旧来の取引が行われているじゃありませんか、法律を作られて、それに基いて、一方では合理的なものを作った、しかし、古いボスが支配しているようなところの旧来の市場に対しては、一つもよう手を入れぬじゃないですか、そうなってくれば、せっかくやった者は、正直者はばかを見るということになってしまっているのが現実です。そういうような家畜取引の問題についても、古いボスやなんか、そんな者に対しては、一つもメスを入れないで、ただ上っつらばかりやる、流通政策を見ておると、農林漁業金融公庫法を改正したりなんかしておやりになっても、結局は政治家のひもつきの会社、民間等からの、決算委員会で問題になっているような、つぶれかけた二流、三流の会社などへ融資してしまって、ほんとうの農民の政策にならぬということを私は言わざるを得ぬ、そういう点、あなたどうお考えになっておりますか。

○国務大臣(赤城宗徳君) 今例に出されましたが、いたみいる質問であります。全国にわたって数カ所、公正取引ということで進めてきておりますので、いいことですから、私やろうと思って進めているのであります。しかし、法律の根拠が実はないのです、強い力の……で、今までのボスのような関係などで、実は東京なども今手を入れているのですが、手を入れて、いろいろな面からこれは直していきたい熱意を持っているのです。できないからだめだ、こう頭から言われてしまっては、それまででありますが、私どもはやはり生産者の立場上からそういうものも解決していきたいということで、改めて出てきたところもあるでしょう、しかし今お話のように、改めたから損した、正直者はばかを見るというような結果を生ぜしめてはいけないと思いますので、残っている点につきまして、強く改革を推進しております。ただそれじゃ、やらない所はどうであるか、これに対して刀を抜いて、それを私どもの持っている方向へ引っ張っていく、こういうまあ法的な基礎といいますか、刀を抜くといいますか、そういう裏づけはないのでありますが、その中において、公正取引の努力をしているのでありますから、この努力については、私は買ってもらってもいいと思う。まあただ、正直者がばかを見るという結果をもたらすようなことは、私の力として考えなくちゃなりませんが、私どもはそういうことで、大いに推進して、各方面とも折衝を重ねております。

○江田三郎君 努力を買ってくれと言ったって、買うような実績を示して下さい。買えないじゃないですか。現在のところ、そういうような家畜の公正取引の方向に反するようなことをやったところで、農林大臣に解散命令を出す権限がないことはわかっております。知事でなければできないし、あなたは、そういうことは不合理だということを認めておられる。努力を買ってくれと言うけれども、不合理だということを認められて、しかも法的根拠がないというなら、なぜ法律の改正をお出しにならないのですか。そういうことが根本じゃないですか。そういうことを一つもしないで、あやしげな金融の道を開くということをおやりになると、われわれは遺憾ながら努力を買ってくれと言ったって、買いようがないでしょう。買いたいですよ、大いに。買う政策をやって下さい。なぜ法律を改正しないのですか。

○国務大臣(赤城宗徳君) ですから、中央市場法等についても法律の改正をしようとしておるわけであります。

○江田三郎君 中火市場法だけじゃ片づかんじゃありませんか。

○国務大臣(赤城宗徳君) 何から何までというようなことも一度には……。

○江田三郎君 まあ、いろいろ議論はあるのですが、きょうは終りにしておきましょう。


1958/02/21

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