1957/10/02

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26 参議院・大蔵委員会


昭和三十二年十月二日(水曜日)

○委員長(豊田雅孝君) これより委員会を開会いたします。
 議事に入ります前にちょっと御報告しておきますが、委員長理事打合会におきまして、本日は、午前中塩業対策に関する件、午後はたばこ専売事業に関する件について、それぞれ専売公社当局に対しまして質疑を行ないます。明日は、午前中は租税に関する件、午後は金融問題に関する件につきまして、大蔵当局に対し質疑を行うことに決定いたしましたので、御報告いたしておきます。

○委員長(豊田雅孝君) それでは、租税及び金融等に関する調査のうち、塩業対策に関する件を議題といたします。
 まず、提出されております資料について簡単に説明を願います。

○説明員(三井武夫君) 前回の委員会で御要求のありました資料につきまして、完成いたしましたものから御提出申し上げることにいたしまして、その他にまだ現在調製中のものがございますので、その分もでき次第お出ししたいと思います。

 本日御配付を願いました分につきまして一応御説叩いたします。
 第一表、昭和三十二年度分塩生産費推定表というのがございます。これが前回御説明いたしました本年度の収納価格につきまして、公社から六百五十円の引き下げ案を出しておりますその根拠でございます。そこにございまするように、三十一年度の詳しい生産費の実情を調査いたしまして、それに対して七五%のバルク・ラインを引きましたものが、一番右の合計欄にございまする一万二千八百四十二円でございます。これを三十二年度の生産量をもとにいたしまして、三十二年度分に改算いたしましたものが――計算を改めましたものが一万二千四百六十五円、これから副産物の収入を百二十六円引きました毛のが一万二千三百三十九円ということに相なります。この一万二千三百三十九円をもとにいたしまして、一応六百五十円の引き下げをいたしまして、本年度収納価格一万二千三百五十円、こういたしたいというわけでございまして、三十一年度の一万二千八百四十二円という数字の出て参りましたバルク・ラインの内容につきましては付表の(1)、それから付表の口には、方式別に詳しく採かん費、せんごう費、管理費の内訳を示してございます。

 それからその次は、塩業経営形態調というのがございます。現在の塩業の経営形態別に内容を示せという御注文でございますので、調製いたしましたのでございまして、現在許可を与えておりまする塩業者につきまして、塩田の形式で製塩いたしておりまするもの、これは個人組織のもの、組合組織のもの、会社組織のもの、それぞれございますので、その内訳をお示しいたしてございます。それから海水直煮製塩の、これは全部会社組織でございまして、これが六礼ぐらいございます。それから温泉熱利用その他とございまするのは、これは他の工業を営んでおりまして、それから副産物として塩ができて参りまするものも、やはり一応許可をいたしたものの中に入っておりまするので、それらを含めまして、個人組織のもの、会社組織のもの、それぞれの内訳を示してございます。

 三十一年度の生産実績で申しますると、何と申しましても塩田製塩が大部分でございまして、トン数は五十六万二千二百九十一、総額で、公社の分を除きまして六十四万トンでございます。中の五十六万二千トンが塩田から生産されております。それから海水直煮の分は、三十一年度はまだフルに操業しておりませんものが多いものでございまするから、実績は五万四千トンでございます。それから温泉熱利用その他が二万三千トンでございまして、六十四万、そのほかにカッコの中に書きましたのは、公社の直営いたしておりまする小名浜と防府の両工場分でございます。この分が三万トン、合計いたしまして六十七万トンというのが昨年度の実績でございます。

 それからその次に、昭和二十七年度から三十一年度までの、入浜式と流下式とに分けまして、塩田の採かん成績をお示しいたしました。下の方に流下式の柵がございます。第四表でございますね。昭和二十七年ないし三十一年度局別入浜式流下式塩田採かん成績比較表という一番最後の紙で、六ページでございます。その下の方の流下式という欄でございます。その欄の一番下に計(平均)という欄がございまするが、ここをごらんいただきますと、流下式の成績が、過去五年間にどういうふうに変ってきておるかということが御一覧願えるのでありますが、二十七年度は、一ヘクタール当りの生産塩量は、全国平均では七十六トンでございます。一番成績のいいもので百トンをわずかに上回っているという程度でございます。これが二十八年度には百五トンになり、二十九年度には百二十四トン、それから三十年度には非常に上りまして百九十一トン、この辺になりますると、成績のいいところでは二百六十二トンとか二百二十三トンとかいうようなものが出て参ります。それが三十一年度ではさらに上りまして、全国の平均では、一ヘクタール当り二百二十二トンというところになっております。その中で一番成績のいいのが岡山地方局管内、その平均が二百七十四トン、それから徳島地方局管内が二百六十五トン、高松の地方局管内は二百五十八トン、こういうふうに逐年成績が上ってきております。それが内地塩の増産の何と申しまするか、一番大きな要素をなしておるところでございます。

 それから別に、塩販売一トン当り公社諸経費調というものを一枚紙にして出しておりますが、これは御注文によりまして三十一年度の決算の数字と三十二年度の予算の数字につきまして、公社の塩販売に要しまする諸経費を調べたものでございまして、購入、販売に関する経費、試験研究費、以下、塩の販売に振りかけまするところの経費を調べ上げまして、それをトン当りに直しましたものが、三十一年度の決算ではトン当り三千三百四十一円、それから三十二年度の予算では三千二百十円ということになっております。このほかに塩の販売の経費といたしましては、塩の元売人に与える手数料と運賃、これが二千五百円でございます。それから塩の小売人に与えます手数料――これは包装塩の場合にはトン当り二千円、それから散塩売りの場合にはトン当り四千円ということになってございますので、それを加えましたものが塩の販売に要するすべての中間経費ということに相なるわけでございます。
 一応御説明申し上げました。

○江田三郎君 今の説明の中で、この付表第二ですね、三十一年度分方式別の生産費総括表というのは、これは平均値ですか。

○説明員(三井武夫君) これは加重平均をいたしました、ウェートを与えました平均の数字でございます。

○江田三郎君 この際、この生産費は、内容がトータルかどうかということは別問題にして、一応こういう数字を出されておるのですが、企業利潤というものはどういう工合になっておりますか。

○説明員(三井武夫君) 前回も御説明いたしましたように、バルク・ライン方式をとっておりまするので、直接企業利潤というものを計上いたしませんで、結局企業によりまして企業努力をいたしまして、パルク・ラインといいますか、この収納価格と実際の経費とのさやがその企業としての利潤になる、そういうやり方をいたしておるわけでございます。

○江田三郎君 普通の、企業が存続できるという場合には、必要な経費を払うだけでなしに、当然、資本主義社会における企業の平均利潤というか、一応の企業利潤というものを見なければ存続し得ないと、こう私たちは考えているのですが、そうするとそのバルク・ラインを設定する場合には、適正なる企業利潤を含んだものでいく方がいいんじゃないかと思いますが、それはどう考えておりますか。

○説明員(三井武夫君) 実は、このバルク・ライン方式によりまする生産費、収納価格の決定方式に対しまして、今お話のございましたように、何と申しますか理想生産費と申しまするか、そういうものをはじきまして、それに適正の利潤を加えまして、それを基準にして収納価格を算定する、こういう方式がもちろん考えられるのでございまして、私どももそういう方式をむしろとるべきではないかという検討もいたしているのでございますけれども、従来のところは、塩の収納価格はこのバルク・ライン方式によりまして決定するということになっておりまして、適正利潤を見込むというような方式を採用していないわけです。従いまして、実際上バルク・ライン上のものは利潤はない、それからバルク・ラインを下りまするものはむしろ赤字を出しているということになるのでありまして、バルク・ラインをこえまして成績のいいところは、その差額だけが利潤としてふところに入るという結果になるのでありますが、御承知のように虚業の経営も非常に企業ごとの成績が違いまして、その一番能率の悪いところを基準にして収納価格をきめるということもできませんので、やはり現在としては、この七・五%程度にバルク・ラインを置きまして、それをもとにしてきめるという従来の方式を踏襲するということで参っておるわけでございます。

○江田三郎君 別の表の、付表第二の場合に、それぞれ真空式とか蒸気利用式とかいうので生産費が出ているわけです。これは、今の御説明でいくと、加重平均になっている、これにはもちろん適正利潤というものは含まれていない、こうですね。そうなりますというと、かりに二万三千円の収納価格というと、これで加重平均ですから、まあ企業全体として見れば、利益の出るのは真空式及び平釜式、温泉熱利用式ということで、あとの加圧式と蒸気利用式は、これは加重平均で見た場合には赤字だと、こうなってきますか。

○説明員(三井武夫君) 今お話しの加圧式につきましては、先ほど申しましたように三十一年度の成績はまだフル操業をいたしておりませんものが非常に多うございましてあまり良好の成績をおさめておりませんので、三十一年度につきましては、今お話しのように、この数字から見ますと赤字を出すところが相当ある。それから平釜式は御承知のように非常に原始的な、いわば時代おくれの生産方式でございますので、どうしてもコストが高くなり、従って平均的に見ますれば、現在の収納価格では利潤を上げ得ない、赤字が出てくるという状況にならざるを得ないのであります。

○江田三郎君 これは部長、ちょっと違うのですか、こちらの数字はこれでいくと……。

○説明員(三井武夫君) 蒸気利用式が赤字になっているという状況でございます。

○江田三郎君 そうすると大体あなたの方では、バルク・ライン方式をとられようと何であろうと、一体塩業というものは、適正利潤というものはどのくらいだとお考えになっているのですか。いわゆるあるべき姿の適正利潤としてはどのくらい見ておられるのですか。

○説明員(三井武夫君) 今申しましたように、現在としては適正利潤を見込むという方式をとっておりませんので、その適正利潤はどのくらいかということにつきましては、今直ちに申し上げる、何といいますか標準を持ってないわけでございます。

○江田三郎君 そんな親切のない話は僕はないと思うのです。バルク・ラインを設定したところで、およそ塩業全体としてはどのくらいな適正利潤があるかということを見て、七五%にするか、八〇%にするか、何%にするかということはきまってくると思うのです。その点、適正利潤は考慮のほかだということはちょっと納得できない。

○説明員(三井武夫君) 私どもの了解している限りでは、バルク・ライン方式をとります限りは、利潤の観念をそこに入れてないわけでございますので、バルク・ライン方式できまりました収納価格と、実際に企業努力によりましてコストを下げましたその差額が、当然利潤として個々の企業に入ってくる。その利潤の額というものは、企業の努力によって、努力をすればよけいの利潤が獲得できるということで、実際問題として全国の塩業が相当の黒字を出しておるということは事実でございますので、利潤は出ておりますけれども、その利潤をいかにしたらいいか、あるいは公社としていくらの利潤を適正と考えるかということにつきましては、現在は基準を持ってないというわけでございます。そしてこの状況で生産費を今後もできるだけ合理化して、私どもといたしましては一万円くらい少くとも下げたいということを考えているわけでございまするし、また塩業者側としても同じ目標でもって現在努力しておるわけでございます。その目標の到達までの間は、ぜひこの方式でもって何とかしてバルク・ラインの上に上げる努力を続けてもらって、そして今の経営を、生産費を下げていくという方式を継続したいというふうに考えております。

○江田三郎君 そうしますとバルク・ラインというものは七五%にきめるか、六〇%にきめるか、八〇%にきめるかということは、一に公社の自由なる、何ら根拠のない意思によって決定されるということになるのですか。

○説明員(三井武夫君) 七九%をとるか、八〇%をとるか、あるいは七〇%をとるかということは、公社の決定できることでございますけれども、従来いわゆるマル公と申しますか、政府の公定いたします場合の価格の決定の場合には、大体七五%程度のバルク・ラインできめるというのが例になっているように承知いたしております。

○江田三郎君 だからその七五%というようなことをかりにきめるとすれば、その根拠には企業を存続させる、あるいは塩業を発展させる、あるいは消費者のためをはかるとか、何かの目標があって七五というものがきまっておるのであって、何ら根拠のない、自由なる架空の条件においてできる数字ではないわけです。私は、そういうときに当然塩業というものが企業として存続し、しかも生産が増強されるという建前が一つはあると思うのです。公益専売といったところで、一つはそういう要素があるわけで、その中には当然企業の適正なる利潤というものは考えていかなければならぬと思うのです。かりに付表二のような数字が出てくるのなら、少くとも蒸気利用式及び加圧式については赤字になっておるのだ。そうして真空式、平釜式、温泉熱利用式については若干の黒字になるのですが、この場合にどれだけが適正な利潤と見てよいかということですね。どの程度と見てよいかということは、それはあなた方の頭の中にあると思う。利潤を全然与えないというなら、七五%でなくてもよいのですから、どこへ持っていってもよいのです。

○野溝勝君 今のに関連があるので継続してお答え願います。今、江田さんの質問は非常に重大でして、一つ部長さんの方からざっくばらんにお答え願いたい。というのは、私、先般大蔵委員会の命令を受けまして四国の産業調査に参りました。香川県は坂出の塩田を視察して参りました。その際に、特に地元の方々が言うのに、どうもわれわれは弱い商売です。実は非常に保障されておるように見えるが、いつも不安でたまりません。そのわけはどういうのかと聞いたところが、部長さん御承知のように、あすこは日本においても優秀なる流下式の塩田です。最近特に設備を改善いたしました。莫大なる借金をして、この借金がいつ返せるか。で、さような施設を改善したり、努力をしなければやっていけないということでした。そこで流下式塩田に転換してからの成績はどうかと聞いたところが、一ヘクタール当り百三十五トンぐらいであったのが、今度は二百五十一トンから五トンに上昇してきた。こういう話です。それで今示された資料によりますと、なるほど高松は二百五十八トンという成績を示しておるから、この意見は合っておるわけであります。そこで、どうして一体そんなに心配しておるのかと聞きましたら、単位コストの低下によって公社の買上価格が引き下げられる心配がある。また、そういう傾向にある。そうなるとわれわれは非常に不安でたまらぬ、――そこで私は今、江田さんの質問されたようなことが重大な問題だというのは、生産者から見ると、設備改善をして非常に生産が上昇した。それを今度は買上価格が引き下げられたというようなことになりますと、成績を上げたはいいが、借金をしてあるでしょう。その方の返済はしなければならぬ。それで切り下げられたということになると、容易じゃないですね。そこで生産費の補償問題というのが重大な問題になってくるわけです。それが当局のお答えでは、どうもあいまいなんです。バルク・ラインばかりを強調しておって、そのバルク・ラインを一体どこを標準として線を引くのか、こういうことはまだ聞いておらぬから、これからお答えがあると思いますが、そういう点において一つ部長さんの方で見た……せっかく業者も今、流下式に改良いたしまして、努力をして、借金をして困っておる。当局から親切に御答弁を願いたい、こういうわけです。

○説明員(三井武夫君) 御質問の趣旨よくわかるのでございまして、なかなかお答えむずかしいのでございますが、たびたび申し上げまするようにバルク・ライン方式という方式を採用することの是非は、これは別に問題があると思います。あるいは先ほど申しましたように理想生産費というようなところをはじきまして、適正利潤を、これをまた幾らに見るかということが問題でありますが、適正利潤を加えて、それを基準にして収納価格をきめるという全く別の方式に切りかえる方がよろしいかどうかという問題、これは私どもといたしましても十分に検討いたさなければならない問題だと思っております。現在のバルク・ライン方式によりましては、再々申し上げますように七五%、つまり全体のうちの七五%までは利潤を得られるか、あるいは収支とんとんというところで収納価格をきめるわけでございまして、二五%の方だけは、これは僅かに赤字が出るわけでございますけれども、先ほど申しましたように、この二五%の赤字の出る業者、これはもう実に気の毒なわけでございまするけれども、その経営形態が非常に非能率であるとか、あるいはまだ十分な操業成績をおさめてないとかいうようなことで赤字が出る。しかしこれは赤字が出ることを、何といいまするか、当然の前提とするというようなことではないんでありまして、何とか企業の合現化によりましてバルク・ライン線上に上ってくる、浮び上ってくることを期待して、そうなればそういう企業も幾らかの利潤を得られるところまで行き得るんだということで、この塩業の合理化を促進する一つの効果をもねらいまして、現在はバルク・ライン方式をとっているわけでございます。で、その……。

○江田三郎君 ちょっと塩脳部長さんね、そのバルク・ラインをやっている、バルク・ラインをやっているということ、そのことを聞いてるんじゃないんです。あなたの方がバルク・ラインということをおやりになってるなら、バルク・ライン方式でもいいが、そのときに七五のととろで線を引くというのはどういう根拠でやっておられるのかということです。たとえば米についても、政府は政府でバルク・ラインは幾らということを言っておる。生産者は生産者で、バルク・ラインは幾らでなきゃならぬということを言い、たとえば米価審議会、は米価審議会でまた別な線を出すというように、一つのバルク・ライン方式をとるとしても、それを七〇でいくか八〇でいくか、ないしは七五でいくか八五でいくかということは、その塩産業をどういうふうに国民経済全体から見ていくか、その産業な構成しているところの企業者、並びに従事するところの労働者の立場はどういうように見ていくかということによって非常に違ってくるわけです。われわれも、たとえば肥料工業について設定する場合のバルク・ラインと、米について設定する場合のバルク・ラインは違わなければならぬということも考えている。あなた方はバルク・ラインは即七五%である、その七五%がどういう根拠から出ているかということをおっしゃらずに、政府の方でやっておることは七五%でありますというところから議論をしておられるんですが、そうでなくて、なぜ一体、八〇という数字もあろうし、あるいは六五という数字もあろうし、いろいろの数字があるのに、七五におきめになったのはどういうわけかということを聞いておるんです。それに関連して、七五、七五と言われるから、七五ということになると、それなら企業としての利潤というものをどんな工合に見ていくかということが疑問になってきたわけです。ここには一応加重平均というものが別の面から出ているわけです。これは生産費の加重平均ですから、加重平均という場合は当然企業利潤というものが加わってこなければならぬ。ここに出ているのはバルク・ラインの数字とは通うのですから、だからどうも企業利潤というものをあなた方はどう見ておられるか、企業利潤というものを全部ゼロにすることが、それが公益専売という建前でいかれるのか、つまり生産者を犠牲にするというのが公益専売の建前なのか、この辺がわからなくなってしまうんです。

○説明員(三井武夫君) その点を今申し上げようとしておったわけですが、七五%のバルク・ラインをどうしてとっているかという点でございますが、これは先ほど申し上げましたように八〇%もとれるし七〇%もとれる、それはおっしゃる通りでございまするが、塩の場合に七五%で従来バルク・ラインを引いておりましたのは、大体四分の三程度の業者がそろばんがとれる程度であれば、この収納価格の基準としてその辺が適当であろう、あと四分の一の業者はバルク・ライン以下になるのでありまするけれども、それは塩田の改良その他によりまして上へ引き上げることにして、大体総生産量の四分の三程度の生産量をまかなえるところで線を引くのが塩の場合には適当であろう、かような考えから、従来累年七五%のバルク・ラインによってきめておるわけです。

 それから先ほど香川県の塩業を例にしてお話がございました。この点もまことにごもっともでございまするが、今お話のございましたような塩業者の現在しょっておりますところの負債の償還ということは、これは私どもといたしましても非常に重大な問題でございまして、この点に欠けることがあっては相ならぬというふうに考えておるわけでございます。従って、この生産費の実情を調査いたします場合にも、負債に対する償還と金利の支払い、つまり償却と金利の支払いの点につきましては、非常に詳しい調査をいたしました。実際に塩業者の支払っている金利は、それぞれの利率につきまして、つまりこれは一部は農林漁業資金を出しまして、その分は年七分というような安い低利資金が出ております。それからそれ以外の資金は、本来は自己資金と称しておりまして、塩業者の自己蓄積金でまかなうべきものでありますが、塩業者の実情はそういう自己蓄積をほとんど持っておりませんので、大体は市中銀行からの借り入れによっております。その借り入れ金利は年一割、これを基準にして、生産費の調査には、その金利の支払いと、それから償還に相当する償却、これを十分に見込みまして生産費を調査いたします。その数字をもとにしてこの第一表を作っているわけでございまして、第一表にございまするように採かん費の面でも減価償却費が三十一年度の実績では千七百二十円、それからせんごう費の方では減価償却費が八百九円、それから金利が千四百二十一円と、こういうふうに計算してございますが、この全体の一万二千八百円の中で相当ウエートを占めているわけであります。私どもといたしましては、この生産費の計算によりますれば、現在塩業者がしょっている償還には香川県の場合でありますれば特に支障はないんではないかというふうに考えております。

○野溝勝君 今の四国の問題に関連して質問をいたしますが、あまりどうも当局は楽観的に考えられておって、業者の事情というものに対しては深刻に考えられておるとは思われない。というのは、今、中金であるとか、あるいは市中銀行であるとか、そういうような方面から安価に融資ができるがごとく考えられておるようですが、現在の金融状態は御承知のごとく、そんなやさしい状態にはないのでして、特に今、資金の回収ということで、むしろ地方銀行などは資金に枯渇して困っておる状態なんですよ。現実の業者といたしましては、特に市中銀行とその進退を共にするというような状態にあるようなところすらあるのでして、なかなか今部長さんの言うように簡単なものではない。私が特に高松を例にいたしましたのは、先般調査に行ったことにもよるが、一体塩の問題といえば高松を除くわけにはいかない。特に日本の生産高の六十七万トンに対して二十二万五千トンというものを生産しておる。三三・八%を占めております。かような有力な生産地域であって、その生産地域における業者は、どういう一体資金関係に苦しんでおるかというと、流下式転換を中心とする採かん面の合理化と、せんごうとの間の真空式の工場新設及び採かん量の増加に対処する既設せんごう能力の増強のための資金借り入れ状況として、管内で合計して運転資金として、市中銀行より十億二千四百四十一万円、それから設備資金として、やはりこれまた市中銀行から二十六億一千五百十一万円、農林漁業資金として二十三億二千二百六十九万円、計約六十億の金融を受けておるわけなのです。こういう状態なのです。だからもう全く進退を共にすると言っても過言ではないのです。こういうようなわけで、この業界の諸君が、先ほど言われたように、買い上げ価格の引き下げというようなことになるならば、一体この負債償還などが、経営計画などがむちゃくちゃになってしまう。ところがきょうのこの資料の第二ページのあれによりますと、この生産費推定という差引計のところに行って、昨年よりは六百円も減っておる。昨年はまたその前年度より六百円減っている。毎年六百円ずつ引き下げていくという何か方針になっているのですか。どうもそういうようにとれてならぬからそれを伺いたい。

 それから、今こういうように政府では盛んに金融の道もついておるし、心配はないというようなことを言われておるが、生産者、業者から見れば、こういうようにだんだんと切り下げられていくようなことになれば、もう経営上の蹉跌を来たすことは当然なんでして、手がつかぬと思うのです。こういう点について、この業者からの陳情があり、さらにもう非常な悲鳴を上げているのでございますから、あなたの方ではそういう心配はないと言っても、ほんとうに業者についてこういう問題を、どういうふうに一体責任を持って解決してやろうとするのか。いわばほとんど専売事業である以上は、何か私は政府でも、これは一つこの裏づけに対する責任、ないしはそういう見通し、展望、そういうものの上に立って私は答えてもらわなければならないと思うのです。ただ抽象的ではなくて、この場合はこうなるとか、この場合はこうなるとか、この専売事業に融資を受けたことに対してはこういうふうにするとか、どうするとかいうようなことについて、一つ私は見解をこの際お聞きしておきたいと思います。

○説明員(三井武夫君) 今お話のように塩業者が多額の負債をしょっておりますことは、これはもうお話の通りでございます。塩業者全体としては百八、九十億円の多額の負債をしょっておるわけでございます。この塩業者の借り入れにつきましては、農林漁業公庫から出ます農林漁業資金はもちろんでございますが、その他の市中借り入れにつきましても、専売公社本社並びに地方局におきましては、すべて融資あっせんをいたしておりまして、いわば専売公社の何と申しまするか、あっせんがなければ市中銀行も金を出してくれない、また農林漁業資金が何%出れば、それに対して市中銀行は何%出るといったような公社からの連絡によりまして、塩業に対しては、いわば安心して金融をつけてくれるというような状況になっております。従ってこの負債の償還につきましては、先ほど申しましたように、公社といたしましても最も責任を感じておるのでございまして、生産費を引き下げまして塩の価格を下げて参りますにしても、その塩の価格の引き下げによってこれらの負債の償還に支障が起るというようなことは絶対にあってはならぬわけでございまして、私どもといたしましては、その点の計算は十分にいたしまして、本年度の収納価格の予想をいたしたわけでございまして、この点は繰り返して申し上げまするが、この生産費によりまして、塩業者の負債償還には何ら支障は起らないというふうに私どもは考えております。

 それから昨年は御承知のように六百円の引き下げをいたしまして、その当時白塩につきましては一トン当り収納価格一万三千六百円でありましたが、六百円引き下げて一万三千円にいたしたわけでございます。現在この一万三千円になっております収納価格を一万円に下げたいということは、公社のかねがねの目標でございまするが、この点は塩業者自身も納得をして協力をしてくれているわけでございまして、昭和三十六年ごろになれば、塩業者自身も生産費は一万三千円程度になるということは、昨年も生産費の資料を出してくれまして、当然そのくらいにはなり得るということを塩業者側から積極的に資料を出してきておるような状況でございます。しかし年々これは下げて参りまして、そこまで到達したいということでございまするが、年々下げまする度合いといたしましては、生産費の低下に応じて、その実情に応ずる収納価格の改定をいたしたいということでございます。昨年度、ここにございますように一万二千八百四十二円のものが一万二千三百三十九円に下るだろうという推定をいたしましたのは、昨年度の収納数量は六十七万トンでございましたが、本年度の予想は八十五万トンないし九十万トン相当の増産ができますので、その増産をもとにして詳しい生産費を計算いたしますと、当然そこには相当の引き下げができるということになるわけでございます。その点をこまかく計算いたしましたものが、ここにあります一万二千三百三十九円ということになっております。従って、これは別に去年六百円下げたから、ことし六百五十円ということではないのでありまして、その生産費の低下すべき状況を精細に検討いたしまして、その資料の上に立ちまして、たまたま六百五十円という数字が出ましたので、六百五十円の引き下げをいたしたいというのが公社の原案でございます。

○野溝勝君 私は、これは質問はしません。あなたにここで質問をしておってもあれですから、またあとの機会に譲りますが、一体部長さんの言うことは、抽象的で私はよくわからない。というのは、生産者もこれは困らぬ、大体いいと思いますと、こういう見当なんです。しかしよく考えてごらんなさい。金利は上ってきた。莫大な資金は借りた。そこへもってきて、昨年よりは一体生産者にどういういい条件があるのですか。私は、主観的にはわかりませんが、客観的に見てどんないい条件がありますか。ただいまあんたの資料を見ただけでもそうじゃありませんか。採かん費だけでも、労務費が昨年よりはずっと下っておるじゃありませんか。せんごう費を見てもそうです。採かん費は三十一年度は千四百九十八円、三十二年度は千五円、これは一つの例ですが、こういうふうに切り下げていけば、切り下げられるのは労務者ですから、生産費の労賃になってくるじゃありませんか。――あとでお尋ねしますがね。だから私は、それで決して業者は何ら苦痛はないと思います。そういうふうに見ておりますと、こういうあなたの考え方というものは、これはもっと科学的に一つ僕は改めてもらいたい、検討してもらいたいと思うのですが、あなたが、政府はなるべく資金を出すのを少くして、そして生産量を多くする、収納を多くするということは、これは政府に忠勤かもしれませんけれども、政府に忠勤ということは、国民がよくならなければ、真実な忠勤にならぬ。仁徳天皇の言葉じゃないけれども、国民を殺してあればかりょくしても、それはほんとうのあれにはならぬと思います。こういう点は、特に事務当局の中心であられる部長さんあたりに考えてもらわなければならぬことと思う。

 それから、私の先ほどの質問は、年年一トンについて六百何十円減っていく数字が出ているのだが、これは、そういう一つのケースがあるのかと、こういう皮肉の質問なんです。ところが、そういうことじゃないというのですが、そういうふうに現われてきておる。しかし、どうして一体そういう収納価格というものを下げたかというと、その理由として部長さんの言うのには、収納数量が六十七万トンから九十万トン近くに上ったからと、しかし生産を上げておいてたたかれたのではかなわんね。ばかをみるのは生産者です。そういうようなことじゃ、これは幾ら何としても私は納得できない。これはたばこの耕作農民と同じことでありまして、生産をしろ生産をしろと上げておいては価格を立てかえたり、それから収納数量を削られてしまったのでは、これは計画が立たないのです。こういう点は、私は今の部長さんの説明だけではよくわかりません。でありますから、これは後日にまたお伺いするとして、私は今、江田さんの関連としてお聞きしておるわけですから、一応この程度で私は終ります。

○江田三郎君 では、さっきの続きをやりますけれども、生産費の中の金利というのは、借入金の金利という意味なんですか、どうなんですか。

○説明員(三井武夫君) 借入金の金利という意味でございます。

○江田三郎君 自己資金の金利というのはどう見るのですか。

○説明員(三井武夫君) 先ほど申しました通り、塩業者は自己資金と言っておりますけれども、実際には自己資金をほとんど持っておりませんので、補助金と農林漁業資金以外の部分は、市中銀行から借り入れをいたして資金を調達いたします。その分の金利の支払いはこの中に計算いたしてございます。

○江田三郎君 そんな自己資金を少しも持っていないという企業はあるものじゃないのであって、幾分であっても自己資金がなければ、あなたの方だって、農林漁業金融公庫だって、中金だっても借り入れの保証をなさらんと思う。ただ生産計画幾らということではいけないのであって、どんな事業だって自己資金ゼロではいけない。自己資金に対する金利というものは当然、これは先ほどの企業利潤は別にしても、考えていかなければならないので、それが多いとか少いとかいうことはあっても、当然出てこなければならないのに、どうして出てこないか、まさか自己資金ゼロじゃないでしょうが。

○説明員(三井武夫君) 今、江田先生の言われた意味におきまする自己資金、もちろん、これは業者が会社の場合は資本金、あるいは組合の場合は出資金として持っておりますが、その分に対する何といいますか、金利は見込んでおりません。これは当然利益の分配としてなさるべきものと考えまして、この生産費の中には計算いたしておりません。

○江田三郎君 適正利潤ということと、それから自己資金に対する金利というものは、別な概念ですよ。あなたのように自己資金に対する利子までも、それを適正利潤というワクの中に入れちまって、適正利潤はバルク・ラインだから考えなくてもいいということは、少し私は乱暴な議論だと思うのですが、これはわれわれここで議論しても、短かい時間の間に終りませんから、私は一つ専門員の方にお願いしておきますが、米価審議会の方におけるバルク・ラインの今までの論争点、それから肥料審議会における論争点及び酒やしょうちゅうについての生産費はどういうふうに見ているか、そういうことを一つ専門調査室の方で資料として集めていただきたいと思います。これはバルク・ライン方式をとるにしても、その際にどういう線を引くかということは、それぞれの事業によって違うはずなんです。独占事業の場合と零細企業の場合、またその事業が国民経済にとってどういうウェートを占め、あるいは国民生活についてどういう関連があるかということによって、それぞれ違ってくるはずなんです。私たちはそういう工合に考える。あなたのようにバルク・ラインというものは無条件に七五%でいいのだと、四分の三が救われて四分の一が落されるというのがバルク・ラインの本質だというふうには考えていないのであって、バルク・ラインというものをかりに設定するとしても、その線の引き方というものはいろいろのケースがあって、塩の場合には塩の独自の主張がなければならぬ、そういう独自な主張なしに、ただ政府は七五%でやっております、四分の三が救われて、四分の一が落されるのが常識ですということは、これはあなたの常識であって、権力を持っている専売公社の押しつけの常識であって、私どもの常識じゃないわけですから、その点は専門調査室の方で調べ、その資料がそろった後にもう一ぺん私はあらためてお聞きしたいと思うのです。

 続いてこの提出された資料についてお伺いしたいのは、この経費調べの中で、この間も説明を聞きますと、公社としては公社の諸経費の節減をはかるということが一項目ありました。一体この提出された経費調べの中のどういう点をどのように節減されようとするのか、それをお伺いしたい。

○説明員(三井武夫君) 先ほど申しましたように、この数字は三十一年度の決算の数字と、三十二年度の予算の数字を示してございますので、公社といたしましては、この予算の数字の範囲内で、今年度の実際に支払います経費につきましては極力節約をはかって、できるだけ能率を上げなければならない。この購入経費、販売経費、それぞれの項目につきましてできるだけの節約を努力いたしている現状でございます。

○江田三郎君 そんな空漠としたことじゃなしに、特にあなたの方が今後の塩業対策として、公社の諸経費の節減をはかるという以上は、どこかに私は中心を置く目標がなければならぬと思うのですよ。できるだけ経費の節減をはかるということは、こんなことは当りまえの話であって、塩業対策の一つの柱として出てくるので、一つの項目として出てくる問題じゃない。これだけの項目区分がありますが、その区分の中のどこへ重点を置かれるのか。私どもの意外に思いますことは、たとえばこうやって三十一年度決算と三十二年度予算を見ても、減っている部分もあるが、その中の回送保管費、これは逆にふえている。わずかではあるがふえておる。そういうことは一体どういうわけなのか。あなたの方は、一体この節減の重点をどこに置かれるのか、それを聞いているんであって、ただ今後節減をはかっていきたいというような空漠たる答えじゃ等えにならぬと思う。そんなこと当りまえの話です。その点はどうです。

○説明員(三井武夫君) 回送保管費がお話のようにトン当りでもって若干増加いたしておりまするが、もちろん回送費につきましても、あるいは保官費につきましても、公社といたしましては、できるだけ節約を検討し、実施いたしております。たとえば回送の経路などにつきましても、だんだんと全国の塩の産地がむしろ地域的には広がってくるわけでございますので、その広がってくる塩の生産地から配給地にどの塩をどういうふうに送ったら、一番回送費が節約できるかというような、非常に担当の調達部では苦労をいたしまして研究をいたしておるわけでございます。従って、本来でありますれば回送保管費は減らなければならないのでございまするが、若干ふえておりますのは、非常にこれは申しわけないんでありますけれども、御承知のような状況で、国内で生産されまする塩は年々ふえておりまするが、まだその塩を全部配給できるというところにいってないわけでございまして、若干輸入塩で補っておる分がありまするし、公社の手持ちは年々ふえております。本年度も八十五万トンないし九十万トンの生産が予想されますると、公社のストックはふえる一方でございまして、この点はまことに遺憾なのでありまするけれども、実情はやむを得ない、こういう状況になっております。その他の保管費の方が若干増加いたしまするので、この程度の単価の値上りにならざるを得ないのであります。

○江田三郎君 これは最初、あなたが前段に言われたことはその通りでいいんです。お互いに経験を積んでいくんですからね。保管費にしたところで、あるいは回送費にしたところで年々減っていくべきはずであって、同様の問題が、たとえば食管会計の方でも出てくるわけですけれども、だんだんあそこでも減ってきておるわけですね。ところが今あとの段の国内の生産がふえたからして保管の量が大きくなったというのは、これは私はあなたの方の計画のずさん性をみずから暴露したにすぎぬと思うのです。ふえたふえたといったところで、国内の消費量をこえたわけじゃないんですから、そうするというと、これはこの輸入計画にずさんな点があったんじゃないかということになります。国内の消費量の増ということはわかるはずです。その消費量の増がわかっておれば輸入塩を減らしていく、しかもそれはまだ工業塩の段階までいってないんですから、ふえたところでまだ国内の食料塩の段階にすぎぬのですからして、当然この食料塩としての輸入部分のものを削減がなければならないのを、それを無計画に輸入しているからして保管量がふえるというようなことになってくるんで、みずからあなた方の計画のずさん性を暴露されておるとしか言えないのですが、さらにその点だけでなしに、私はこの回送費の問題についても、これは前にも議論があった点ですけれども、もっと掘り下げた検討が必要なんではないか。たとえば今、食管の場合には、あれは全部日通の請負になっておりますけれども、その日通の請負単価というものが、日通の公式にきめた請負単価ではあるけれども、日通が民間の他の物資を運ぶ運賃、比べて高いということが問題になってくるわけです。あなたの方のその回送はどういう仕組みにやっておられるのか、それを一つお聞きしたい。

○説明員(三井武夫君) 塩の生産の増加の状況に応じて輸入塩の方を調節して、需給をバランスさせなきゃならぬというお話はまことにごもっともでございまして、私どももできるだけそういうふうに努力をいたしております。従って本年度の食料用塩としては、輸入量は二十一万トンということで極力押えております。できるだけ国内塩に転換をするように努力をいたしておるのでありますが、それにいたしましても、たとえばしょうゆ用の塩でありますとか、あるいは水産用の塩でありますとか、あるいは染料その他の特別工業用の塩でありますとかいうものは、まだ現状では輸入塩が使われており、輸入塩でなければうまく仕事ができないということで、本年度も粉砕塩と原塩を合せまして三十万トンを配給の計画には載せております。これも三十万トンでは実は非常にその方面の関係者は足りないと言っておるのでありますけれども、そこは国内塩の転換に協力してもらうという趣旨から、できるだけ一部だけでも国内塩にかえてもらって、輸入塩の量三十万トン程度にことしは圧縮するということで協力をしてもらっておるわけでございます。三十万トンといたしますれば、あと概算七十万トン程度のものが国内塩としては食料用塩に回っていくわけでございまして、従って、ことしかりに最低の八十五万トンと見ましても、十五万トンの塩が余るわけでございます。その分だけはどうしても公社として手持ちをふやして、しばらくストックしなければならぬということになりますので、その最低の保管費の増加だけは現状ではやむを得ない。極力今後減らして参りまして、ストックはできるだけふやさないようには努力をいたしておりますけれども、国内塩の増産と需給の状況がマッチしますまでの間は、過渡的にはストックが増加することはやむを得ないというふうに考えておるわけでございます。

○江田三郎君 そういうことは、だから私は最初のときに言うたんですが、資格審査を要するということを言うわけです。あなたの方の計画がずさんだということではないですか、どんどんふえていくということはわかるはずなんです。あなたの説明のように、ごく最近に至って突如としてふえたということではないのです。そういう生産の改良をやっていけば、ふえるということはわかっておるのであって、さような国内における今の三十万トンの問題でも、もっと前に解決をつけておかなければならぬことです。それを塩業会計が赤字だ赤字だと言いながら、そういうことをずるずるしておいて、そしてたまったんだから仕方がないんだということは、みずから計画性がないというか、計画がずさんというか、怠慢というか、そういうことを暴露しているにすぎないではありませんか。さらに私は聞いているのは、そういうこととはもう一つ別の問題として、どういうふうに回送の組織をとっておられるかということ、一体回送はどういう会社でだれが責任者でやっておるのか。

○説明員(三井武夫君) 塩の回送につきましては、これは担当いたしておりまする専門の会社が現在三社ございまして、これに塩種を分ちまして、地域を分けて担当させております。そしてその三社がまた適当な下請を使いまして、日通その他いろいろの下請を使いまして、回送を担当いたしておりますが、この点私の所管でございませんので、詳しいお話はあるいは担当部長が参りましたら別に申し上げた方がよろしいかと思います。調達部長が所管いたしております。それから……。

○江田三郎君 今の専門の三社にやらしておると言うが、専門の三社がさらに日通等に下請をさせる、日通等はさらにまたどこかに下請をさせるというのが実情じゃないか。私は、経費節減ということになってくるなら、こういう点がまっ先に出てこなければならぬと思う。特に、たとえばこの経費調を見ても非常に不満に思うのは、そういう点についてはほとんど手を触れようとせられないで、試験研究費のごときを逆に減らされる。この間のあなたの説明を聞いても、今後塩水によるところのソーダ工業への利用、鹹水によるところのそういうことが大きなテーマとして出てきておるわけです。鹹水をほんとうに工業用に利用させようというなら、それこそ試験研究ということをほんとうにやっていただかなければならないのであって、こういうことは一ソーダ工業などにやらすべきことではないということは言うまでもないことです。ところが、そういうようなことについては、ただ項目としては出ているけれども、一向に試験研究を一つ見たところで、逆に百十五円が七十二円に下るようなことをされて、そうして回送保管についてはずさんな計画に基くところの不必要なところの保管費を支出し、回送については、だれが考えても今日の段階でおかしいような二重にも三重にも下請けさせるような、そういうものを放任されておいて、どこが一体経費を節減されるのか。あなたの方の経費の節減というのは、結局試験研究費を削ったり、あるいは労務費を削ったりすることにお考えがあるのではないかと疑わざるを得ないのであります。

 そこで副総裁に伺いますが、一体経費の節減の重点をどこに置きますか。これは塩脳部長の管轄ではないようでありますから、あえて副総裁に聞きます。

○説明員(舟山正吉君) 経費の節減方針につきましては、塩脳部長から申し上げた通りでありますが、公社といたしましては、経費につきましては言うまでもなく、できるだけ切り詰める方針でいっておりますので、この上は、やはり各部面にわたって経費の使い方を気をつけていくということであろうと思います。まあ特にこの点は大幅に節減の余地があるから、経費を削ってみるといったようなところは今のところ持っておらぬ次第でございます。

○江田三郎君 そういう答弁を官僚的な答弁というのですよ。しっぽをつかまれないようなことさえ言えばいいというのは、実はこれは全部がしっぽですよ。しっぽ以外の何物でもないではありませんか。私は、この点私ばかりでやっているわけにもいきませんから、あまりしつこいことも言いませんけれども、この次までに重点をきめてきて下さい。そうしてもう一ぺん資料として回送をどういう会社にやらして、それが一体どこまで直営でやっておるのか。その会社がどれだけの運搬組織を持っておるのか。これは特に塩脳部長だけではないそうでありますから、調達部長かもしれませんけれども、一つ出してもらいたい。私はそういうところに問題があると思う。

 そこで、その次の問題に移りますけれども、今、私はちょっと試験研究費の問題について触れましたけれども、あなたの方の生産対策の柱に、鹹水の総合利用、工業の発展とか、あるいは鹹水のソーダ工業への供給について積極的に研究するとともに必要な助成措置を考慮するということがあるわけですが、これは私は今後の塩業にとって非常に大きな問題だと思うのです。私どもは今回の神武景気がくずれたりということの一つの要因には、国内資源の開発ということを怠っていた、そういうところにこの外貨の危機というものが出てきたということも考えざるを得ないのであって、その点から言えばどこまでも、この工業塩と言わず、あるいは食用塩と言わず、国内で増産できるものは増産していかなければならぬのであって、私はまたあとで触れたいと思いますけれども、あなたの方の方のやり方は、増産を積極的にやろうというのではなしに、滅産に持っていこうというような考え方としか思えぬのであって、その点については大きな疑問を持っておるわけですが、まず第一に、鹹水のソーダ工業の問題についてどういう抱負を持っておられるのか、具体的な説明をこれは副総裁にお願いしたい。

○説明員(舟山正吉君) この国内塩が増産になりましたにつきましては、これを行く行くは価格を引き下げますとともに、輸入塩に置きかえる方向に持っていかなければならぬと存じます。その際にこの価格を引き下げるということが一つの要素になりますけれども、現在工業用その他についてやはり輸入塩の方が使いやすいということを需要者側から聞くのでありまして、これを喜んで国内塩を使ってもらいますためには、技術上の改良が急務と思っております。

 そこで公社におきましては、先般来この公社内の中央研究所におきまして、国内塩利用研究室というものを特設いたしまして、特に命令を出しまして、これをごく短期間の間にその点の研究をなすように命じた次第であります。この研究につきましては、塩は専売でございますので、公社が一番よく研究していると思いますけれども、なお民間でも非常に研究が進んでおります。これらにつきましては、単に公社内にとどまらず、各方面と連絡を密にし、通産省にも密接な御協力を願わなければならぬと思っておりますが、そういうような態勢を整えまして研究をさせているような次第でございます。

○江田三郎君 雲をつかむようなお話ですが、ただ雲をつかむようでないのは、短期に結論を出すように命令を出した……、昔そういうことは軍がやったので、軍隊が、できもしないのに短期に結論を出す……、何かそういうことを思い出したのですが、そんなことはいいですけれども、(笑声)笑いごとじゃない。たとえば三十六年に、あなたの方の計画でいくと、相当工業塩の方に国内塩を使うことになっておりますが、その際に一体鹹水としてはどの程度使うような計画になっておるのか、その点に向ってどういう準備をしているのか。さらに私どもは、ソーダ工業自体としても国内で原料が自給できるということについては、みずからも相当の犠牲を負うてしかるべきじゃないか。もしはからざる不測の事態でも起りますれば、そういう不測の事態というのは、何も戦争を意味しなくても、日本の外貨事情等によっては、こういう原料の輸入についてもある程度の制約を受けざるを得ぬということも予想されるのであって、当然ソーダ工業自体としても、国内資源開発のためには、みずからある程度の負担をしてしかるべきだとも思うわけであって、それが現在のような工業塩の輸入については、専売公社がノー・タッチのようなことになって、あの法律改正でノー・タッチになっているようなことでは、私どもはなかなか解決つかないと思いますが、そういうことについてはどういう考えなんですか。

○説明員(舟山正吉君) 鹹水を直接工業用に利用するということは、終局の目的でございまして、鹹水を煮詰めまして塩をこしらえる。それをまた溶かして工業用に使うということは、むだな手続をするわけでございますが、鹹水を直接工業用に利用するように持っていきたい。しかしこれについて大きな問題は、輸送の問題と、それから海水中に含まれております爽雑物、不純物をどう除去するかという問題でございます。それらの点に重点を置いて、あるいはその他、工場の立地条件というものもあるいは考えなければならぬということを考えておる次第でございます。お尋ねのあとの部分は十分に了解いたしかねましたが、そういうような目標で、できるだけ早く活用方法を見出すように研究している次第であります。

○江田三郎君 できるだけ早くそういうことをやるといっても、なかなかそう早いことできるはずがない。設備の転換もしていかなければならず、試験研究もしていかなければならず、そういうことをただ公社の方はそんなことをいっておられるけれども、たとえば試験研究費のごときは、三十一年度の決算より三十二年度の予算をずっと減らすというような形で、そんなに早く答えが出るものではない。今のあなたの行き方をみると、そういう問題は一切業者の負担において片づけようとしているのじゃないかという印象を受けるわけなんですが、あとで質問いたしますけれども、たとえば非能率企業の整理の問題でも、当然公社として負担しなければならぬ部分までも一切業者の方へ全部持っていってしまおう、こういうように公社は涼しい顔をして業者の方だけで何もかもやらそうという点が私どもに見えて仕方がないわけなんです。そこでその中の特に鹹水のソーダ工業への利用というような問題については、当然ソーダ工業自体がその資源の開発のために、ある程度の、試験研究的な努力はもちろんですけれども、ある程度の負担をすべきじゃないか。あなたのように、今のソーダ工業の方には輸入価格五千円でしたか、五千五百円でしたか、それで一切ノータッチでやっていいのかどうか。それが軌道に乗るまでは、ソーダ工業の方も、たとえば千円であるとか何であるとか、その程度のものは共同負担をしていかなければ解決がつかぬ問題じゃないか。それがまたソーダ工業自体としても大きく考えたら、国内資源の開発のない産業がどういう目にあうかということを考えたら、その程度のことは当然いいじゃないか。あるいはソーダ工業が利益を上げていないということをおっしゃるかもしれませんが、私はそうとはいえないと思う。ソーダ工業の利益は関連工業で上っているといっている人があるけれども、関連工業でも同じです。直接の工業だけでなしに、関連工業で利益が上っておってもいいわけであって、そういう点については公社としては、従来の方針をお変えになる気はないか。せんだっての御答弁の中に、塩脳部長でしたか、あるいは公社の副総裁でしたかしらぬけれども、輸入塩の法律改正というものは公社としても困ったということをおっしゃっておられたが、そこから出ていったら、当然鹹水のソーダ工業利用についても、ソーダ工業自体についても負担をさすべきであるということをお考えにならないかどうかということ、それが私の質問がわからぬというのがおかしい。

○説明員(舟山正吉君) 今後の塩業対策につきまして、塩業者だけに負担を負わそうとしているじゃないかというお尋ねにつきましては、そうではありませんので、公社も相当赤字を覚悟しておる次第でございます。それからソーダ工業塩の自己輸入制度につきましては、先般の委員会で御説明申し上げましたように、政府の方針に従って公社といたしましては、これを自己輸入に切りかえた、これは戦前に実績があることでもありますけれども、そういう方針にのっとって切りかえた次第であります。従ってソーダ工業会社にも幾らかの負担をさすべきであるという御結論が出まするならば、公社としては特に異議はない次第でございます。

○江田三郎君 きめてくれば公社としては異議がない、当り前の話じゃないか。そういうことを、大蔵省がこういうから、もうこうやりますのだというようなことで、一体今日の困難な塩業問題というのは片がつくかということなんですよ。よほど公社としても腹をきめてかからなければ、政府の方針がこうなりましたから、こうやりますということになってしまったら、あなた方が不合理と考えている、その輸入塩の問題だけについても、もう一切政府の方針がこうきまりましたから、変ればさようなことで反対はありませんというようなばかな話はないですよ。そこで私は質問するのがばからしくなるというのです。だからそのこともいずれまたおいおい出ますが、もう一つ私は……。

○杉山昌作君 今のに関連して、今のソーダ用塩の問題ですが、どうも副総裁のお話あまりはっきりしないのです。これは非常に私は将来の問題とも重要な問題だと思う。あなた方の三十六年までの計画をみても、ソーダ用塩については内地の塩を五千円程度に買い、値を下げるということだけは善いであるけれども、それ以外は何も書いてない。ところが今江田委員も言われたように、ソーダ用塩というものは、今も何といいますか、全然関税を払ってない。専売というやり方だから世間はあまりわかりませんが、普通のやり方でみますと、ソーダ工業用塩というのは関税ゼロです。自己輸入塩で、買ってきた値段にほんの手数料をかけるかかけないで業者に渡しておりますから、無税の原料を使っているわけです。ところが片方同じような外塩でありながら、これをみその原料、しょうゆの製造の原料に使うと、これは十何割の関税がかかる、五千五百円で輸入をした外塩をしょうゆ屋やみそ屋では、千五百円ですか、そのくらいで売っている。それはいろいろなものが入っていましょうが、そういうふうな費用を引いても、ソーダ工業用塩については関税はゼロ、みそ、しょうゆ、つけものに使う、同じ性質のものが、片方ではソーダ、片方では食料ということはあるかもしれませんが、十割以上の関税をかけている。そういうことなんです。それでそういうふうな違いをやって、しかも将来ソーダ用に五千円の塩を作るのだ、そうしなければソーダ業者は使ってくれないといいますけれども、これは私は今江田委員のおっしゃった通りで、ソーダ業者はそれで一体いいのかどうか、ソーダの一次製品なり二次製品なりというものが全部外国輸出のものであるならば、それならば外国から安い塩がこないようなときには輸出もきかないから、ソーダ工業は操業しなくてもいいということでありましょうが、ソーダの一次製品、二次製品の相当の部分が国内で使われている。しかも国内の必需品に向っていると思う。そうすると、外国の塩が入ってこないときにも、ソーダ工業は操業をやめるわけにいかない部分がある。そうすると、それは当然国内の魔塩を使っても経営をやっていかなければならぬ事態があるのじゃないか。そうなれば、ソーダ工業自体としても国内で自分の原料確保ということについてうんと積極的に考えていいのじゃないか、また専売公社は国家的な見地からなるべく原料は海外に依存せずに内地の原料をたくさん、なるべくいい原料を安く作るようにということに生産拡張をいたしていくべきだと思う。そうすると、そういう考えからいうと、ソーダ業者が、五千円の外国値段に下げてくれさえすれば私たちはいつでも買いますよ、それを聞いて専売公社で、製塩業者がせっせと五千円に下げることだけに一生懸命計画させるように、三十六年までの計画をみておりますが、むしろソーダ業者も五千円ではなくて、六千円の塩を使ってもなおソーダが勘定が合うように、ソーダ用の製造方法についてももっと努力すればいいじゃないか、塩の製造業者ばかりから安く買わなくても、自分の生産費を下げて、六千円の塩でも勘定合いますということをやるとか、あるいはもし塩を五千円に下げるというならば、今江田先生のおっしゃったように、いろいろな方法の研究をしなければならぬなら、その研究費の一部はソーダ業者が持つというくらいの意気込みを持つ、もちろん専売公社なり通産省もそのくらいのことを考えながら全般としての塩の需給問題を考えていかなければならぬ。それを工業塩は安い外国塩、食料塩は高くても内地塩でというふうに、工業塩というものと食料塩というものを全然初めから分離して違ったものであるような、違った世界であるような格好で、それで工業塩は通産省が監督して自己輸入いたします。専売公社は自己輸入で自分の方はノータッチとはいわぬでしょうが、実費的に関係が離れたような格好でやっていくというところに私は一番の根本の欠陥があるのじゃないか、それだから今も副総裁は江田先生の査問に、その要領がちょっとわかりませんなんといわれたのが、非常にわれわれとしては物足りない。そういうふうなことをほんとうに考えて工業用塩ともあわせて食料塩の問題をやっていかないと、食料塩だけは非常に重一い負担をかけて、ソーダ用塩には何らの負担をかけずにのほほんでいるというような、食料塩の問題だけでなしに、将来は工業塩に及ぶまでの生産数量は可能だということが現にみえているのですから、そういうことまであわせて研究をする、また努力をする、その意味では、今のように食料塩に使うものなら十割以上も関税がかかっても、ソーダ用塩は関税なしだというような、今の自己輸入塩の売り渡しの仕方、きめ方というようなものが一つは反省していいのじゃないか、こういうようなことを考えるのです。

○説明員(舟山正吉君) ただいま御答弁申し上げましたことは、ソーダ工業塩の自己輸入の制度は昨年から始まっており、それでその創始に当りましては、公社は必ずしもこれを欲しません。政府の方針に従ったのであります。公社が非常に弱いのじゃないかというおしかりを受けたのでございますけれども、公社はそこまでの権限は持っておらんように私は思うのでございます。

 さて、杉山委員のお尋ねでございますけれども、そういうようないきさつもございますし、また今後塩業政策というものを大きく転換しなければならないところに立ち至っておりますので、御質問の点につきましては御同感申し上げる点は多々あるのでございまして、専売品でありますから、国内において価格の操作等は比較的自由にできる建前にはなっておりますので、塩会計の赤字の負担というものは、いろいろの方面に負担していただくということが妥当な線ではないかと考えておる次第でございます。

○平林剛君 今自己輸入の制度に関連して、専売公社としては、この再開は、戦前にはあったけれども、あまり賛成しなかったのだ、しかし政府の方針であるからこれに従った、しかも専売公社はそれにとやかくいう権能はないというお答えがありましたけれども、専売公社は日本専売公社法によって経営をしておられるのでしょう。専売公社法には、はっきり専売公社は塩専売法やたばこ専売法に基いて国の専売事業を行う機関になっているわけです。法律に基いて、やはりこの問題については専売公社が一番発言権を強くしてがんばらなければならん点じゃないですか。特に自己輸入の制度について、私は塩専売法の建前からいっても大きな疑問を感じておる。塩専売法の第二条によれば、はっきり専売権は、塩及びにがりの一手買取り、輸入、再製、加工及び販売の権能は国に属する、こうなっておりまして、国は日本専売公社法によってあなた方にまかせてある。だからこれはやはり専売公社が権能をもって政府に対しても発言をし、あるべき姿に戻すというのが建前じゃないかと思うのです。ところが三井さんが衆議院の大蔵委員会で、私どもの同僚議員に説明をしているのを聞いてみても、ソーダ工業に対する国の援助政策というものは、これは長い間の一貫した施政方針で、現在の塩専売法にもそのまま盛られておりますというような答弁をされておるが、塩専売法のどこに盛られておりますか。ちっとも、今日の国家の法律としてきめてある塩専売法でも、日本専売公社法でも、その専売事業の中でソーダ工業を育成するのが目的だなんて書いてないですよ。私はそこに間違った方針のもとに公社を経営しているのではないかという感じがするわけです。塩専売法の一体どこにソーダ工業育成ということが精神として盛られておるのか、こういうことに疑問を感ずるのですよ。今度の塩業対策の中でも、一番肝心なのはその点にあるにもかかわらず、政府の方できめてくればこれに従いますというような態度をとってみたり、あるいは国内塩業に対する重大な影響を与えたり、あるいはそれに携わる人たちに重大な損失を与えるにもかかわらず、ソーダ工業の方に対しては幾ら負担させるという点についても明確さを欠いておる。こういうことでは、やはり専売公社に対する批判というものが向いてくるのは当りまえだと思う。関連をして私もこの点についてもう一度お答えを聞いておきたい。

○説明員(三井武夫君) 今お尋ねのございました塩専売法とソーダ工業育成の問題でございますが、私は実は塩専売法第二十九条の特別価格の規定を、これはソーダ工業に対する一つの育成という趣旨で設けられている規定だと承知しているのであります。と申しますのは、二重九条には、公社は、当分の間、か性ソーダ、ソーダ灰その他政令で指定する化学製品の製造の用に供する者に塩を売り渡す場合においては、前条――と申しますのは公社の一般の売り渡し価格でございますが――前条の規定にかかわらず、大蔵大臣の認可を受けて同条第一項の売渡価格より低い価格――つまり安い塩を売り渡すことができる、こういう規定が特別に置かれているのは、従来からのソーダ工業に対して、安い塩を供給して、これを育成してやるのだという趣旨で、二十九条一項が設けられていると承知いたしております。従って現在の塩専売法でもソーダ工業を価格の面で育成してよろしいのだというふうに私どもは了解いたしております。

○平林剛君 法律で言うならば、私法律でもう一度あなたに言いますが、二十九条に書いてある。なるほどその通り書いてあるけれども、日本専売公社法の第一条に何と書いてあるか。第一条には「現在の国の専売事業の健全にして能率的な実施に当ることを目的」としている。現在塩専売会計において今年すでに十億百万円の赤字を出しているような事業が健全だと言えますか。これから塩業政策転換によって専売公社は相当の赤字を覚悟していると言われている。昭和三十六年には六十億円近い赤字をかかえなければならんということになる。そういう専業が健全だと言えますか。今二十九条を例にとって特別価格でやることができる、こういうお話がございましたが、現在専売公社がこれによってやる価格については、昭和三十年十二月十五日の改訂価格で四千八百円、これに対して公社総裁が認定する価格を加算した価格でやっておりますけれども、それが昔は三百塩ぐらいであったものがそのうちに百七十三円に切り下げられ、百九円になり、四十円になった。現在は杉山委員が指摘されたようにわずか四十円加算することになっている。公社のこの仕事をやっている者が少くなったからと言うけれども、私実際の仕事を知っている。前から比べてこの四十円というのはあまりに少な過ぎは実情です。だから四十円加算するということさえも、私に言わせれば、二十九条は不当に安くしていいということではない。やはり専売公社法の第一条に限定をしている事業の健全な経営ということを建前として二十九条その他の特効の制度が生きているだけです。その運営を主客転倒していませんか。あなた法律で答えたから、私法律でもって言えば、そういうのが建前でなければうそです。どうですか。

○説明員(三井武夫君) 私は別に専売法の第一条の趣旨を否定いたすわけではありませんので、もちろん現在塩事業会計が年々赤字を出しているということは申しわけない状況でございますが、専売公社法の第一条の趣旨にも反するわけでもございますので、この点を何とかして収支の改善をはかって、そうしてここにありますような健全にして能率的な実施ができるようにいたさなければならん、かように考えまして、いろいろの今後の方策を立案し、御相談をいたしているような事情でございまして、もちろん赤字を出さないような収支の均衡のとれた健全な姿にいたさなければならんということで努力をいたしているわけでございます。そのためにお話のございましたように、ソーダ用の塩の価格を場合によっては輸入価格よりも上げまして、ソーダにも負担させる。これはもちろん二十九条の特別価格の趣旨にも反しないわけでございます。また国民全体の負担によって専売の健全な運営をはかるという趣旨からも、そういうことも一つの方法としてぜひこれは考えてみなければならん。しかしここで公社としてそれに賛成であるとか反対であるとかいうことを申し上げるには、これは先ほどから再三申し上げておりますように、重大な問題でありますので、もう少し検討いたさなければならぬと思います。一つの方法としてもちろんこれは検討を要する問題と思っております。

○平林剛君 私は別に今公社に対して法律の解釈を押し付けるわけではないのですよ、だけど法律はそうふうなもの……。さっき江田委員が言われた輸送会社の問題にしてもあるいはソーダ工業の問題にしても、これはそのバックにいろいろな政治性の問題から、公社は大へん自分の言いたいことが言えない立場があるかもしれません。しかしこういう重大な塩業対策の転換に際しては、やっぱりその点をはっきりものを言ってもらいたい、その点を言っているのです。関連質問ですからまたあとで。

○江田三郎君 さっきの副総裁の答弁の中で、鹹水ということになると、輸送費の関係等でいろいろ制約があるというようなことを言われましたか、そういうことから言いますと、将来鹹水のソーダ工業への利用ということを積極的にするためには、今の公社の腹づもりとしては、それはソーダ工業の工場に近い立地条件のところをそういう方向へ持って行く、それに重点を注ぐ、こういうことなのかどうかということと、それからもう一つは今回の問題に当っては相当の赤字も覚悟しなければならぬということは、もちろん赤字が幾らになるかということはあなただけで決定されることではないが、公社副総裁のおよその腹づもりとしては、この塩業の革命的な大転換をするのには、どの程度の赤字が出ると考えておられるか、あるいは過去におきまして、塩専売が相当の黒字を出しておった時代がありますが、少くともその程度のものは吐き出さなければならないという腹づもりでおるのかどうかということをお聞きしておきたい。

○説明員(舟山正吉君) 鹹水利用につきましては、これを鹹水生産地からソーダ工業の工場地域まで運びますについては、輸送船が要る等の経費がかかるわけであります。そこでその点も考えなければならぬということを申し上げたのでありまして、場合によりましては鹹水生産地、すなわち多量に鹹水を生産いたします塩田地帯にソーダ工場というものを誘致してくるといったようなことも一つの研究題目ではないかと思うような次第であります。
 それから今後塩業政策を転換するについては、公社はどれくらい赤字を覚悟しておるかというお尋ねでございますが、これはいろいろの基礎資料によりまして計算が変ってくるわけでございますが、先般公社といたしまして塩業者に示しました案によりますれば、ここ四、五年の間に四十億を超える赤字となる見込みでございます。これは収納価格をいつ下げるかあるいは二段価格制をどう持って行くかというようなことによりまして、数字は変ってくるわけ合いでございますけれども、先般作成いたしました案に基きまして計算いたしますると、四十億をちょっと上回ったところになるのでございます。

 それから御指摘のごとく、終戦後国内の製塩が足りませんで、安い外塩を輸入して、これを国内に供給することによりまして得ました益金というものがございます。これは約七十億見当だったと思いますが、これはその年度年度におきまして国庫の方に納付金として納付しておるのでありまして、今手元に留保しておるというものではございません。従って今後の赤字を考えまする場合には、一応これとは離れて考えることができるのでございます。

○江田三郎君 だから過去において出た黒字は、あなたのおっしゃるように国庫へ納付されておるということは間違いありませんが、やはり塩業ということと一つ関連のあることであるから、私はそういうことも今後のいろいろなものを検討する一つの重要な材料にはなると思うのです。ただ私はまあ今は副総裁の四十億程度ということを承わってだけおきます。それがいいとも悪いとも私はここでは申しませんが、もう一つお尋ねしたいのは、非能率企業を希望により漸次整理を考慮するということを言っておられますが、その際には国家補償というものをなさるのか、なさらないのかということです。なお、そういう際に、たとえば入浜式が転換したときにでも、相当の労働者の方は失業したわけですね。で、労働者の方は、われわれは失業したところで、これで残った者だけは今度は安心していけるのだからということで、まあやめる人もあとに残る人のためだというわけで、一つの労働者としての友愛、あるいは同志愛からということで、言うべきことも言わずして引き下ったということも多いわけなんですが、この際さらに整理をされるということになると、もう一ぺん労働者の整理が出てくるわけです。そこで漸次整理を考慮する場合には、国家補償をなさるかどうかということと、その際の職を離れる労働者に対してはどういう考え方を持っておられるのかということ、これは一切企業自身の責任であって、企業と労働者との話合いで片づけろというのでは、私は妥当ではないと思うのです。こういうような国の大きな政策転換によって起る場合においては、当然それに対して国が相当の心やりを持っていかなければならぬと思うのでありまして、その点をお聞きしたい。

○説明員(舟山正吉君) 公社の塩業対策の構想の中に、非能率塩田の整理ということが入っておるのでございますが、これは先ほど部長からも申し上げましたように、国内で塩を生産いたしますれば非常に生産費が高いものにつく、外国から外塩を輸入いたしますれば半分以下の値段で入ると、こういう事態に処しまして、国内の製塩の合理化をはかっていく、できるだけ生産費を低くしていくということでなければ、国内の塩業というものも最終的には安定しない。そこで現在相当非能率な塩田もあることでありますから、これらはほかの業種に転換していただいて、非能率塩田というものを全休としては滅らしていくべきではあるまいかというのが公社の考えでございます。これに当りましては、過去専売史上二回にわたりまして塩田整理ということをやりました。これは大体どのくらいの塩田を整理するかという目標を立てまして、これに対しまして補償をいたしたのでございますけれども、今回は特に目標を掲げて整理するということはいたしませんけれども、もし塩田業者におきまして業種の転換をしたいとお考えになる方に対しては、これはある程度の補償をするということが適当であろうと考えております。まだこれは予算要求にも関連いたしますことで、予算の方の措置についておらないのでございますが、ただその際の補償額の決定ということにつきましては、申すまでもなくいろいろな要望も起り、また問題も起るかと思いますが、現在のところそれに対してどのくらいという基準は持ち合しておりません。ただ公社としてはそういう塩田を廃止しようという業者に対しましては、幾らかの補償をなすべきであると考えておる次第でございます。この塩田廃止の場合に労務者の措置をどうするかという問題をお尋ねでございますけれども、これは原則といたしましては、お言葉にはありましたけれども、やはり企業者と労務者との関係であると考えておるのでございまして、それはあるいは補償金額にも関連して参りましょうが、その他国といたしまして、転業あっせんとか、そういうようなことは極力力を尽すべきはもちろんであろうと思います。一応労務者の糟置ということにつきましては、企業者と企業内部の問題になるというふうに考えております。

○江田三郎君 その点がまことに公社としてはずるいやり方と言わざるを得ぬわけであって、希望によって漸次整理するのだというのであって、希望といったって、だれも工場をつぶすことを希望するものはおりやしないので、塩業政策が、弱い企業が成り立たないような方向に持っていくからで、希望でも何でもないのですよ。真綿でじりじり首を締められて、そうしてやらざるを得ぬように持っていかれるわけです。あなたの方の塩業政策でそういうふうに押しつけられるわけです。そういうことについては、私は当然今までのあなたの方の指導方針等を転換していくのだからして、国が相当の補償をしていかなければならぬことは当りまえであって、今あなたもその額のことは言われませんかったけれども、その点は認めなければならぬということは当然です。ただそういうことをやるときは、失業する労務者の問題は企業自体の中で片をつけるといったって片がつきますか。実際問題として今の駐留軍の労務者の問題と同じです。国の政策が変って、駐留軍の方が膨大な失業者が出る。しかしつぶれる企業の中でとても労働者の問題などというのは片づくわけがない。そこであなたの方で一定の補償をなさるなら、その補償を決定する基準の中には、労務者に対してはこうこうというところのものが当然一つのデータとしてあげなければならぬと思うのです。それをしないで、希望によってやめるのだからして、まあつかみ金を出していく、あとは企業内部で片づけろということでは、そんなばかなことでは私は許されぬと思う。少くともこれが一つの専売事業としてやっていかれ、従来の塩業政策と百八十度の転換をするという問題になってくるというと、そんなことで解決のつくものじゃないと思いますから、もう一ぺん重ねてお尋ねします。

○説明員(舟山正吉君) 塩田業者の中には、早くから工場敷地として塩田を転換したいとか、あるいは市街地が発達して参りまして、市街地に変えたいとかいう場所も現実にあるわけであります。ところがこれまでにおきましては、公社として転換を認めないのではないかというふうに業者の力も考えておられたようでありますけれども、この際、やはり転換したいと希望される向については、これをお認めすることが適当であると考える次第でございます。そこで、でありますから、まあ価格で押していって、結局いやおうなしに廃業させるのであろうというような御意見でございますけれども、(江田三郎君「そういうことになるじゃないか」と述ぶ)価格につきましては先ほども申しましたように、いつの日にかある程度のレベルまで下げて参りませんければ、国際価格との開きがあまりにも大き過ぎまして、これは最終的に安定した形といえないと思うのであります。価格を順次引き下げていくことは、これはやむを得ない措置であろうと思います。

 次に、労務者の問題でございますけれども、ただいま私どもの考えておりますことは、先ほどお答え申し上げましたようなことでございまして、やはり企業内部で原則として解決していただきたい。それについては補償額等も関連するかもしれませんけれども、一応そう考えております。

○江田三郎君 その点は、私は今のような公社の考え方ではいかぬと思う。そこで、この際、一体将来こういう補償をする場合には、どういう基準を考えておられるのか、それを案がありましたら、この次までに出していただきたい。

 それから最後に、もう一点だけ、あまり長くなりますからこれでやめますが、もう一点だけお聞きしたいのは、弱小生産者の優良企業への統合をする場合に、「この場合食料用塩生産基準について若干の加算を考慮する」というのですが、「若干の加算」というのは具体的にはどういうことです。

○説明員(三井武夫君) 公社で考えております案としては、従来の統合されまする企業の成績の、生産量の半分を基準量、つまり一ヘクタール当り二百トンなら二百トンにプラスする、半分をプラスするという考え方でございます。

○江田三郎君 そういうことによって大へんな、一貫性のない波乱が生まれてくるのじゃないですか。ある部分は、まあ私どもは二百トンという線ではいかぬと思いますけれども、ある部分は二百トンだ、ある部分は弱小企業を統合しさえすれば、これが三百トンになり、あるいは二百八十トンとなり、次々にどんどん統合していくと、どういう数字が出てくるかわからぬ。そこに計画の立たない一つの塩業会計としての非常な混乱が出てくるのじゃないですか。そういうことはお考えになりませんか。

○説明員(三井武夫君) お尋ねの点は非常にむずかしい点でございまして、まあ二百トン、かりに二百トンと申し上げますけれども、二百トンという基準は、先ほどもここで御説明申し上げましたように、ある地方の生産の現状から見れば、確かにこれは低く過ぎるわけであります。それで、その点を何と申しますか、救済する手段として、いわば他の非能率企業のワクを買ってきて、その二百トンにその半分をプラスするということを一方では余地を残すなれば、現在基準量以上に非常に生産ができておる地方を救済することになる。それから、一方では、二百トンという基準量は、一応今後の生産費を計算いたしまする前提として二百トンの生産は確保して、その二百トンの生産でもって、生産費はどのくらいになるかということを計算する一つの基準に一応二百トンを使って参ることにしたいと思います。従いまして二百トンにプラスいたしまする企業は、お話しのように非常に状況は違って参りまして、生産費の計算なんかが一律にいかぬじゃないかというお話はその通りでありまするけれども、一方では、その二百トンで切られれば自分のところは余った分が何トン出てきて、それは終局の姿では五千円に買ってもらえる。それを自今のところでどの塩田を買ってくれば、その半分がプラスになって、何トンだけはプラスしてもらえるから、その分は一万円に買ってもらえるのだ、差額の五千円程度のものが助かるのだということで、そこから自分の企業としては、あそこの塩田なれば幾らで買っても、そろばんがとれるというそろばんが出てくるわけであります。今後何年間にそれを償却するという前提をとれば、おのずから値段が出てくると思いますので、その点を考えまして二百トンにプラスするということにいたしました。お話のように、多少その個々の企業のレベルが低くなる点はございまするけれども、そのまた低くなるところを利用して、一方では業者間の統合を助長すると、こういう効果をねらったわけでございます。

○江田三郎君 私はその二百トンが、二百四十トンとかいろいろ説があるけれども、そのこと自体に一つの納得できない点があるので、たとえば同じような立地条件のところで、ヘクタールの枝条架を、どれだけの施設をしたということによって生産量はうんと違ってきますね。ところがそういうような企業が、枝条架だけの施設とあなた方が考えておったより以上のものを、資金を投下してやったという場合にも二百トンであり、そうでない場合にも二百トンであるというようなことが事実上きめ得るかきめ得ないかということが一つの疑問であるのですが、さらに希望による田地整理を考慮するとか、あるいはこういう、どうも筋の一貫しないような加算制度ということを考えますというと、何がなしに公社の方は一切を業社の方の負担で転換させよう、特に労務者の問題になると、そのまたもう一つ末端のところで解決させようというような、自分たちの方で今までやってきた指導の見通しの誤りということは一つも責任を感じないようなやり方じゃないかと思うのです。そういう点につきまして、なお、いろいろお聞きしたいことがありますけれども、私はきょう若干の資料を要求いたしましたから、それが出た上であらためてお尋ねしますが、最後にもう一つだけ聞いておきたいのは、今業者とあなた方の話し合いはその後どうなっておるか、その見通しだけちょっと聞いておきたいと思います。

○説明員(三井武夫君) たしか八月に第一回の会合をいたしましてから、塩業者は二回現地に帰りまして、先週の金曜日でございますから、二十七日に今度出て参りましたが、この前に代表者が出て参りまして主張いたしました点を繰り返すだけで、公社としましてはそれを原案として十分な話し合いをいたしたいということを申し入れたのでありまするが、業者の間ではまだ話し合いの時期でないということで話し合いに応じませんので、その後業者とは話し合う機会を持っておりません。現状ではそういうことで、何といいますか、刷れたままになっております。

○平林剛君 大体江田委員から大筋についてはお尋ねがありましたから、私漏れた点を二、三聞いておきます。

 塩専売会計に現在十億百万円の赤字がある、この赤字がなぜ生れたかにつきまして、私どもいろいろ調べてみたのでありますけれども、結局従来は国内塩の価格と調整してそろばんをとっておったところが、自己輸入制度が毎開をされてから、このそろばんをとることができなくなったことが一つ、それから国内塩の購入費が予定より大幅にふえるような状態になったため、この購入費がかさんだということ、大体この二つの理由で今日まで十億百万円の赤字が出たのだ、かように承知をいたしておるわけであります。しかるところ、現在の専売公社の塩業政策の転換によりまして、現状のままでは先ほどお答えがありましたように、昭和三十六年までに四十億円をこえる赤字になっていく、これは日本専売公社法の建前からいきましても、まことに困った実情であります。今日の専売公社の政策を進めていくと、四十億円に上る赤字が出るということは将来大へん困ったことになって、今度はそれをどう解決するかということで悩むのではないだろうか。今から一貫してこの赤字をどう克服するかという対策も合せ含めておかないと、将来において食糧会計の赤字と同じように、塩の専売会計の赤字の処理をめぐって困った立場に陥りはしないか。そこで私はこの際に専売公社から、この赤字の理由と、それからこの赤字は将来どういうふうに解消していくつもりであるか、この二点についてお聞きしておきたいと思っております。


○説明員(舟山正吉君) ただいまのお答えも少し足りませんでしたが、二十九年、三十年のころにおきましては、特に黄色種の増反に努めて参りました。これは、当時といたしましては、ピース等の高級たばこ、黄色種をたくさん使いますたばこの売れ行きが、その原因はいろいろ言われておるのでございますけれども、たとえば、パチンコ・ブームといったようなことも原因の一つにされておるのでありますけれども、非常に高級たばこの売れ行きが多かったので、その原料になります黄色種の増産に努めたのでございます。それに関連いたしまして、製造、生産との関係、さらに販売をも加えまして、これらは、公社内部におきまして緊密な連絡をとっておることはもちろんでございます。まず、販売の見通しを立てまして、それに伴って製造計画を立てる、これに要しまする原料はどれだけ要るかという計算を立てるのでございます。当時といたしましては、まだ外国製のたばこ等もございまして、たばこの需要量がどの程度で安定するのであるかということが的確に予想もつきがたかったというようなこともございますし、そのうちに、国民の需要するたばこの種類というものも変って参ったというようなこともございます。それから、なお生産は、ただいま申しましたように、販売計画と関係づけましてその生産計画を立てるものでございますけれども、申し上げるまでもなく、生産につきましては、それが実行面に現われて参りまするには、若干の時日を要する。耕作という、農産物の農産ということに関連いたしまして、若干の時期が要るということで、増反の実が上りましたときには、遺憾なことでありますけれども、たばこの需要面が若干変るということが出て参ったような次第でございます。

○田中茂穂君 大体昭和二十九年、三十年に増反運動をおやりになって、まだ一、二年しかなっていないのですが、しかも、減反計画の中では黄色種の面積が一番大きいのですね。私どもが考えますのには、あまりにも公社の長期的な計画というものが今までなされていなかったじゃないか。しかも販売あるいは製造、生産の、この三者の緊密な計画的な上においての十分な連繋がなされなかったために、今日のような減反をやらなければならないという羽目になったじゃないかと思うのでございますが、先ほど来、平林委員から御指摘もございましたように、あまりにも耕作者だけに急なこういった減反計画を示されたということは、まことに遺憾に思うのであります。その点、まず副総裁にお伺いしたいことは、これだけの減反を今年と来年度おやりになる以上は、これらについての公社自体としての計画的な「そご」があったと私どもは解釈するのですが、それについての何か副総裁としての責任と申しますか、そういった面に対する何らかのお考えはないのでございますか。

○説明員(舟山正吉君) 葉タバコの生産、製造、販売につきましては、緊密なる連絡をとりまして、公社の事業として、一体として慎重に計画を立て、実行しておるつもりでございますけれども、先ほども申し上げましたようなやむを得ない事情がございまして、そのほかに、葉タバコ全体につきまして、昭和三十年、三十一年三十二年、この三カ年は天候に恵まれまして、関係者の予想以上の豊作になったわけでございます。その間、なお、農薬、あるいは肥料等、これも急速なる発達を遂げまして、これがまた予想以上の収穫を上げるような原因になった次第でございまして、計画自体については、この四、五年前におきまする、経済が非常に動揺しておりまして、先の見通しが困難であったという事情もあったと思いますけれども、これにつきまして、公社の計画通りに行かなかったことは遺憾と存じておりますが、しかし、その後の豊作の原因には、ただいま申しましたように、天候の関係、あるいは農薬その他の進歩の関係ということもございまして、今日に至ったのでございます。一昨年まで増産を奨励して参ったのでありますが、急に減反を打ち出したではないかというお示しでございますけれども、実は、三十二年度におきましても、在庫量その他の面から検討いたしますと、若干の減反もしなければならぬという論もあったのでございますけれども、今年は自然に廃作する人を、その分だけ減反するといったような措置にとどめまして、様子を見たのでございますが、今年また引き続き豊作でございましたので、来年はやむを得ず減反しなければならないというような羽目に立ち至った次第であります。

○田中茂穂君 大体やむを得ないという理由のもとに、かような減反計画をお立てになったということでございますが、先ほど平林委員も御指摘のように、耕作農民は絶えずこの不安な気持で耕作をしていかなければならないというようなことから、私どもはぜひとも専売法の一部改正を成立せしめて、耕作権の確立と申しますか、安定した姿において耕作農民が耕作するようにしなければならないと思うのでありまして、先ほど来の御説明を聞きますと、八千八百八町歩でございますか、黄色種におきまして。これはどうしても達成しなければならない数字であるというようなお話のようにも受け取られたわけなんですが、今後自然廃作者だけによってこの減反計画を進めていこうというお気持はございませんか。

○説明員(舟山正吉君) 増産の程度が非常に大きかったものでございますから、自然廃作の程度では措置しがたいと認めまして、そう考えました根拠となりますのは、ここにお示しいたしました資料でございますが、そういう判断をいたしまして、やはり八千八百町歩程度のものは、今の時期におきまして、この資料に基いた見通しといたしましては、どうしても不可避であるというように公社といたしましては考えておる次第でございます。

○田中茂穂君 一応私のお尋ねしたい点は以上のような点でございましたけれども、再三申しまするように、これは明かに私どもの考えるのは、公社の計画がずさんであったということを御指摘申し上げたいのであります。でありまするので、十分それらの点も反省していただきまして、今後の減反に当りましては、強制的な減反という方法をできるだけ避けていただいて、そうして自然廃作者を中心にしてこの計画を進めていくという方向に、ぜひともお考えをお願い申し上げたいと思います。これは要望として申し上げておきますが、いずれまた専売法の一部改正等に当りまして、これらに関連した御質疑を申し上げることにいたしまして、きょうはこの程度にとどめます。

○委員長(豊田雅孝君) 他に御質疑がなければ……。

○江田三郎君 ちょっと私聞き漏らしたかもしれませんけれども、反当の生産量の変化というものは今後の五力年にどういう工合になりますか。

○説明員(榎園光雄君) 一応われわれの方といたしましては、一八二・四というものが平均的に一応とれるだろうというような想定の、下にやっております。と申しますのは、この一八二・四キロというのはどういうふうに計算したかということが問題になりますが、われわれの方としては、タバコは非常に天候に支配を受けやすい、タバコの反収曇を計算する場合に一定の方式もございませんで、一応米並みの例の趨勢値、過去、二十年間のある一定の不作の年を除きました趨勢値から一応導き出してきたのですけれども、それだけでは最近のいろいろな農薬事情なりあるいは技術の改良などが加味されませんから、その趨勢値とそれから最近五年間の反収量の平均で、一八二・四キロというものを割り出しましたけれども、どうも最近三カ年間の実績だけを見てみますと、一八二・四というものが今後の基準反当数量としては低いのじゃないかということの心配をいたしておりますけれども、一応これをば若干上げるという理論的根拠もございませんから、従来やっておりました算式に基いて最近五カ年間の反収量の情勢を加味しまして計算して、江田先生の御質問の今後どう見るかというお話しは一八二・四というものが今後基準反当数量になるのではないかというような前提でこの数字をごらん願いたいと思います。

○江田三郎君 そこでちょっと具体的に、それでは三十三年と三十七年との反収はどう違ってきますか。

○説明員(榎園光雄君) 私どもの計算いたしましたのは、三十三年以降一八二・四キロがそのまま推移するであろうというより、むしろ今後五カ年間の平均所要面積を出します場合、現在の時点に立ちまして一八二・四キロで計算いたしますので、具体的に三十三年から三十七年の基準の反当数量がこういうふうになって、一八二・四から一八三になり四になるというような計算はいたしておりませんので、結局現在の時点に立って今後の基準数量というものを計算いたしますれば一八二・四キロだ、だから見方は、これを五カ年間継続するのだというふうにわれわれの方ではなっておるわけでございます。

○江田三郎君 ちょっと私よくわからんのですが、今までの過去の趨勢とそれから一八二・四に三十三年で達する。その達したものが三十七年くらいまでは継続されると、こういうことなんですか。

○説明員(榎園光雄君) そういうことでございます。

○江田三郎君 私そこに問題があるような気がするのですがね。なるほど過去三カ年間の上昇率は非常に高かった。それは副総裁の言われるような豊年という問題があるかしらんが、たとえば最近の米の問題でも、今年なんかの天候からいえば決して豊年の天候ではなくても七千何百万石という数字が出てくるわけであって、農薬とかあるいは肥料ということも言われましたが、相当技術が変ってきておる。特に今後の日本農業というものはどこに問題があるかといえば、一番大きい問題は私は畑作の問題だと思うのです。だから畑作の場合に、当面、その作物に必要なところの肥料をやり農薬をやるということ以上に、今まで放置しておったところの畑地の土壌改良という問題に日本農業としては当然入っていかなければならぬ。そこでたとえば畑地灌概の問題も出てくるだろうし、あるいは畑地を今までほとんど略奪的なものが、もっと有機質を入れるというような問題も入ってくるだろうし、もし日本農業というものが今後発展するのだとすれば、これは畑地において大きな上昇カーブを示してこなければならぬはずなのであって、そういう点からいえば、たまたま三十三年に到達したところの反当生産量というものを今後四、五年コンスタントに見るという見方は、やはり間違いのもとじゃないか。そういうところに依然として公社の方の技術的な見方の甘さがあるのじゃないかというような気がするのですが、そういう点はどう考えられますか。

○説明員(榎園光雄君) 私どもが反収量を計画いたします場合に、今、江田先生のおっしゃいましたような議論もだいぶ出ましたのですけれども、一八二・四というものは最近のタバコの生産事情自身から見て低いのじゃないか。農業の技術の進歩なりあるいはMH三〇というわき芽をとめる薬がございますが、そういう農薬の普及度というものからして一八二・四が非常に低いのじゃないかという説も部内では相当ありましたけれども、一応しかしわれわれの見方としましては、本年一九七キロ、前年一九三キロというような高い数字を示しておりますけれども、その前の段階におきましては一五六キロとかあるいは一五七キロと、あまりにも一番上のときと一番下のときの差がひどいものですからして、果して今後農業技術が進歩したとはいいながら、一九〇キロ台を今後の基準反当数量で見るのがいいのかどうかという点が本年まで私どもの方でも自信がなかったものですから、一八二・四キロは若干低いけれども、一八二・四キロくらいで見ておいて、もう少し来年の作柄なりあるいは農薬の普及度なりを検討をした上で修正すべきものならば修正するというような前提で、この数字をば算定いたしたわけであります。だからかりにあるいは本年百九十キロという数字を用いますれば、減反面積も相当過剰にもなりますし、一応まあ減反が本年だけで終る問題でもありませんし、来年になりますれば、来年度の五カ年計画というものを作成しなければならないし、長い目で見ますれば、本年百九十キロなりあるいは百九十三キロなり、ここ三カ年間の異常な数字だけにとらわれて高い反収を上げることはどうかと思いまして、一応一八二・四というものを計算いたしましたので、先生のおっしゃいましたような一応有機物の投入とかあるいは農薬の進歩、農業技術の向上という面からこの中に若干含ましたつもりではございますけれども、なお見方によりますれば、その見方が足りないというような御指摘もあるのじゃないかと思います。今後この問題につきましては十分検討いたして、適正な基準反当数量というものを決定いたしていきたいというふうに考えております。

○江田三郎君 私どもも、それならばお前は何と考えるかと言われたら、答えはなかなかないのですけれども、そういう点について公社の方でも試験研究機関というものはあるでしょうが、やはり公社の試験研究機関というものはかりにあったとしましても、僕は、その試験研究の範囲というものは幅が狭いと思うのですよ。タバコ・オンリー的な試験研究となるのじゃないか。そういうものが、日本農業全体の中でのこのタバコ耕作という角度からもう少し広い眼で見ていかなければならぬじゃないかということだけをただ抽象的に考えるわけで、これが間違っておるとも何とも私言うだけの自信はありませんが、願わくばしばしば改訂を要せざる五カ年長期計画を立てていただかぬと、長期計画の名のもとに塩の生産者もタバコの生産者も安心して寄りかかっておったらば、なに言うてみただけの長期計画で、二年目にはまた改訂するのだというようなことでは、はなはだ迷惑至極だということになっては困ると、それだけなんです。

○委員長(豊田雅孝君) ほかに質疑ありませんか。――ほかに質疑もないようでありますから、本件の調査は一応この程度にとどめまして、本日はこれにて散会いたします。
   午後三時二十三分散会


1957/10/02

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