2004/04/14 >>会議録全文

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(民主党ニュース)
【党首討論】菅代表、米包囲作戦に自制求めるよう要求

今通常国会で2回目の党首討論が14日に行われ、民主党の菅直人代表が現在のイラク情勢と自衛隊派遣の根拠、年金制度一元化に関する無責任発言などについて、小泉首相を厳しく追及した。党首討論の主なやりとりは、次の通り。 
  
■イラク戦争の無条件支持は間違い 

 イラク戦争を始めてから1年。米国の当初の見通しがまったく違っていたのは明らかだ。今のイラクの状況は、米軍対イラク国民という構図になるギリギリのところだ。また、いまだにイラクに大量破壊兵器があると考えているのは、地球上でブッシュ大統領と小泉首相の2人だけではないか。ブッシュ米大統領が国際社会の支持も無視して進めたイラク戦争を無条件に支持したのは間違っていたのではないか。 

小泉 判断は間違っていない。復興支援も失敗したとは思っていない。厳しい状況はあるが、イラクの復興に責任を果たしていかねばならない。 

 復興支援の問題ではない。ブッシュ大統領の一国主義的戦争が失敗し、それを支持した政府の判断も誤りだったということだ。問題をすりかえるな。 

■ファルージャ包囲作戦に自制求めよ 

 米軍のファルージャ包囲作戦で多くの一般国民を含む1000人もの人々が殺されている。これに抗議してイラク統治評議会の議員を辞任する人も出ている。しかも、この作戦は新たなテロを誘発している。3人の日本人の人質がファルージャ近辺で拘束されていると見られることからも、政府として米軍の自制を求めるべきではないか。 

小泉 ファルージャの状況は厳しいものがある。(米軍の包囲作戦が)イラク国民の反発を買っている向きもある。イラクの治安状況改善に何が必要か。われわれもいろんな方面に働きかけていく。 

 ある期間、自制を求めるべきだと言っている。 

小泉 単純に自制を求めることではない。人質問題など微妙な状況がからんでいる。 

■サマワはまだ「非戦闘地域」なのか 

 首相は先の党首討論でも、サマワ周辺地域が非戦闘地域だという前提が崩れた場合は自衛隊を撤退させると言った。現に自衛隊は宿営地の外で活動できない状況に追い込まれている。撤退を含めて検討すべき時期にきている。 

小泉 そうは思っていない。人質が誘拐されている現状で(撤退と)言ったら、犯行グループの思うつぼになる。 

 法で決めたことでも、やらないと言うのか。 

■なぜ人質家族と会わないのか 

 3人の人質の家族たちは精神的にも厳しい状況に置かれている。なぜ会わないのか。 

小泉 家族のつらい立場は察している。救出のために何が効果的か。会うことがいい結果に結びつくかどうか。そういう意味で会う状況にはないと判断している。 

 会うこと自体を拒否するのは分からない。家族の生の声を聞くのはつらい、避けたい、ということか。さらに会うよう要請する。 

■年金一元化か、14年連続保険料引き上げ法案か 

 首相は「一元化が望ましい」「民主党が対案を出したら1年程度で話し合いたい」と発言していた。ところが9日の厚生労働委員会では「一元化は2、30年先のこと」などと発言が変わっている。一元化は本当にやる気があるのか。 

小泉 曲解している。将来一元化できれば望ましい、と言った。一元化について共通の認識を持つまでに1、2年、その後、新制度で給付を受けるまでには2、30年かかる。 

 負担の部分はどうなのか。現在の法案に基づいて14年間毎年保険料を引き上げた後に一元化するということか。 

小泉 今の政府の法案を通した後でも一元化の議論はできる。 

 一元化が望ましいと自ら言ったのだから、政府案を3、4年のつなぎ法案に変えるならまだ分かる。14年間連続値上げ法案は撤回すべきだ。(昨年の総選挙時の)小泉改革宣言には「2004年に年金制度の抜本改革を実施」と書いてあるではないか。
基盤に日本にとって必要な政策を推進していかなければいけない。

 正当なる政党の連立とは異なっている。国民的政党とは言えない。


平成十六年四月十四日(水曜日)   午後三時開会

○菅直人君 今日の午前中、ブッシュ大統領がイラク情勢について久しぶりに記者会見をされました。その映像をテレビで見ていて、あるいはそのしゃべっておられる内容を聞いていて、何と小泉総理、よく似ているなと、そんな感じがしたのは多分私だけではないと思います。つまり、ブッシュ大統領に対して記者から、イラク政策は失敗だったんじゃないですかと、そういう厳しい質問が出ておりましたが、ブッシュ大統領は強気一点張りで、間違ってなかった、自分がやってきたことは正しい、このように言わば強弁をされておりました。

 しかし、客観的に見ますと、あのイラク戦争が始まって、フセイン政権さえ倒せばイラクの人たちはアメリカ軍を解放軍として歓迎してくれるんだろう、そういう見通しの下に戦争を始めて、戦争終結宣言から既に一年たちました。しかし、今日の状況がその見通しと全く違った形になっていることは、これはだれの目から見ても明らかであります。

 元々、フセイン政権の言わば残党の抵抗は予定の範囲かもしれませんけれども、フセイン政権に弾圧されてきたシーア派の人々までもが、それは一部かもしれませんが、相当の数が反米武力行動に立ち上がってしまっているわけでありまして、そういった点で私は、今のイラクの情勢は本当にぎりぎりの状態だと、米軍対イラク国民の戦いになるぎりぎりの状況だと。

 かつてベトナム戦争のときにも、ベトコンというのはあくまで南ベトナムでも一部の人間などと言っていたけれども、あのテト攻勢からその後の展開は、私も学生時代でありましたが、よく記憶をいたしております。

 そういう中で、小泉総理は、この間一貫してそのブッシュ大統領のイラク政策に追従してきた、盲目的とも言えるぐらい無批判にそれに従ってきているわけです。今や、大量破壊兵器が開戦当時イラクにあったと思っている人は地球上広しといえども二人しかいないんじゃないでしょうか。つまりは、ブッシュ大統領と小泉総理の二人以外にそんなことを思っている人は私は地球上にいないんじゃないか、そうさえ思うわけであります。

 小泉総理に、今のイラクの状況の中で、ブッシュ大統領が国際的な支持も無視して進めたこのイラク戦争、そしてそれを無条件で支持してきた小泉総理のイラク政策、間違っていた、そして失敗した、このように思いますが、いかがですか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 私は、日本の決断、私の判断が間違ったとは思っておりません。イラク復興支援、失敗したとは思っておりません。イラク復興支援を成功させなければいけないと思っております。

 確かに、現在厳しい状況でございます。フセイン政権が予想する範囲内で最も楽観的な形で打ち倒されたというのは事実でありますが、その後、予想どおりに楽観的にいっていないのは、これは事実だと思います。しかし、今日のブッシュ大統領の演説を聞きましても、六月三十日にイラク統治評議会、政治プロセス、多くの国際社会の協力を得て、イラクの人たちによる安定した民主的な政権を作るという決意には変わりないと、そして多くの国際社会からの協力を得るために新しい安保理決議も検討したいということについては評価しております。

 日本としても、今回のイラクの状況、厳しい状況はございますが、国際社会の一員としてイラク復興に対して責任ある役割を果たしていかなきゃならない。特に、今のイラクの情勢を見ますと、何とか国際社会のイラクを復興させるために努力している国々、人たちを追い出そう、テロの温床にしたい、イラクを混乱に陥れたいという勢力がばっこしているのは事実であります。しかし、これに負けてはならないと思っております。

 やはりイラクの復興支援、人道支援、イラク人が早く希望を持って自らの国を再建させようという、その努力をしている方々もイラクにはたくさんおります。むしろその方が多いんです。報道に出てくる面においては混乱させようというグループの報道が強く出ておりますが、実際に多くの人たちが、やはり自分たちは、今、再建途上にある、自分たちだけの手ではイラクを復興支援させることができないから、多くの手をかりて再建させたいという努力している。そのために日本は、私はできるだけ協力すべきだと。だから、あの戦争は間違ったと私は思っておりません。

○菅直人君 いいですか、これ国民の皆さんによくお聞きをいただきたいと思いますが、私は、ブッシュ大統領が推し進めた一国主義的な戦争そのものが失敗し、間違ったんじゃないかと聞いているんです。復興支援のことを今聞いているんじゃありません。

 すぐに小泉総理は物事をすり替える。復興支援は、それは私たちも人道支援、復興支援はやるべきだという立場です。しかし、戦争をやるべきだという立場ではありません。戦争が間違ったんではないかと言っているのに、いつの間にか復興が間違っていた、こういうのを、すり替えの典型的な形なんです。
 そこで……(発言する者あり)

○会長(角田義一君) お静かに願います。

○菅直人君 もう一つ聞きたいと思います。
 今、ファルージャの状況を一体総理はどう見られているか。確かにファルージャは、元々スンニ・トライアングルと言われる、いわゆるフセイン政権の下でのいろいろな人たちが多い地域ではあります。しかし、それにしても、四人のアメリカの民間人が殺された、それに対して、ある意味では報復攻撃とも言えるような包囲作戦を行って、そして空から陸から攻撃を加え、六百人、いや八百人、いやもう千人に達しているかもしれません。その相当部分はイラクの一般の国民であります。幾ら何でもちょっとやり過ぎじゃないかというのがアメリカの中ですら起きている。

 もちろん、イラク人から成る統治評議会の中でも、このやり方に対しては、これでは自分たちも統治評議会を辞任するといった声まで出ている。正にテロを抑え込むんではなくて、テロを増大するようなやり方をやっているんじゃないか。

 私は、イスラエルとパレスチナの報復合戦を、このファルージャでアメリカ軍といわゆるスンニ派とが繰り返しているように見えてならない。しかも、今日、三人の日本人が拘束をされて人質になっているのは、このファルージャあるいはその近辺であることはほぼ確かな情勢であります。

 そう考えてみると、このファルージャにおける停戦、今日の報道によれば、もはや停戦も崩れたのかもしれないという報道もありますけれども、私は、今総理がやるべき一つは、ブッシュ大統領にファルージャについての自制を取った行動を求める、米軍の自制を求めることが日本国総理としてやるべき一つの見識ある行動だと思いますが、いかがですか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) ファルージャの状況は厳しいものがあると私も認識しております。これがイラクの国民の反発を買っている向きも確かにありますが、要は、イラク全体の治安状況の改善のために何が一番必要かという観点からいろいろ米軍も働き掛けていると思います。イラク人の皆さんの努力を支援する、そして早く地域の治安の改善、状況の改善に向かって、米軍当局も、更にイラクの統治評議会もそれぞれ働き掛けていかなきゃならない。

 当然、我々としては、アメリカに対しまして一日も早くその改善に向けた努力をするよう要請しておりますし、その点については日本としてもアメリカに対していろいろ働き掛けをしておりますが、アメリカのみならず、私は、今後ともこれからの状況については、日本は人質を誘拐されておりますので、そういう方面と密接に絡んでいる状況もあります。
 よく状況を見ながら、いろいろな方面に働き掛けていきたいと思っております。

○菅直人君 これも真正面から全く答えようとしていない。
 私が言ったことははっきりしているじゃないですか。ファルージャで激しい戦闘が起きて、一時休戦になった。今ファルージャ付近に我が国の三人の人質も拘束されている可能性が高い。そういうことも含めて、これ以上のファルージャにおける米軍の行動は少なくともある期間自制することを求めたらどうですかとお聞きしたんですよ。

 そうすると、何かが改善するとかなんとか。復興支援のことは聞いていません、今は。私が聞いているのは米軍の行動です、戦争です。自制を求めるのか求めないのか、イエスかノーかではっきり答えてください。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) これは単純に自制を求めるかどうかということではないんです。

○菅直人君 じゃ、ノーですね。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) ノーでもないんです。人質と微妙な情報も絡んでいるところであります。その点も含んでおりますから、日本がどうしろ、ああしろということを公開で言うべきことと、いろいろな水面下で働き掛けているのと、一緒にあるんです。

 私は、今の状況において、人質の問題とも絡んでおりますので、慎重に物言いをしているわけでございます。

○菅直人君 私たちは、この人質問題が起きてから、脅される形で政策を変えるとか、要求に応じる形で自衛隊を撤退するとか、そういう立場には立たないことは一貫して明確にしてまいりました。しかし……(発言する者あり)ちょっと、やめさせてください。

○会長(角田義一君) ちょっと、非常に重大なことを討論していますから、お静かに願います、今日は。

○菅直人君 しかしですね……(発言する者あり)

○会長(角田義一君) お静かに願います。

○菅直人君 さきの党首討論の場でも、総理は、イラクにおいてあるいはサマワ周辺において非戦闘地域ということが崩れた場合、その場合には自衛隊を退避させるあるいは撤退させると、そういうことをはっきりこの場で言われました。法律の審議の中でもそう言われました。

 今、比較的安定していると言われた南部地域でも、シーア派のサドル師を中心としたグループが相当程度の武力行動に移っていて、現に自衛隊は駐留地、駐屯地から出られない、外での活動ができない状況に追い込まれております。

 こう考えると、少なくとも非戦闘地域というものが、例えばバグダッドはどうなのか、例えばファルージャはどうなのか、まさかファルージャが非戦闘地域とは言われないでしょう。しかし、サマワの地域も含めて近隣のところでも、この法律は、非戦闘地域あるいは活動期間中戦闘が起きないと思われる地域と、今だけではなくて近い将来も起きないと思われる地域まで含んでいるわけですから、そう考えると、非戦闘地域とはもはや言えない状況に立ち至っている。

 こう考えると、今の六百名余りの自衛隊員が陸路クウェートから入ったわけですが、もしバスラとかそういうところがそういう武装勢力によって制圧をされてしまうと撤退するルートも極めて危なくなるわけでありまして、私は、そういったことを、非戦闘地域でなくなりつつあるという認識の中で、撤退も含めた検討を行うべきときが来ているんではないかと、このように思いますが、総理はいかがですか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 私は、現在そうは思っておりません。
 今、人質が誘拐されている状況で、仮にそのようなことを検討するということを私が言った場合に、犯行グループはどう取るでしょうか。正にテロに屈してはいけない、テロの脅しに乗るような形で自衛隊を撤退させてはいけないということを私は……

○菅直人君 法律のことを聞いているんですよ、法律のことを。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 菅さんも民主党も、言っているはずであります。

○菅直人君 法律のことを聞いているんです、法律のことを。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) この現在微妙な状況において、しかも、人質を誘拐した犯行グループが自衛隊を撤退させないと人質に危害を及ぼす、殺すというような情報が流れている中に、今、そのように……

○菅直人君 法律のことを言っているんです。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 自衛隊の撤退を考えるべきだというようなことを、私は、今の段階で私は考えておりませんし、こういう発言がどういう影響を及ぼすかということも考えなきゃいけない。
 私は、テロの脅しに屈するなと言っているんだったらば、そのような仮定の……

○菅直人君 何が仮定ですか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 今の時点において……

○菅直人君 何が仮定ですか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 自衛隊が撤退する……

○菅直人君 何が仮定ですか。現実じゃないですか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 準備をするかということは、犯行グループの思うつぼになるのではないか。私は、そういう点も考えていただきたいと。
 私は、現在、自衛隊が派遣されておりますサマワの時点においては、自衛隊の諸君が立派に汗を流して活動しております。

○菅直人君 総理、あなたは、法律が決めたことでも、状況が、例えば今の人質がある状況では法律が必要だといった場合でもやらないと言うんですか。少なくとも私は仮定の問題なんか一言も言っていません。現状がそうではないかということを言っているんです。

 現実に、(発言する者あり)現実にあのサマワの自衛隊がサマワ市内に入って、給水活動やあるいは学校の修繕活動といったことが危なくてできなくなっている。現実に、現にそういう状況に立ち至ったということはだれもが知っているわけです。

 そういうことを含めて、今の南部地域も、サドル派の活動を含めて、場合によっては法律が規定した、イラク特措法という法律が規定した非戦闘地域という定義があるわけですから、それに該当しなくなる可能性がかなり高くなっているんではないか、このことを申し上げているわけであって、仮定のことは申し上げておりません。

 そこで、もう一点、総理にお聞きをしておきます。(発言する者あり)

○会長(角田義一君) お静かに願います。

○菅直人君 総理、法律による非戦闘地域というものが認められない状態になったときの撤退あるいは退避ということは、これは当然行われるんでしょうね、法律に基づいて。総理。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 自衛隊の諸君は法律にのっとって活動しているわけであります。法治国家の日本として、憲法違反とか法律違反ということはいたしません。

○菅直人君 辛うじて法律は守るということを言われましたから、少なくとも法律に現状が、現状が非戦闘地域と言えるかどうかということをこれから十分に議論をしていかなきゃいけない、このように思っております。

 そこでもう一つ、今日のブッシュ大統領の演説の中で、ブッシュ大統領は、戦争で亡くなった人たちに対して、アメリカの、米軍の人たちですが、慰めのためにその家族と会っていろいろと話をしたということを何度も繰り返しておられました。

 今、人質になっておられる家族の皆さんは、大変ある意味では精神的にも厳しい状態にあるわけでありまして、そういう中で、私どもにも、あるいは自民党にも各党にもいろいろな話をされております。

 総理はまだ会われていないんですか。総理、なぜ会われないんですか。もし会われないとしたら、私はそれがよく分からない、その理由をお聞かせください。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) まだ会っておりません。

○菅直人君 なぜ会われないんですか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 人質にされている御家族の皆さんはさぞつらい立場だと思います。情報、錯綜しておりますし、いい情報、悪い情報、時々刻々変わり得る情報、正にそれぞれの情報に一喜一憂している、つらい厳しい状況にあるということはお察し申し上げております。

 今、政府として、私としてこの三人の人質救出のために何が効果的だ、効果的か、全力を挙げているところでありまして、会うことが果たしていい結果に結び付くかどうかよく判断しているところであります。そういう点において、今会う状況にはないと私は判断しております。その点は、いろいろな言えないこともございます。御理解いただければ有り難いと思います。

○菅直人君 私は、民主主義国でこういったことが起きた場合に、トップである総理が、それは会っていろいろなことが言えないというのは分かりますけれども、会うこと自体を拒否するというのは私にはとても理解できません。結局のところはだれか任せにしてしまおうとするのか。そういう生の声を聞くことが、ある意味ではこれきついことです、私たちにとっても。そういうきついことは避けたいということなわけですね。そうとしか受け止められないということを申し上げ、さらに会っていただくように心から要請をしておきたいと思います。

 そこで、今日はもう一点大きな課題がありますので、残念ながら、イラクの問題に加えてもう一つの問題に移らせていただきます。

 総理、総理は三月末のテレビでしたか、その場で、いわゆる国民年金と厚生年金の一元化は望ましいということを国民の前で言われましたよね。そして、四月一日の本会議では、そのテレビでは民主党が対案を出したら一年程度で話し合いたいと言われております、四月一日の本会議では、同じく一、二年程度で話し合いたい。その後、八日ですか、九日ですか、私たち民主党は、二〇〇九年、五年後に一元化する私どもの年金抜本改革案を国会に提出をいたしました。これに対して総理は、四月九日の厚生労働委員会で、何と、一元化は二十年から三十年先のことじゃないですか、こう言われましたよね。

 発言がころころ変わっているじゃないですか。猫の目のように変わっているじゃないですか。結局、二十年先にするということは、少なくとも二十年先に変えるということは、今からまともな議論ができるはずがない。結局は実質的に、やるやると言って何にもやっていないことじゃないですか。やらないことじゃないですか。総理の得意の手はこうなんですよ。

 先日も、我が党の同僚議員が、社会保険庁の掛金を、社会保険庁の人が交通事故を起こした、その何か事故処理の費用にまで年金掛金を使っていた、こんなことはおかしいですねと言ったら、総理も、そうだ、それはおかしい、そう言いながら、ついこの間通した法律には、与党が通した法律には、流用を今年一年間、これから一年間もちゃんとできるような法律をやっているじゃないですか。やるやると言ったこととやっていることが全く違うじゃないですか。天下り禁止も、禁止だと言ったら、翌日新聞見たら、もう半分ぐらいは、まあ仕方がないでしょうということになっている。やるやると言って、そこだけ国民が見ていると、あっ、小泉さんてやりそうねと思うけれども、その後をフォローしていると、何一つやらない。

 最近、おれおれ詐欺というのがありますよね。本当に何か、おれだから、こんなに困ったから、おじいちゃん助けてくれ、おばあちゃん助けてくれ。おれおれ詐欺。総理は、やるやる詐欺じゃないですか。やるやると言って何一つやらない。

 それに対して、この一元化発言が本当にやる気があるのか、それともやるやる詐欺で、やる気はないけれども言葉だけやるやると言っているのか、総理のはっきりしたお答えをください。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 菅さんも厚生大臣を経験したことがあると思います。私の一元化発言、曲解して取られておりますが、一元化、仮に民主党と合意でできたとしても、それが実施されるのは少なくとも二十年、三十年後です。(発言する者あり)それは、私がテレビあるいは本会議、委員会で発言した趣旨は、将来一元化できるならそれは望ましいということを言ったんです。

○菅直人君 一元化が望ましいと言ったんじゃない。またうそをついている。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) それは私は、一元化ができるんなら望ましいと、それは一元化が望ましいと同じようなことです。

 そこで、私も厚生大臣をしておりますから、私が初めて厚生大臣をしたときから一元化という問題は大きな課題だったんです。そして、この一元化の問題は昨日今日の問題じゃないんです。

 そこで、私は、この年金の改革法案につきましても、制度が変わっての、それは今まで給付を受けてきた方々の既得権もございます。そして、新しい制度に変わった場合には経過期間もございます。そういうことがあるから、まず政府の出している年金改革法案を通してから、それでは、将来一元化の考え方についてもそれぞれあります。今基礎年金の部分は既に一元化になっているということも言えます。あるいは、国民年金を除いて、厚生年金、共済年金等の一元化を図って、それからまた国民年金との一元化も図ろうという段階的な一元化もございます。あるいは民主党のように、今から国民年金も厚生年金も共済年金も一元化しようという意見がございます。

 そういういわゆる一元化の問題に対して、私は、この法案を通してから共通の認識を持つに至るまでも一年あるいは二年掛かるであろうと。そして、その一元化の共通の認識を持った後についても、この制度を変えて実施するまでには、この新しい制度が実施するまでには、今の制度で既に年金を受けている方がたくさんおられますから、こういうことを考えると、私は新しい制度ができた下で、その給付を受けるのには二十年、三十年掛かるであろうということを申し上げているわけであります。(発言する者あり)

○会長(角田義一君) お静かに願います。

○菅直人君 またですね、またごまかしの発言がありましたね。最後にちょろりと、給付を受けるには二十年先、三十年先でしょうと言いました。

 それはそのとおりですよ。今厚生年金のもう掛金を受けている人は、今その人が八十歳で百二十歳まで生きているとしたら、それは、あと四十年間給付はその従来の制度に基づいた形で受けるというのが私たちの考え方でもありますよ。しかし、皆さんが出している案は、自民、公明が出している案は、十四年間連続厚生年金掛金引上げ法案。違いますか。毎年一兆円ずつ、今年一兆円、次は二兆円、次は三兆円、次は四兆円、十四兆円今より掛金を引き上げようというんでしょう。

 そのときに何が起きるのか。半分は働いておられる皆さんの負担です。残りの半分は会社です。しかし、会社にとってそれだけ負担が高くなるんであれば、年金の掛金を半分負担するような正社員はやめて、派遣とかパートとかアルバイトといったような形にどんどん変えていく、今ですらそういう方向になっているじゃないですか。

 ですから、今回の自民・公明案には、働いておられる皆さんの代表の連合ばかりでなく経済界も、本当にこのままやったら工場をそれ以上に外国に移すか、あるいはそういう正社員をなくさなきゃいけなくなるから、そうでなければ経営がやっていけなくなるからといって経済界も反対の意向を示しているわけじゃないですか。この十四年間の連続引上げをした上で、そのまま続けるからこれで五十年大丈夫だ、百年大丈夫だと言っているのが今の自民・公明案じゃないんですか。

 私たちが言っている一元化は、二〇〇九年に一元化したときには、少なくとも掛金については……(発言する者あり)ちょっと静かに聞いてください。少なくとも掛金については一元的なルールになりますから、当然ながら、十四年間厚生年金をどんどん上げていくということにはなりません。

 ですから、その不足分に当たる部分を消費税を三%程度プラスすることによって賄っていく。この部分はですよ、この部分は、既にこれまでの制度で給付を約束している人たちに対して振り向けるためには、現役世代の働いておられる皆さんにだけその約束した給付のための負担をお願いするのがいいのか、お年寄りの皆さんの中にもお金を持っている方、消費をする方がおられるわけですから全体で負担するのがいいのか、それは正に政策判断ですから、大いにこれから議論しましょう。

 しかし、その手前の問題として、小泉総理は、二十年先、三十年先でなきゃ一元化はできない、ぽろりと、給付についてはなんてまたインチキなことを言ったじゃないですか。少なくとも、制度がスタートをしても旧来制度が残るという意味では、それは今言ったように、既に厚生年金もらっている人が百歳、百二十歳までおられれば残りますが、少なくとも負担の部分については、新しい制度がスタートした、私たちの提案で言えば二〇〇九年から新しい制度で全員が負担をするんですよ。これが新しい制度でなくて何ですか。二十年先ということは、結局、小泉総理は十四年間引き上げた後にもう一度一元化の議論をしようというんですか。どういう意味なんですか、はっきりしてください。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 私は、民主党の言っていることの方が分かんないんですよ。対案を出したと言っておりますが、今の法案を成立させた後でも一元化の協議はできるんです。

 そして、政府の案は、給付にしても負担にしてもはっきりと数字を入れています。民主党の対案は、一元化の考え方は分かりますが、数字ははっきりと入れていない。そして、保険料の負担は上げないけれども、その代わりに消費税を三%上げようというわけでしょう。しかし、果たして消費税が三%で済むかどうか、これまだ分かりません。

 しかも、社会保障全体を考えますと、社会保障は年金だけではございません。来年は介護の見直しもあります。そして、医療保険の見直しも迫っております。そういうことを考えますと、年金だけの目的消費税、これ、消費税というのは税制全体に絡んできますから三%どころで済むわけないんですよ。それを国民が、保険料は低い方がいい、しかし消費税は上げてくれということについて理解を示してくれるかどうかというのはこれまた別問題であります。

 私は、一元化につきましても、この法案、政府が出している法案を成立させてから、それでは一元化という、ついてどういうものかということを協議することについてはやぶさかでないと言っているわけでございます。

○菅直人君 いいですか。どれだけインチキなことを言っておられるかを皆さんもお分かりでしょう。

 今総理自身が出している法案がですよ、十四年間毎年引き上げるという法案を出しているんですよ。それを私たちが認めてしまったら、十四年間分オーケーしたことになるじゃないですか。認められっこないじゃないですか。

 私たちは、二〇〇九年から一元化した形での、そして場合によったら消費税三%を上乗せした形での新しい制度をスタートをしようとしているんですよ。なぜ十四年間分の引上げ法案を通してから議論するんですか。

 それに総理が答えていないことは、二十年、三十年先のことだといって九日の委員会で自分が言い出した。いいですか、一般的な、介護保険をどうするか、医療保険をどうするか、大いにあります。日本の税制をどうするか、大いにあります。そんなことは私たちも分かっています。しかし、総理が自らが一元化は望ましいと言ったから、じゃ一元化についてどういうお考えですかと聞いたら、いや一、二年で議論しましょうと言ったから、じゃやりましょうか、じゃ一、二年先の間だけのことにもし政府案を変えて、十四年間連続値上げ法案じゃなくて三、四年のつなぎ法案というんであれば、場合によったらそれはその間の議論としてあるかもしれないけれども、十四年間連続値上げ法案はまず撤回すべきじゃないですか。

 そうしたら、九日に何と言い出したか。いや、二十年先だと。値上げだけ十四年間やっておいて、それから、二十年先から一元化しようとするんですか。こんなばかな議論があるわけないじゃないですか。一体、二十年先、三十年先というのは何のことですか。

 ですから、そういった意味で、私は、この十四年間連続掛金値上げ法案を本当にこれで押し通すつもりですか。本当に自民党の皆さんはこれでいいんですか。だれが負担を受けるか分かっているんでしょうね。一番の、厚生年金に現在入っておられる皆さんと、厚生年金の、それに入っておられる皆さんを雇っている会社が毎年一兆円ずつ負担が増えていくんですよ。逆に言えば、国民年金に入っておられる皆さんは、引き上げられるけれども、給付も低いけれども、この十四年間連続値上げ法案には、直接的には十四年間の値上げ法案ではありません。ですからばらばらなんです。それは公明党の支持者の皆さんはそういう方が多いかもしれないけれども、私は、自民党の支持者の皆さんの中にはこれじゃ困ると思っている人が多いんじゃないでしょうか、私が知る限りは。

 私は、そういう意味で、元々抜本改革を言ったのは、小泉改革宣言の中に二〇〇四年に抜本改革を実施すると書いてあるんですよ、実施すると。そして、法案を出しながら、一元化ということがより抜本的であることを総理自身が認めて、望ましいと言われた。じゃ抜本改革をやりましょうということになったわけですけれども、それがまた二十年先の話にいつの間にか先送りされてしまった。まさか二十年先まで総理大臣やっておられるつもりじゃないでしょうね。

 つまりは、総理の言うやり方は、先ほども申し上げましたが、あの道路公団にしても、大改革をするんだ、やるんだやるんだと言って、結局は今の公団よりもっと悪い民営化案になっている。ありとあらゆるものが、やるんだやるんだと言いながら、何一つやれていない。やろうとしていない。

 正に、やるやる詐欺師の名前を総理に、その名前を総理にお贈りをして、私の質問を終わりたいと思います。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) まあ、意図的に一方的に解釈されているんでしょうけれども、今回の政府案を成立させてからも一元化の協議は可能であります。しかも、民主党の案は、自営業者の保険料負担をどうするかと、これをやると今の倍になりますね。

○会長(角田義一君) 総理、簡潔に。簡潔に。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) それと、納税者番号制度、これを導入しないと一元化はなかなか難しい点がある。
○会長(角田義一君) 簡潔にお願いします。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) さらに、消費税をこれほど上げて国民が理解できるかどうかという問題もあります。
 そういう点も問題ありますから……
○会長(角田義一君) 簡潔にお願いします。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 私は、今の政府案を成立させてから、本当にそういう協議が必要なら、別に拒否する理由はないと思っていますから、胸襟を開いて協議いたします。

○会長(角田義一君) 以上で菅直人君の発言は終了いたしました。(拍手)
 次に、日本共産党幹部会委員長志位和夫君。(拍手)

○志位和夫君 イラクでの日本人の人質事件について、今、日本国じゅうが心を痛めております。人質とされた三人の方々の安全と解放のために政府が最後まで全力を挙げることをまず強く求めたいと思います。

 私は、イラクの人質事件の行方にも深くかかわる問題として、イラクで今進んでいる情勢の劇的な悪化についての総理の認識を今日はただしたいと思います。

 イラク全土で占領軍とイラクの国民との衝突という事態が広がっておりますが、その最大の焦点となっているのが、イラク中部の都市、ファルージャであります。これは、三月三十一日にアメリカ人の殺害事件が起き、それに対する事実上の報復として、米軍が四月五日以降ファルージャの町を海兵隊それから治安部隊、戦車などで包囲し、空と陸から住民を無差別に殺害する軍事作戦に乗り出している、このことが今、イラク情勢を一気に悪化させる根源にあると思います。

 米軍が五日以降に行ったことを見ますと、正に無差別の住民への攻撃です。ロケット弾で民家を破壊して民間人多数を殺傷する。イスラム教の礼拝堂であるモスクの敷地内に大型爆弾を投下し、ここでも犠牲者が多数出る。クラスター爆弾という、空中でぽんと割れて二百を超える子爆弾を広範囲にばらまいて多数の人々を無差別に殺傷する残虐兵器も使われたと報道されております。五日以降だけで、AP通信によりますと、既に六百人を超えるイラク住民が殺害され、そのほとんどが女性と子供と老人だと伝えられております。

 この行為に対して、イラク国内はもとより、国際的な批判が広がっております。

 私は、重視すべきは、米軍に任命されたイラクの統治評議会でも、罪のない人々に対する集団的な懲罰行為と厳しく批判する声明を出し、統治評議会のメンバーが次々と抗議の辞任をする事態となっている。ある評議員は、これはジェノサイド、集団殺りくだと抗議し、ある評議員は集団的懲罰は違法であり、絶対に受け入れられないと指弾しました。

 これは本当に深刻な問題ですが、その町に犯罪者がいたというだけで町全体を包囲して、町の住民全体を軍事力による制裁の対象にするということは、私は絶対に許されないことだと思います。

 総理と私は、イラク戦争の大義については立場を異にしております。しかし、こうした国際人道法をも無視する戦争行為に対しては許さないという立場をはっきり取るべきではないか。私は総理に問いたい。ファルージャで行われたような無差別の住民への攻撃に対しては、こういうやり方は支持できないと言明すべきじゃありませんか。そして、その言明をアメリカ政府にも伝えるべきではありませんか。端的にお答えください。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 私は、実際、戦闘状況について、どういう戦闘方法がいいかという知識も能力もございません。しかし、治安の回復、イラクに安定した政権を作るために各国が今努力している。そして、犯行グループ、様々であります。日本人だけじゃない、各国の全く戦争とは関係ない人までが様々なグループによって誘拐され人質にされている。こういう無謀なグループに対して、やはり戦闘状況において大変遺憾な状況が起こっているのは事実であります。

 しかし、こういう点も考えて、早くイラクに安定した政権ができるように我々は努力していかなきゃならないんだと思っております。

○志位和夫君 私は占領軍によるそうした無法な行為に対しては支持できないと言うべきだという当たり前のことを聞いたのに、それに対するお答えはありませんでした。

 私は、人質事件を本当にしっかり解決していく上でも、日本政府が占領軍による無法行為は許さないという道理ある立場を貫くことが今は非常に大切だと。そして、米軍の占領支配に協力する意味を持つ自衛隊の派遣、派兵については直ちに中止して撤退することを改めて強く求めたいと思います。
 以上で終わります。

○会長(角田義一君) 以上で志位和夫君の発言は終了いたしました。(拍手)
 私の方から一言申し上げます。
 先ほど菅君の発言の中に不穏当な言辞があったという御指摘が今ございましたんですが、会長といたしましては、後刻、両院合同幹事会を開催をし、速記録を精査の上、皆さんと協議をして、しかるべき措置をやるならやるということにいたしたいと思っております。
 以上をもちまして、本日の合同審査会は終了いたしました。
 次回は、参議院、衆議院、それぞれの公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。
   午後三時四十八分散会


2004/04/14

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