2001/06/13

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鳩山代表が小泉首相と2回目の党首討論
「日本が率先して京都議定書批准を」

 鳩山由紀夫代表と小泉首相の2回目の直接対決となる党首討論が6月13日、参議院第一委員室で行われた。議長役の会長は民主党・新緑風会の本岡昭次参議院議員。

 鳩山代表は外交問題と経済問題に焦点をあてて、論戦を挑んだ。

 まず、議論の冒頭で、ローマ・クラブのアウレリオ・ペッチェイ会長が著した「成長の限界」を紹介して、首相の認識を尋ねた上で、「地球は注意信号のような状況。これを青い地球に取り戻すための手段が京都議定書であり、アメリカが離脱を宣言したことは大変に厳しい話だ」と指摘。首相がリーダーシップをとって、日本が真っ先に批准を宣言した上で、COP6の再開会合に臨むべきだと求めた。これに対し、小泉首相は「アメリカの参加を求め努力をしている」と述べるだけだった。

 鳩山代表はさらに、「対人地雷禁止条約でもオタワ・プロセスでカナダや日本が批准したことによって、いやがるロシアやアメリカも最後に批准した」として、「京都プロセスのようなものをつくり、日本が真っ先に批准し、いやがるアメリカを世論の力で批准させるようにできないか」と提案。「どうも日本はアメリカの出方を待っているとしか思えない」と、首相の腰の引けた答弁を批判したが、小泉首相は最後まで「アメリカの態度はともかく、日本独自で決めるという判断はしていない」と煮え切らなかった。

 また鳩山代表は、田中真紀子外相が5月にアーミテージ米国務副長官との会談を直前に取りやめた問題を取り上げ、「外相就任前に、民主党議員などと連名で米国が京都議定書から離脱することに抗議する広告をワシントン・ポスト紙に掲載したことに、これにアーミテージ氏が強い不快感を示していたことが、ドタキャンの理由だった」と、外務省の公電を根拠に指摘。首相は「米側は広告に不快の念を示したという報告はいっさいない」と、こうした見方を否定した。鳩山代表は、「田中外相は京都議定書に対してはアメリカを厳しく批判しているが、一方で平沼経済産業相が、柔軟に見直すべきとの発言をしている。政府の見解はばらばらだ」と迫ったが、首相は「大臣の立場として必ずしも一致していない場合があるが、何ら心配はしていない」と開き直った。

 鳩山代表は、日米首脳会談の際に、ブッシュ大統領に対して「日本は先に京都議定書を批准して、待っているから、ぜひアメリカも参加してください」と小泉首相から述べるように進言。しかし、小泉首相は「何を言うべきかはこれからじっくりと検討したい」と述べるにとどまった。鳩山代表は、「この問題でアメリカに遠慮する必要は全然ない」と重ねて迫った。

 次に、ブッシュ米大統領の新たなミサイル防衛構想について、鳩山代表は「日本とアメリカの防衛を一体化しようという提案で、日本の防衛議論の変更を余儀なくされる可能性がある。軍拡競争につながる懸念がある」として、首相の見解をただした。これに対し小泉首相は、「盾と矛の関係。軍拡の可能性がないとは言えない。世界の安全保障に大きく影響を与えるので、慎重に研究、検討する価値がある」と答弁。前回は「実現したら安全保障上の考え方は一変する」などと踏み込んで評価したのに比べると、ぐっと慎重姿勢になったが、答弁ぶりからは首相がどれだけ問題を把握しているのかどうかは今ひとつ明らかにされなかった。

 鳩山代表は、「アメリカの構想に日本が自動的に組み込まれることは気がかりだ」として、慎重な姿勢を強調。「このような問題でも、京都議定書の話と合わせて、何でもアメリカの言うことを聞かなきゃならないと、遠慮する必要はない。日本の国の意思をもっと強くもっていただきたい」と求めた。

 最後に、鳩山代表は、経済問題に話題を移し、「小泉首相の構造改革の主張は正しいがマーケットは反応していない」として、その原因を首相にただした。しかし、小泉首相は「一言でこれは原因だとは言えない。経済は生き物である」とはぐらかし、「構造改革なくして景気回復なしという目標を掲げた限りは、精一杯努力をしたい」との精神論を述べるばかりだった。

 その言葉を受け、鳩山代表は、「理由は二つある。不良債権処理や規制改革に対して具体的なメッセージが出ていないこと。もうひとつは、総理の後ろにいる方々だ。麻生政調会長はすでに補正予算を組むなどと信じられない話をしている」と批判。「あなたの後ろにゾンビのような、改革に抵抗する人たちがいるからこのような状況になる」と断じて、討論を終えた。

 党首討論を終えて鳩山代表は、「今回はだいたい自分の頭に描いていたシナリオ通りに進めることはできた。私なりに冷静に、民主党の主張を伝えることができたのでは」と感想を語り、「せっかく国民の皆さんの政治への関心が高まっているわけだから、追及してとっちめるというよりも、小泉さんや自民党と、民主党との考え方が同じなのか、違うのかを皆さんに見ていただくことが何より大事だ」と、党首討論の意義を語った。

 その上で、京都議定書批准に小泉首相が消極的だったことについては、「誰が何と言おうと、私たちが真っ先に批准する、という姿勢を打ち出すことこそが、国民の求める『小泉流』ではないか」と残念がった。

(民主党ニュース・トピックス)


会長(本岡昭次君) ただいまから国家基本政策委員会合同審査会を開会いたします。
 本日は私が会長を務めますので、よろしくお願いをいたします。(拍手)
 この際、本合同審査会における発言に関して申し上げます。
 討議に当たって、各党首及び総理におかれましては、時間内に討議が終了するよう御協力をお願いいたします。本日の討議の配分時間は、鳩山由紀夫君二十四分、志位和夫君六分、土井たか子君五分、小沢一郎君五分であります。また、本日は時間表示装置を使用いたします。表示装置は残り時間を示し、配分時間が終了したときは赤色のランプが点灯しますので、御承知願います。
 それでは、国家の基本政策に関する調査を議題とし、討議を行います。鳩山由紀夫君。(拍手)

鳩山由紀夫君 小泉総理、きょうは、特に外交問題に重点を置いてお尋ねをしたいと思います。
 まず、もう三十年ほど前の話でございますが、ローマ・クラブが「成長の限界」という本を著しましたが、総理はお読みになりましたか、お伺いしたいと思います。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) これは読んではおりませんが、当時非常に話題になりまして、この「成長の限界」というものを国際会議でよく主唱されていたのが福田元総理であると記憶しております。

 私は、何回か総理大臣、首相経験者が構成するOBサミットという会議に、非常に福田元総理は熱心でありまして、その会議にも随行として参加し、会議の模様を傍聴させていただいた経験があります。そのときに、よく福田元首相が言われていたのがこの「成長の限界」であると。資源は有限である、国民の要望、欲求は無限だけれども資源は有限であるということを考えて、これから経済成長も地球環境も地球全体のことも考えていかなきゃならない。特に、福田元首相が提唱されたのは、核兵器、何百回も地球、人類を殺しかねない核兵器、これを削減して、もっと人類のために有効に使える方法はないものか、それが総理大臣、大統領を経験した自分たちの責任ではないかということを熱っぽく説いていたことを、今、鳩山代表から言われて思い出しました。

鳩山由紀夫君 よく御理解いただいて何よりだと思います。
 そこで、このローマ・クラブの会長でありますアウレリオ・ペッチェイさんという方が遺言として残された本がこの本でございます。後でぜひ総理にもお読みになっていただきたいと思っていますが、ここのこの信号のような、これは実は地球でありますが、今、御承知のとおり、世界は注意信号のような状況の地球である。これが百年たつと、例えば海面が上がって、このまま行くと日本の砂浜というものがほとんど消えてしまうと言われていますし、きょうの新聞によりますと、あと千年後には人類はもう生きていられないんじゃないかとホーキング博士がお話をされている。こういうぎりぎりの状況に今いるんだと思う。

 それを私たちが大変な努力をして、青い地球に取り戻さなければならないというのが大変大きなテーマで、これが私は京都議定書だと思っています。その意味で、アメリカが京都議定書離脱を宣言されたということは大変に厳しい話だと思う。

 私は、まさに京都議定書なんですから、総理がリーダーシップをとっていただいて、日本がまず真っ先に批准を宣言して、そしてCOP6の再開会合に臨んでいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 今、日本政府としても、川口環境大臣を中心にいたしまして、何とかアメリカにもこの会議に参加してもらいたい、また建設的にこの京都議定書の定める大枠に従って、何とか温室効果ガス、この問題、削減するような前向きの姿勢をとってもらえないか、努力中でございます。

 世界第一位の経済力を誇るアメリカに参加してもらうということが、これからの地球環境保全、あるいは京都議定書の目指すものを実現させる上において非常に重要なものですから、何とかアメリカにもこの会議に参加し、建設的な方向で協力してもらえないか努力をしているわけでございますが、今回、この議定書に向けてアメリカ政府は、この議定書の目指すところについて致命的な欠陥があると表明されたことについては、私どもは極めて残念に思っております。しかし、具体的にまだ提案がありませんから、今後まだあきらめずに、何とかこの問題に理解を示していただき、協力してもらえるような方策がないか、最後まであきらめずに努力を継続したいと思っております。

鳩山由紀夫君 私が申し上げたいのは、先日発表されました中央環境審議会の報告でも、たとえ米国抜きであっても温室効果ガスの削減に関しては大変に効果があるんだという発表がありました。当然アメリカが加わればもっといいに違いありません。しかし、御承知のとおり、今お述べになったブッシュの新提案、とても私どもがのめるような話ではありません。

 そこで、だからこそ、例えばあの対人地雷の禁止条約において、オタワ・プロセスでカナダがそして日本が批准したことによって、嫌がるロシアやあるいはアメリカも最後に批准させた。そのように、例えば京都プロセスのようなものをつくって、そして日本がまず真っ先に批准をして、宣言をして、そして嫌がるアメリカにも最終的に世論の力によって批准をさせるようにしていかなければいけないんじゃないか。どうも日本がアメリカの出方を待っているとしか思えないのですから、今こそリーダーシップを、世界に向けて発言をするべきではないか、私はそう思います。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 鳩山代表のような御意見もよく伺っております。また、そのような要望をされる方も、私どもの方にいろいろな提言なり御意見を言ってきていただいております。

 しかし、そういう意見も考えながら、この問題というのは地球全体に影響するものですし、独自で判断していいべき問題とそうでない問題もあります。よく各国の出方、そしていろいろな立場を考えながら、できるだけ有力な国が参加し、この温室効果ガス削減に意味のあるような方向に日本としても努力していくべきではないか。今この時点で、アメリカの態度はともかく、日本独自で決めるという判断はしておりません。

鳩山由紀夫君 それでは、別の方向から申し上げてまいりたいと思いますが、四月十八日にワシントン・ポストにこのような広告が載ったのは、これは御承知かもしれません。お渡ししておきます。(資料を手渡す)

 これは、実は田中眞紀子外務大臣、まだ外務大臣になられる前でありますが、また中谷防衛庁長官も中に加わっております。また民主党の議員もおります。アメリカが議定書離脱を宣言した、その抗議の広告を出したのでございます。

 その五日後に実はアーミテージ国務副長官が川口大臣に会われました。その席でアーミテージさんから大変不快感が表明されたというふうに伺っていますが、そのことは御承知でありましょうか。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) このような文書は拝見したことはございますが、今、鳩山代表が言われたような詳しい事情は存じておりません。

鳩山由紀夫君 それでは、ここに公電があるんです。この公電によると、アーミテージさんが川口環境大臣に対して、この広告に大変な強い不快感を示して、残念だ、無礼であり日本的でない、我々はよく思っておらず抗議をしたい、こういう内容を話されたということなんです。

 すなわち、私が申し上げたいことは、田中眞紀子議員に対して、アーミテージさんは、実はこの京都議定書の問題、大統領選挙のことにも触れているわけなんですが、このことに対して田中眞紀子議員に対し無礼だというふうに思っておられたということが、どうも事実のようであります。

 それで、田中外務大臣が誕生して、アーミテージさんが来日をした。そのときに、田中外務大臣は、応答要領を外務官僚に命じたというふうに聞いています。そこまで、応答要領まで用意せよと言っておきながら、実は御承知のとおりアーミテージさんとの会談がドタキャンされてしまった。今まで何でドタキャンされたのかわからなかったのだけれども、この理由が実は京都議定書離脱問題に対する抗議に対するアーミテージさんの遺憾の表明であるということが明らかになったわけです。

 私は、申し上げたいのは、このようなことで外交が停滞するということは大変残念なことだと思います。ようやく外交日程が入ってきたようでありますが、どうも大人と子供の会談になるんじゃないかと若干の懸念も禁じ得ないところであります。

 いずれにしても私は、申し上げたいことは、田中眞紀子外務大臣は京都議定書の問題に対してはアメリカを厳しく批判されている。ところが、一方で、平沼経済産業大臣が、きのうです、京都議定書に対して柔軟に見直すべきだみたいな発言をされた。政府の見解がばらばらではありませんか。総理としてはどちらの方に軍配を上げようとされているんですか。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 今、鳩山代表が言われたことは、鳩山代表の推測というものが随分入っていると思うのであります。
 私は、アメリカ政府から不快の念を催したという報告なんか一切入っておりません。六月の下旬にはブッシュ大統領との会談日程も入っております。また、アーミテージ氏と田中外務大臣が会談されなかった、アーミテージ氏が日本に来られたときに外務大臣と会談されなかったことに対しても、アメリカ政府から不快の念を持っているという報告など一切来ておりませんし、今後とも日本との関係については友好関係を維持していくという態度に日米双方とも変わりないと思っております。

 現在のその京都議定書に関する環境大臣と経済産業大臣の発言も、私は、大臣の立場として、必ずしもいつも一致していない場合があると思いますが、最終的には政府の方針、協議して一致していくものでありまして、何ら心配しておりません。

鳩山由紀夫君 閣内不統一はできるだけ早くこれは修正していただかないと、政府の方針というものが定まらない。大変大きな問題だと思います。

 そして、今、推測だというお話をされましたが、実際に公電でそのことが伝えられているという、これを事実として申し上げておきたいと思います。

 そこで、建設的な話を一つ申し上げたい。
 いよいよあと一カ月でCOP6の再開会合が開かれます。その半月ほど前に日米首脳会談が開かれるということになったと思います。小泉総理からぜひブッシュ大統領に対して、日本は京都議定書を先に批准します、待っていますからぜひアメリカも参加をしてください、力強くそのことを言っていただきたい。私たちは先に京都議定書を批准しますから、だから待ちますよと。いかがですか。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) これから、ブッシュ大統領と会談に臨むには日本の総理大臣としてどのような態度で臨むか、また何を言うべきかということをじっくり研究いたしまして、その会議に臨みたいと思います。

 何を言うべきかは、これからじっくりと検討していきたい。そして、今、鳩山代表がそういうことを言うべきだという意見も頭に入れて検討をしていきたいと思います。

鳩山由紀夫君 ぜひ頭に入れていただきたいと思います。
 私は、この問題に対してアメリカに遠慮する必要は全然ないと思います。私たち民主党は、たとえこの問題に関してアメリカがノーでも、民主党はイエスだと力強く言うのが外交姿勢だということを改めて申し上げておきたいと思います。

 そこで、次のテーマに移りたいと思いますが、ミサイル防衛システムの議論でございます。
 この議論、先週も私も拝聴いたしました。ブッシュ大統領の新しいミサイル防衛構想というものが発表されたわけでありますが、この構想は、今までは、日本は日本のミサイル防衛をすればいい、アメリカはアメリカでやりますという話であったものが、実はこの二つを一体化しようという提案であります。これは大変大きな日本の防衛議論変更を余儀なくされる可能性があると思っています。

 一番私が懸念をしていますのは、これが軍拡競争につながるのではないか、軍拡の引き金を引くおそれがかなりあるということを指摘せざるを得ませんが、総理はどのようにお考えでしょうか。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 軍事面においては、常に盾と矛の関係が出てくると思います。そういうことを考えれば、軍縮のために、軍備管理のためにやると言ったとしても、それは軍拡につながるおそれがあると言えば、可能性があると言えば、可能性はないとは言えないでしょう。それは今までの軍事技術すべてそうです。

 そういう問題も含んでおりますが、科学技術は日進月歩であります。今我々の、普通人の考えからいきますと、あの弾道ミサイル、あれを途中で撃ち落とすというのが、これはすごい技術なのか、本当に可能なのかと不思議に思うぐらい、この技術は今の科学技術の先端を行っている一つだと思っておりますが、この点の問題については、これは軍備管理、さらにはアメリカだけでない世界の安全保障の問題に大きく影響を与える問題でありますので、慎重に研究、検討する価値があるのではないかと思っております。

鳩山由紀夫君 慎重にという言葉をつけ加えられたことは、私はよいと思います。この問題は本当に慎重に扱わなければならないと思います。
 なぜならば、まさに小泉総理がお話をされたように、矛盾、盾と矛の関係ですから、盾をふやせば当然矛もふやしたくなる、それが国と国との関係で十分にあり得る議論だからでございます。そして、その中に日本が組み込まれてしまうということが、自動的に組み込まれてしまうということが大変私は気がかりでございます。

 すなわち、日本の周辺の国へ、アメリカに対してもしミサイルを発射したとしたときに、日本のイージス艦から迎撃ミサイルを飛ばすという議論になるからでございます。となれば、好むと好まざるとにかかわらず、日本の周辺国と日本との間が交戦状態になる可能性がある。アメリカのおかげでそのようなことが起きる心配が出てきてしまう。したがって、私は、極めてこの問題に関しては、小泉総理がお話しされたように、慎重に慎重に、慎重の上にも慎重を期して議論をしなければならないことだと思っています。

 ただ、政府がお決めになるだけではなくて、これはアメリカやヨーロッパにおいても超党派で盛んに議論が今進められている問題であります。なればこそ、私は提案として、衆議院、参議院においても、ミサイル防衛の議論だけでも一つの特別委員会を設けて激しい議論を超党派で行うべきだというふうに思っております。このことを提案申し上げますが、総理としてお答えがあれば伺いたいと思います。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 国会には、外交、さらには安全保障、防衛関係の委員会がございます。その場で十分議論していただきたいと思っております。

鳩山由紀夫君 ぜひ積極的に自民党総裁としても臨んでいただきたいと思っておりますし、このような問題で、先ほどの京都議定書の話とあわせて、何でもアメリカの言うことを聞かなきゃならないという、そういう外交はもはや遠慮する必要はない、自分たちの、日本の国の意思というものをもっと強く持っていただきたい、あわせてそのことを求めておきます。

 さて、時間があと四分になりましたから、外交から、やはり経済の話をしなければならないと思います。
 御承知のとおり、一―三月期のGDP成長率、実質でマイナス〇・八%下がってしまったのであります。そこに対して、やはり今までの自民党中心の経済政策が誤っていたということが明らかになったと思う。三年続けて減少して、十兆円の国の富がどこかへ消えてしまった計算になります。

 私は、小泉総理が、だから構造改革なんだというふうに言われることはそれは正しいと思う。ただ、一方でマーケットが反応していません。一万三千円を割ってしまうという状況になりました。小泉さんが総理になってもっとマーケットが反応するかと思ったら、そうではなかった。ここは何の原因だというふうに総理はお考えになりますか。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) それはいろいろな要因があって、一言でこれが原因だと言えないのが、経済は生き物であると。なかなか思うようにいかないのが世の中のことでありまして、私の頭でこれが原因だと言うほど私はうぬぼれているわけではございません。しかし、今言いましたように、今までの行き方が通じなくなってきたなと、経済を回復させるための手段というのは限られてきたと思います。

 そういう中で、構造改革をしないと日本の経済発展はないということで、もろもろの改革に取り組まなきゃいかぬということで、今、私ども一生懸命取り組んでいるわけでございますが、今後厳しい状況が続くと思いますが、私の所信表明演説にも詳しく述べておりますように、今の痛みに耐えてあすをよりよくしていこうという姿勢を現実のものにするべく一生懸命頑張っていかなきゃいかぬと思っております。まだこれからいろいろ問題は出てくると思いますが、一日一日の株価も大事であると思いますが、そういう一日一日上がった下がったということに一喜一憂しないで、一つの方向を目指してあるべき姿を進めていかなきゃならない。

 現実の問題を考えてみましても、国債発行を三十兆円以下に抑制しようという民主党の心強い御提言もございますが、この問題についても、厳し過ぎるという意見もあると思えば甘過ぎるという意見もある。逆に、痛みを伴うという私の発言につきましても、痛みを伴って万が一失業者が出たらこれは改革ができなくなるぞという声がある反面、そのぐらいの改革をしないと本当に日本の経済は立ち直らないよ、痛みを恐れていたんじゃいつまでも改革は進まないよという声が、両論あるわけであります。

 しかしながら、私どもとしては、これから構造改革なくして景気回復なしという目標を掲げた限りは、その方向に多くの国民の理解と協力が得られるように精いっぱい努力をしていきたいと思っております。

会長(本岡昭次君) 時間が来ておりますので、簡潔にお願いします。

鳩山由紀夫君 わかりました。簡潔に申し上げます。
 総理がマーケットの反応がおわかりにならないようですから簡潔に申し上げます。私は二点あると思います。(発言する者多し)

 その一点は、不良債権の処理やあるいは規制改革に対して具体的なメッセージがまだ出ていないというのがあります。早くこれを具体的なメッセージとして出されることを期待します。

 もう一つは、総理の後ろにおられる方々です。すなわち、構造改革に対して、もう既に麻生政調会長などは、これに対して補正予算を組むなどと、信じられないような話もされているわけです。

会長(本岡昭次君) 簡潔にお願いします。

鳩山由紀夫君 道路特定財源の一般財源化にも反対だと明言されている。(発言する者あり)あなたの後ろに、ゾンビのような、改革に抵抗する人たちがいるからこのような状況になるということを申し上げて、私の討論を終わります。(拍手)

会長(本岡昭次君) 以上で鳩山由紀夫君の発言は終了いたしました。
 次に、志位和夫君。(拍手)

志位和夫君 総理は、構造改革なくして景気回復なしと言い、その構造改革の第一の課題として不良債権の最終処理を挙げられておられます。しかし、今不良債権と言われているものの実態は、まじめに働いている中小企業が大部分ですよ。そして、最終処理というのは、融資を打ち切り、担保を回収し、生きて働いている企業をつぶしてしまう、こういうことになります。これは、大量の倒産を招く不安は各方面から指摘されています。

 我が党議員が先日、衆議院の予算委員会で提出した資料では、試算を政府にもお出ししておりますが、大手十六行が政府の方針どおりに不良債権処理をやったとしたら、二十万社から三十万社の中小企業が処理対象とされ、倒産に追い込まれる。この問題については、金融担当大臣も否定できませんでした。

 今、不景気の中で年間の倒産件数は一万九千件、大変ですよ。しかし、もし二十万件ということになりましたら、十年分の倒産が一気に起こるということになります。三十万件ということになりましたら、十六年分の倒産が一気に起こるということになる。

 総理に伺いますが、総理は、構造改革のためだったら、たとえ二十万、三十万という中小企業がつぶれても、これは仕方がない、耐えるべき痛みだというようなお考えでしょうか。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 何かこういうことを言うと、また大々的に一部だけ取り出されて誤解されてはいけませんので、少し時間をいただきたいと思うんですが、私は、不良債権の処理の過程で当然市場に生き残れない企業が出てくる場合を、可能性は否定はいたしません。

 その際に、職を離れた方々が新しい職場に立ち向かうことができるような対策を講じなければいけないと。だからこそ産業再生雇用対策本部を設置いたしまして、もしもそういう痛みが出てきた場合に対する対策はどうあるべきかということを考え、そして同時に新しい時代に成長していけるような産業の育成も考えなきゃいかぬ。この市場の流動性というものを、新しい社会に対応できるような構造というものを構築していかなきゃならないと。日本の経済は発展しないということで、それぞれ今対策を練っているわけでございます。

 今、決して痛みを伴うことはないとは言えませんが、痛みを伴った場合には、それはどのぐらい出るかと今言えと言っているんですけれども、それはどのぐらい出るということは今この時点で言えません。しかし、出た場合には、その痛みを和らげるような、また痛みにくじけないような、新しい仕事に立ち向かっていけるような措置をしていかなきゃならないということで、我々努力しているということも御理解をいただきたいと思います。

志位和夫君 政府は、雇用対策として五百万の雇用を創出するという計画をお立てになっているようですけれども、この四年間、四回計画を立てて、合計二百五万が目標だったのに六十九万人失業者がふえているじゃありませんか。私は、こういうやり方はもう絵にかいたもちだと。そして、私は五百万という計画を立てざるを得ないということに、大変な失業が起こる、大変な倒産が起こるということをまさに前提にした数字だと思います。

 私は、ここで考える必要があるのは、非効率のために不良債権になっているんじゃないんですよ。不況のためにまじめに働いても売り上げが伸ばせないで赤字になることを余儀なくされて、そして不良債権とされている、長年の自民党の経済失政の被害者なんですよ。

 それで、非効率、非効率とよく言いますけれども、バブル後の十年間、これだけの長い期間不況に耐え、そして日本の雇用の七割を支えてきた中小企業というのは、私はみんな立派な企業だと思います。それを今、一番苦しくなっているときに頭を押さえつけて水の中へ沈めちゃおうと、これはやってはならない政策だと。これをもしやったら、一時の痛みじゃ済みませんよ。景気を悪くして、ますます不良債権を膨らませることになる。中小企業をつぶす政策じゃなくて、中小企業を支援する政策が必要です。そのために何が必要か。

 中小企業白書では、中小企業が直面する経営上の問題点何かという設問に対して、製造業も卸売業もサービス業も建設業も、業者の皆さん、みんな答えているのは、需要の停滞が一番の問題だと。つまり、需要を何とかしてほしい。

 それからもう一つ。これは大阪信用金庫が三月に調査した。じゃ、需要を、どこを伸ばしたらいいのか。やっぱり消費税の減税、これが第一位のトップですよ、四七・五%。やっぱり需要をふやし家計を応援する、こうやってこそ経営が成り立つようになるし、不良債権問題も解決する。これをやるのが政治の役目じゃありませんか。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 一体どこの発言をとって、まじめに働いている者の頭を押さえつけて沈めさせてしまう、どういう推理というか思い込みというか、それが私の発言のどこをとらえてそんなことを言うのか、理解に苦しみますね。(発言する者多し)

志位和夫君 あなた方が出した緊急経済対策では、こう書いてあります……

会長(本岡昭次君) 志位君、ちょっと、志位君、時間が参っておりますから、発言は終わってください。

志位和夫君 中小企業であってもオフバランス化に取り組むことを要請する、これが方針だと書いてあるということを最後に指摘して、終わりにいたします。(拍手)

会長(本岡昭次君) 以上で志位和夫君の発言は終了いたしました。
 次に、土井たか子君。(拍手)

土井たか子君 五月の十一日に、ハンセン病国家賠償請求訴訟の判決が熊本地方裁判所から出ました。政府は、控訴しないことを決定されました。私は、小泉総理の御決断はよかったと思っています。しかし、もとと言えば、熊本地裁の判決がよかったんです。この判決がよかったために、この決断をされたということではないかということだと思いますよ。

 さて、六月に入りまして、大阪地裁で海外の被爆者救済に画期的な判決が出ました。ハンセン病の訴訟といい、この被爆者救済に画期的な判決が出た事例といい、いずれもその基本は人権について問われている大事な問題だと思っていますが、これはいよいよ明後日がタイムリミットなので、控訴されるかどうかというのが衆目のじっと見ているところです。

 そこで、総理はこの判決文をお読みになっていらっしゃるでしょうね。いかがですか。お読みになっていらっしゃいますか。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 全文は読んでおりませんが、判決の要旨は聞いております。

土井たか子君 ちょっと待ってくださいよ。聞いておりますとおっしゃった。要旨はまだお読みになっていらっしゃらない。聞いていらっしゃると言う。明後日がタイムリミットですから、ひとつしっかりこれ目を通していただいて判断をされる必要がぜひとも私はあると思いますよ。これは非常に中身とすれば大事な問題です。

 それじゃ、お聞きになった限りでお伺いしましょう。どこがポイントですか、この問題の。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 本判決の争点は、最終的には被爆者援護法が日本国内に居住または現住しない者にも適用があるかどうかの一点に集約されるというふうに言われております。

土井たか子君 そうおっしゃるならば、その法律はどう決めているかということが問題になります。
 被爆者援護法の中では、それに対して明確に決めていることはたった一点ある。何かと言えば、被爆者というのは、被爆者手帳を交付されて、被爆者であるということが認定されている人でありますが、被爆者手帳を交付して、持っている人たちも日本の国内にいる限りは補償されるんだけれども、被爆者手帳を持って日本の国外に出て外国で居住するとなると、これはもう問題にならないんです。被爆者であるにもかかわらず、海外で居住を持つとか、それからまた海外にとどまっているという人たちにはないんですよ、これ、何にも補償が、同じ被爆者で。

 この問題に対して、海外の被爆者手帳を持っておられるにもかかわらず、被爆者であるにもかかわらず補償が何にもないということについて、今まではそのまま放置されてきたというよりも、通達でこれを厚生省はそのようにしてきたんじゃありませんか。現に、被爆者という立場を失うというのは、援護法を見てみた場合に、死亡のときだけがこれ規定されているわけであって、死亡するということと同時にこれ資格を失うということだけがあるわけであって、海外において幾ら被爆者であっても、この被爆者としての補償がないなんというのは、どこをどう探してもこれ法条の規定ないですよ。

 法律に規定がないことを勝手にこれ通達一本でそのような取り扱いをやったということは、これは本来は、法治主義からしたら認められない。人権という問題は、やはりどのように補償するかというのは本来法律事項であることは小泉総理もよく御存じだと思います。この点からすると、どうかこの通達というのを今度はしっかり小泉総理のもとで取り消して、そして海外においても被爆者に対しての補償というのをやはり被爆者援護法に基づいて認めていくべきである。

 このことをひとつはっきりさせると同時に、控訴はしたがってしないと。これ新しく法律をつくるということを言っているわけじゃないですからね。現行被爆者援護法をしっかり守るということであって、これは申し上げておきますけれども、内閣は少なくとも、憲法の条文からすれば……

会長(本岡昭次君) 時間が来ておりますから、まとめてください。

土井たか子君 「法律を誠実に執行し、国務を総理すること。」というのが七十三条でちゃんとございます。

 ひとつ、内閣は法律を誠実に執行するという趣旨に従って、今申し上げた二点、よろしゅうございますか。一つは通達を廃止する……

会長(本岡昭次君) 簡潔にお願いをいたします。

土井たか子君 一つは控訴しない、この二点をひとつ申し上げて、総理のお答えを聞いて、私は終わりにします。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) この被爆者援護法を在外の方に適用するかどうかについては、平成六年の法制定時に国会でも議論がありました。その際には社会党も一緒になってこの立法をしたわけでございますが、その際にも、在外の被爆者の方々に対しては人道的な見地からしかるべき対応をしなきゃいかぬということで、国情に応じてしてきたわけであります。

 そういう点も踏まえて、今、坂口厚生労働大臣と森山法務大臣が協議しておりますので、その協議を尊重して適切な対応はないものかと考えていきたいと思っております。(拍手)

会長(本岡昭次君) 以上で土井たか子君の発言は終了いたしました。

土井たか子君 それでは、判決文を……(資料を手渡す)(発言する者多し)

会長(本岡昭次君) 土井たか子君、発言は終了しました。

土井たか子君 それでは、終わります。(拍手)

会長(本岡昭次君) 次に、小沢一郎君。(拍手)

小沢一郎君 世界的な変革期に当たりまして、日本も、政治はもとよりですけれども、行政も経済も、また一般社会も連日いろんなことが報道されているとおり、大変な危機的な状況にあると私は認識しております。

 その大きな原因は、これに対応をなかなかできないでいる理由は、やっぱり旧来の考え方ややり方、あるいは手法あるいは大きく制度、体制そのものがこの変化に対応できなくなってきている。それで行き詰まって、機能不全に陥っているということだと私は思います。

 それは何かというと、いわゆる中央の官僚機構を頂点とした民に対しても、あるいは中央から地方に対しても完全な管理社会、規制社会、この中央集権的な仕組みそのものがやっぱり限界に来ているんじゃないかと。私どもは、今日の危機を乗り切っていくためには、やはりこの仕組みそのものから、国家の体制そのものから変えていくということが必要であると思いますし、それが我々は構造改革であるというふうに考えているわけであります。

 そういう中にありまして、具体的な例として、今いろいろ公共事業等で議論になっていますが、中央と地方との関係の中で、中央の力の源泉というのは、やはりいろんな補助金を地方に配分することによってそのコントロールをしているというところにあると私は思います。

 そういう意味で公共事業の補助金、それから公共事業と呼ばれないものでも補助金がいっぱいあります。こういう補助金を一括して、地方交付税と同様に地方に自主財源として交付すると、そのぐらいの改革をやらなくちゃいけない。中央のお役所はもっともっとレベルの高いといいますか、大きい国家的な問題に取り組んでいくと、そういうことがこれからの時代には必要なんではないかというふうに思っております。

 今、小泉首相の、あるいは首相周辺かよくわかりませんが、交付税の削減とかあるいは道路特会の一般財源化とかという話が報道されております。これは、ただ単にそれだけでは自治省で持っている配分権限一兆円を大蔵省、財務省に移管することであり、道路特会をそのまま一般財源にするならばそれは財務省の配分権限に移すだけにすぎないので、やっぱりそういうことだけではなくて、それでは、失礼ですが、自民党も総理の所管大臣さえも納得をなかなかされないという現状になると思います。

 ですから、それをどういうために、それをやることによってどういう行財政の仕組みをつくるのか、あるいはどういう日本の社会の構造をつくろうとしているのか、そういうやっぱり全体像を示すことによって、初めて国民もまた各政治家の納得も得られるんだと私は思っております。

 そういう意味で、きょうは細かいことは結構でございますので、今申し上げたことに関連いたしまして総理の見解、御見識をお伺いしたいと思います。

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 基本的に言って、地方分権のあり方、方向は、私は小沢さんとそんなに違いないと思います。

 ただ、小沢さんの党は三百にしようとしていますね、当面は。我々としてはまず千を目指そうと、市町村合併。もちろん我が党には道州制を議論する方もおられます。その際には、権限だけ地方に移譲するのではなくて、税源、財源も地方に行かないとこれは真の地方分権にはつながらないという点も含めまして、今後、税源も財源も含めて、権限も含めて中央と地方のあり方、これをどう進めていくかは、私は基本的には小沢さんと分権を進めていこうという趣旨についてはそんなに違わないと思っております。

 それと、今、道路財源とか地方交付税の問題が出ましたが、これは単に今までの財源を旧大蔵省に移すという問題ではございません。小泉内閣になりましてから、経済財政諮問会議、これで一つの骨太の方針を決めて、そして予算、税の配分構造を変えようということで今一生懸命取り組んでいるわけでありまして、この問題につきましても、一つの今までできなかった見直しをしていきたいということでありますので、私は、小沢さんの党が日本一新ということを前から掲げられておりました。私は今、新世紀維新という言葉を掲げて言っておりますが、日本一新も新世紀維新もどう違うんだと言われればちょっと困っちゃいますけれども、目指す方向は、このままではいかぬ、やはり日本を新しく生まれ変わらせなければいかぬなという気持ちについては共通する面が随分あるのではないかと思っております。

小沢一郎君 ありがとうございました。(拍手)

会長(本岡昭次君) 以上で小沢一郎君の発言は終了いたしました。
 以上をもちまして、本日の合同審査会は終了いたしました。


2001/06/13

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