2004年2月6日

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159 参議院イラク支援特別委員会

質問者=榛葉賀津也、池口 修次岩本 司


平成十六年二月六日(金曜日)

○委員長(清水達雄君) イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法第六条第一項の規定に基づき、自衛隊の部隊等による人道復興支援活動及び安全確保支援活動の各活動の実施に関し承認を求めるの件を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。

○榛葉賀津也君 民主党・新緑風会の榛葉賀津也でございます。
 今から百五十年前、日本である川柳がはやったというふうに言われています。「泰平の眠りを覚ます蒸気船たった四はいで夜も眠れず」と。当時、鎖国政策をしいていた江戸幕府。伊豆半島最南端の下田港にペリー提督が黒船四隻とともにやってまいりまして、日本を開き、また日米講和条約を結びまして、今年がちょうど百五十年の節目の年でございます。
 加えて、日本がトルコを始めとするイスラム諸国や、また当時ロシアにいたユダヤ人たちからも大きな信頼を得る原点となったあの日露戦争から今年が百年の節目の年でございます。
 また、一九五四年に自衛隊ができまして、今年が五十年のまた節目の年でございまして、この大きな日本の外交、安全保障の歴史の節目の年に我が国の自衛隊がイラクへ派遣されると。政府は大変重い決断をされたなという思いで一杯でございます。
 私は、基本的に自衛隊のイラク派遣には反対でございます。が、同時に、その政治決定によって派遣を余儀なくされ、また現地で活動される自衛官お一人お一人に心からの感謝と敬意を表したいというふうに思います。
 先日、元総理の中曽根さんのお言葉を耳にするチャンスがございまして、考え方は私と全く同じというわけでは無論ないわけでございますけれども、中曽根先生の言葉で大変重いなと思ったのが、政治家に大切なのはイデオロギーではないと、歴史観であるというお言葉でございました。
 今、我々一人一人がそれぞれの歴史観そして価値観をきっちりと持ちながら、他の文化や他の国や、違う歴史を持った国や民族の方々の歴史観や価値観をきっちりと理解するという努力をすることが、私は極めて大事なんだろうというふうに思っております。
 よくこのイラクの問題を語るときに、中東、中東と、若しくは中近東という言葉が再三出てまいります。しかし、この中東という言葉、中近東という言葉、そして我々が住んでいるこの日本を極東、ファーイーストといいますが、これはすべてヨーロッパを基準にして中近東、中東、そして極東という言葉の定義であります。我々は、様々な議論をするときに、いろいろな政治の流れ、歴史の流れがそういう背景にあるということを認識しながら、私はこのイラクの問題もきっちりと議論をしなければならないんだろうというふうに思います。
 今年は西暦二〇〇四年でございます。これは無論キリスト教の物差しでございます。キリスト教が始まってから二千四年、イエス・キリストが誕生してから二千四年という物差しであります。我が国は平成十六年、若しくは皇紀という暦も日本の文化にはございます。二千六百六十四年でございます。イスラム教を信じるイラクでは今年は千四百二十五年目の年でございますし、人類で最古の暦を持っているユダヤ教では五千七百六十五年のお正月を昨年の秋に迎えたところでございます。
 我々は、様々な文化や様々な歴史観を持っている様々な国の人たちと、今国境を越えてお付き合いをし、またその地に自衛隊を派遣をし日本の主義主張をしているということをきっちりと、まず私自身押さえなければいけないと思います。
 そのような中、防衛庁長官、イラクに派遣されている自衛隊が現地の部族に羊を十頭贈られました。そして、様々なアプローチがあり相手の文化を理解をする、その評価は私はしたいと思いますが、実は、この羊をめぐりまして現地であらぬやっかみであるとか誤解が生じている。こういう大変難しいことがたくさんあるんですね。この現地の自衛官が接している大変難しいこういった壁というもの、これを長官はどのように御認識ですか。

○国務大臣(石破茂君) 羊につきましては、羊をほふるというもの、そして非常に高いものであるので何とかそういうのが行き渡らない方に召し上がっていただきたいという一種の、これはもう委員にお教えいただきたいんですが、喜捨という言葉を使うのが正しいのかどうか知りませんが、これはそういうものを差し上げる幸せを我々は与えられたのだという思いで羊を差し上げたというふうに承知をいたしております。これはもう上げるんだから感謝してねということではなくて、それを差し上げる幸せを与えられているのだという思いでいかないとこれはもうえらいことになる。
 ただ、私はもう何度か答弁申し上げたと思いますが、どうやって不公平感を抱かせないようにするのだということには常に留意するように申しております。そうしますと、それではありとあらゆる部族の方にすべて不公平感がいかないように羊を差し上げるにはどうすればよかったのかということは随分と現地でも考えに考え抜いてやったことだと報告を受けております。ただ、やってみますと、委員御指摘のように、やったはいいんだけれども、またいろいろな御不満、御不平、じゃ、これをとらえてどのようにするのかということは毎日毎日考えていかねばならないことだと思う。すべての人が満足するということは世の中にはあり得ないのだけれども、どうすればそれが最小になるのかということについて、あるいは現地のことに通暁しておられる委員からこうすればよかったのではないかというような御示唆をいただければまた有り難いことだと思っております。間違っても、これは我々が上げるので有り難く思ってくださいというような気持ちは持ってはならないということは徹底をいたしておるつもりでございます。

○榛葉賀津也君 現地で日本は、そしてひいては自衛隊は実は非常に期待をされている。期待され過ぎているということが現実なんだろうというふうに思います。自衛隊が来れば、日本が来れば、雇用もすぐ増えて、学校にもすぐ行けて、病院も復興して、我々の生活はバラ色になるのだと。あたかもドラえもんが来るかのような発想で、今非常に過度な期待が現地である。
 中東の専門家でアジ研の酒井啓子先生もおっしゃるように、過剰な期待に沿えずに、それが逆に反発に変わる可能性が非常に怖いと言う専門家も多くいらっしゃるわけでございます。あのサダム・フセインでさえも、湾岸戦争の後、三か月でこの地域を復興したではないか。そして、羊をこの部族にやれば、うちにはどうしてないんだという反発が生まれる。非常に難しい問題があると思います。
 我々が今回の問題で一番ミスカリキュレートした問題、それはイラクはアフガニスタンとは違うんだという発想であります。なぜか。アフガニスタンにはさしたる産業はないけれども、イラクには石油があるんだ、だからイラクが復興して日本が、そして連合軍がその最初の後押しをしてあげれば、後は自家発電的にきっちりとイラクは再生するんですよと、お金もあるんですよという議論があった。ところが、現実はなかなかそうはいかない。石油産業も復活をしていない。
 このような中で、日本のこれからのイラクに対する復興支援、精製所であるとか石油の現場であるとか発電所であるとか、こういった分野に対しても日本は協力をしていくのですか。

○国務大臣(川口順子君) 幾つかの重点分野ということを考えております。電力等は国の経済協力をするという中で基盤の整備ということも考えておりますし、それから過去やった、日本が作った発電所、変電所がありますから、そこのリハビリプロジェクトも考えております。広くイラク全体の産業基盤のどこの部分について我が国がその能力を持っているか。
 それから、ほかの国がある部分については我が国よりもより多くの能力を持っているということがあるわけですから、これは当面十五億ドル無償の世界で、今考えていることについては特定の保健、水、医療、それから電力と教育といったような分野で考えていますけれども、産業基盤については、これは五十億ドルを上限にということで二〇〇七年までの期間で考えておりますので、今後どういう分野でしていくかということについては様々な需要、さっき言ったような我が国産業の能力等々を勘案して決まっていくことになると思います。

○榛葉賀津也君 十五億ドルの件についてはまた後ほど触れますが、今大臣がおっしゃった点は、正に政権移譲、新しいイラクの受皿ができないと、これはきちっとできない問題でありまして、今大臣のおっしゃったのは当分先の日本の長期的な計画になろうというふうに思います。今、直近では恐らくそこまではできないんではないかというのが現場の現実だというふうに思っています。
 今回、サマーワで水の浄水、そして給水活動をするということですが、今サマワでどれだけの方々が実際に水を必要とされているんでしょうか。

○国務大臣(石破茂君) サマワの人口についてはいろんな説がありますが、イラク計画省の最新の資料では十六万とされております。これが正確なデータがあるわけではありませんで、水道普及率について大体の推定の数字でございますが、水道普及率は四〇から四五%であると。そうしますと、浄水の需要というものは九万人ぐらいの方々が浄水の需要がある。私は、テレビに映るのがすべて真実だとは思いません。すべてが真実だとは思いませんが、きれいな水を欲しいといって言っている人がたくさんいるということは、私は事実だと思っております。需要は九万人程度というふうに予測をいたしております。

○榛葉賀津也君 衆議院では人口が十二万人と長官おっしゃった。いろんなデータがあるから変わるんでしょうけれども、当時は五万人の方が困っていると言っていた、現在九万人、分かりました。
 じゃ、実際自衛隊が行ってどれだけの方に給水できるんですか。

○国務大臣(石破茂君) これもどれぐらい使うかによるわけでございますけれども、仮にお一人当たり必要なきれいな水を一日四・五リットルというふうに仮定をいたします、これかなり使うという感じなのですけれどもね。そのように考えますと、私ども一日当たり七十トン、これはもう幾つも浄水セットがあるわけですが、それをトータルいたしまして一日七十トンの浄水、つまりウイルス等も除去できるというレベルでございますが、七十トンの浄水能力を持っております。で、先ほどの数字を当てはめてみますと、一日当たり約一・六万人の方々にきれいな水を提供できる能力があると考えております。

○榛葉賀津也君 九万人必要な中の一・六万人に授与すると。今、七十トンとおっしゃいましたが、これは一体、大体何基くらいのこういった設備を今考えていらっしゃるんでしょうか。

○国務大臣(石破茂君) 四セット、四基というふうに考えております。

○榛葉賀津也君 このワンセット、二十四時間フル稼働すると大体七十トンの水が供給できる施設で、四基でずっと稼働するわけではないですから、一日何時間かローテーションしてやるんでしょう。それで七十トンと。この水を実際自衛隊の方々も飲まれるというふうに理解はしておりますが。
 では、これに掛かるコスト、一体どれくらいの経費が長官、掛かるんでしょうか。

○国務大臣(石破茂君) これもいろんな仮定を置きますので、幾らですというふうに正確な数字が場合場合によって異なりますが、あえて、フィルター、これ濁度が相当悪いのですね、非常に濁っている、じゃ、その濁りを除去するのには相当のフィルターを使わねばならない。いろんなケースがございますが、現地のユーフラテス川というもので考えてみました場合に、フィルターの交換部品費ですとか燃料代でありますとか、すべて我が国で調達をして持っていくというふうに考えましたときに、一日当たり七十トンを浄水をいたしますのには十二万円という計算をいたしておるところでございます。

○榛葉賀津也君 あるNGOの試算によりますと、大体年間で自衛隊が、人件費も入れてでしょうが、使うコストが大体三百数十億じゃないかと、三百数十億というふうな数字が出ております。同じものをNGOがやると、年間数千万から一億で約十万人が供給できるというふうに言っております。
 これは、無論、様々なデータがあるんでしょうが、私は、九万人必要の中の一・六万人、それが無駄だとは言いません。しかし、余りにもこの問題に従事するにはその費用対効果というのは大きな問題があるのではないかなというふうに考えております。
 雇用の問題に入りたいと思いますが、自衛隊にサマワ、自衛隊がサマワに行かれまして、具体的に実際何人の現地人の雇用が潤うんですか。

○国務大臣(石破茂君) ちょっとその前にお答えをすれば、委員さっきNGOの数字をおっしゃいました。これは私もこの数字は聞いております。
 で、実際どのようなレベルの浄水ができるのか。それは、私、テレビで拝見しただけですが、一人でやっているんだというお話でしたね、一人で。いや、私はテレビで見たものです。ですから、このことについていろんな数字があって、いろんな情報があって、それがどのようなレベルの水が供給できるのかという問題もございます。
 私は、委員がそれはもう無意味だとは言わないと、こうおっしゃっていただいたのでありますけれども、これはペットボトルにいたしますと大体三円ぐらいかねということになるわけですね。これが私は、非常に高いお金を、国民の税金を使って、非常に高いお金、NGOなんかがやればもっと安くできるのに高いお金をやっているよという評価は、私は必ずしも当たらないのではないかと思っておりますが、そのことについては、またこれと比べてどうなんだという御指摘があれば、是非承らせていただきたいと思います。
 雇用はどれぐらいなのかという御指摘ですが、これは何人ということを今申し上げることはできません。
 それは、今、宿営地の造成をいたしておるわけでございますけれども、そこで何名ほど雇用ができるか。あるいは、警備に、イラク人警察というのもございますが、これにどれぐらいの方にお願いができるのか。さらに、宿営地が動くようになりましたときに、答弁で申し上げましたのは、場内の清掃でありますとか、あるいは備品の整備といいますか、食器をきれいにしていただくとか、そういうようなことは考えております。
 それが向こうの方々にこれならやろうという仕事であるかどうかという問題もございますが、そのようなことは考えておりますけれども、数百人単位での雇用ができるようなことは考えておりません。
 それはもう委員もおっしゃるとおり、私どもはドラえもんでもなければ魔法のランプを持っているわけでもございませんで、やはり現地の方々の雇用と同時に安全性への配慮ということもやっていかねばならないと思っております。したがいまして、数百人単位の雇用が自衛隊で創出できるというような考えは持っておりません。

○榛葉賀津也君 持っていないと。
 外務大臣にお伺いします。
 今現在、イラクで日本のどんなNGOが活動されているんでしょうか。

○国務大臣(川口順子君) 基本的には、ジャパン・プラットフォームの傘下にある二つの、ピースウィンズと、あとはJENが入っています。それからもう一つ、それとは別個にJVCが入っているというふうに承知をしています。

○榛葉賀津也君 そこでは何名くらいが働いていらっしゃるんですか。

○国務大臣(川口順子君) そこで働いている人の数ですけれども、ちょっとお待ちください。ピースウィンズとJEN両方合わせて大体六百四十人ぐらい、これは現地のイラクの人ですけれども、六百四十人の現地の人を現地スタッフとして雇用をしているというふうに承知をしています。

○榛葉賀津也君 現実問題として、日本のNGOの旗の下、六百四十名の雇用を創出し、具体的な様々な、医療活動であるとか給水活動であるとかインフラ整備であるとか子供に対する支援、医療であるとか、様々な活動ができているわけでございます。
 また、現在、イラクにおいては、NGO調整委員会、NCCIの下で約百十二の団体が活動して、その中で六十名から七十名の本国、外国人のスタッフと二千人以上のイラク人スタッフが一緒に雇用を受けながら活動ができている、復興支援ができているというのが現状であります。
 国連もほとんど撤退しているというような報道もありますが、現実は十数名がそこで活動をしていて、約四千五百人のイラク人職員を雇用しながらイラクの復興支援活動をやっているんですね。
 私は、自己完結的に自衛隊でなければできないんだと長官はおっしゃいますが、そんなことは決してない。様々な国際機関やNGOが現にこのようなことをやっている。そして、このネットワークをきっちりと進めていくこと、そしてそれを外務省が、川口大臣がきっちりと後押しすることが日本の外交の在り方である。
 サマワも大事であります。サマワの一万六千人にお水を差し上げることも大事でしょう。しかし、余りにもその効果は局地的で、システマチックになっていない。日本が本来やるべき外交は、本来やるべきイラクの復興という問題は、私はそういった局地的な、局部的なものでないと。これは正に自衛隊派遣のためのサマワへの派遣というように思えてもこれは仕方ないと思うんですね。
 大臣、今正に日本がやらなければならない問題は、イラク人というのは自分がイラク人だというアイデンティティーがないんですね、非常に薄い。第一次世界大戦が終わって、一方的にサイクス・ピコ条約で国境が作られて、そこにいる様々な、クルドであるとかシーアであるとかスンニであるとか、トルクメン人であるとかアッシリア人であるとか、様々の自分たちのアイデンティティーを持っていた人間が、強引にイラク人だという型に、イラクの国民だという型に押し込まれていった。そしてフセインの圧政が終わって、崩壊をして、今正に自分たちのアイデンティティーを探している。
 そういった新しいイラクというアイデンティティーを日本がどういうふうにそれを作るのにお手伝いができるのか。また今、選挙の問題もありますが、その選挙にどのように日本が関与していくのか。非常に大きな問題が日本の外交、外務大臣に私は今その政治決断が求められているというふうに思うわけでございます。
 川口大臣、大臣に基本的な質問をしたいと思うんですが、イラク人はアメリカに今感謝しているんでしょうか。

○国務大臣(川口順子君) イラク人はアメリカに対しては非常に複雑な感情を持っているというふうに思っていますけれども、かつて、ちょっと私今ここにデータを持っていませんが、かつて私が見ました世論調査、それでいいますと、アメリカ軍に早く立ち去ってほしいかという質問に対しては、いてほしい、一年及び一年を超える期間いる、いてほしいと言っているそのイラク人が、もしかしたら記憶間違っているかもしれませんが、数字でいうと五〇%を超えていたというふうに思っています。ですから、それから考えますと、個人的な様々な感情は別として、今、イラクの復興のためにアメリカがそこに滞在をして復興活動をやっているということの重要性については認識をしているのではないかと思います。
 それから、ちょっと、先ほどNGOの雇用の数についてお尋ねがありましたけれども、雇っているのは基本的にそのイラクの人であって、日本は今退避勧告を出していますので、今の時点で日本のNGOが大勢入ってイラクで活動しているという状況には、これはもう委員はよく御存じのとおり、なっていませんし、しばらく難しいということであると思います。
 それから、六百四十人と申し上げましたのは、延べの人数でございます。

○榛葉賀津也君 今、イラク人にこのイラクをフセインの圧政から解放したのはだれだと言われると、これはブッシュじゃないんだと、神が解放したんだと言うんですね。そういった考えが今、どんどんどんどん時間がたつごとに浸透していく。ましてや、あのサダム・フセインでさえも湾岸戦争以降三か月で復興したんですから、時がたてばたつほど、CPA、そしてアメリカに対する不信や不満が高まっていく。
 大臣は、このイラクの復興に対して、イラクの民主化というものを進めるお考えですか。

○国務大臣(川口順子君) イラクの民主化というのは、イラク人が何よりも望んでいるということだと思います。民主化といったときに、その持つ意味、これは様々あるかもしれませんけれども、民主的な統治機構を持った国ということで民意を反映する形でイラクの政治が行われるということは、非常に基本的に重要なことだと考えております。

○榛葉賀津也君 十五億ドルの無償資金援助を外務省は決めました。そして、ただ、これをインプリメントするためには、正にその受皿、イラクの主権移譲がしっかりと行われなければいけない。しかし、今、六月に主権移譲されるこの時期がどうも先送りされる可能性が高くなってきたというような情報もあるわけでございます。
 シスターニ師が直接選挙をやるべきだというふうに訴えていますが、そして、そのシスターニさんを支持するサマワの宗教指導者もそれに呼応して宗教、直接選挙を支持し、他方、自衛隊をしっかりと守りなさいというファトワも出している。
 川口大臣は、このイラクの直接選挙を支持されますか。

○国務大臣(川口順子君) イラクがその基本法に基づいて、今後決まる基本法に基づいて選挙を行って、六月末までにイラク人の手にイラクのその政権を渡すということは、これは昨年の十一月に合意されたことで、このスケジュールに沿って物事が進んでいくということは日本として重要でありますし、そのようになるようにできるだけの貢献をしていきたいと思っています。
 それで、今御指摘になられたように、選挙の方法をめぐって、直接選挙か間接選挙かということで一つの大きな争点に今なっているわけでして、シーア派の指導者のシスターニ師は当然、六〇%ということで多いわけですから、直接選挙ということを言っているということも委員がおっしゃったとおりであります。それで、具体的に今、国連が調査団を送って技術的にどのような方法が可能であるかということを調査をするということになっているわけです。
 幾つかの基準に基づいてどのような選挙法がいいかということを考えるべきであるというふうに思います。
 それは、一つは、選挙のスケジュール、十一月に合意されたスケジュール、これを、これにのっとった形で行われるということが一つあると思います。それから、もう一つ考えなければいけないことは、いかなる制度であれ、実効的に、要するに実行できる制度、可能な制度であるということが必要であると思います。それは、例えば、イラクにおいては選挙法がないとか、そういった法的な問題もありますし、それから地域によってばらつきがある治安の状況を考えて、その上でできるという方法であることも必要だと思います。それから、もちろん基本的なこととして、三番目に民意、これが反映される制度であるということがあると思います。
 そういった基本的な条件を置いて国連の調査団がどのような制度が可能であるかということについての報告を作ることになると思いますので、それを踏まえてどういう制度がいいかということを考えていきたいと思いますが、選挙の方法は直接選挙か間接選挙か、その二つしかないわけではなくて、その間にいろいろな技術的な選択肢があるというふうに私は考えておりますので、その辺りについて、国連がどのような報告を、調査をし、可能性を見いだすかということで、今国連の役割に大きな期待があると思いますし、私も国連がこの分野でいい仕事をしてくれるということを期待をしているわけです。

○榛葉賀津也君 この選挙の方法に関しましては様々な政治的思惑がありますね。シーア派を外そうという考えと、シーア派が、自分たちがきっちりと民意が反映できる、正に大臣おっしゃいました、そういった形にしたいという声もあります。
 では大臣、今、このスケジュールの問題は現地も、スケジュールにはそうこだわるべきではないではないかと、きっちりとした、むしろ大臣のおっしゃった二番目と三番目がきっちりと担保できる選挙制度をやるべきではないか、そのために時期を多少ずらしてもこれはきっちりとした選挙をやるべきではないかという声もあるわけですが、もし大臣のおっしゃった二番と三番がきっちり担保できるのならば、大臣はやはり直接選挙でもいいというお考えですか。

○国務大臣(川口順子君) 私は、今の時点でスケジュールを遅らせることを前提に物事を考えるべきではないというふうに考えています。先ほど申し上げた三つの要素というのは今非常に重要なことであって、その三つが満たされるように考えていく、それを追求するということが今やるべきことだと思っています。

○榛葉賀津也君 次ですね、メソポタミアの湿原回復の問題についてお伺いしたいんですけれども、外務大臣は今年の初めイランに行かれました。大変お疲れさまでございました。
 エプティカール環境庁長官とお話をされまして、そこでイラクのメソポタミアの湿原回復事業に日本が取り組むんだというお話をされましたが、この意義について少しお話をいただきたいと思います。

○国務大臣(川口順子君) エプテカール副大統領兼環境大臣は私が京都議定書を環境大臣としてやって以来の友人でもありまして、その昔からメソポタミアの湿原問題については副大統領と話をいたしております。
 それで、その意義なんですけれども、メソポタミア湿原というのの重要性、これは生物的に見ても、ペリカンですとかハイイロオオカミですとか、いろいろな哺乳類、爬虫類、様々な種がそこに生息をしているというところであります。
 それで、ここについては、一つの大きな問題は、基本的に四国の面積に匹敵をするところで昔あったところが今非常に縮んでしまっておりまして、その九割以上が消失をされたということにされています。それは、主として旧フセイン政権時代の大規模な排水事業等がございまして、そういったことの結果として起こってきまして、塩害、生態系の悪影響、そこに住んでいる住民が生活基盤を失った。強制移住措置もフセイン政権は行いまして、今十万人ぐらいしか人口がいないということになっています。
 それで、UNEPがかつて調査を、最近も会議等をやっておりますが、いたしまして、幾つかの課題ということで言っておりますけれども、一部の土地が塩化、砂漠化している。それから、これは、チグリス・ユーフラテス川の流域による水管理の調整が必要であって、それから、おっしゃったようにイランとも国境を接してイランにもありますので、イランとの、両イラン・イラクの調整が必要だということ、それから、水問題は中東地域においてはもう歴史的に大変に大きな問題であるわけですけれども、イラク国内の上水やかんがい用水との調整が必要である、それから湿原に住んでいる人たちの社会的ないろいろな調整が必要だ、利害関係もありますということです。
 それで、UNEPがやることが必要であるわけですけれども、国際機関が、今イラクに外国人が入っている状況にはなっていないということがもう一つの問題であります。
 どれぐらいの費用が掛かるかということについて言いますと、これは大規模な土木工事が必要である可能性があります。ダムですとか河川、水路、そうして現状では費用算定は難しいということでありますけれども、引き続き、環境省におかれて正確な情報収集もやっていらっしゃいますし、UNEPあるいはほかの国々とも協調をしながらこの問題をやっていくことが、対応していくことが必要だと思っています。

○榛葉賀津也君 今、予算の話まで出ましたが、これ具体的にその手法、ノウハウといいますかね、どういうふうにしてこの湿原を回復するのか。イランまで行って環境庁長官とお約束をされたんですから、やはり具体的なこの方向性というのが大臣の頭の中であるんだろうと思いますが、これ一体どのようにこの湿原を回復するおつもりか、この実現の可能性ですね、大臣はどのように御認識かと。
 今四国ほどの面積と言いましたが、確かにアシが生えてその湿原そのものは四国ほどの面積かもしれませんが、その背景にある面積は莫大なんですよね。イランからシリアからヨルダン、トルコまで、もう広大な範囲にわたってこの湿原の問題は実はあるわけでございまして、私、大臣がこのお話をされたときに、一体どういう方法で大臣がこの問題に取り組まれるのか大変興味を感じまして、改めてこのノウハウと可能性について大臣の御認識をお伺いしたいと思います。

○国務大臣(川口順子君) 御指摘のように、方法論的には大変に難しい問題だと思っております。
 私は環境大臣のときに自然の再生ということを言いまして、釧路の湿原で、このメソポタミア湿原に比べれば本当に小さなところですけれども、国土交通省や農水省と御相談をしながらプロジェクトに取り組み始めたという経験を持っております。埼玉県のくぬぎ山についても同じようなことを考え、環境省が直接手掛けたことではありませんが、香川県の豊島でも同じような取組があるわけです。
 それで、方法論的には本当に確立されたものはありませんし、非常に難しいというふうに思います。自然をいじることによって更に問題が出てくるということもあるわけでして、方法論を国際社会でみんなで知恵を出して考え、その方法が適切かどうかということのアセスを行い、そういった形でできるところから進めていくということで、非常に長時間、長時間といいますか、長期間掛かるプロジェクトであり、国際社会の知恵が結集されることが必要であり、治安がその地域において良くなっているということも必要であると思います。
 ただ、この地域の重要性に着目をして取り組む、そのために少しずつみんなが努力をしていくということが大変に重要であると思っています。

○榛葉賀津也君 今、大臣から釧路の湿原の話がありました。釧路の湿原でさえもこれなかなか回復できてないのが現状なんですよね。
 これ、このメソポタミアの湿原を回復しようというこのアイデアは、一体どなたがこの問題、最初に考え始めたんですか。

○国務大臣(川口順子君) これはもう大勢の人が言っていることですから、だれが一番最初に考えたかということについては私はよく分かりません。私自身、個人の問題意識としては、元々、先ほど申し上げたイランの副大統領と私が環境大臣当時にお話をしたということから始まっております。

○榛葉賀津也君 先ほど、イラクでかんがい設備や、また上流でダムができてこの湿原がなくなっていったというお話がありました。
 ただ、真相は、全くこれは原因ですら実は科学的に明らかになっていないんですね。環境の変化かもしれないと言う人もいる。また、大地そのものが塩化してきているんでないかという話もある。あたかもサダム・フセインの政策によってこの湿原が消滅していったかのような論調もありますし、それが正しいかもしれないし、ですけれども、科学的には全く実はこれ明らかになっていないのが現状で、ほとんど、先ほどUNEPの話がありましたが、文献すら実は余りないのが現実なんですね。
 非常にこの大きな問題を大臣が手を挙げられて、ましてやお隣のイランに行ってこの問題を、日本が湿原回復しますと言い、また、総理もリカービ氏にアプローチをされ、是非これに取り組みますという発言をされる。私は、大分これ大ぶろしきを広げ過ぎているんじゃないかなという思いが実はいたしております。
 また、このメソポタミアの湿原というのは、昔、反政府のゲリラの隠れ家だったんですね。この湿原からゲリラが来てテロ行為やって、また湿原に帰っていく。正にゲリラの巣だったんですよ。ここに日本がまた関与をして湿原を取り戻しますよと。日本は一体、またゲリラの増殖に関与するのかと、手助けするのかという声も実は上がっているんですけれども、大臣はこういった指摘に対してどのように御答弁されますか。

○国務大臣(川口順子君) これについては、今委員がおっしゃったゲリラの隠れ家であったがゆえに、サダム・フセインはそこを乾燥化させたとか、いろいろな見方があるわけです。
 それで、それが起こった原因は何であれ、我々としては、自然をそこに戻すということが重要であるということが基本的に大事な視点であると思っています。それから、そこにすんでいた生態系、いた生態系及び人間の暮らし、そこを戻していくということであると思います。
 おっしゃったように、先ほど方法論としては難しいということを申しましたけれども、文献も少ないです。UNEP等が幾つかの研究をして、何で消失をしたかとか、そういうことをやり、ラウンドテーブルの会議も開いている。これは我が国として非常に関心を持ってこれに貢献をしていくことが大事だと思っていますけれども、日本のみでこれをやるということは、私は不可能であると思っていますし、そういうことを申し上げているわけでは全くありません。イランに対しても、日本がこれをやりますということを言ったわけではありません。
 日本がそういった国際社会の協力を得ながらやっていきましょうということであって、これは世界を挙げての、国際社会を挙げての取組、日本がそこでイニシアチブを取り、必要なことをやっていくということであるということだと思います。

○榛葉賀津也君 先ほど、日本が過度に期待をされている、日本が来れば何でもできるという誤解がアラブ諸国の中にある、ムスリムの中にあるという話をいたしましたが、私は、まずできることからきっちりとやっていく、そういう国の形の見せ方というものも大事なんだろうというふうに思います。
 長官に、サマーワの借地権の交渉、借地の交渉の問題についてお伺いしたいんですけれども、今、自衛隊がキャンプを張るこの土地の借地権の交渉はどこまで進んでいらっしゃいますか。

○国務大臣(石破茂君) 借地権という権利そのものをどう考えるかって話もあるんだろうと思います。イスラム法において借地権というものをどう考えるか、あるいは地権者が何人いるのかというようなこともございます。ですから、日本の国内における土地賃貸借というイメージで考えると、少しそごが出ることがあるのかもしれないなとは私はいつも思っているのですが。
 現在どうなっているかと言われますと、適切な候補地を選定し、地権者との調整を進め、使用するために必要な調整を行っておる。つまり、今テレビでごらんのようにいろいろと造成はしているわけでございますが、じゃ、そこにお話が全部付いたのかといえば、そういうわけではございませんのです。宿営地予定地を一か所に選定をいたしまして、土地の地権者の方々に対して、まず利用について、使わせていただきますよということにつきましての御了解はいただきました。そして、じゃ、その使用に要するお金というものについて、今調整を行っておるところでございます。
 いずれにしても、私どもといたしましては適切な支払をする必要はある。この適切というのをどのように考えるかというお話だと思っております。これは、先ほど委員が御指摘になりました公平性の問題もあります。あわせて、土地を使っておるのは日本だけではございません。ほかの国との整合性というものも考えていかねばなりません。したがいまして適正という言葉を使わせていただきました。

○榛葉賀津也君 今使用に対する許可は得ているというふうにおっしゃいましたが、この交渉は自衛官の方がやっていらっしゃるわけですね。この許可は一体だれが、長官先ほど、だれが一体土地を持っているかも分からないという現状もありますというお答えをしながら、許可は取ってありますと。だれから許可取っているんですか。

○国務大臣(石破茂君) それは所有権者でございます。所有権者というものがおりまして、ごめんなさい、だれが持っているか分からないというふうに委員がお取りになるような答弁をしたとしたら、それはお許しください。土地の所有者ははっきりいたしております。こういうような土地の所有者から使用についての許可を得ておるということでございます。

○榛葉賀津也君 この土地の所有者というのも、あの社会ではいろんな人間がおりまして、イラクというのは基本的に農耕社会であります。これは私、先日学者の先生から教えていただいたんですけれども、農耕社会でありながら、イラクにあるチグリス川、ユーフラテス川、そしてサマーワはこのユーフラテス川のこちら側にあるんですね。すなわち、何を意味するかというと、サマーワというのは農耕民族ではなくて放牧の民族であると、そして土地に対する観念が非常に様々であると。正にあの土地は部族みんなが持っているんだという観念があって、そしてオスマン・トルコ帝国時代になって徴税をしなければならない便宜上、土地の所有者一名の名前を記載していったというふうに言っているわけです。
 ですから、正に登記書に載っている人物と、実際に土地を持っている人物と、その畑や土地を使用している人物と、またその土地を管理している人間と、四種類あるというんですね。これ、一体だれと交渉しているかによってとんでもない紛争が起こりかねないですし、これ交渉できるわけないんですよね。ですから、相手が五十万ドル要請したり、こっちが七千ドルですか、こんなもう差が出ているわけでございます。
 この問題を、大臣、これ一番大事な問題なんですよね、イスラム社会は契約の社会ですから。コーランにもきっちりと書いてあるんです。土地を売買し、賃借する場合はしっかりと契約書を結びなさい、そして二名の男性の立会人を置きなさいとコーランに書いてある。この問題をないがしろにして、ましてや自衛隊がこの現地で活動するなんというのは私あり得ないと思うんですけれども、この問題は長官、どのように解決されようと考えておりますか。

○国務大臣(石破茂君) 全く委員と同じ問題意識を私持っていまして、そうに違いないと、そういうようなところであって、簡単な話ではこれはないと。
 ただ、私が報告を受けておりますのは、これ幸いなことにと言うべきでしょうか、この土地の所有、一応所有というふうに申します。というのは、土漠地帯でございますので、そこで当然農耕が行われているわけではありません。じゃ、そこで、その遊牧行為がそこで行われているか、そこに羊が移動するような、あるいは遊牧というような行為が営まれているかというと、必ずしもそうではない。利用権というような、日本的に言えば利用権というような概念がそこに生じているかといえばそうではない。
 いずれにいたしましても、そこの所有については、一つの部族というものが甲乙丙丁という所有者を有しているというふうに聞いております。現地でどのような概念であるのか、部族間において問題はないのか、おれは所有権者であるがこいつはその利用権者であるとか、そのような問題が発生しないかということについては、これはもう細心の注意を払うように申してございます。
 おっしゃるように、委員から今いろいろな御指摘を受けました。その点についてもきちんと、現地において不公平感が生じたり、あるいはそれが混乱のもとにならないようにきちんとやっていかねばならないということは徹底して指示をしておるところでございます。

○榛葉賀津也君 細心の注意を払うとおっしゃいますが、これは中東の専門家も、行っても頭悩ませている問題が、自衛官がですよ、それはイラクのガイドブックを昨日も配ったと言いましたが、これは幾ら行っても、現地でこの調整をやるなんていうのは私は不可能に近い。ましてや、これによって貧富の格差が起き、また先ほど言ったあいつには払ってなぜおれには払わないんだ、羊十頭でもけんかになるんですから。これはまた大きな問題をサマーワで起こし、そしてその誤解を自衛隊が現実問題与えているという現象になるかと思うんですけれども、これは実際できるんですか、長官。

○国務大臣(石破茂君) これは、現地にムサンナ県というのがあって、ムサンナ県知事という、最近よくテレビに出てきますが、そのムサンナ県知事というのがいる。現地の治安であるとか行政であるとかいうのは重層的に行われているものだというふうに理解をいたしております。知事がおり、部族がおり、宗教指導者がおりということですが、やはりそれは、自衛隊が行ってA部族とB部族とC部族との調整をどのようにやるかということは、どんなに頭を悩ませたってそれはもうこれがパーフェクトな解決だということにはならないと思います。それはやはり現地の方々のお知恵なりお力なりをかりることになる、それはそういうことになると思っています。

○榛葉賀津也君 分かりました。
 次に、川口大臣にお伺いしたいというふうに思います。
 このイラクの復興、そして自衛隊派遣と並行して、今回二回に分けましてパレスチナ緊急無償支援協力、約一千五百万ドルですか、を決めました。これはあれですか、今まで日本外交がずっとやってきたアラブ諸国との関係に少しひびが入りかねない自衛隊のイラク派兵という問題をし、それに対するバランス外交でパレスチナに援助をしようという政治的な配慮、これも当然あると思うんですけれども、どうですか。

○国務大臣(川口順子君) おっしゃったように、千五百万ドルの援助をするということを決定しました。委員もよく御案内のように、我が国はパレスチナに対してはもうずっと長い間支援をしてきています。一国ということで取れば日本のパレスチナに対する支援というのは一、二を争う金額であるわけです。
 それはなぜかというと、中東地域の平和と安定、繁栄というのが我が国にも非常に関係があるということでやっているわけでして、今回もそういったパレスチナでいろいろな問題が起こっている、人道上の問題もあるということについて国連が統一アピールを出したのでそれにこたえたという側面。それからもう一つ、中東問題というのはイラクの問題だけではない、むしろ中東和平問題というのはその基本にある問題と言っても過言ではないぐらいだと思いますけれども、そういった問題に対する我が国の取組の延長線上にあるということでございます。

○榛葉賀津也君 この自衛隊派兵と、派遣と並行してこのパレスチナ復興支援、これは是非、日本の中東外交がまた札束外交かという誤解を与えないように、きっちりとメッセージを行わなければならないと思うんですね。
 これは、パレスチナ問題というのは正に横断的な問題でありながら、実はずっとパレスチナ人というのはアラブの中で政治的な道具として悪い意味で利用されてきた、おもちゃにされてきた、厄介者扱いされてきた。都合のいいときだけアラブはパレスチナを政治的カードに使ってきて、正にパレスチナ人がずっと犠牲者になっていると。無論イスラエルとの問題も大きい。
 しかし、それと同時に、アラブ諸国全体が横断的にこの問題をどう考えるかという問題がこのパレスチナ和平には大変重要な問題だと私自身は理解をしているんですが、実はイラク国内にも多くのパレスチナ人が住んでおりまして、サダム政権下では彼たちは対イスラエルのシンボルとして非常に優遇されて、年間借地料が二ドルだとか数ドルでそこの土地を借り生活をして、サダム・フセインに守られていて、反イスラエルのシンボルとして生活をしていた。
 ところが、サダム・フセイン政権が崩壊をして、イラク人からパレスチナ人が正に、あいつたちだけいい思いをしてやがってという反動が今すべてパレスチナ人に行って、パレスチナ人が約八百人もテント生活をし、難民生活をイラクのバグダッドで強いられているという現状があります。
 私は正に、大臣がこういった全体を見たバランス外交をやるんであれば、確かにパレスチナへの難民の支援も大事です。これは日本がずっとやってまいりました。しかし、こういうときこそ、川口大臣ずっとロードマップでこの問題に力を注がれてこられましたから、是非、イラクのパレスチナ難民、テント生活をしているんですよ。こういったところに日本が支援をしたという問題は、大変に大きなアラブ諸国、そしてパレスチナに対する私はアピールになるんではないかと、それが日本外交の本来ある姿ではないかというふうに思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(川口順子君) 中東問題について非常に詳しくていらっしゃる榛葉先生から、非常に今貴重なお話を伺わせていただいたと思います。考えてみたいと思います。

○榛葉賀津也君 私が今日質問させて、言いたいのは一点なんです。イラク復興に防衛庁・自衛隊も必要かもしれない。彼らはきちっと任務を遂行されると私は信じています。しかし、その任務がリスクに比べて余りにも局地的で、そして様々な問題をはらみ過ぎている。
 従来の自衛隊派遣という問題は、PKOもそうでした、外務省や現地の大使館の専門員やNGOやJICAや様々な国際機関が一緒になってその環境を作って、その一翼も平和貢献として自衛隊が担おうというのが日本の外交でした。ところが、今回はイラクでは全くその受皿が整っていない。外交官も亡くなった、そして現地の情報も外務省ルートで余り伝わってこない、現地に外交官がいるのかどうかも分からない、どういう状況かも分からない。こういう状況で自衛隊を派遣するのは極めてリスクがあるし、防衛庁長官が常におっしゃる、自衛隊はテロの撲滅や治安維持に行くのではない、人道復興支援に行くのである。そうですよね。私はこれが、外務大臣、そもそも間違っていると思っているんです。
 人道復興支援には、軍といった関与、若しくは軍に近い組織の関与をなるべく外して行くのが今の人道復興支援の流れであり、それをアピールし、主張をし、体を張って外交によってこのイラクを復興していくんだ、人道復興支援をしていくんだという主張をされるのが私は外務大臣のお務めだと思っています。常に総理のおっしゃるとおり、総理のおっしゃるとおりというまくら言葉で答弁をされますが、私はそうであってはいけないと思っています。防衛庁長官はこうおっしゃいますが、総理はこうおっしゃいますが、私はこの日本の外交をつかさどる大臣としてこういうアプローチでイラクの復興支援をしたいと思っています。
 日本はずっと、四度にわたる中東戦争も、湾岸もレバノンも、そしてあのイラン・イラク戦争もオイルショックも、ずっとアラブとは、アメリカと違う外交手法によって、違う歴史や哲学によってこの問題をすり抜けてまいりました。だからこそ、イスラエルからもアラブからも信用される国になったんです。しかし今、日本の外交のやろうとしているのは、今まで外交官や、いわゆるアラビストの外交官、そして日本の先人が本当に苦労されて築いてきたこの日本・アラブの外交を根底から崩しかねない手法を取ろうとしていると私は思っています。
 大臣、日本・アラブ外交、そしてこの人道復興支援の本来、在り方、これについてどのようにお考えですか。

○国務大臣(川口順子君) 今、榛葉先生が言われたような状況に早くイラクがなって、そういった活動ができるようにするということが重要だと思っています。
 それまでの期間、我が国としてイラクの復興に、イラク人が非常に望んでいる復興にいかに貢献をするかということが今の我々の課題であって、そのために日本政府としては自衛隊が行くと、そこで人道復興支援をすることがふさわしいというふうに考えているわけです。私は、その意味において、総理、防衛庁長官と全く同じ意見を持って進めている。
 NGOが自由に入り活動でき、援助関係者が入りということであれば、またその段階として違う考え方で進めることができると思いますけれども、ほかの国では起こらない、国連の代表の人たちがイラクで襲撃をされる、赤十字の人が襲撃をされる、そういうほかの国ではない状況があるという国が今イラクであると思います。

○榛葉賀津也君 外務省が私はイニシアチブを持ってやってほしいのは、政府の様々な機関、国際機関、そして日本だけではない様々なNGO、現実に日本のNGOが既に現地人スタッフを使ってでも何でも活動しきっちりと復興支援活動をやっている、私はそれがすべてだとは言わない、自衛隊の役割も一翼はあるでしょう。しかし、外務省としてこのコラボレーションをどうやって作っていくか、それを積極的に前面に出していく、そのイニシアチブが、そのメッセージが我々国民に、そして委員会に伝わってこないから、私は是非外務省にイニシアチブを取っていただきたい。
 そして、今、自衛隊派遣ありきのこのイラク復興から、正に長年の蓄積と誇りを持った、アメリカにはない日本・アラブ外交の哲学と気概を持って外務省がきっちりとその政治の方向性を示すときが今来ているということを強く主張いたしまして、同僚議員に質問を替わりたいと思います。


○池口修次君 民主党・新緑風会の池口修次でございます。引き続いて質問をさせていただきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いします。
 まず冒頭、今回のイラク派遣と、この審議過程における私の基本認識を少しお話しさせていただきまして、その上で質問をさせていただきたいというふうに思っております。
 まず、私は、今回のイラク派遣は、現に戦闘が続いている国、これは法律上の戦闘地域とかいうのはちょっと別にして、イラクにおいて私は戦闘が続いているというふうに思っております。その中で自衛隊が活動するという点でいえば、従来の枠を超える、日本にとっては大きな変換点であるというふうに考えております。そして、その変換が、私は不正常な状況の中で決定がされ、そして今承認がされようとしているというふうに思っておりまして、それについて私は大変大きな危機感を持っております。
 なぜ不正常なのかという理由は、一つは、やっぱり戦争の大義というのが不明確であるというふうに私は考えております。二点目に、憲法との関係が私は今でもあいまいであるというふうに思っております。そして三点目が、これは立法府で解決できる話であるんですが、説明が不十分であり、国会の議論が尽くされていない。この三点において、私は現在が不正常な状態で決定がされようとしているというふうに考えておる理由でございます。
 この点について後ほどの質問で何点かお願いをしたいというふうに思いますが、ただ、今、森委員からもお話がありましたように、既に自衛隊員の方々が長官の命令に従ってイラクに派遣をされております。この点については、私は無事に任務を終えて帰ってきてほしいという気持ちであることは変わりないということをまず述べておきたいというふうに思います。
 で、質問でございますが、まず一点目、通告をしておりませんが、昨日の同僚の若林議員の質問の中で、外交官殺害事件の車両を早期に日本に輸送をして原因を追及、究明をすべきだという質問をしまして、そのときは総理を含めて真相を究明するという答えで、時期的な問題はなかったんですが、本日朝の報道ですと、外務省の内部で少し前向きな検討がされたというような報道を聞いております。この点についてまずお聞きをしたいというふうに思います。

○国務大臣(川口順子君) バグダッドの日本大使館に今車があるわけでございますけれども、これについて、我が国の警察による検証作業を行うために、これを今月中にも日本に移送をしたいというふうに考えております。何分にも、御案内のようにバグダッドの大使館については、細かいことはいろいろ申し上げられませんけれども、テロの脅威等ございまして活動に非常に制約があるという中ではございますけれども、そういうことをしたいというふうに思っております。

○池口修次君 結論は是非そういう形でやってほしいというふうに思いますが、ただ、昨日若林議員の質問で急遽そういうことになったということだと、何となく本当に仕事をしているのかなという感想を持っているというのをちょっとお伝えをしておきたいというふうに思います。
 で、当初の通告をしました質問に入らせていただきたいというふうに思います。
 まず、今回のイラク派遣の目的について、これは読めば分かるとか、もう既にいろいろ言っているということかもしれませんけれども、あえて防衛庁長官に、何で今回イラク派遣が行われるかという目的をお聞きしたいというふうに思っております。

○国務大臣(石破茂君) これは、総理あるいは外務大臣から何度もお答えがありましたので、繰り返すことを避けますが、委員、国防の基本方針というのを御存じだと思います、日本国の国防の基本方針。これは昭和三十二年五月二十日閣議決定というものでございまして、私が生まれた年なのでございますけれども、それからずっとこの国防の基本方針というのは変わらず続いているわけですね。委員は御案内ですが、知らないという方が時々いらっしゃいますので。
 この国防の基本方針の第一項に何と書いてあるか、「国際連合の活動を支持し、国際間の協調をはかり、世界平和の実現を期する。」、これが我が国の国防基本方針の一番最初に出てくるものでございます。
 やはり国連が決議をしたと、それはもう軍事のみにかかわりません。もちろん民生、軍事以外もございますが、国連がとにかく加盟国に対してイラクの復興に力をかせというふうに要請をしておるわけであって、やはりそれに我が国の国防の基本方針、すなわち国連の活動を支持しというのが国防の基本方針のトップですから、我々の。そうしますと、やはりこれにこたえるということは必要なのだというふうに思っています。
 それから、最新のデータでは九〇・八なのかもしれませんが、石油の九割を中東に依存しているという国は世界じゅうどこにもないわけでありまして、ヨーロッパの国はなべて二〇%ぐらいでございましょう。アメリカもそれよりはもう少し高いかな。韓国が七割ぐらいではなかったかと思います。
 我々の生活というのは、例えば農業にしたって、石油の安定供給なしに農業が成り立つかと言えば絶対に成り立たない。石油の安定供給なしに水産業が成り立つかと言えばそれは絶対に成り立たない。やはり国民の安定、生活の安定を支えているのが石油であり、その安定供給ということが必要なことであり、石油が戦略物資として本当にフルに使われ、私、石油ショック体験世代でございますが、石油の値段が乱高下するということは本当に我が国の国民生活に大きな影響を与えるものであり、中東地域の安定のために我が国は何かなさねばならぬということがあるだろうと思います。
 それから、榛葉委員の御指摘にもございましたが、日本はアメリカでもなくヨーロッパでもないと。それはいろんな方の御努力によって日本は違うよねという感情を持っていただいている、その人たちが日本来てほしいよねというのがあって、そこはほかの国にはできない支援というのが日本にはあるのではないかと私は思います。やはり、水が欲しい、学校に行きたい、お医者さんに行きたいということを日本が大好きだという人たちが待っているのだとするならば、それにはこたえるべきなのではないか。
 そして、しかしながら、イラクの国民、サマワの市民には歓迎されているが、テロリストには歓迎されていない。そんなにイラクに民主的な政府ができることを歓迎しない勢力というものがいる。それが襲撃というものを考えているし、サマワにおいてもそういうのが全く否定ができる状況にない以上は、やはりそれから身を守る能力を持った組織、これは日本国においては自衛隊しかないのではないかと。したがって、自衛隊が行くという結論に私はなるのだと思っています。ほかにも派遣をする理由はございますが、私自身はそのように考えております。
 最後に申し上げれば、先ほど森委員も対米追随というお話をなさいました。私は、信頼を高めることが追随になるとは思っていません。ドイツやフランスのように、我々はNATOという機構の中に入っているわけでもございません。もちろん、核兵器を保有するという選択もいたしません。やはり、何かあったときに日本を守るよと言っているのはアメリカ合衆国一か国だけであって、そのアメリカ合衆国が多くの犠牲を払いながら、イラクで民主主義国家を作ろう、早くイラク人の政府を作ろうと努力をしているときに、それは日本に関係ないから知らないよということで、私は、条約の実効性というのは紙が担保をしているとは思っていないのです。条約の実効性というのは、もちろん日本はアメリカとともに戦うわけでもありません。治安維持活動をやるわけでもございません。しかし、この苦しいイラクにおいて日本が来てくれたねということは、私は、信頼性の向上には必ず寄与すると思っています。

○池口修次君 今言われたイラクの復興に貢献をするんだとか、やっぱり国民の生活の安定のためにやっぱりエネルギーというのは国益のためだというようなふうにとらえて、最後のところの対米追随なのかどうかというところは一〇〇%私は同意したとは言えないんですが、それ以外は私はほとんどやっぱり必要なことだというふうに思っております。
 それと、この件について総理は、テロに屈しない、若しくは金だけでなく汗を流す国際貢献が必要だという発言をしてきておりまして、これについても私は当然なことであるというふうに思っております。
 ただ、じゃ、だから自衛隊がどこへ行ってもいいんだということには私はならないと、日本の法整備上そうはならないというふうに思っていますが、この点については防衛庁長官はどう考えているのか、お聞きしたいと思います。

○国務大臣(石破茂君) どこに行ってもいいことにはなりませんです。
 例えば、九・一一の後、テロ特措法というものを作りました。あのときに、じゃ、周辺事態法で行けばいいんじゃないのという人がいましたが、そういう話にはならぬでしょうと。どんどんどんどん周辺で広げていったらば、世界じゅう日本の周辺になってしまって、日本海あるいは東シナ海、じゃインド洋、インド洋でよきゃ地中海とかいって、それはどんどんどんどん広がるでしょうよと。そういうような話は駄目だから、テロ特措法という法律を作った。
 今回の場合も、イラク特措法という法律、もちろん反対なさった党もございますが、法律を作り、そしてどこでやるかという地域を定めまして、そこは非戦闘地域なのだと。それは、イラクをここは戦闘地域です、はい非戦闘地域というふうに分けるという作業をするわけではなくて、自衛隊が活動をする地域は非戦闘地域の要件を満たしてなければいけませんよということになっておるわけでございまして、これはもうどこでもかしこでも行くということにはならない。決してそのようなことにならないように法律を定め、そしてまた実施区域というような概念を設けていると私は承知をいたしております。

○池口修次君 具体的にイラク特措法の中身について少し確認をさせていただきたいというふうに思っております。
 イラク特措法の二条に基本原則がいろいろ書かれております。その三項が、対応措置については、我が国領域及び現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われないことが認められる次に掲げる地域において実施するものとするというふうに書かれておりまして、この中身について相当今まで議論を実はしてきたというふうに思っております。
 まず、官房長官に確認をしておきたいんですが、この文章の意味するところは何なのかということと、なぜこの文章がこの法律に規定をされたというか、書かれたかという意味を、防衛庁長官の考えを確認をしたいというふうに思っております。

○委員長(清水達雄君) 官房長官ですね。
○池口修次君 防衛庁長官に、まず。

○国務大臣(石破茂君) 繰り返しになったら申し訳ありません。
 日本の一・二倍もありますイラクを、はい、ここは戦闘地域ですから駄目です、はい、ここは非戦闘地域だからいいですという作業はいたしません。求められておりますのは、自衛隊が活動する地域は非戦闘地域でなければならないということでございます。
 これは、このイラク特措法に、行う活動は武力による威嚇、武力の行使であってはならないという条文も書いてございまして、だったらそれでいいじゃないのと。自衛隊は武力による威嚇も武力の行使もしないんだから、それだけでいいじゃないかという御指摘も理屈の上からはあるだろうと思うんです。
 だけれども、そうではなくて、何でわざわざこのような規定を設けたのかといえば、我が国が憲法九条の禁ずる武力の行使をしたという評価を受けないように、他国による武力の行使との一体化の問題を生じないことを制度的に担保する仕組みの一環として設けられた法的な概念という、何だか寿限無寿限無みたいなことを言っておりますが、要は、憲法九条が禁じます武力の行使というような評価を受けてはならない。そして、それ自体は武力の行使には当たらないけれども、他国とともに行うことによって、それは全体で見れば武力の行使なのだというような評価を受けることもあってはならない。それを一体化の理論というふうに申しますけれども、そういうことを避けますために作りました法的な概念でございます。
 ですから、自衛隊の活動は、武力による威嚇、武力の行使であってはならないということをまず書き、そしてまた、非戦闘地域で行わなければならないと書き、近傍でそのようなことがあった場合にはという規定を設けて、幾重にも自衛隊が武力の行使、武力による威嚇、憲法九条によって禁ぜられた国際紛争を解決する手段としての武力の行使、武力の威嚇は行わないということを制度的に法的に担保したものでございます。

○池口修次君 そうしますと、今のなかなか分かりにくいんですが、憲法上担保しなきゃいけないことがいろいろありますよと。で、その一つが、私は、戦闘地域に行けば、自衛隊は、自衛隊の人が戦闘に参加するようなことはあり得ないんですが、戦闘地域というのはいつ攻めてくるか分からないですよね。
 そうすると、巻き込まれる可能性があるので、結果として戦闘に巻き込まれて憲法に抵触することを避けるために非戦闘地域に行くんだという文章が私は書かれているというふうに思って、それに基づいて、やっぱり非戦闘地域がどこで、戦闘地域がどこだという地理的な概念をこの項目で定めなさいというふうに私は解釈をしているんですが、全くそれは、何か今のですとよく分からないんですね。地理的な概念なのか、違うのか、そこの点をちょっと確認させていただきます。

○国務大臣(石破茂君) こうするとまた何というか、聞いている人にはよく分からない議論になってしまう。これはどう説明したら分かりやすいのかなと思うんですが……
○池口修次君 地理的な概念なのかどうかということが……
○国務大臣(石破茂君) 地理的な概念ではございません。
○池口修次君 違うのか、入れてないか。

○国務大臣(石破茂君) これは法的な概念でありまして、地理的な概念ではございませんが、しかしながら、実施区域というものを定めます以上は、これはやはり地理的な定めを行います。ですから、自衛隊がやります、活動を行います地域というのを指定いたしますね。それはやはり地理的な概念です。その地理的な概念というのは、すべからく間違いなく非戦闘地域の要件を満たさねばならないということでございます。

○池口修次君 そうしますと、今のお答えは、法律上は地理的な、この法律は地理的な概念を決めていないんだけれども、活動は地理的な概念で私たちが決めますよということですか。

○国務大臣(石破茂君) まず、非戦闘地域というのは法的な概念でございます。また、実施要項におきまして活動する区域を定めてございますので、これは地理的な概念、つまり法的な要請に基づきまして法的な概念を地理的な概念に、何と言ったらいいんでしょうね、化体させたと言ったらいいのか、移し替えたと言ったらいいのか、そういうものだと思います。

○池口修次君 そうしますと、今の私の解釈は、地理的な概念は実施要項で決めればいいということで私は聞こえたんです。
 そうすると、実施要項というのは、これはだれが決めるんですか。地理的な概念を、実施要項で地理的な概念を決めますよと、法律上は、これは法的概念で地理的な概念じゃないんだけれども、実施要項で決めますよという答弁をされたんですよね。

○国務大臣(石破茂君) これは防衛庁長官が定めるものでございますが、当然のことですけれども、法律の規定に則して作るわけでございます。
 ですから、法律は抽象的、失礼、法的な概念であるけれども、それを逸脱して防衛庁長官が勝手に自分で判断して、どう見たってそうではないところを実施区域に定めちゃったというようなことがあるのではないかという仮にお尋ねであるとするならば、それはその法の要請に基づいて、その法の要請に従って定むるのでありまして、逆ということは起こらないと考えます。

○池口修次君 そうすると、いろいろ申しましたが、地理的な概念は防衛庁長官、私が決めるものだという答弁ですね。だれからも指図されるものではないと。だって、実施要項というのは防衛庁長官が決めるんでしょう。それで、地理的概念は実施要項で決めますという答弁をしたんですよね。だから、あなたが、地理的な概念は全部私に任されているんですということですよね。

○国務大臣(石破茂君) 任されていると、こう言われますと、おまえみたいなやつに任せていいのかとか、そういう話かもしれませんですが、これは、繰り返して申しますが、そこに恣意は入るものではございません。自分が勝手に、ここならよかろう、あそこならよかろうということではなくて、法によって要請されたものをいかに具現化するかという作業を私が行うという意味で御理解をいただきたいと思います。
 そして、それを定むるに当たりましては、そこがなぜ非戦闘地域であるかということについて、これももう延々と呪文みたいなことは申しませんけれども、例の国際性、組織性、計画性、継続性とかなんとか、いろんなものがございますが、そこは何ゆえ非戦闘地域であるのかということは、もちろん縦横斜め、前後左右、いろいろな判断に基づいて行うものでございます。

○池口修次君 私は、石破長官の判断が危ないんで任せないと言っているつもりはないんですよ。だから、責任を持って判断はされるというふうに確信はしているんですが、ただ、立法府には決める権限はないんですねということを言っているんです。
 そうすると、非戦闘地域かどうかというのは、これはやっぱり憲法上からいうと大事なことなんですよ。大事なことが行政府の長官一人に、実施要項で決めるという答弁をされているんですよ。本当にそれでいいのかというのを内閣の法制局長官、ちょっとここ大事なところなんで、本当にそれでいいのかどうかというのをちょっとお答えください。

○政府特別補佐人(秋山收君) 法律で仕組みを決めまして、その実施につきまして行政機関に判断を基本的にはゆだねるという制度は、決して憲法上おかしくないものでございます。

○池口修次君 本当にそうなのかというのは、ちょっと追及はあえてやめます。
 この点について官房長官にお聞きをしたいんですが、今までずっと戦闘地域、非戦闘地域という議論を、衆議院から始まって、去年の六月からですか、やっております。この非戦闘地域の概念の質問について、福田官房長官は、例えば六月二十六日の答弁ですと、この活動地域をこれから決めるわけです、そのときに、非戦闘地域であることには間違いないことでありますけれども、その中でも安全性に問題のないような地域は選ばないと、問題のあるような地域は選ばないという答弁なり、六月二十七日には、イラクの国内における非戦闘地域はどうなのかと、これらについて様々な情報を集約した上で設定をすると、政府を挙げて安全なる地域というものを精査した上で、官房長官の責任でと、何か云々言っているんですが、この答弁は明らかに地理的概念を想定をしながら答弁をしているというふうにしか私には思えないんですが、あえて承認に賛成したのか賛成されなかったのかちょっと分かりませんけれども、本当に良識のある官房長官だというふうに信じておりますので、本当にこのときはどういうことで、地理的概念じゃないと思ってこの答弁をしたのか、この点をお聞きしたいと思います。

○国務大臣(福田康夫君) 私の答弁、ちょっと今手元にないんで分からないんですけれども、先ほど来防衛庁長官が答弁しておりますように、これはもう明らかに憲法上の規定として、そういう地域でなければ憲法に抵触するというような地域ではしないということなんです。ですから、ある地域が、実施要項でもある地域が決まりましたと、地域がありますと、そこでもって活動するかしないか、これは非戦闘地域でなければできないわけでありますので、それはそういうふうに思って実施要項に決めたけれども、将来的に実行が何か月か先とか半年先とかいうようなときにその地域がどうなったかということは、それはそれでまたよく検証しなければいけないということがあるわけですね。
 ですから、先ほど来の答弁がございましたように、これはあくまでも憲法上の規定の概念である、その地域で活動しようと思う、そうしたらば、その地域が憲法に抵触しないかどうかという点を確認していると、こういうふうな意味でございます。

○池口修次君 憲法に抵触しちゃいかぬのは当然なんですよね。だから、じゃ、そのために書いただけで、そうすると余りこれは、自衛隊が行ったところが非戦闘地域であればいいということでしかないんだよということですと、そうするとこれは、自衛隊にここが非戦闘地域だというような決める能力はないですよね。相手が攻めてくりゃすぐ戦闘地域になっちゃう。
 そういう意味で言えば、私はやっぱり、今の憲法なりこのいろいろな法律をやっぱり整合性を取るためには、私はこれはこのイラク特措法においても地理的な概念であるものが入ったんだなというふうに、まあこれは勝手に解釈したのかもしれませんね。ただ、勝手に解釈した人は、多分国民のほとんどの人は勝手に解釈していると、その方向で。地理的概念であるというふうに解釈しているというふうに思って、例外はあえて言えば、私は、石破長官と、今、福田長官もそう言われましたからそうかなというふうに思いますが、私は決してそうではないと。
 元々やっぱりこの法律を作ったときには、六月ですから、多分イラク戦争が早期に終わって、その非戦闘地域が当然生じるはずだと。特に南部の方は非戦闘地域になると。それであれば、日本は貢献、やっぱり国際貢献はこれは当然しなきゃいけませんから、やっぱり憲法上においても許されるなということで判断、これは私は間違った判断というふうには私は言いません。
 ただ、状況が非常に厳しくなって、南部も必ずしも非戦闘、地理的な概念で非戦闘地域と言えなくなったと。ただちょっと、だからといってやめるわけにはいかぬなということで、私は、明らかにこの非戦闘地域の議論は、石破長官はいろいろやっていますと必ずしもそうではないですね、前からそういう憲法との担保の問題をいろいろ言っていらっしゃいます。ただ、小泉総理を始め福田官房長官も、私は、当初は地理的な概念を頭に描きながら答えていたというふうに私は理解をしていますが、最近は、福田官房長官も余りこの件は答弁は実はされていないんですよね。だから、これは石破長官にお任せなんです。
 だから、そこのところは私は変わってきているというふうに思いますし、あえて答弁は求めませんけれども、私は、やっぱり自衛隊の海外派遣を無制限にしないと。憲法が変われば別ですけれども、無制限にしないためには、やっぱり地理的な概念に対する担保を石破長官に任せるんではなくて、やっぱり法律上私は議論をしてちゃんと担保すべきだというふうに思っておりまして、お答えをいただくともう時間がなくなっちゃうんですが、できるだけ短めにお答えをいただきたいと思います。

○国務大臣(福田康夫君) 実施要項について防衛庁長官が決めるということでございますが、その前に基本計画を定めます。これは内閣総理大臣が決める、閣議決定をすると、こういうもので、その中に地域を指定するということがございます。
 実施に当たりましては、その要項等につきましてはその範囲においてやるということでございますから、全く防衛庁長官だけで決めるわけではない、事務的に決めるわけではないということはお分かりいただけると思います。

○国務大臣(石破茂君) 今、官房長官からお答えがあったとおりであります。要はどういう法律を作るかということだと思います。それは、おまえらが強行採決したのではないかと言われればそうでございますということになるのかもしれませんが、どういう仕組みで、どういう仕組みで地理的な概念を定むるのか。しかし、その地理的な概念というのは、常に憲法の要請というものから私どもは導き出してきておるわけでございまして、そこにおいて二つの、つまりどういうふうに定めるのかということと、それと国会の関与というものがどうあるべきなのかという議論は、恐らくまだ政府の中で方針も何も決まっておりませんけれども、よく政治で御議論があります恒久法、いわゆる恒久法の中でどうあるべきか、また政府の中でも議論がなされることでございましょうし、また与野党いろんな御議論を承って方向が定まっていくのかなと思っております。

○池口修次君 今、石破長官が強行採決したからどうこうというような発言をされましたけれども、私は全然そんなことは思っておりません。これは強行採決したから与党の責任だとか政府の責任なんだと全く思っていないんですよ。その地理的概念は、私は立法府がある程度決めないと大変なことになりますよと。それで、答弁の中で、地理的概念は実施要項で決めますよという答弁をされたから、そうすると、これは立法府は全く関与できないとは言えませんけれども、ほとんど関与できない中でしか決めないんですよということでいいのかどうかということを言っているわけで、余り変な、強行採決したな、されたなとか、そういう議論にすり替えられると、私は何のために質問しているのかというふうに思っておりますので、是非そこは本当に、今日の国対の打合せの中でも誠実な審議をしますよという打合せをしているわけですから、余り変に取らないでいただきたいというふうに思います。
 あと八分ぐらいしかないんで、もう一つお聞かせいただきたいんですけれども、現在自衛隊の方が行っていらっしゃるんですが、自衛隊の方が行ったこと、若しくは活動に対して現地の人々はどのように思っているのか、若しくはとらえているのかというのを外務大臣にお聞きしたいと思います。

○国務大臣(川口順子君) 地元といろいろ今まで接触をしている中で、地元の社会として自衛隊を歓迎をするということと、自衛隊を地元で守っていかなければいけないというふうに思ってくださるというふうに取っております。

○池口修次君 今の大臣の答弁でもありましたし、総理大臣も、この現地の日本歓迎のムードを紹介するときに、現地の人の発言として、自衛隊員の皆さんを我々が守るんだという発言をとらえて自衛隊歓迎というふうな意味でいろいろなところで紹介をしております。
 ただ、私は、本当にそんな単純に、自衛隊を守るという発言を、いや、自衛隊の人に来てもらえば我々が命を張って守りますよというようなふうにとらえていいのかどうかということについて実は疑問を持っております。
 時間の関係もありますので私の方から言えるだけ言っちゃいますと、先ほど前段で榛葉議員の方から宿営地の賃貸料の話ありました。報道によると、オランダ軍が払っている賃貸料に対して日本軍に要求がされた賃貸料は相当に、百倍ぐらいの金額がなされたというふうに言っております。
 もしこれが事実であるというふうにとらえた場合には、これは必ずしも私の意見ということよりも専門家の意見ですけれども、前段の自衛隊を我々が守るという背景にはこの賃貸料を含めた金額が入っているんですよ、百倍なんだけれども我々が守るということの守る料金を考えればこれは妥当な金額であるというふうに言っている専門家も実はいるんです。
 ということを含めて、自衛隊は我々が守るということを本当にそう単純にとらえていいのかどうかという疑問に対してちょっと御答弁をいただきたいというふうに思います。外務大臣だと思います。

○国務大臣(川口順子君) 百万ドルかどうかということについて、私は確認する立場にはございませんのでそれについては触れませんが、基本的に、地元の社会で、それは様々な考え方があるということは事実であり認識をしなければいけないと思います。
 幾つかのことを、例えば日本とイラクの社会の間では大変に価値の貨幣が、価値が、貨幣の価値が違いますから、そういったことも考えなければいけないということだと思います。それから、先ほど別な委員の方の御質問で出ていましたバランス、あるグループの人たちだけにフェーバーが行くということであってはならない。それから、更にそれを広げて言いますと、イラクの中にいろいろな地域があります。サマーワだけ日本が非常によくやっているということであってもいけない。そういったバランス感覚ということは私は重要だと思っております。

○池口修次君 時間がなくなりましたので、ちょっと最後に一点だけお聞きをしたいというふうに思います。
 現在、イラクには、様々な日本人の方々がイラクに行っていらっしゃるというふうに思います。例えば、今回行った自衛隊の方々とか外務省の職員の方々、NGOの方々、そしてマスコミを含む、マスコミを含むというかマスコミの方々、いろんな方が行っていらっしゃいますが、その人たちは決して安全なところに行っているわけじゃないですから、いろいろなけがとか事故に遭われるとか、若しくは最悪のケースも想定がされますが、それぞれの方々に対して保護というか対応はどういう形でなっているのかということを、これは防衛庁長官と外務大臣が、両方にかかわるかと思いますが、それぞれの方々に対してどういう対応を考えているのかということをお聞きしたい、して、最後の質問にさせていただきたいというふうに思います。

○国務大臣(川口順子君) イラクに今、邦人がいると、これは自衛隊関係者も含めてかなりいるということであります。
 それで、何か起こったときにどうするか。これは、まず治安については、これは安保理決議に基づいて、英、米、そしてオランダといったような各国の軍隊がその担当任務を行っている。その一環として、攻撃については予防をする、あるいは排除をするということが考えられるわけでございます。そして、それに加えて、もし日本人が自衛隊の、これは後で防衛庁長官からお話があると思いますが、管理下にあれば、自衛隊が武器の使用を含めて安全確保を図り得るということであります。
 それで、万一攻撃を受けてけが人、あるいは不幸にして亡くなる方というのが出た場合に、これは一義的に外国人の安全に責任を持つというのはその国の警察であるわけですけれども、その制度が今イラクでは非常に未整備な状況にあるということでございます。そういうことがあって、したがって我が国の外務省の職員、イラクにいる職員、サマーワ、バグダッドに若干名いますけれども、その人間ができる邦人の保護については制約があります。これは非常に制約があるということを申し上げないといけないと思います。それで、そういう不幸な事件があった場合には、その被害者の状況とか、あるいはその現地の情勢を見ながら、必要であればCPAですとか、それから関連の諸機関に支援を要請をするというふうに考えております。
 これは、イラクは退避勧告という危険情報を出しております。邦人がそういったことに巻き込まれないように退避勧告を出しているわけでございまして、今速やかに邦人がこの地域から退避をすることを求めているわけです。それにもかかわらず滞在をされるという場合には自己責任の原則に基づくというふうに考えておりますけれども、外務省としてもちろん関連の情報の提供、そして安全確保に関して可能な限りの配慮を行っていきたいと思います。

○国務大臣(石破茂君) 今の外務大臣からお答えがあったとおりでございますが、より具体的に申し上げれば、退避勧告は出ているわけでございますけれども、にもかかわらず行っておるということですね。自衛隊に同行して取材をしておられるマスコミの方、あるいは人道復興支援活動のために自衛官に同行するNGOの職員の方、こういう方であれば、十七条、イラク特措法十七条に申しますがところの自己の管理の下に入った人ということになります。これが全く関係ないところで何かあったという場合には、それはイラクにおいて治安を担当しておる当局が一義的に負うものでございまして、私どもとしてはイラク特措法十七条の要件を満たした方は、それは結果として武器の使用も含めて十七条に基づく行動を取ることになるということだと思っています。

○池口修次君 最後にしますが、今の言葉の中で退避勧告が出ているんだからというような、そういう意味で使ったんではないというふうに思いますが、私からのお願いは、退避勧告が出ているといっても、ただ興味本位で行っている人は絶対にいないわけで、これについては退避勧告が出ているというところで余り線を引くんではなくて、万全の対応をお願いをしまして、今日は終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。

○岩本司君 民主党・新緑風会の岩本司でございます。
 国民の皆様方に分かりやすい質問をさせていただきますので、分かりやすい御答弁、どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、川口外務大臣と福田官房長官にお伺いしますが、対イラク武力行使支持に至るまでの経緯についてお伺いします。この支持に至るまでの経緯でございますけれども、二〇〇三年三月二十日のイラク戦争の直前の経緯でございます。
 二〇〇二年の十一月ですね、戦争が始まるちょうど四か月前の十一月の時点までは確かにイラクは積極的に安保理決議に応じなかったと、私はこれは事実であろうかというふうに認識いたしております。しかし、問題なのはその後ですね。戦争の直前のこの四か月の間にイラクの対応が急速に変わってきたというふうに私は考えております。
 私ども民主党もちょうど戦争が始まる三月二十日のちょうど三週間ほど前ですか、二月の二十一日から二十七日までイラクに視察、調査に行ってまいりました。もちろん私ども民主党は公平に、イラクだけではなくてアメリカにも、合衆国にも同時期に視察、調査に行っております。
 私はイラクの担当だったものですからイラクに行ってきたわけでありますけれども、ハンマーディー国民議会議長、またサーディー大統領顧問、アミン国家監視局長官にもお会いしました。このとき現地で、もう一年になろうかとしますが、現地でお亡くなりになりました井ノ上一等書記官にも本当に、今名前出すだけで僕涙がちょっと出てきているんですけれども、お世話になりました。
 井ノ上書記官の志も継いで質問をさせていただきますけれども、私どもが現場に行った後に、総理特使で当時の外務副大臣の茂木前外務副大臣が私どもが行った後にイラクに行かれております。その茂木当時の外務副大臣からどのような帰国された報告があったのか。川口外務大臣、また福田官房長官にお伺いします。

○国務大臣(川口順子君) おっしゃったような時期に当時の外務副大臣の茂木副大臣が、三月の二日でございましたけれどもイラクに行きまして、アジズ副首相、実質的にはナンバーワン、サダム・フセインに次いでの行政部門でのナンバーワンと言っていいと思いますが、と二時間にわたり話をいたしました。そのときの報告については、私はバグダッドからの要するに国際電話で報告を受けておりますし、それからその帰国を副大臣がなさってからも話を聞いております。その概要でございますけれども、総理の親書を携さえていかれてお渡しになったということであります。
 それで、イラクが大量破壊兵器問題について国際社会の思い、考え方、これを真摯に受け止めて平和的に解決をするために査察に協力をするようにということが大きなメッセージであったわけですけれども、よりもう少し詳しく申し上げますと、議論は完全な平行線ということでもなかったけれどもほとんど平行線であった。一つは、三月七日の査察団、これは国連の査察団の報告が三月七日になされることになっていたわけですが、その報告が今後の推移を決める上で重要な意味を持つということと、査察の協力ぶりについてイラクとUNMOVICの間に認識の差があって、イラクはその差を埋める努力をしなければいけないという点については先方も理解を示したということでございました。その辺は認識が一致をしたということですけれども、他方で、イラクが三月七日までに今までの対応と本質的に異なる積極的な行動、対応をするためには政治的な決断が必要だということを言ったわけですが、それについては必ずしもというか、それについては理解が得られなかったということであります。
 それから、そのときにイラクが一生懸命やろうとしていたことというのは、国際社会が分かれているではないかということを一生懸命に言おうとしていたということでありますけれども、当時、その忙しい中で行政部門の実質ナンバーワンである副首相が二時間、茂木副大臣と時間を使って話をしたということについては、イラクがやはり我が国との関係、これについて非常に関心を持ち、重要であるというふうに考えていたということの表れだと思います。
 以上です。

○国務大臣(福田康夫君) ただいま外務大臣から答弁しましたとおりで、内容的には同じ内容のものを報告を受けております。報告を受けましても、茂木外務副大臣が総理の親書を持っていったわけですね。それで、親書を渡しまして、そして今のようなやり取りがあったということでありますけれども、帰国を三月六日にしまして、直ちに報告を受けております。また、同じ報告は茂木副大臣から総理にも同じ日に行っております。

○岩本司君 井ノ上一等書記官は現地で、私が九州の出身でございまして、井ノ上一等書記官も同じ九州だということで本当に、何というんですか、イラクの地で同じ同郷ということでこの問題を一緒に取り組ませていただいたわけでありますし、私どもが会ったイラクの幹部の方々にも同席をされて、それ以外でも夜は夜で遅くまで議論もさせていただいたわけでありますけれども。
 私どもには、イラクの幹部の方々は、もうお金もないし破壊兵器なんか、また核なんかとんでもない、そういうことないんだと訴えていらっしゃいました。またそこで、我々が今保有している武器は国際法上認められているミサイルであって、しかもそのミサイルも廃棄に掛かっていると。しかし、これを全部廃棄しても構わないと。しかし、日本がアメリカに対してもう攻撃しないと先に確約を取ってくれ、そうであればもう全部廃棄してもいいというようなことをおっしゃっておりました。そんな金もないと、武器を持つ。
 また、日本は国内不景気で、年間三万人以上の方が自ら命を絶たれておりますけれども、この戦争が始まる前の一年間でも医療器具や薬がなくて子供たちが、八万人の方が、八万人の子供たちが亡くなっている。その前の年は五万人。平均五万人ぐらいの子供たちが毎年毎年亡くなっている、そういう現状の中で、そういう武器とか、そういう次元じゃないと、経済制裁も受けているので。
 私は、確かに、先ほど冒頭申し上げましたけれども、十一月、四か月前の戦争が始まる十一月の時点まではそういう積極的に国連に協力しなかったと思いますけれども、それ以降は、緊迫している中、もうこの時点ではホールドアップしている、国と国じゃなくて人と人の次元に置き換えますと、ホールドアップしている人間に対して銃を撃ったと、しかもそれを支持したというように考えてもおかしくないんじゃないかというふうに思うわけであります。また、当時の大統領は、フセイン前大統領はマスコミを通じてブッシュ大統領とテレビ討論していいと、どっちが本当かもう世界の人に見てもらいたいとまで言っていたわけです、それにも応じなかったということなんですけれども。
 その茂木副大臣の御報告と私どもが現場で聞いた話とちょっとずれがあると。私は一人の政治家として、自分は、井ノ上一等書記官の命もそうですけれども、もう一万人近いイラクの国民の皆様が亡くなっているわけですが、戦争を止められたんじゃないかと、私が。止められなかった、それは責任を感じております。
 当時、戦争前に現地に行ったときも、毎日結婚式を若者がされているんですね、びっくりしまして、そういうもう緊迫している中でも。そういう若者や子供たちやお年寄りの方や一万人近い方々が亡くなっていると。もちろん、各国の兵隊の方も亡くなっているわけでございますけれども。
 私は、この報告が正しい報告だったのかどうかというのはちょっと疑問に感じるわけでございますけれども、武器持っていなかったと、もう持っていないということを、茂木副大臣が持っていないとイラク政府側から言われたという、そういう報告がありませんでしたですか。イラクが持っていないという、こういうふうに訴えていたと。

○国務大臣(川口順子君) 大量破壊兵器を持っていないというせりふは、イラクは当時みんなに言っていたわけです。茂木副大臣にも言いましたし、それから私自身も代理大使、東京の、とお話を、同じ話をしましたけれども、聞いています。
 元々そういうせりふをずっとイラクは言っていたわけでして、それを、その確認を取るために査察をさせなさい、査察の条件はこうですということが国連の査察団との間で話し、決議で決まっていて、それをイラクがやらせなかった。先ほど委員が十一月以降は積極的に協力をしたというふうにおっしゃられていますけれども、国際社会はそういう認識、これはドイツもフランスも含めて、ブリックスも含めてそういう認識では全くなかった。
 それで、したがって三月七日の報告書ということがどう書かれるかということが重要であると、かということが重要であるということを茂木副大臣がイラク側におっしゃり、それを、その影響を与えることができるのはイラクである、そのために政治的な決断が必要だということを言ったわけですけれども、それについては理解が得られなかったと、そういうことであるわけです。

○岩本司君 いまだに大量破壊兵器が見付かっていないわけでありますけれども、現地でIAEAの査察官、日本からも二名派遣されておりまして、そういう方々とも井ノ上一等書記官と一緒に同席させて議論させていただいたんですけれども。フランスやドイツというふうにおっしゃいましたけれども、そのときは核の査察をもっと延長すべきではないかと、また、人数を増やすべきではないかというふうに、これはもう世界的にもそういう情報が流れていたとは思うんですけれども。現場の方々もカーナビがない、またアラビア語も分からない、その中で、例えばこの今の東京から北海道まで地図もないところで査察に行ってくれと上から指示が来て、着くわけがないと、時間が掛かるというようなことも現場の方もおっしゃっておりました。
 そういう現状の中でこういう決断を政府がしたわけでございますけれども、ちょっと時間がもう足りないものですから、ちょっと次に移らせていただきますけれども。
 今回、自衛隊の先遣隊の隊員の皆様を決めるときに、やっぱり先遣隊ですから、やっぱり現地に詳しい方々、防衛庁にも本当にいらっしゃるというふうに聞いております。
 アラビストといいますか、アラビアに詳しい方は先遣隊に入っていらっしゃいましたでしょうか。長官、お願いします。

○国務大臣(石破茂君) 本当の意味でアラブに精通したアラビストということであれば、それは含まれておりません。

○岩本司君 アラビストと言われている番匠幸一郎陸上自衛隊名寄駐屯地司令、名前がもう挙がっていたと思うんですけれども、すごく現場にも詳しいというかアラビスト、三本の指に入ると言われるような方なんですけれども、もう地域の、名寄の市長までもう現地の活躍を期待したいと、国に対して現地の治安をしっかり確認した上で派遣してほしいと。それでまた、そういう隊員の皆さんからもそういう声が上がっていたらしいんですけれども、その点いかがでございますか、長官。

○国務大臣(石破茂君) 番匠幸一郎一等陸佐は、私も個人的に長い付き合いでございますけれども、彼はアラビストではございません。合衆国の大学にも出ておりますし、また商社にも勤めたこともある人間ですが、どちらかというと戦略家というような感じ。ストラテジストと言った方がよろしいんでしょうか。だから、これは隊長が何もアラビストでなくてはならないというわけではない。彼の場合には本当に冷静沈着云々という、そう新聞に書かれたのは決して誇張だと私は思いませんが、そういうような判断をもって指揮官として任じたものでございます。
 アラビアのいろいろな語学あるいは風俗、習慣等々に熟達するのがもちろん望ましいわけでございますが、我が国としてあの地域に長期間滞在したということもございません。衆議院でもお答えをいたしましたが、ゴラン高原に出しておるというのが、いわゆるあの地域に出しておる一つの例でございますけれども、これはもうなかなか委員が御指摘のようなアラビストをすぐに養成するということも困難でございますが、さればこそ、外務省の方々のお力もおかりをして、相互に相補完し合いながらこの任務を達成していきたいと思っておるところでございます。

○岩本司君 番匠司令ですけれども、行かれる前に、そういう派遣、先遣隊に入る入らない、その前に、マスコミの皆さんとの対応というか、機会が多過ぎて、現地でマスコミの皆さんとの対応をどんどんやられたら困るから外されたんじゃないかという、そういう話もあるわけでございますけれども、本隊には入られていると、先遣隊には入っていないけれども、その後はメンバーとして入られているというふうに聞いておりますけれども、その点はいかがでございますか。

○国務大臣(石破茂君) 外されたとか外したとか、そのようなことはございません。
 先般、旭川におきまして私が隊旗を授与をいたしておりますけれども、この全隊を統括をいたしますのは番匠一等陸佐でございます。

○岩本司君 イラク国内の現状の認識についてちょっとお伺いしますけれども、一月の十九日に先遣隊がイラクに到着しているわけですね。その十九日にイラク人五人を地元の警察が拘束しているわけです、もうテロリストじゃないかということでですね。二十四日の日、五日後の二十四日の日に、オランダ軍のMP二人、ミリタリーポリス二人と先遣隊員の二人が現地の警察本部、ムサンナ州警察本部に行っております。そのときに、二十二日付けのコピーファクスを持って先遣隊員二人が現場に、しかも五日後に行っているわけですね。
 まさか現地で、現地のジャーナリストや新聞記者さんから東京に送られた情報で、それを一回東京からまたコピーファクス持って現地に行ったというので、現地に送られてきた情報というか、何というんですか、現場からの情報じゃなくて東京からの指示といいますか、そういう情報で動いているという、まさかこういうことはありませんでしょうね。

○国務大臣(石破茂君) 現場のことは現場が一番よく知ってはおります。したがって、東京で最初に知って、こんなことがあるが確かめてこいというようなことがあるわけではございません。
 ただ、東京で非常に関心が高くて、このことについて更に調べる要があるというようなことがありました場合には、これは調べてくれというようなことを申し入れることはございます。また、現地で行える報道と同じだけのスペースを取って東京で報道がされるかというと、現地ではべた記事のものが東京ではわっと出ることも、これは可能性としてはないではございません。
 いずれにしても、安全性というものを確かめる点において、東京と現地と連絡を密にしながらやっておるわけでございます。

○岩本司君 現場のことは現場とおっしゃっていますけれども、指揮する最高責任者の長官、現場のイラクに今まで行ったことありますか。

○国務大臣(石破茂君) 私は、イランは行ったことがございますが、イラクに行ったことはございません。

○岩本司君 イラクで今こういう問題が起こっている中、最高責任者の御本人が現場に行っていなくて、想像でされているのかどうか分かりませんけれども、本当に疑問に思うわけでありますけれども。
 このときに、二名の先遣隊員と二名のオランダ軍MPの方が行ったときに、英語も話せなくて困って、その警察署で、近くにいた日本人のジャーナリストにオランダ軍が通訳を頼んで、そういう方はもう銃ももちろんないですよ、そういう方が仲介して交渉をやっているわけですね、現に。
 そのときに、しかも自衛隊員の方々はトランシーバーを持っていなかったと。オランダ軍から、何でトランシーバー、命綱と言われるトランシーバーがないんだと指摘されているわけでございますけれども、トランシーバーは整備されているんですか、命綱は、現地で。長官、お願いします。

○国務大臣(石破茂君) 個々具体的な事情につきましては確認をいたさせますけれども、もちろん連絡というものが取れるということは当然のことでございますので、私はトランシーバーは必要な数が隊員に行き渡っておると承知をいたしております。
 今委員がおっしゃった、おまえはトランシーバーを持っていないのかという状況がどういう下で起こり、そこに我々何名の者がおり、トランシーバーを保有せず、オランダ軍と、そのオランダ軍の方とそのような会話が交わされたか、これはちょっと確認をさせていただきたいと存じます。

○岩本司君 トランシーバーが現地にあるというようなことをおっしゃっていますから安心はしましたけれども。オランダ軍の方も、頭数あると、トランシーバーがあるとおっしゃいましたから。オランダ軍の方が何でトランシーバーがないのかと言われたら、基地にありますということはおっしゃったんですけれども、じゃ、隊員の方が持っていなかったと。命綱ですからね、これはもう本当に重要な問題だと思います。
 これは、ジャーナリストの方が、確認するとおっしゃいましたけれども、もうビデオで全部先遣隊の行動を映したのを、ビデオで何かあるらしいので、近いうちに、国内、どこのテレビ局か分かりませんけれども放映されると思いますけれども。
 次に、自衛隊員の方々、大使館員の方が、これ現地で死傷者が絶対に出ないと言い切れますか。長官、お願いします。

○国務大臣(石破茂君) 自衛隊員ですか。
○岩本司君 自衛隊員と、大使館員もそうですけれども。

○国務大臣(石破茂君) 出ないように可能な限りの策は講じております。世の中に絶対ということはないと私は思います。

○岩本司君 絶対ということはないわけですから。では、死傷者が出る可能性があるので、政治はもしものことがあった場合の対応もやはりしなければいけないと思うわけでありますが。これは、なぜこういうことを申し上げるかというと、先ほども申し上げましたが、奥大使や、やっぱり井ノ上一等書記官の死を本当に無駄にはできないという思いで申し上げているわけでありますけれども。
 アメリカ、イギリス、スペイン、こういう国々は、死傷者が出た場合、戦死とみなされているわけですか、それとも事故死とみなされているわけですか。長官、お願いします。それぞれの国で。

○国務大臣(石破茂君) それは、どういう状況で亡くなったか、それによります。そしてまた、我々の場合でもそうでございますが、それが公務によるものであったのかどうであったのか、それが、合衆国におきましてもスペインにおきましてもイギリスにおきましても、それぞれの状況によって取扱いが違うと思います。
 ですから、委員が、こうこうしかじか、こういう状況でこうなったとしたらどうなのだという御指摘があるとすればそれは紹介はいたしますが、この場合には戦死だ、この場合は事故死だというふうなことは、これは通常はそれぞれの国も明らかにしないものだと承知をしております。

○岩本司君 各国が、現場に行かれている隊員の方々がお亡くなりになったときに、それぞれの国が戦死という、何といいますか、戦死か事故死の今話なんですけれども、戦死というようなことで認識をされているんであれば当然現地は戦場であると。
 ですから、各国の取扱い、どなたかお分かりになる方いらっしゃいますですか。

○国務大臣(川口順子君) アメリカの発表の仕方ですけれども、敵対行為で亡くなったか、非戦闘事由で亡くなったかというふうに分けて発表しているということです。それから、イギリスについては、敵対行為、その他の原因で亡くなる、敵対行為で亡くなっているか、あるいはその他の原因というふうに分類をしているということであります。ほかの国について、例えばスペイン辺りですと、事故、戦死の区別は特に行っていない。韓国については、死者が出ると作戦中の死亡との扱いになる。これはもう国によって様々であると、その国の制度によって様々であるということかと思います。

○岩本司君 私自身、現場に視察に行くときも、行く前に自分で、もしものことがあっちゃいけないということで、保険に特別に入ったり飛行機の中で家族に対するメッセージ等も書いて視察でも行くわけですね。
 こういう状況の中、隊員の皆様も御家族に対してのメッセージや、当然私は、無事に帰ってくるよとは当然おっしゃると思いますけれども、メッセージも残されたり、私が言わんとしていることは、国民の皆様の中で自衛隊を支持している方々の、自衛隊を支持している方々の半数以上がこのイラク派遣に対して反対をされているわけですね。そういう状況の中、国のために行くと言える、イラクに行ってくるんだと、そういう覚悟が、国のためにと、本当にできるのかどうか、そういう国内の、日本国内の現状がそういう状況であるかどうかと本当に疑問を感じるわけであります。
 日本ではなくてイラクで、しかも国民が感謝で送り出しているのか、全員が。アメリカから、ブッシュ大統領から総理が言われて、総理から言われて現地に行くと、しかもイラクにと。こういう自衛隊員の皆様の心の中にも迷いの中での現地派遣だろうかというふうに思いますので、私は、隊員の皆様が事故死、もう万が一のことがあった場合に事故死なのか、これ、戦死なのかと。いや、これは、それはもう諸外国は戦死、戦場に行くと認識している国もあるわけですから、軍隊を送っていると。ですから、その辺のことを自衛隊員の皆様方の処遇についてもっと私は議論する必要があるんではないかというふうに思うわけであります。
 次に、イラクの現地における自衛隊の皆さんの活動の環境についてお伺いしたいんですが、アメリカ兵がもう既に二十名以上自殺をされたというふうに聞いております。これはもう想像を絶する現場だと思うんですけれども、福利厚生施設といいますか、娯楽施設といいますか、それが必要ではないかというようなことが現場で出ているらしいんですね。その点についてちょっと御説明いただきたいと思います。長官。

○国務大臣(石破茂君) 先ほどの委員のお話の中で、自衛隊に賛成している国民の半数以上がこの派遣に反対しているというのは、どの数字に基づいておっしゃったのか、私よく分かりません。私が認識をしておりますのは、自衛隊に賛成しようが反対しようが、国民の方々で賛否を問うたときに、派遣に反対だと言われる方に比べまして、もちろん最初は反対の方が非常に多かったわけですが、賛成だという方の比率が増えてきて、同数あるいは賛成の方が多いというふうに認識をいたしております。これが増えるように努力はしていきたい、これは政府の責任だと思います。
 それから、私どもは間違っても戦死という概念は使いません、これは。戦争に行くわけではございませんので、戦死という概念を使うことはいたしません。これは、PKOでありあるいはテロ特であり、海外におけるいろいろな任務、戦争を行うわけではないけれども、PKOのように国連の任務であったり、そういうような海外における任務とどのような整合があるかということで処遇を決めてまいるものでございます。
 娯楽施設についてどうかということでございますが、それは、ああいうような地域、文化の違う地域で、そして危険というものは決してなしとしない地域で過酷な任務を行うわけでございます。サマワの町に出てお買物ができるかといえば、そのようなことが日常許されるわけではない。そうしますと、宿営地の中におきまして、そのような教養あるいは体力錬成あるいは御家族との会話、それはメールも、あるいは画像も含みますが、そういうもので隊員の精神、肉体状況というものを保っていきたいと思います。
 また、自殺についてお話がございましたが、アメリカが行っております任務と自衛隊の行っている任務は当然異なりますので、アメリカの数字がそのまま当てはまるとは思いませんが、しかしながら、これについて精神的外傷みたいなものを受けて後々発症するといった例も海外では報告を受けております。メンタルヘルスケアにつきましても、これはきちんと配意をすべきというふうに措置をしておるところでございます。

○岩本司君 自衛隊員の皆様方が現地で、地域の、イラクの住民の方々と一緒に、例えば当然そういう施設を造るという方向性で進んでいくんであれば、地域の方も一緒に参加できるような、そういう考えはいかがでございますか。

○国務大臣(石破茂君) ないわけではありません。ないわけではありませんが、私が申しておりますのは、常々中で申しておりますのは、余りに地元の人と一緒に、例えばサッカーをしよう、あるいは、カラオケがあるかどうか知りませんけれども、そういうのをやろうとか、それは配慮は大切なことです。しかしながら、まず足下をきちんと固めて、それから徐々に徐々にということだと思っています。サマワの方々がすべて善意で、そしてまた市民の方々、宗教指導者の方々がみんなで守ろうといっても、そうではないのだという人がいないという保証はございません。私どもは、やはり派遣される自衛官、そして御家族のこともきちんと考えて対応すべきものと思います。

○岩本司君 次に、イラクはもとより、アラブ諸国に対して、政府として誤解のないような広報活動をされているのかどうか。これ、川口外務大臣にお伺いします。

○国務大臣(川口順子君) 今先生がおっしゃったポイントは非常に重要なポイントでございまして、政府としても今まで様々な取組を行っております。幾つかの例を申し上げますと、例えば小泉総理がアル・ジャジーラに出られ、私もアル・アラビアに出演をいたしております。それから、いろいろ特使が行かれる折に説明をする、私自身もイラン、ア首連回りましたけれども、ということもやっておりますし、アラビア語のパンフレットも作っております。
 たくさんのプログラムを持っておりまして、例えばその一番近い時点ですと、レバノンのフューチャーTVというテレビを、TVチーム招聘というプログラムがありまして、それで日本に今月の中旬に招くことになっております。あとは、アラビア語の放送に資料を提供するとか、在外の公館でアラビア語のホームページを持っていて、そこで説明をするとか、大使が各地で講演会をやったり、そういうことをするとか、あるいはそういった、防衛庁もリーフレットを作っていらっしゃいますし、様々なプレス、新聞記者への対応、テレビ、資料、文書、パンフレット、講演、もういろんな分野でやっております。

○岩本司君 総理や大臣がテレビに出るのもそれは必要かも分かりませんけれども、現地の自衛隊員の皆さんがこういう活動をしていると、武力行使じゃないということをもっとアラブ諸国の方々に発信するべきであるというふうに申し上げておきます。
 それと、イランとの関係でございますけれども、川口大臣、イランにも足を運ばれておりますけれども、イランで日本政府に対して、イランまたアフガニスタンの間のこのドガルーン―へラート間の道路工事の要請はありませんでしたですか。

○国務大臣(川口順子君) 今、ドガルーン―ヘラート間の道路工事、これはイラン政府の支援により現在行っていて、九〇%が第一次舗装済みであるというふうに聞いております。昨年末完成の予定でしたけれども、ちょっと遅れてるということです。

○岩本司君 時間が来ましたので、終わります。
 ありがとうございました。


2004/02/06

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