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ハンセン病訴訟における国の責任確定にあたっての声明

 ハンセン病違憲国家賠償請求訴訟について熊本地方裁判所が本年5月11日言い渡した原告側全面勝訴判決が、国の控訴断念により本日確定した。

 国の控訴断念は、90年間に及ぶ長い隔離政策から人間としての解放を求めた原告らの勇気に満ちた運動と、これを支えた国民世論の大きな勝利である。

 これにより確定した本判決は、我が国の90年間に及ぶ絶対隔離絶滅政策を断罪し、らい予防法を明白に違憲とし、らい予防法の下に隔離政策を継続した厚生省と、この法を廃止しなかった国会の国家賠償責任を明確に認めた画期的なものである。

 全国13の国立療養所に平均年齢74歳、平均入所期間40年を超えて法廃止から5年たった現在もなお社会復帰できずにいる4400人余の入所者、差別・偏見を恐れて真の社会復帰をはかれずにいる多くの退所者、患者家族、死してなお故郷に帰れず納骨堂に眠る2万3000余の遺骨、この世に生を受けることなく逝った3000を超える胎児ら。これらハンセン病政策によるすべての被害者にとって、本判決は「人間回復」のための歴史的な第一歩となった。

 本判決の確定により、国の法的責任は揺るがぬものとなった。

 今後、この確定した国の法的責任に基づき、原告らをはじめとする全被害者の人権回復を内容とする全面解決がはかられなければならない。すなわち、(1)ハンセン病患者・元患者に対する国の真摯な謝罪、(2)謝罪広告等による名誉回復措置と損害賠償、(3)在園保障、退所者支援などの恒久対策、(4)真相究明と再発防止、(5)継続協議の場の設定等の実現である。

 これら原状回復措置は、蹂躙された被害実態にみあうものでなければならないし、原告らとの協議に基づき、その意向を十分に踏まえたものでなければならない。

 我々は、真の「人間回復」を実現するまで、なお一層の力を尽くす所存である。

 現在、熊本、東京、岡山の3地裁訴訟の原告数は1700名を超えた。本判決が確定した今こそ、「人間回復」を宣言した本判決を携え、真の全面解決を勝ち取るまで共に歩むことを、すべての入所者・退所者に呼びかけたい。

 最後に、本訴訟中はもとより、判決後も国に控訴を断念させる運動を共に闘い、支援していただいた多くの市民の方々に、心から御礼を申し上げるとともに、真の全面解決まで、一層のご理解とご支援をお願いする次第である。


2001年5月26日

ハンセン病違憲国家賠償訴訟全国原告団協議会
ハンセン病違憲国家賠償訴訟全国弁護団連絡会


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