2001/05/10

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小泉総理の所信表明演説に対する代表質問

民主党・新緑風会  勝木 健司

 私は、民主党・新緑風会を代表し、小泉総理の所信表明演説に対して、総理及び関係大臣に質問を行います。

 昨日の衆議院において、我が党の鳩山代表及び枝野議員が代表質問を行いました。両氏の質問に対して小泉総理が答弁する際に、自民党議員が苦虫をかみつぶしたような顔をして沈黙し、民主党の議員から拍手が沸き起こるという場面が少なからずありました。こうした場面は今までの国会にはなかったものであり、小泉総理は我が国の政治に新風を吹き込んだものと受けとめております。総理の姿勢次第では、小渕、森政権で形骸化した民主主義を取り戻し、国会の活性化を図ることもできるものと確信をいたしました。

 国会審議の活性化に向けて、国会では国家基本政策委員会を昨年、平成十二年の通常国会で導入されましたが、この国家基本政策委員会の設置に絡み、従来からの衆参両院での本会議や予算委員会での総理の出席が大幅に減少しております。この国家基本政策委員会設置は、与野党の議論を従来にも増して活性化させることが基本であったにもかかわらず、この委員会開催が国会運営の駆け引きに利用されて、本会議や委員会への総理出席を減らして、与野党での議論を不活性化させる、議会の形骸化が進み、議会制民主主義が危機にさらされていることは黙認をできないものであります。

 小泉総理が誕生し、従来の自民党の体質を改善される努力を期待し、国会でも与野党での議論をさらに活性化させるために、本会議や予算委員会、さらには重要法案審議の委員会には総理みずからが進んで出席をして審議に応じていただきたいと思いますが、総理自身の言葉で答弁をしていただきたいと思います。

 さて、各種世論調査によりますと、小泉内閣は八〇%を超える支持率を得ております。これは決して自民党政治への支持率ではなく、民主党が提案する政策を小泉総理が取り入れていることの反映ではないかと私たちは考えております。総理が言う「聖域なき構造改革」は、民主党本家本元のものであります。総理自身は内閣に対する高い支持率の原因は何だとお考えでしょうか、お答え願います。

 今、我が国は大きな歴史の転換点に直面をいたしております。右肩上がりの経済成長、官主導の経済システム、年功序列、終身雇用制度が大きく揺らぎ、まさに未曾有の経済・金融危機が起こっております。安心と安全な社会神話も崩れ、少子高齢社会、累増する財政赤字への対応も一向に進まず、国民は不安な毎日を送っております。このような事態を打開するためにも、今こそ政治が国民の期待にこたえ、リーダーシップを発揮して、希望に満ちた二十一世紀を切り開いていかなくてはなりません。

 にもかかわらず、自民党政治は、相変わらず古い発想と手法にしがみつき、危機をここまで拡大してきたわけであります。ばらまき公共事業、個性を無視した画一的教育、官による民間企業の参入規制など誤った政策をとり続けております。

 今必要な政治は全く逆のものなのであります。既得権を断ち切り、地方分権を確立する、勤労者、生活者へ自立を支援し、企業の新分野進出や新規事業への支援などに重点を置いた新しい政策を実現していくことが重要であります。

 こうした認識に立ちまして、以下、小泉総理に質問をいたします。
 小泉総理が旧来の派閥順送りにとらわれず、女性五人、民間から三人、さらには四十代や当選三、四回の若手を起用して組閣を行ったことは、公約を実施する上での当然のことであります。

 しかし、果たしてこれで小泉首相が政治主導を貫いて強い指導力を発揮できるのか、本当の改革派であるのか、早くも疑問の声が上がっております。最大派閥を冷遇したこと自体、これは派閥政治の手法ではないのでしょうか。民間出身の大臣も、いずれも官僚OBであります。

 海外の幾つかのマスコミも否定的な見方をいたしております。四月二十六日付のアメリカ・ニューヨーク・タイムズ紙は、小泉首相について、異端児的な立場が目標達成を困難にするだろう、国民の説得に失敗すれば夏までには職を追われるかもしれないとまで断言をいたしております。

 もし仮に、構造改革路線が破綻し、改革否定のばらまき路線に逆戻りした場合、我が国の政治にはかり知れない打撃を与えることは必至であります。国民の政治不信はさらに高まり、経済と国民生活はどん底に陥り、社会のモラルは地に落ち、日本の国際的信頼が傷つけられることは火を見るより明らかであります。

 文豪シェークスピアは、腐ったユリの花は雑草よりも悪臭を放つとの名言を残しております。にせものの改革派は守旧派以上にたちが悪いものである、このことをしかと肝に銘じるべきであります。

 時間がたつにつれて、小泉総理はみずからの主張や政策をトーンダウンしておられます。所信表明で総理は、首相公選制については懇談会で検討する、都市の再生については本部を設置すると演説をされました。みずからの主張を引っ込め、結論を先送りにし、第三者機関任せにするやり方は、今までの総理とどこが違うのでしょうか。全く同じではありませんか。お答えをいただきたい。

 また、昨日の代表質問において、郵政三事業について、公社化は決まっているが、その後は白紙だと答弁をされました。一見、改革を標榜しているように見えますが、白紙には何もしないことも含まれておるわけであります。言葉遊びで逃げているのではありませんか。

 以上の批判に対して、小泉総理はどうお答えになりますか、明快なる御所見をお伺いしたいと思います。

 さて、先月二十八日、小泉総理は、連合主催のメーデーに出席をされ、私の総理就任は政権交代と同じ意味を持っているとまで豪語されておられます。その真意は一体何なのか、お尋ねをいたしたいと思います。

 小泉総理が軽々しく政権交代という言葉を使ったことは、国民的人気取りの疑似、えせ政権交代であり、国民に幻想を与えるものであります。民主主義を揺るがす危険な発言と批判せざるを得ません。選挙という国民の審判による政権交代こそが真の改革への道であることを申し上げたいと思います。

 自民党の小泉総裁と神崎公明党代表、扇保守党党首は三党連立政権維持で合意をされましたが、その内容たるや、一夜漬けの作業にふさわしく、初めに連立存続ありきの色彩が濃く、肝心な部分の詰めが欠落をしております。玉虫色の合意にとどまっておると思います。公党としての主張も貫かず、国民、有権者に対する責任も自覚せず、まさになれ合い、もたれ合いの連立を選択した自民、公明、保守三党の見識を疑わざるを得ません。

 小泉総理は、過去の経験にとらわれず、恐れず、ひるまず、とらわれずの姿勢を貫くと表明されておられますが、なぜ今なお自公保連立の枠組みを維持する必要があるのでしょうか。表紙の顔が変わっただけで中身は同じだと、小泉内閣とは改革後退の自公保内閣の焼き直しじゃないかと、これでは何ら世の中は変わらないのじゃないかと。小泉総理の明快なる答弁を求めます。

 小泉内閣の政治手法につきましても、実態は何ら変わっていないという批判の声があります。ただ単に党や政府首脳の顔ぶれを変え、総理の意気込みだけを示すのでは、海千山千の派閥長老や霞が関官僚の壁をぶち破って、長年にわたってしみついた利権、そしてばらまき構造、そして政官財の癒着を終わらせることは到底不可能と言わざるを得ません。陳情政治や業界団体などとのつき合い方を一新する、党の部会から利害関係者を、族議員を排除するくらいの思い切ったシステム改革に取り組むなど、自民党の体質を変えない限り、小泉総理が目指す構造改革は絵にかいたもちに終わってしまいます。これでは国内外の期待を裏切ることになると言わざるを得ません。

 昨日の代表質問におきましても、総理は、抵抗する勢力は必ずいるが、やってみないとわからないなどと答弁をされております。総理が具体的な政策をほとんど示していないから、何に抵抗する勢力なのかも特定できないのではありませんか。総理の見解を伺います。

 また、事務次官会議の廃止、外交官の政治任用くらいはせめて取り組まないと、新しい政治主導の道は確立できないと考えます。この二つだけは必ず実現させると総理にこの場でお約束をしていただきたいと思います。

 万が一、小泉総理の目指す改革が党内での抵抗などによって挫折した場合はどのような行動に出られるのか。自公保の連立の見直し、さらには自民党の解党も含む政界再編に打って出る覚悟はお持ちなのか。それとも、一度総理になってしまうと、改革よりも政権の延命を優先させるおつもりなのか、お伺いをいたしたいと思います。

 次に、経済対策及び財政改革についてお尋ねいたします。
 小泉総理は、森内閣のもとでまとめられた緊急経済対策を速やかに実行に移すと表明されました。同時に、小泉総理は財政改革にも積極的に取り組むとの姿勢を示しておられます。森政権の経済優先一辺倒から、景気回復も、そして財政再建をもという方向に、すなわち、一兎を追う政策から二兎を追う政策に転換されたのでしょうか。これまでの政権の政策は誤っていた、だから政策転換をするのだと総理ははっきりお認めになられますか。お答えをいただきたいと思います。

 銀行の株式保有を制限することにつきましては、金融システムを株価変動リスクから遮断することは非常に重要であるという観点から、私ども民主党も既に全面禁止という方針を打ち出しております。しかし、だからといって銀行が保有する株式を政府が買い上げるという発想は余りにも短絡的だと言わねばなりません。

 個人の金融資産は年間百兆円も増加しております。株式市場の魅力を高めれば、四十兆円程度と言われる銀行保有株式は市場で十分吸収できるはずです。しかも、買い上げた株式に損失が発生した場合、税金でその穴埋めをしようということは、納税者、国民の理解を得られるはずがありません。

 株式買い取り機構設立のための法整備については、自民党幹部は、既に今国会中の実現は困難との見解を発表いたしております。小泉総理はどの程度本気で取り組むおつもりなのか、答弁を願います。

 また、来年度予算におきまして国債発行額を三十兆円以下に抑えるという目標を設定されました。しかし、その中身は空っぽというか、全く見えてきません。歳出削減ならば、何を重点に削減なさるおつもりなのか。増税もあり得るのでしょうか。今年度の補正予算、そして来年度予算の概算要求に向けての小泉総理の考え方をお伺いいたしたいと思います。また、プライマリーバランスの均衡はいつ達成されるおつもりなのか、総理の明快なる答弁を求めます。

 小泉総理御自身が本気で財政構造改革に取り組みたいと思っていても、しがらみの多い自民党の中にいて実現可能であると本気で思っておられるのか。今までの景気優先の財政運営が、ゼネコンや官僚の天下り先である特殊法人などに国民の血税を回すだけで、経済対策としての効果は何ら発揮してこなかったこの現実、政官業のトライアングルによって自民党は成り立っているのだという現実を、小泉総理は目の当たりにしてこられたのではありませんか。

 私たち民主党は、橋本内閣時代の一律カット方式の失敗を教訓としながら、公共事業費やODAの大幅削減、公務員定数の削減、特殊法人、公益法人、認可法人の見直しなど、あらゆる分野にわたり財政の効率化方策を公約として掲げております。

 小泉総理も昨日、私たちと同様、一律削減ではない財政再建を進めると答弁されております。だとすれば、硬直的な財政構造改革法を見直さないとつじつまは合いません。また、今、財政再建を進めるというのなら、この法律を凍結している経済情勢は変わったと見てよろしいんでしょうか。こうした矛盾をどう説明されますか、総理の答弁をいただきたいと思います。

 また、総理は、特殊法人等について国からの財政支出の大胆な削減を目指すとおっしゃっておられますが、それなら、国民から批判の強いいわゆる天下りを全廃するための法整備を行ってはいかがですか。民主党の法案が出ていないから答えを出せないというのは、単なる逃げにすぎません。総理より明快なる御所見を伺いたいと思います。

 次に、金融政策についてお尋ねいたします。
 小泉総理は、二年から三年以内に不良債権の最終処理を目指すと表明されました。現時点で政府が処理すべきと考える不良債権は総額で一体幾らなのか、総理より明快な答弁をいただきたいと思います。

 また昨日、総理は、新規のものは三年、既存のものは二年で処理すると答弁をされましたが、この方式だと永遠に不良債権はなくならないのではないか。総理の御所見を求めます。

 緊急経済対策では、処理の対象とされているのは主要銀行の破綻懸念先以下の債権十二兆六千億円にすぎません。一方では、金融庁が明らかにしたように、正常先以外の債務者に対する債権は、預金取扱金融機関全体で百五十兆円にも上っております。病気を治すにはまず徹底した検査が必要であるのと同じように、不良債権問題を解決するには、不良債権の本当の実態を把握しなければなりません。そのためには、要注意先百十七兆円を中心に、すべての貸出債権について厳格な資産査定をやり直すことが不可欠でありますが、小泉総理のお考えをお聞かせ願いたいと思います。

 結局、債権放棄という名の徳政令の乱発を許し、またしても構造改革を先送りするつもりはないでしょうね。これまでの間、こうした先送りを繰り返してきたことが問題をますます大きくしてきたのであります。総理から、甘い徳政令はとらないと約束をしていただきたいと思います。

 昨日、厳しい債務の取り立てに苦しむ中小企業者の実態に触れた質問にも、総理はきちんとお答えになりませんでした。かつて、貧乏人は麦飯を食え、中小企業の倒産で自殺する者があってもやむを得ないと言った政治家がいましたが、小泉さんもその程度の宰相なのでしょうか。貸し渋りや倒産に苦しむ中小企業者が納得できる施策を小泉総理より示していただきたいと思います。

 次に、労働・雇用対策について質問いたします。
 今日、我が国の金融、経済は極めて深刻な状況にあります。政府が対応を誤れば、現在四%台後半で高どまりを続けております失業率がさらに高まるおそれがあります。

 これまで日本経済を支えてきた勤労者の置かれている状況は想像を絶する厳しいものがございます。我が国では、いつの間にかリストラ、賃下げ、サービス残業が当たり前のこととなってしまいました。中高年者の雇用は依然として困難をきわめております。特に、高校や大学を卒業した若い人たちの多くも、厳しい就職難に直面をいたしております。学校を卒業しても仕事がないという社会は、希望のない、夢のない社会であります。

 こうした状況を乗り切るには、まず国民一人一人の不安を解消し、安心して働くことができる環境をつくることが不可欠であります。構造改革には痛みが伴うということであれば、その痛みの緩和策を図るのが政治の役割であります。小泉総理に、痛みの緩和策についてどうするのか、具体的に説明をしていただきたいと思います。

 社会的セーフティーネットの整備なくして景気回復は望めるはずがなく、日本経済の再生もあり得ません。

 私ども民主党は、二兆円規模の雇用保険財政安定化のための基金を創設する、さらに、雇用保険の給付が終了した失業者や自営廃業者についても、職業能力開発支援制度を創設して生活支援や教育支援を行うといった三年間の時限立法を提案いたしております。昨日、小泉総理は、雇用対策については手厚い措置を講じていると冷ややかな答弁をされましたが、現実とはかけ離れているのではございませんか。民主党の提言に対して、総理御自身の言葉でお答えをいただきたい。

 続いて、総理の社会保障に関する御所見を伺います。
 私ども民主党は、確固たる社会保障の構築を通じて、国民に確かなる安心、これを約束できる政府の実現を目指しております。小泉総理はこれまで四度厚生大臣を務められましたが、その間の年金、医療などの社会保障政策については、国民は将来不安を払拭できないばかりか、かえって逆に政府に対する不信感さえ募らせる結果に終わっております。

 総理は所信表明の中で、国民に対し道筋を明快に語りかけ、理解と協力を得ながら改革を進めると言われましたが、今、国民は社会保障改革の具体的でわかりやすい全体像の提示を求めているのであります。小泉内閣が行おうとしております社会保障改革の全体像と、そしてその道筋をこの場で御説明いただきたい。総理の答弁を求めます。

 次に、社会保障の柱であります公的年金の問題についてお伺いします。
 公的年金制度の土台である基礎年金につきましては、政府は、必要な財源を確保できれば、国庫負担の割合を二〇〇四年を待つことなく今の三分の一から二分の一に引き上げるといたしております。それに必要な約二兆四千億円の財源をいつどのような方策で確保されるお考えなのか、総理の御所見をお示しいただきたいと思います。

 さらに、基礎年金の給付水準についてもお伺いします。
 現在、国民年金に四十年加入し、毎月保険料を納めた人の年金額は六万七千円であります。しかし、三万円程度の年金所得だけで生活している人や、中には年金のない人もおられるのが実情でございます。

 今後の社会保障においては、高齢者にも応分の負担を求めていくということが重要な課題となっております。小泉総理が厚生大臣当時に成立し、昨年四月から導入されました介護保険制度においても、低所得者には保険料や利用料の負担が重くのしかかっているとの指摘があります。高齢者に応分の負担を求めていくのであれば、基礎年金の充実が当然必要であり、現行の給付水準を引き上げることが必要ではないのか、総理の御見解をお聞かせいただきたいと思います。

 また、介護保険が一周年を迎えました。介護保険料と利用料負担の問題、中でも低所得層に対する当面の支援策が課題となっております。四年後の制度見直しに向けた検討課題などもあわせて総理の御所見を伺いたいと思います。

 次に、森前内閣が二〇〇二年度に改革を行うことを約束いたしました高齢者医療制度の改革について質問をいたします。
 現在、国民医療費は約三十兆円、そのうちの三分の一、約十兆円が老人医療費という状況であります。その老人医療費は毎年約一兆円ずつ増加いたしておりまして、医療保険制度の財政を圧迫いたしておるところであります。

 高齢化の進展に伴って医療費の増加は避けられないところでありますが、問題は限られた財源をいかに適正かつ公平に使うかであります。高齢者医療制度の枠組みをどのように見直していくお考えなのか。医療費は税金と保険料と患者の自己負担によって賄われておりますが、これらをどのような割合で組み合わせて国民に負担を求めるお考えなのか、総理の御所見をお伺いいたします。

 ところで、小泉総理は、二〇〇〇年の医療保険制度の抜本改革を先送りにした張本人だったのではありませんか。政府・与党は、二〇〇二年度に医療制度の抜本改革を断行すると繰り返し述べておりますが、小泉総理、来年度の抜本改革を本当に約束できますか。総理の御決意を伺います。

 また、先月二十七日、坂口厚生労働大臣は、記者会見で高齢者医療制度の改革について一つの提案をなされました。すなわち、現在の老人保健制度を見直して、七十五歳以上の高齢者については、医療費の半分以上に公費を投入し、その財源は消費税で賄うというものであります。仮に来年度からこの仕組みを実施するとすれば、その所要額はどれくらいなのか。また、消費税率の引き上げを念頭に置かれているのかどうか。高齢者の保険料負担は一人当たり幾らで、全体では何割を想定しておられるのか、小泉総理の見解を求めます。

 さらに、これだけ科学技術が発達した今日でも、治療の難しい病気が依然として存在をいたしております。政府は、感染症対策、難病対策等にも万全を尽くすべきだと考えますが、小泉総理の答弁をいただきたいと思います。

 次に、少子化対策についてお尋ねいたします。
 小泉総理は所信表明演説で、保育所の待機児童の解消と放課後児童の受け入れ体制の整備については明確な目標を定めて推進すると言われております。総理の所信表明は総じて耳ざわりのいい言葉の羅列の感がありますが、たとえ耳ざわりがよくとも、空手形では国民は納得しません。保育所待機児童ゼロ作戦の具体的な達成年次、学童保育の充実に関する整備目標を明らかにしていただきたい。

 また、「新世紀維新」と銘打つのなら、せめて古くて新しい問題の幼稚園と保育所の一元化ぐらいはすぐにでも取り組むべきではありませんか。総理にこの場でお約束いただきたいと思います。

 次に、教育問題についてお尋ねいたします。
 今、我が国の教育は大きな壁に直面いたしております。高校進学率は一〇〇%近くに達し、教育は国際的にも恵まれた水準に達しております。しかし、受験戦争の激化、不登校、登校拒否やいじめ、中途退学の増加、学力低下、そして学級崩壊、家庭の崩壊など、子供たちをめぐる状況は日ごとに悪化しているのが現状であります。また、少年による凶悪犯罪も多発しており、犯罪を犯す子供はもちろんのこと、普通の子供たちもストレスを感じ、悩み抜いております。学力ではトップの人たちが集まる官庁や大企業においてさえさまざまな問題が生じていることは、偏差値教育の行き詰まりを示すものと言わざるを得ません。教育改革こそ政治が取り組むべき最も重要な課題の一つではないでしょうか。

 私は、特に、障害者の社会参加を促し、その隠れた能力を開発するためには、健常者と同じ条件のもとで生活する機会をふやすとともに、障害の内容や程度に応じたきめの細かい教育の方法を開発すべきであると考えます。小泉総理の御所見をお伺いいたします。

 小泉総理は、所信表明では、教育改革についてはわずか二行で抽象的な教育の目標らしきものを提示したにすぎません。森前内閣は、今通常国会を教育改革国会と位置づけ、教育改革を重要政策課題と位置づけました。小泉総理はどのような教育改革を進めようとされておるのか、具体的に提案をしていただきたい。

 次に、教育基本法の見直しについてお尋ねします。
 総理は、見直しについて幅広く国民的な議論を深めると述べておられますが、具体的にどのように国民的議論を深めていこうとお考えなのか、明らかにしていただきたいと思います。

 また、教育基本法の見直しによって、本当に日本の教育がよくなるのでしょうか。総理の教育基本法に対する基本的な認識をお聞かせいただきたいと思います。

 小泉総理は所信表明演説の最後に、明治初期の長岡藩の話をしておられますが、余りにも唐突であり、意味不明であります。単に、国民に我慢しろという趣旨なのか、教育は国家百年の計であるので教育を最優先しようという趣旨なのか、その真意をお尋ねいたしたいと思います。

 次に、外交及び安全保障政策についてお伺いいたします。
 まず、日米関係について伺います。
 ブッシュ米国新政権は、新たなアジア政策で日本重視の姿勢を明らかにいたしております。我が国の安全保障にとって米国との協力関係が重要であることは確かでありますが、米国がアジア太平洋地域の安定と安全を理由に我が国にさらなる責任と役割を求めてくることも考えられます。

 そこで、今後、米国との安全保障関係についてどのように展開をされていくおつもりなのか、また、米軍普天間飛行場代替施設の十五年使用期限問題についてはどう対応されるのか、小泉総理より答弁をいただきたいと思います。

 また、小泉総理は、憲法第九条について改正を目指すという考えをお持ちと伺っております。どのように改正したいとお考えなのか。さらにまた、集団的自衛権に関する考え方もあわせて総理に伺いたいと思います。

 さらに、総理は、有事法制についても検討を進めると明言されておりますが、有事法制整備の総理の見解を伺います。

 坂口厚生労働大臣、扇国土交通大臣からも、これら三つの問題について、公明、保守両党の考え方をお伺いしたいと思います。

 次に、日中関係、日韓関係についてお尋ねいたします。
 李登輝氏の来日問題において、私ども民主党は、人道的見地から早急にビザを発給すべきだと主張いたしましたが、それに比べて、右往左往した政府の対応がかえって中国側の不信感を高めたと言わざるを得ません。友好的で安定した日中関係は、東アジア地域の平和と安定には欠かせません。これから中国との外交にはどのように取り組んでいかれるのか、総理にお伺いいたします。

 また、韓国との友好を深めることも重要であります。小泉総理は、ワールドカップサッカー大会の開催等に触れておられますが、両国間の友好親善を進めるより具体的な方策を明らかにしていただきたいと思います。

 次に、日ロ関係について質問します。
 ことし三月、森前総理とプーチン大統領は、平和条約締結後に歯舞諸島と色丹島を日本に引き渡すとした一九五六年の日ソ共同宣言を基本的な法的文書とすることなどを内容とする声明を発表いたしております。しかし、プーチン大統領は、今後、専門家による解読作業が必要としており、いまだ両国間に解釈の隔たりがあることも事実であります。

 政府内の方針は、四島一括返還か二島先行返還か、揺れ動いているように見受けられます。昨日、田中外相から、政府の公式的立場は四島返還しかなかったし、今後とも変わらないとの答弁がありました。この点をもう一度、小泉総理から確約をしていただきたい。

 次に、日朝問題についてお伺いします。
 北朝鮮の金正日総書記の長男、金正男氏と思われる人物が偽造旅券を使い、我が国に不法入国を図った件についてであります。

 政府は、当該人物を告発し逮捕するという手続をとらず、五月四日、そのまま国外退去という方法をとりました。政府のとった態度は、主権国家としての役割と任務を放棄しかねないとの批判が国民の間で巻き起こっております。五月一日、拘束された時点で政府はそれがだれであったか既にわかっていた、明らかになったのはマスコミがこれを取材し報道したからであって、もしそれがわからなければ全く不問に付したままで国外退去にしていたという経過も明らかになっております。

 これは、危機管理対策としてもお粗末きわまりないものであります。知らない、聞いていない、わからないという政府の姿勢は、国民から重要な事実を隠ぺいするものと批判せざるを得ません。北朝鮮の最高幹部の一人と思われる人物による偽造旅券を使った不法入国事件に対して、その動機、背後関係等を徹底的に究明することは、主権国家として当然のことだったと考えます。また、拉致被害者家族の方々の気持ちを逆なでする措置であり、極めて遺憾であります。今回の日本政府による対応について、小泉総理から国民に対する明確な説明を強く求めます。

 また、昨年、交渉促進を確約して政府は強引に北朝鮮への米支援を決定いたしました。しかし、その後、日朝交渉は速やかに進展しているとは思えません。日朝交渉の今後の展望と具体的対応の方針につきまして、小泉総理にお伺いいたします。

 今回の外務官僚による機密費の不正流用事件は、我が国外交の汚点であります。国際的にも大きく信用を損ねるものであります。先日まとまった外務省機能改革会議の提言を受けて、今後、外務省改革が進められるものと信じております。

 小泉総理は、減額も含め平成十三年度予算を厳正に執行すると表明されております。しかし、なぜ政府・与党は、本院に提出された民主党を初めとする野党の予算修正に反対したのでしょうか。総理の答弁をいただきたいと思います。

 外交に関連して、教科書問題についてお尋ねいたします。
 日本の歴史教科書について、日本国内や近隣諸国で議論が巻き起こっております。韓国は、検定を合格した日本の中学歴史教科書すべてについて再修正を要求しております。

 昨日、鳩山代表が、日本と韓国、中国との歴史教科書対話に着手することを提案いたしましたが、総理はこの提言を重く受けとめるとの答弁をされました。我が国の主権国家としての独立性や祖先に対する愛情の問題と、近隣諸国への配慮との整合性をどう保っていかれるのか、総理の見解を求めます。

 最後に、自民党は、これまでも何度も改革の旗を掲げながら、中途で改革をほうり出し、国民の期待を裏切ってまいりました。幾度となく連立の相手を変え、政策の一致は二の次にして、何が何でも政権与党の地位にしがみつこうとしてきました。これは、政党の本来の姿を逸脱し、議会制民主主義の精神を根本から踏みにじるものと非難せざるを得ません。しかし、これこそが自由民主党のレーゾンデートル、存在理由、存在証明だったと言っても過言ではないと思います。

 自民党が自民党である限り、新しい政治は期待できません。小泉総理がどんなに崇高な改革の意思をお持ちになっても、政治を刷新しようとしても、自民党の総理である限り改革は困難であります。

 小泉総理が、国民に与えた期待を裏切ることなく、場合によっては自民党を飛び出し、与党三党の枠組みを壊してでも、真に日本国と国民のために改革を断行する意思を貫き通されることを期待して、私の質問を終わります。

■小泉首相の答弁

 勝木議員にお答えいたします。
 激励と期待を込めた御質問をいただきまして、まことにありがとうございます。

 まず、総理は国会審議の状況に対して積極的に出席すべきだということでございますが、私も、本会議や予算委員会やあるいは党首討論、国家基本政策委員会等進んで出席させていただき、各党の皆さんと積極的な議論を闘わせていきたいと思っていますので、よろしく御協力をお願いしたいと思います。

 また、私の内閣支持率に対するお尋ねがございました。
 大変高い支持率を与えていただきまして、この期待にこたえなきゃならないという責任を痛感しております。こうした多くの皆さんの御支援と期待にどうこたえるか、今後、私自身の行動と実績によって少しでも御期待にこたえるよう精いっぱい頑張っていきたいと思いますので、よろしくまた御理解、御協力をお願いしたいと思います。

 にせものの改革派は守旧派以上にたちが悪いという御指摘がございました。全く同感であります。私も、何事にも恐れず、ひるまず、とらわれずという姿勢を貫きまして、聖域なく構造改革を断行するよう努力をしていきたいと思いますので、これまたよろしくお願いしたいと思います。

 総理は時間がたつにつれてみずからの主張や政策をトーンダウンしているという御指摘がありましたが、全然そんなことはありません。私の所信表明演説をよく読んでいただきたい。私が自民党総裁選挙で行った発言、全部盛り込んでいます。私は、これまでこれほど具体的に言った総理はあるかどうかと自分で自負できるぐらいはっきり言っているつもりであります。

 首相公選制について、みずからの主張を引っ込め、結論を先送りにしているではないかという御指摘がありましたけれども、どこが主張を引っ込めて先送りをしているんですか。私は、首相公選制についても独断でやるつもりはありません。これは憲法学者の、学識者の意見も聞かなきゃいかぬ、各界からの御意見も聞かなきゃいかぬ、総理といっても独断でやってはいかぬと思っていますから、識者を集めた懇談会を立ち上げて、国民の意見を聞いて、そして理解を得るような方法で現実の政治課題として取り上げていこうということでございますので、この辺は自分の主張を引っ込めたとかトーンダウンと言われるのはまことに心外であります。

 都市再生本部についてのお尋ねですが、これは、私がこの都市再生本部の本部長となりまして、関係大臣からいろいろ意見を聞くことができるように複数の関係大臣等も参加していただきまして、よりよい具体策をまとめるための機関でございまして、今後とも、二十一世紀型都市再生プロジェクトの選定等、都市の再生に関する施策を総合的に、かつ強力に推進していきたいという意味を込めてこの本部を立ち上げることにしております。

 郵政三事業民営化についてのお尋ねでありますが、これも私は後退なんか全然していませんよ。むしろ、これから、国営化するんだという、民営化はタブーだというのに踏み込んだじゃありませんか、私の方が。これから白紙で検討すること自体大きな転換ですよ。むしろ、民主党が民営化推進を出してくれたらもっといいと私は思っているんですよ。出せないところの方に問題があるんじゃないかと私は思っております。

 メーデーにおける私の発言についてお尋ねがありました。
 私は、私の総理就任はある意味においては政権交代だと思っておりますが、考えてみれば、首相公選制にしても郵政民営化論にしても国会では少数意見です。それをはっきりと所信表明でも項目に入れましたし、これから幅広く万機公論に決すべしという、タブーなしに取り組もうというのですから、これはある面においては画期的なことであります。

 自公保連立という政権の枠組みに関する御質問がありました。
 私は、公明党、保守党の皆さんとのこれまでの信頼関係を大切にしていきたいと思います。その上で、小泉内閣の方針に賛成してくれる政党なり議員があったら遠慮なく御協力いただきたい、門戸を広く広げていきたい、そういう気持ちであります。

 私が具体的な政策を示していないので抵抗する勢力が特定できないのではないかとお尋ねがありました。
 まだ就任したばかりですよ、私は。これから具体的な政策を提示していかなきゃならない問題もたくさんあります。総理だからといって、独断、偏見は排しなきゃいかぬ。いろんな意見を聞いてこれから具体策をまとめていくんですから、そんなに焦らないで、もう少し時間をかけて見守っていただきたいと思います。

 総理大臣というのは、ある面においては多くの方の意見を幅広く取り入れなきゃいけないと思います。そして、方針を出すことが大事でありますし、現に首相公選制とか郵政民営化問題まで踏み込んで方針を明示したということ自体、かなり具体的な方針を私は取り入れていると思います。

 これからも、大事な問題については私一人で判断することなく、私自身の能力とか知識というのはごく狭く限られております。私よりももっといろんな能力のある方はたくさんいます。学識経験者もおられます。そういう方の意見を広く聞いて、国民から理解される、また協力されるような具体案を国民に提示していきたい。しばらく時間がかかることは、これはお許しをいただきたいと思います。

 事務次官会議等の廃止についてのお話でありますが、私は、事務次官会議廃止よりも、要は、総理大臣、内閣の方針にできるだけ協力体制、できるような姿勢が必要ではないか。事務次官会議を廃止しても、内閣が何もやらなかったら何にもならないんですから。これは、あるないに関係なく、内閣としての、総理としての指導力を発揮せよというお言葉、激励だと受けとめて、あるべき体制を考えていきたいと思っております。

 外交官の政治任用についてですが、これはもう適材適所の観点から今後とも積極的に検討していきたいと考えております。

 私の目指す改革が挫折した場合にどういう行動をとるかでありますが、まだ進めていないのに挫折したということは、これは早過ぎるんじゃないでしょうか。これからというときに、もう失敗したときどうかというのは、これは私も答えにくいですね。どうか、与党議員のみならず野党の議員の皆さんにおかれましても、私の改革に賛同する方は、政党にとらわれず積極的に御協力いただければ大変にありがたいと思っております。

 小泉政権の政策についてのお尋ねでありますが、はっきり言うべき問題とこれから多くの意見を聞いてまとめる問題と両方あります。これは、構造改革なくして景気回復なしという考えに基づきまして、私は今後もろもろの対策を講じていきたいと思います。

 そして、特に構造改革については、小泉内閣の第一の仕事として、森内閣のもとで取りまとめられた緊急経済対策を速やかに実行に移す。さらに、日本経済再生の処方せんは既にいろいろ示されております。この多くの処方せん、これをどれを選択し、どれを実行に移すか、まさに決断と実行にかかっておりますので、この今までのいろいろないい案を取捨選択し、日本経済再生のために必要な改革に向かって果敢に取り組んでいきたいと思います。

 株式買い取りスキームにつきましては、銀行の株式保有制限のあり方を踏まえ、金融システムの安定化と市場メカニズムとの調和を念頭に具体策を講じることとしまして、これからもしっかりとした検討を行っていくこととしております。

 本件に関しては多岐にわたる検討が必要であるため、今国会中の法整備について時間的に厳しい状況にあることは事実であります。いずれにしても、緊急経済対策にあるとおり、速やかに成案を得るため検討を進めていきたいと思います。

 財政構造改革に当たっては、まず来年度予算について、国債発行を三十兆円以下に抑制することを目標とします。そして、あらゆる歳出分野について聖域を設けることなく徹底した見直しに努めることによって、目標の実現に向けて全力を挙げていきたいと思います。その後、持続可能な財政バランスを実現するため本格的財政再建に取り組むが、その際には過去の借金の元利払い以外の歳出は新たな借金に頼らないことを目標としていきたいと思います。

 こうした財政構造改革の道筋については、経済財政諮問会議等の場で検討の上、できる限り早く国民に示していきたいと考えております。

 このような取り組みの際、歳出面にむだはないか等についての徹底的な見直しを行わないまま安易に増税に頼ることは考えておりません。まず、歳出の徹底した見直しを行う、これが必要であります。その上で、公的サービスの水準とそれを賄うに足る国民負担の水準はどうあるべきかについて、これはまた国民の広範な議論が必要であると考えております。

 また、十三年度の補正予算について御質問がありましたが、今、当初予算の執行に取りかかったばかりであります。この予算の円滑かつ着実な執行に努めることが今、私の内閣に課せられた責任であると考えております。

 財政構造改革については、しがらみの多い自民党の中にいて実現可能であると思っているかというんですが、実現したいと思っているから私言っているんですから、あらゆる抵抗を排して頑張っていきたいと思いますので、御協力をお願いしたいと思います。

 総理は一律削減でない財政再建を進めると言っているが、この財政構造改革の取り組みについてどうかという御質問でございます。
 私は、一律削減という方法よりも、必要な予算は当然ふやしていかなければならない。その際に、減らすべき予算というのはこれから、すぐは答えられないですよ、これから経済財政諮問会議等いろんな方の意見を聞いて、ふやすべき予算、減らすべき予算というのをやるのが政治家主導じゃないか。かつてのように、政治家はふやすことだけ、減らす方は役人にやらせようという態度はいかぬ。政治家自身も痛みを分かち合って、国民に説得と理解を求める努力をしなきゃいかぬ。これはきつい仕事でありますけれども、やっていかなきゃならないと思っております。

 特殊法人等への天下りですが、これは昨年十二月に閣議決定された行政改革大綱にのっとり、新たな時代にふさわしい行政組織・制度への転換を目指す観点から、その業務の廃止、整理縮小・合理化、民間、国その他の運営主体への移管等の改革を進めているところでありまして、今後、特殊法人等への再就職についても、国民が強い関心を持っていることは十分認識しておりまして、特殊法人等が中央省庁からの再就職の安易な受け皿とならないよう、その適正化について厳正に遵守していきたい、これからもこの特殊法人の改革等につきましては積極的に取り組んでいきたいと思います。

 現時点で処理すべき不良債権額についてですが、今回の緊急経済対策においては、主要行の破綻懸念先以下の債権約十三兆円、これが二年間で今後最終償却されることを目指すこととなっております。なお、今後、新規に発生する不良債権額については、経済環境や債務者の業況等により変動するものでありまして、定量的に推計することは困難であります。

 不良債権の処理方式に関してですが、不良債権は、景気の動向、債務者の業況等に応じ変動はあるものの、その新規発生が全くなくなるということはあり得ません。しかし、政府としては、不良債権の最終処理を促進することにより、不良債権残高の存在が日本経済の再生の障害となることのないようにしていきたいと考えております。

 不良債権の実態把握についてですが、貸出債権については、金融機関による自己査定、会計監査人による外部監査、さらに金融当局による厳正な検査・監督を通じて厳格な資産査定等が行われるよう努めております。なお、主要行等については、平成十年に集中検査を実施し、その後も、金融検査マニュアルに基づき二巡目の検査を実施しているところであります。

 債権放棄を安易に行うべきではないということですが、御指摘のとおり、安易な債権放棄により構造改革がおくれることがあってはならないというのは当然だと思います。今回の緊急経済対策では、企業の再編を伴う債権放棄を促進する施策が盛り込まれておりますが、これは、産業の再生と不良債権問題の解決を図ることによって構造改革を推進しようとするものであります。

 貸し渋りや倒産に苦しむ中小企業者が納得できる施策についてどうかということでございますが、不良債権処理に伴い、中小企業への悪影響が生じないよう最大限の努力が必要だと思います。政府系金融機関や信用保証協会等を通じ中小企業への円滑な資金供給を図るとともに、連鎖倒産の危機などが生じないよう、信用保証制度の特例、政府系金融機関の融資及び倒産防止共済といった、昨年末に拡充したセーフティーネット対策を適切に実施してまいります。

 また、経営革新に取り組もうとする中小企業の積極的な支援もあわせて実施し、現在の厳しい経営環境を前向きに克服していくことが可能となるよう努めてまいります。

 構造改革に伴う雇用に関する痛みの緩和策等、民主党の提言に対する見解についてですが、不良債権の最終処理等、構造改革に伴い厳しさの増す雇用情勢に的確に対応していくことは内外の重要な課題であると思いまして、その点につきましては民主党と考えが一緒の点も多々あると思います。

 このため、緊急経済対策においては、中高年の離職者を雇い入れた事業主に対する支援の拡充措置の延長など、雇用面のセーフティーネットを整備するための施策を盛り込み、その効果的実施に取り組んでいるところであります。

 また、民主党から御提言をいただきましたが、政府においても、雇用保険制度については、緊急経済対策として倒産、解雇等による離職者に対して手厚い給付日数を確保した改正雇用保険法の円滑な施行を図ることとしております。

 さらに、与党三党の連立政権合意にあるように、産業構造転換・雇用対策本部を速やかに改組・強化し、経済財政諮問会議に置かれた雇用拡大に関する専門調査会と連携を図るなど、民間有識者の御意見も伺いながら、早急に産業の構造改革と新規雇用の創出、能力開発支援等の対応策を検討してまいります。

 社会保障制度についてのお尋ねでありますが、今世紀に日本はいまだ迎えたことのない少子高齢社会を迎えます。これからは、今までのように給付を厚く負担は軽くというわけにはいきません。この世代間の給付と負担の均衡をどうやって図っていくか、お互いが支え合っていく、そして年金、医療、介護等の基本的な社会保障制度については、これからも持続可能な安心できる制度を再構築していかなければならないと考えております。

 三月末には、政府・与党社会保障改革協議会において改革の理念や基本的な考え方を明らかにする社会保障改革大綱を決定したところであり、今後、この大綱に基づき、国民に対して理解と協力を得ながら改革を進めていきたいと思います。

 基礎年金の国庫負担割合の引き上げについてであります。
 基礎年金については、昨年三月に成立した年金改正法において、当面平成十六年までの間に、安定した財源を確保し、給付水準及び財政方式を含めてそのあり方を幅広く検討し、国庫負担の割合の二分の一への引き上げを図るものとするとの附則が設けられております。この規定をどのように具体化していくかについて、安定した財源確保の具体的方策と一体として検討していきたいと思います。

 基礎年金の給付水準については、衣食住などの老後生活の基礎的消費支出を賄うという考え方に基づき、長期的に給付と負担の均衡をとった上で設定しているものであります。一方、今後の社会保障については、高齢者にも応分の負担を求めていくことが必要と考えておりますが、それは年金給付のみならず、資産や就労による収入なども含めた高齢者の負担能力に応じて公平に負担を分かち合うとの考え方であり、このことが直ちに基礎年金の水準の引き上げを伴うべきものとは考えておりません。

 介護保険の低所得者対策と四年後の制度見直しに向けた検討課題についてのお尋ねですが、介護保険制度におきましては、保険料や利用料について低所得の方に大きな負担とならないよう既にきめ細かな配慮を行っているところでございます。現場の方々の御尽力によりまして、これまで大きな混乱もなく実施されてきておりますが、施行後一年を迎えたばかりであります。四年後の制度見直しというよりも、まずは、引き続き国民の間に定着するよう、関係者の方々の声に十分に耳を傾けつつ、制度の周知や運用面での改善に最善を尽くしてまいりたいと思います。

 高齢者医療制度の枠組みですが、この必要な財源については、医療保険者や国、地方の財政状況、高齢者の経済的能力などを総合的に勘案し、公平で国民の納得が得られるような保険料、公費、患者負担の適切な組み合わせについて平成十四年度改革に向けて検討してまいります。

 医療制度改革への決意でございますが、平成十二年度においては、制度改革の一環として診療報酬や薬価制度の改革、月額上限つきの老人定率負担制の導入などを図ったところであります。しかしながら、主要な課題として高齢者医療制度の見直しが残されていることや、昨今の医療保険財政の厳しい状況などにかんがみ、平成十四年度にはさらに制度改革を行う必要がありまして、この改革を実現していかなきゃいかぬと思っております。

 高齢者医療制度の財源についてですが、現在、関係団体等からさまざまな提案が出されております。政府としては、こうした御提案を研究し、国民的な議論を促しながら検討を進めているところでありまして、具体的な財源やその割合などについて現在まだお答えできる段階ではございません。今後、これらの問題を含め、与党とも連携しながら精力的に検討を進めていきたいと思います。

 感染症対策、難病対策についてですが、感染症対策については、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律に基づき、感染症の予防、蔓延の防止等に万全を期してまいります。

 また、難病対策については、その発症原因の究明、治療法の開発に関する研究を進めるなど、難病の克服に向けて最大限努力をしていきたいと思います。

 少子化対策についてですが、保育所待機児童ゼロ作戦、この問題は、政府としては、新エンゼルプランに基づき、保育所における低年齢児の受け入れ拡大、さらに放課後児童クラブの拡充に取り組んでいるところであります。現在、男女共同参画会議の専門調査会において、保育所の入所待機の解消や必要な地域すべてにおける放課後児童の受け入れ体制の整備に向けた方策について御審議いただいておりまして、その議論を踏まえつつ具体化していきたいと考えております。

 幼稚園と保育所の一元化についてですが、政府としては、各地域の実情に応じた幼稚園と保育所の設置、運営が可能となるよう、施設の共用化、保育内容、教育内容の整合性の確保など、双方の連携強化を進めております。今後とも、子供や家庭の多様な御要望に的確にこたえられるよう努めてまいりたいと思います。

 教育改革についてでありますが、教育全般についてさまざまな問題が生じております今日、日本人としての誇りと自覚を持ち、新たなる国づくりを担う人材を育てるためには、知識に偏重した教育ではなく、バランスのとれた全人教育を推進するとともに、教育基本法の見直しなど、教育の根本にさかのぼった改革を進めていく必要があると考えております。このため、今国会において、学校がよくなる、教育が変わることを目指した教育改革関連法案の成立に全力を尽くすなど、教育改革を断行してまいりたいと思います。

 教育基本法の見直しについてですが、私としては、教育基本法の見直しについては、教育改革国民会議の最終報告を踏まえ、中央教育審議会等で幅広く国民的な議論を深め、しっかりと取り組んで成果を得てまいりたいと思います。

 教育基本法に対する認識についてのお尋ねでありますが、教育全般についてさまざまな問題が生じている今日、教育の根本にさかのぼった改革を進めていくためには、教育改革に向けたさまざまな取り組みと相まって、制定以来半世紀を経た教育基本法については今見直しについていろいろ議論が進んでおりますので、このような国民的な議論を見きわめながら、見直すべきは見直していく必要があると考えております。

 米百俵の明治初期の長岡の話をしているが、余りに唐突、意味不明であると思いますと。この御指摘は心外であります。残念であります。私は、あの米百俵の話、かなり前に聞いて感動しました。その感動を共有できないということはまことに残念であります。今の痛みに耐えてあすをよくしようとする、この精神こそどの時代においても私は必要な精神だと思います。こういう話を聞いて、唐突で意味不明であるという御理解をいただいたということは残念でありますが、よく読んでいただきまして、本当にこの米百俵の精神は、どの時代においても老若男女だれにも必要な精神ではないかということを御認識いただければありがたいと思っております。

 余計なことかもしれませんが、あの私の所信表明で、いろんな方から米百俵の話はいかなる教育論よりもよかったというお褒めの言葉をたくさんいただいているということをつけ加えさせていただきたいと思います。

 今後の米国との安全保障関係についてでありますが、政府としては、日米安保体制はアジア太平洋地域における安定と発展のための基本的な枠組みであると認識しており、今後とも日米安保体制がより有効に機能するよう努めてまいります。

 普天間飛行場の移設に関する使用期限の問題についてでありますが、政府としては、平成十一年末の閣議決定のとおり、国際情勢もあり、厳しい問題があるとの認識を有していますが、沖縄県知事及び名護市長から要請がなされたことを重く受けとめ、これを米国政府に対し取り上げてきたところであります。

 政府としては、平成十一年末の閣議決定に従い、国際情勢の変化に対応して、本代替施設を含め、在沖縄米軍の兵力構成等の軍事態勢につき米国政府と協議していく考えであり、あわせて国際情勢が肯定的に変化していくよう外交努力を積み重ねていきたいと思います。

 憲法九条の改正についてのお尋ねがありました。
 私は、憲法の基本理念の一つである平和主義は、民主主義及び基本的人権の尊重とともに、憲法が制定されてから今日に至るまでの間、一貫して国民から広く支持されてきたものであって、将来においてもこれを堅持するべきものと考えております。

 また、憲法全般については、私は、国民にとって最も大事なものでありますので、これが永久不変のものとは思っておりません。いろんな議論を聞き、現在衆参両院に憲法調査会が設置されておりますので、そのような委員会での議論を踏まえて、いずれ国民の理解を得た段階で、九条のみならず、いろいろな、憲法について改正した方がいいという議論が巻き起これば、当然改正すべき問題だと思いまして、予見なく、世論の成熟を見定めるなど、憲法が、変えてはならないというのではなくて、必要なところはいろんな意見を聞いて変えるべきという柔軟な態度をとりながら、改正する際には慎重な配慮を要するべき問題だと思っております。

 集団的自衛権の問題については、政府は、従来から、我が国が国際法上集団的自衛権を有していることは主権国家である以上当然であるが、憲法第九条のもとにおいて許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しており、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであって、憲法上許されないと考えてきております。

 憲法は我が国の法秩序の根幹であり、特に憲法第九条については、過去五十年余にわたる国会での議論の積み重ねがあるので、その解釈の変更については十分に慎重でなければならないと考えます。

 他方、憲法に関する問題について、世の中の変化も踏まえつつ、幅広い議論が行われることは重要であり、集団的自衛権の問題についてさまざまな角度から研究してもいいのではないかと私は考えております。

 有事法制についてですが、有事法制は国の危機管理の根幹にかかわる重要な課題であり、平時においてこそ非常時にどのような対処が可能かを考え、備えておく必要があるとの認識のもとに、昨年の与党の考え方を十分に受けとめ、内閣官房を中心に検討を進めることとしております。

 日中関係についてでありますが、李登輝氏の訪日は、前内閣のもとで、人道的観点等の要素を勘案しながら検討の上、我が国として自主的に判断を行ったものと承知しておりますが、この件を含め、現在、日中間に幾つかの問題が存在しているのは事実であります。良好な日中関係はアジア太平洋地域の平和と安定にとって極めて重要であり、今後とも、相互理解の増進等を通じ両国関係の改善に努めていきたいと思います。

 日韓関係の友好親善に関するお尋ねですが、日韓両国によるサッカーワールドカップ共催という重要な契機をとらえ、両国政府は二〇〇二年を日韓国民交流年とすることに合意しており、両国国民がより深くお互いを理解し合うべく、幅広い分野で多くの両国国民の参加を得て交流事業を推進することとしております。このような歴史的な事業を活用し、日韓の政府及び国民が手を携え、日韓友好親善関係をより一層発展させるべく努力していきたいと思います。

 北方領土問題についてですが、政府としては、北方四島の帰属の問題を解決することにより平和条約を締結するとの一貫した方針を堅持する考えでありまして、政府の方針が揺れ動いているとの御指摘は全く当たりません。

 なお、御指摘の二島先行返還という提案については、森内閣を含め、我が国としてロシア側に提示したことはありません。

 金正日氏の長男ではないかとされる人物が不法入国した件に関し、その対応についてのお尋ねがございました。
 今回の事案について、私としては、民主主義国家として、法令に基づいた処理を行うことが第一と考えるとともに、本件の処理が長引くならば、内外に予期しない混乱が生じるおそれもあります。そうした事態を避けるためにも、総合的判断を加えた上、法務省から報告のあった退去強制という処理方針を了承したものであり、今回の措置は適切なものだったと思います。

 今回の事案の処理とは別に、北朝鮮による拉致問題については、常に被害者の家族の方々の思いを体しつつ、解決に向けて粘り強く取り組んでまいります。

 日朝交渉についてのお尋ねですが、正常化交渉の次回会談については、昨年十月末、北京にて行われた会談において、同会談での協議を踏まえてさらによく検討を行い、双方の準備が整ったところで行うこととなっております。この交渉は大変難しい交渉であり、今後の帰趨は予断を許しませんが、政府としては、アメリカや韓国、両国とも緊密に連携しつつ、日朝双方の立場の隔たりを埋めるべく、粘り強く交渉に取り組んでいく考えです。また、このような日朝間の対話の中で、日朝間の諸懸案の解決に向け全力を傾けていきたいと思います。

 報償費についてでありますが、報償費は国政の円滑な遂行上必要不可欠なものであって、平成十三年度予算においても所要の額を計上したものであります。しかし、現在、報償費の適正な執行に対する国民の信頼が損なわれていることを重く受けとめ、報償費について、この際、抜本的に見直し、今年度の執行に当たっての方針を打ち出すことにより、新内閣としての姿勢を明らかにしたものであります。

 歴史教科書についてですが、韓国を含む近隣諸国等における議論については、これを真摯に受けとめており、また、今回の修正要求については、まずは文部科学省において、教科書検定制度にのっとり、専門的、学問的見地から十分精査を行っているところです。

 我が国の歴史に対する愛情を深め、国際協調の精神を養うように歴史教育を行うことや、近隣諸国との友好協力関係の発展に努めることはともに重要であり、この問題について円満に解決できるように知恵を絞ってまいりたいと思います。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。

■坂口厚生労働大臣の答弁

 私に対しましては三点の御質問がございました。
 勝木議員からの御質問でございますが、としてお答えする範囲のものではございません。また、私は党を代表してお答えをする立場にもないわけでございますが、せっかくの御質問でございますので、私の考え方を含めましてお答えを申し上げたいと存じます。

 まず、憲法九条の改正についての御質問がございました。
 小泉総理がこの改正をする御趣旨だという前提での御質問というふうに受け取っておりますが、小泉総理からこの内閣において憲法九条の改正を目指すというお話は伺っておりません。しかし、憲法をめぐる議論が、それがどの条項であれ、活発に議論されることは何ら制約されるものでありませんし、当然のことながら、九条の問題も大切な問題でありますから、大きな議論になるものと思います。現在はまだその論憲の範囲にあると認識をいたしております。

 私個人の意見を求められているのでありましたならば、憲法九条の崇高な精神は今後も限りなく尊重されなければならないと考える次第でございます。

 集団的自衛権につきましては、政府は、従来から、憲法九条のもとにおいて許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限の範囲にとどめるべきものであると解しておりまして、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであって、憲法上許されないと考えてきたところであります。私もこの考え方を支持するものでございます。

 ただし、先ほど総理からお話がございましたように、議論は当然活発に行われてしかるべきものと思います。

 有事法制についてでございますが、日米ガイドライン関連法案が審議されましたときに、日本に対しての武力行使が起こり、国民の生命、財産が直接に脅かされるという緊急事態が発生したときに、必要に応じて最小限の対応措置がとられなければならないとの指摘がなされました。それが自衛隊など関係各機関によって超法規的なものになってはならないのは当然でございます。私は、これを防衛出動に伴う緊急事態への対応措置として、あくまで憲法の範囲内という原則に基づいた何らかの法整備が必要であると考えているところでございます。
 以上三点、私の私見を申し述べさせていただきました。

■扇国土交通大臣の答弁

 勝木議員から、保守党党首として、憲法九条の改正、集団的自衛権、また有事法制についてという御質問をいただきました。

 憲法につきましては、保守党は、現行憲法が制定以来五十五年、現在におきましても、御存じのとおり、自衛隊、私学助成あるいは環境問題等々、現実と乖離しているという点が多々ございます。

 それを踏まえて現行憲法の、今、先ほど総理がお答えになりましたように、国民主権、恒久平和あるいは基本的人権などの普遍の原理を維持発展させる見地から、国民的な議論の中で、二十世紀の日本の歩みを振り返りつつ、新たな二十一世紀への日本の国づくりの根幹となる新しい憲法の制定を保守党としては主張しているところでございます。

 その中で、憲法九条の問題や集団的自衛権の問題も、これもタブー視することなく議論し、国のあり方の基本にかかわる問題として明快にしていくことこそが国会のあるべき姿であると考えております。

 また、国民の生命と財産を守るというのは国家の第一義的な役割であるのは御承知のとおりでございます。また、これが責任でございます。しかしながら、我が国においては、有事といった緊急事態に対する法整備がいまだ行われておりません。総理が言われるように、治において乱を忘れずであります。総理のこの方針に基づき、一日も早い有事法制の整備を期待しているところであります。


2001/05/10

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