2004年6月22日 目次      戻るホーム憲法目次

民主党憲法調査会「中間報告」 【第4小委員会:地方分権】


分権国家の創造をめざして

現行憲法は、政治的民主化の一環として地方自治について4か条の原則的規定を定めた。しかし、その後も戦前と同様の機関委任事務制度が長く続いたこと、自治体の組織・運営・財政の全般にわたって国の法律によるがんじがらめの統制が行われ、大半の地方自治体関係者もこれに甘んじてきたこと、中央政府が自らの事務や権限を一貫して肥大させ続けてきたことなどが、真の意味での地方自治の定着や自治の文化の形成を妨げてきた。画一的な行政や補助金漬けの公共事業・ハコモノ行政の結果、美しい自然や多様な地域文化は破壊され、疲弊しきった地方自治体に借金だけが残されたといっても過言ではない。いまこそ、「地域のことは地域で決める」「自分たちのことは自分たちで決める」という民主主義の原点に立ち返り、「分権国家」への転換を展望した新たな憲法提案を行う必要がある。

1.中央集権国家から分権国家へ転換する

「地域でできることは地域に委ねる」という「補完性の原理」に立脚し、住民に身近な行政は優先的に基礎自治体に配分する。都道府県を広域的に再編して道州を設け、司法・外交・出入国管理など文字通り国家主権に関わる行政を除く大半の広域的行政を道州に移管する。これらの行政権限配分を憲法上明確にする。

2.自治体の立法権限を強化する

これまでのような法律の範囲内での条例制定権限ではなく、地方自治体と中央政府の権限配分に対応し、地方自治体に専属的あるいは優先的な立法権限を憲法上保障する。中央政府は、地方自治体の専属的立法分野については立法権を持たず、地方自治体の優先的立法分野については大綱的な基準を定める立法のみ許されることとする。

3.住民自治に根ざす多様な自治体のあり方を認める

自治体の組織・運営のあり方は住民自身が決めることを原則とする。これまでの首長と議会の二元代表制だけでなく、「執行委員会制」や「支配人制」など多様な組織形態の採用、地域コミュニティ等を準地方自治体とする三層制の採用、住民発案案件を議会が否決した場合には住民投票により決着をつける「住民発案住民投票」制度の採用などをいずれも自治体に委ねる。

4.財政自治権・課税自主権・新たな財政調整制度を確立する

地方自治体が自らの事務・事業を適切に遂行できるよう、その課税自主権・財政自治権を憲法上保障し、必要な財源を自らの責任と判断で調達できるようにする。課税自主権は、各自治体が自らにふさわしいと考える税目・税率の決定権を含む。これらを補完するものとして、現在の地方交付税制度に代えて、新たな水平的財政調整制度を創設する。


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