江田五月のやさしい政治講座 3 1993/11/08

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政治改革はいよいよ正念場

 衆議院の政治改革特別委員会の審議もいよいよ大詰め。8日・9日に中央公聴会、10日・11日は地方公聴会。後はしめくくり総括質疑、委員会採決、本会議採決と続きますが、11月19日には細川総理がAPECで訪米、きわめて厳しいスケジュールとなりました。

 そこで修正問題ですが、連立与党は6項目、自民党は21項目をあげ、それぞれ代表者を出して話し合うことになりました。道は二つです。一つは修正して与野党合意の道。民主主義の土壌づくりだから望ましい形ですが、自民党と社会党にかなりの反対者が出ます。問題はそれで参議院も通せるかどうかです。(参議院は自民党と社会党の比率が高く、守旧派も多い)。もう一つは連立与党が結束して(微修正をして)、自民党から何人かの賛成者を獲得して政府案を通す道。この場合は衆・参で社会党から反対者を出さないことが前提となります(これも参議院が容易でない)。

 ゼネコン疑惑の進展などでなお政局の激動も予想されますが、海部内閣以来4年間、国会はこの問題をやってきました。もはや待ったなし。今度こそ決着を付けなければ政治を前へ進めることはできません。細川さんの決意は固く、私も同じです。全力を尽くします


海洋投棄全面禁止へ政策変更

 11月2日、私が委員長をしている原子力委員会は、今後わが国の低レベル放射性廃棄物について、「海洋投棄は選択肢としない」ことを決定しました。

 わが国はかつて1955年から69年にかけて医療用のアイソトープなどを海洋投棄したことはありましたが、その後は海洋投棄はしていません。しかしこれまでの方針では国際基準にのっとって行えば公衆の健康に特段の影響を与えるものではないということで、選択肢としては残してきました。1980年頃には南太平洋への海洋投棄を考えたこともあり、海洋投棄のロンドン条約の会議では投棄停止決議に反対や棄権の態度をとってきました。

 今回の原子力委員会の決定は、そのようなこれまでの方針を改めて、科学的見地としては従来の立場を維持するが、「地球環境問題への国際的関心やロシアによる海洋投棄の内外への影響を考えれば、日本の海洋投棄は政治的、社会的見地から極めて困難」と判断し、地中埋設の方法が順調に進んでいることも合わせて考えて、今後は海洋投棄の方法を選択肢としないことを正式に決定したものです。

 これは従来の基本政策の変更になり、近く行われるロンドン条約の締約国会議では全面禁止に賛成することになります。日本の決定の直後にアメリカ政府も全面禁止に賛成の方針を決め、ロンドン条約での低レベル放射性廃棄物全面禁止が実現する可能性が高まりました。条約の改正が実現すれば、国際社会にとって大きな前進になります。


政治 経済 永田町 の 今

細川さんと2時間話し合いました

 11月1日(月)夜7時過ぎから約2時間、首相公邸で食事をしながら細川さんと話し合いました。以前はもっとひんぱんにあっていましたが、連立政権発足以来は、8月30日(月)と今回で2度目です。

 細川さんの政治改革実現の決意はますます固く、私も同じ決意を述べました。私は細川内閣には歴史的使命があると思います。38年間の自民党長期一党支配の汚れ、澱みがたまりにたまっている。これをこの数年で一掃して、政治改革・行政改革・経済改革を初めとする構造改革を徹底して行う。これができれば日本は21世紀の新しい時代へ進むことができます。

 この歴史的使命にもとづいて、あらゆる課題に大胆に、勇気を持ってチャレンジし成果をあげていくことができれば、細川内閣はつづきます。もちろん連立与党がダイナミックに再編成されることは当然です。

不況対策の処方箋 その2

 「平成複合不況」の8つの不況の1つ「構造不況」こそが今回の不況の本質です。その処方箋は当然「構造改革」「リストラ・ジャパン」です。

 その第一は言うまでもなく規制緩和。10942件(平成4年3月現在)の規制をいかに減らすか。実はこの規制の詳細なリストがまだ公表されていません。これは総務庁行政管理局が持っている「許認可等現況表」という公文書ですが、まずこれを公表して規制の一つ一つについて国民的な議論を起こし、明らかに不合理なものから議員立法で改めていくことがよいやり方だと思います。

 実は私は今年の2月、商工委員としてやっとの思いで通産省の1915件の「許認可等現況表」を提出させたのですが、行政側の抵抗はたいへんなものでした。「構造改革」の処方箋はまだまだたくさんあるので、この項は次回につづきます。

「新党」あるいは「新・新党」について

 新しい選挙制度になれば社民連は発展的に解消する、シリウスの活動には終止符を打つ、と既に述べました。従って「新党」か「新・新党」をつくらなければなりません。

 次の選挙のたたかい方は55年体制(自民党と社会党)のこわれ方や「新党」や「新・新党」のつくり方のプロセスで、いろいろな形があると思いますが、質的には細川内閣の連立与党は保守(改革派)・リベラル・社民(市民)の三極大連立です。

 しかし55年体制のパートナーでもあった社会党はその歴史的使命は終わりました。「連合+市民」をベースに、平和・環境・人権・福祉・公正などを理念に掲げた新党(生活者新党・市民新党)あるいは「新・新党」をつくらなければなりません。横路北海道知事も同じ考えだと思います。ぜひ一緒にこの歴史的課題に取り組んでいきたいと思います。

楢崎弥之助さんが勲一等旭日大授賞

 楢崎弥之助さん御本人から勲一等旭日大授賞の話を聞いてちょっと驚きました。これも政権交代の一つの現れでしょう。事実、楢崎さんはこれまで勲章は受け取らないと辞退を重ねてきたのですが(国会議員25年の表彰は受けた)、今回は支持者のみなさんの熱心なお薦めと、長年の念願であった政権交代が実現して連立与党の一員となったことが勲章を受ける気持ちになった理由であると御本人が言われていました。

 楢崎さんと言えば、政府追及一本で30年間通した人ですが、特にリクルート事件の告発は今回の政権交代の最初のきっかけを作ったもので特筆に値すると思います。

 御本人は今回の授賞で“上がり”になる気は全くなく、「新党」あるいは「新・新党」の坂本龍馬たらんとして大張り切りです(ちなみに社民連の議員は全員坂本龍馬志望です)。


科学技術庁情報

原子力白書について

 11月9日の閣議に報告される予定の原子力白書は「核燃料リサイクル」をテーマとしたもので、作成作業は既に今年の6月頃(私が科技庁長官に就任するかなり前)から着手されていました。それでも私の名前で公表されるものですから、素案の段階から目を通して20項目くらいについて意見を述べました。

 その結果、「核燃料リサイクル」と「核燃料サイクル」の定義をはっきりさせること、また「より厳重な安全確保」「情報公開」「各界の意見に耳を傾けた原子力開発利用長期計画の改訂」などの方向をかなりはっきりさせることができたのではないかと思います。

 この後さらに、「科学技術白書」「原子力安全白書」などが年内に公表される予定ですが、それらについてもできる限り目を通して、意見を述べていきたいと思います。

ロシア核廃棄物問題異聞

 今回のロシアの海洋投棄問題が与えた影響の中に思わぬ展開をしたものが一つありました。それは私とロシアのミハイロフ原子力大臣との会談の後、ミハイロフ大臣が日本の原発はもっと大量の放射性物質を海洋投棄していると言った、と韓国で大きく報道され、韓国のマスコミが一斉に日本を非難したことです。

 事実は日本の原発はもちろん海洋投棄などは一切しておらず、国際基準のもとでの排水で世界のどの原発からも出しているもの(もちろん韓国の原発も)で、ロシアの海洋投棄とは全く次元の異なるもので、韓国のマスコミの誤解です。

 一時は細川総理の訪韓に悪影響を与えないためにも、何らかの方法で誤解を解くことを考えたのですが、私の別の場所での記者会見の内容が正しく伝えられたということで、その必要はなくなったようです。まさに情報化社会です。


やさしい政治講座 1993/11/08

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