江田五月のやさしい政治講座 1 1993/10/01

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細川連立内閣誕生 科学技術庁長官になりました

 8月9日、細川内閣が誕生、私は科学技術庁長官に任命されました。渡辺省一前長官との事務引継の時、私が「はからずも…」とご挨拶したら、渡辺さんに「はかったんでしょう」といわれましたが、決してそんなことはありません。細川内閣は8党派の連立政権ですから、政策の合意を作るのがなかなか大変です。なかでも原子力政策は難問です。私はずっと政権交代の必要性を訴えて、いわば政権交代の旗振り役と下働きをつとめてきたわけですから、細川さんからこの難しい原子力政策を担当する科学技術庁長官として、連立政権のまとめ役をやって欲しいという事で任命されたと理解しています。

 細川内閣がスタートして50日たちました。これから2週間ごとにこの「江田五月のやさしい政治講座」で細川内閣は何をしようとしているのか、日本の政治はどのように変化していくのか、世界の中で日本はどうすればよいのかなどについて皆さんに情報提供したいと思います。皆さんの方からご質問があれば、何でもお答えしますので(政治に関することなら)気軽に質問してください


連立政権は前政権の基本政策を継承します

 細川連立政権は「国の基本政策について、これまでの政策を継承しつつ」「自由民主党政権の下ではなしえなかった抜本的な政治改革を実現する」(7月29日「連立政権樹立に関する合意事項」)ことが任務の政権ですが、政治改革だけの政権というわけではありません。当面する不況対策、経済改革、税制改革、行政改革、ガット・ウルグアイラウンドの成功、日米包括経済協議と、まさに課題山積みです。

 私の担当する原子力政策では「徹底した安全管理の下におけるエネルギーの安定的確保に責任を果たす」「原子力発電については安全性を確保するとともに、新エネルギーの開発に努める」ことが連立の合意です。この上にたって、私は8月26日の衆議院本会議での代表質問にたいする答弁で、総発電電力量の3割弱を担う原子力発電は不可欠であり、原子力発電を長期にわたる安定したエネルギー供給源とするためには、我が国の場合は核燃料サイクルに取り組むことが必要で、プルトニウム利用を含む核燃料サイクルの推進が継承した政策であることを明確にしました。その上で情報公開、長期計画の見直しなどいろいろあるわけですが、それらは次回にします。


政治 経済 永田町 の 今

政治改革のポイント

 9月17日に召集され、12月15日までの90日間の会期(延長の可能性あり)の第128臨時国会の焦点はやはり政治改革4法案でしょう。

 衆議院の選挙制度を小選挙区比例代表並立制(小選挙区250、比例区250、2票制)にする公職選挙法改正案、(選挙違反の罰則強化、戸別訪問解禁も)、選挙区の区割りのための衆議院議員選挙区確定審議会設置法案、政治資金の透明化と腐敗防止のための政治資金規正法改正案、政党に対して国民一人当たり335円、総額414億円(年間)の公費助成をする政党助成法。これらの法案は不十分な点もあり、各政党と各議員の間に様々な利害や意見の違いがあってなかなか容易ではありませんが、80%以上の可能性で私は成立すると思います。

不況対策のポイント

 現在の不況はこれまでとは全く違うもので成長型経済の大きな転換期だと思います。円高・ゼロ成長を前提とした経済・社会の構造改革が必要で、リストラ・ジャパンの時代の到来です。今回の不況はいわば「平成型不況」で、循環不況、資産不況(金融不況)、消費不況、政策不況、マインド不況、構造不況、円高不況、世界同時不況が重なり合ったもので、それぞれに処方箋が必要です。

 より本質的には日本がゼロ・サム社会になったという事で、例え円高・ゼロ成長であっても生活の質を向上させ、企業は収益を上げられるように、経済、社会の構造改革をしていかなければならない、ということだと思います。この視点で、次回からは処方箋の提案をしましょう。

政界再編、社民連はどうなるか

 新しい選挙制度になると必ず大きな政党再編成が起きますが、社民連という政党は何らかの形で発展的に解消することになると思います。新しい選挙制度では3%阻止条項というものがあって、比例代表選挙の得票率が3%以上ないと議席が得られず、政治資金の政党助成も受けられません。昨年の参議院比例代表選挙で社民連は1.49%の得票率でしたから、社民連でたたかっても難しいということになります。それに連立政権8党派が3つから4つの政党に集約されていくのが自然な方向でしょう。

 従って社民連は発展的に解消して、何らかの形で「新党」あるいは「新・新党」をめざすことになると思います。とりあえずは「連立与党」ですが、ダイナミックな展開も大いにあり得るので注目してください。

ウィーンのIAEAで演説

 9月27日、ウィーンのIAEA(国際原子力機関)の年次総会で政府代表演説を英語で行いました。内容は、政権交代後の連立政権は原子力政策を継承していること、日本の原子力政策は平和利用に徹すること、核不拡散条約(NPT)の無期限延長を支持すること、核兵器廃絶、核軍縮、核実験禁止を強く求めること、高速増殖炉「もんじゅ」を国際共同研究のために解放すること、プルトニウムの国際管理の新提案、などです。

 プルトニウムの国際管理構想は、同じ日(数時間後)に行われたクリントン大統領の国連総会演説と対応したもので、今後日本とアメリカで協議していくことになりました。演説原稿は私自身の手も相当入って、かなり“江田カラー”も出せたのではないかと思っています。


科学技術庁情報

科学技術庁ってどんなところ?

 科学技術庁(略して科技庁)は昭和31年創設。長官官房の他に、科学技術政策局、科学技術振興局、研究開発極、原子力局、原子力安全局の5局があって、研究施設なども含めて職員数は2121人、年間予算は5800億円です。さらに日本原子力研究所(原研)、動力炉・核燃料開発事業団(動燃)、宇宙開発事業団、海洋科学技術センター、理化学研究所(理研)などの特殊法人等に7500人で、かなりの大所帯です。「科学技術に関する基本的な政策の企画、立案、推進、並びに関係行政機関の科学技術に関する施策の総合調整を行うとともに、原子力・宇宙・海洋開発をはじめとする大規模プロジェクトの推進、地球科学技術、防災科学技術、ライフサイエンスなど、様々な先端科学技術分野の研究開発を推進する」ところです。

長官就任50日でやったこと

 科学技術庁はたいへんな専門家の集団ですから、まず「所管事項説明」をはじめとする猛勉強をやりました(数十時間に及ぶ)。科技庁関連施設の視察は、つくば研究学園都市の7研究施設を8月18日、茨城県東海村などの原子力関連施設を9月1・2日、千葉市の放射線医学研究所(重粒子線がん治療センターなど)を9月13日、青森県六ヶ所村などの核燃料サイクル施設(原子力船むつ等)を9月15・16日など。勉強の成果は8月26日の衆議院本会議答弁、9月27日のIAEA総会での政府代表演説に出ていると思います。反原発団体の方々とも6回合いました。インタビューは50回くらい。あんまり科学技術庁長官を真面目にやりすぎて、「政治」をちゃんとやってほしいと注文を付けられているところです。


やさしい政治講座 1993/10/01

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