2000年1月16日 戻る目次

「新しい政府」を実現するために/PART V


すべての個人個人が自立し共生し合う日本をつくる


友愛時代のコミュニティのあり方

Point-1 「自立の責任」と「共生の友愛」が豊かな社会を展開する
Point-2 モラル・ハザードを食い止める最大の力は国民の共生意識
Point-3 NPOの活動が拡がれば拡がるほど、いい社会が来る
Point-4 女性が不利を負う時代は終わらせなければならない
Point-5 すべての人が差別されることなく生きる時代を

1.安心できる福祉社会が切望されています。

 民主党は、日本がいま直面している最も大きな問題の一つに「社会の基盤」の崩壊があると考えています。子育て、教育、社会的ルールを守ること、自己責任の意識、犯罪に対する見方、問題を共同で解決しようとする姿勢、それらのすべてにモラル・ハザードが生じて、社会の基盤が大きく損なわれようとしています。この基盤が崩れるならば、どのような改革も、国民生活に根ざしたものとはなりません。政治にいま求められているのは、社会の基盤を確実なものとするために、国民と共に必要な改革にチャレンジし、人々が互いに助け合い支え合う社会を創り出すという大事業、すなわち「社会の再生」への挑戦であると考えています。

 成熟した今日の社会では、まず、国民一人ひとりの個人の自立が尊重されなければなりません。しかし、それと同時に、すべての人々の自立を支える社会がそこにしっかりと築かれていることが不可欠です。まさに、自立と共生が社会の基本原理となって作用する、そんなバランスのとれた社会へと再生していく仕事があります。この仕事を通じて、民主党は、国民一人ひとりが参画する社会、共に支え合う友愛社会の構築に全力を挙げていきます。


2.男女が共同して参画する平等社会を実現します。

 多様なライフスタイルを望む人々が増えているにもかかわらず、依然として意識の面でも実態の面でも、企業中心・男性中心型システムが続いています。自立した人で構成される「共生社会」を構築するためにも、男女共同参画社会への転換を急がなければなりません。女性と男性が共に、社会的・文化的に形成された性差(ジェンダー)に縛られず、個人として自らの意思と責任に基づいて政治、経済、社会のあらゆる分野の活動に参加し、方針や政策を決定する男女共同参画社会を民主党は実現します。

  1. 社会経済活動における均等な機会と待遇を保障するために

     男女の均等な機会・待遇を確保し、男女の家庭生活と職業生活の両立を支援していきます。性別ではなく、個人の能力による、募集・採用、配置・昇進などのシステムを構築するとともに、子育て・介護などの社会サービスを充実させます。
    女性の起業家を増やすために、政府系金融機関の貸付制度、信用・債務保証制度などについて、女性を対象とした特別制度の創設や窓口開設などを進めます。

  2. 男女共同参画の視点に立った税制、社会保障制度にするために

     男女共同参画社会をめざすという視点から、税制が女性の就業の妨げとならないよう、また、家庭で出産・育児などの役割を負っている人々も「自立した納税者」としての責任と権利を持ち社会に参画することができるよう、配偶者控除、特別配偶者控除の見直しを進めます。そして、個人単位の税制へと移行し、これに代えて、「子育て支援手当」など各種給付制度の充実をはかります。また、年金の第三号被保険者の問題については、基礎年金を税でまかなうことによって解消していきます。

  3. 平等の観点に立った法律とするために

     多様な価値観と選択肢を認めるため、選択的夫婦別姓制度を導入します。子どもの権利条約、人権規約など国際条約に鑑み、非嫡出子の相続差別をなくします。

  4. 生涯を通じて、女性の健康と権利を守るために

     「刑法」の堕胎罪と「母体保護法」を廃止し、「性と生殖に関する女性の健康/権利」を守る法律を制定します。これによって、妊娠、出産などの選択の自由など、性と生殖に関する女性の自己決定の尊重、女性に固有の身体的機能の保護など、生涯を通じた女性の健康支援のための施策を充実させます。

  5. 女性に対する暴力等をなくすために

     家庭内暴力やセクシャル・ハラスメントを含む女性に対する暴力の禁止は、人権の確立に欠かせません。このために必要な法整備を進めるとともに、性差が暴力を生まない社会づくりをめざします。

  6. 女性が政策決定に参画できるようにするために

     あらゆる分野における政策決定や方針策定への女性の参画を促進するため、国・地方公共団体の審議会等の女性委員の比率を高めていきます。このため、クォーター制度を含むアファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)を講じ、その実現に取り組みます。


3.NPO活動を積極的に支援していきます。

 政府や企業が主導している社会システムを、二十一世紀に対応できる新しいシステムに変革し、経済社会を活性化するためには、NPOを第三のセクターとして認知し、社会システムの中に明確に位置づけていくことが必要です。NPO活動を支援し、市民の手による多元的な社会を実現するため、税制上の優遇措置、規制緩和、NPO教育の推進、労働市場の整備などを積極的に進めていきます。
 また、近年に急速に普及したインターネットが、個人の自立と自発性を基調とした多様なネットワーク活動を活性化している現状を踏まえ、NPOと政府、NPOと企業の間の開かれた情報交流・相互協力を積極的に支援していきます。

  1. NPOの活動を支援するために

     (a)NPOサポート施設などを拡充する

     地方自治体のNPOサポート施設などの整備を拡充します。また、民間によるNPO支援団体設立の動きを支援するために、自治体レベルでのNPO支援条例の制定を推進します。

     (b)NPOに対して金銭的な支援を行う

     市民や団体(政府)からの出資による「NPOファンド」を設置し、NPOベンチャーキャピタルとしての役割を持たせます。NPOが公団住宅、公営住宅をインキュベーター施設(新たなNPO組織を孵化させる装置)として手軽に利用できるように、一定の条件を満たしたNPOに対する家賃軽減制度を創設します。財団法人ベンチャーエンタープライズセンターをNPOにも活用できるようにするため、関連予算を増額するなど支援策を強化します。
     また、制度融資や信用保証、中小企業事業団の「創業助成金交付事業」「ベンチャー支援助成」、通産省の「シニアベンチャー支援事業」など、中小企業向け支援施策をNPOにも適用します。

     (c)NPOへの寄付金に対して控除制度を設ける

     個人(企業)が一定の要件を満たすNPO法人に対して寄付や対価性のない会費を提供した場合には、その寄付金を所得から控除する制度を設けます。この場合、行政による恣意的なNPOの選別となることを防ぐため、控除の要件は、NPOの規模ごとに、寄付金収入の総収入に占める比率、寄付者の広範性、特定寄付者の寄付金全体に占める割合など、客観的基準を設け、行政による認定行為を設けないものとします。また、NPO間の寄付についても、税制面の配慮を行います。

     (d)NPO事業をバックアップする

     NPO事業の創造のために規制緩和や制度改革を進めます。特に、福祉サービス、移送サービスなど、従来ボランティア団体が実施している事業について、NPO法人に対する参入規制は廃止します。また、NPO法人が参加可能なものや事業化が成功できると考えられる事業分野においては、行政機関によるNPOへの事業委託を優先して推進します。

  2. NPOに関する興味・関心を高めるために

     初等教育から大学・大学院教育に至るまで、NPOに関する教育を推進します。初等中等教育においては、ボランティア精神や自発性、創造性を重視した教育を実施するとともに、非営利事業やNPOの仕組みや社会的意義について教える機会を設けます。また、NPOでの実習を教育に取り込み、単位認定の仕組みや、受入れ体制の整備に関する支援などを行います。


4.人権を確立し、差別のない社会を実現します。

 部落差別やアイヌなどの少数民族の問題、朝鮮学校等の資格問題や在日外国人への差別、あるいは精神障害者の処遇問題など、わが国には根強い差別が残存しています。憲法や国連の人権に関する諸条約の規定に基づいて、性別、社会的身分・門地、人種・民族・国籍、年齢、障害などによるあらゆる差別の解消をめざします。差別禁止、被害救済など、人権保障のための法制度や施策の改革に取り組むとともに教育啓発を行います。
 国際人権規約B規約選択議定書など、未批准の人権条約の批准を推進していきます。また、残された第二次世界大戦の戦後補償問題に対して、早急な解決を求める法的措置を推進します。

  1. 人権教育を推進するために

     いじめや差別をなくすために、市民やNPOが進めている「人権教育のための国連10年」などの活動と協力し、国や自治体などでの人権教育・人権啓発に関する取り組みを進めます。子どもの人権確立の観点から、児童虐待の問題に対して議員立法の提出を含め積極的に取り組み、いじめに悩む子どもの救済機関として、児童相談所を改組し、「子どもオンブズパーソン」を創設します。

  2. 差別・虐待・暴力を受けている人を救うために

     様々な差別事件や、女性・子どもへの性的虐待・暴力などに対して、被害者の避難や救済を行うシェルターやオンブズパーソンなどを充実するとともに、問題解決にあたる人材を育成します。また、家庭内暴力根絶のための新たな法整備を含めた政策を積極的に推進します。

  3. 同和政策を推進するために

     差別意識の解消のため、「人権教育のための国連10年」の活動に基づき、積極的な人権教育・人権啓発活動を進めていきます。部落差別に対して、迅速かつ有効な対応がはかられるよう、現行の人権擁護制度を抜本的に見直し、基本法制定など二十一世紀にふさわしい人権救済制度の確立をめざします。また、公共の施設など、誰もが利用しやすい場所に、人権相談の窓口を設置するとともに、相談に応じる職員の対応能力の向上をはかります。

  4. アイヌ民族文化の保存と伝承のために

     いま、アイヌの人たちの人権や生活の保障とともに、アイヌ伝統文化の保存が大きな課題となっています。現行の「アイヌ文化振興法(アイヌ文化に関する振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律)」に基づく文化保存と普及の事業に加え、アイヌの人々の生活改善と伝統文化の保存・伝承が一体となったモデル空間の整備を進めて、文化が生きる環境の再生につとめます。

  5. 国際的な人権確立と民主化推進のために

     未批准の国際人権規約の批准を促進するとともに、国際的な人権の確立に向けた政策課題を「人権イニシアティブ」としてまとめて、国際会議などを通じて国際社会に提案していきます。アジア地域をはじめとする民主化の進展に積極的に貢献する立場から、選挙監視などの国際支援活動への参加、人権確立運動の支援、NPO交流などを積極的に推進します。
     また、既に超党派による議員立法で提出した第二次大戦中の歴史的事実の真相究明を行う「恒久平和調査局設置法案」の成立に向けて取り組み、アジア諸国の人権被害の実態調査を進めます。

  6. 国内の人権擁護機関をより充実させるために

     日本の人権保障の中心機構である人権擁護機関は、行政からの独立性がなく、人権擁護委員制度は、民間のボランティアに支えられているうえ名誉職的色彩が強く、複雑化・巧妙化する現代の人権侵犯に適切に対処することが困難となっています。このため、人権侵害事件の調査・救済、立法・政策に関する提言力、人権教育の普及といった機能を備えた独立性の高い新たな国内人権機関を設立します。

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