2001年3月23日 戻るホーム民主党文書目次

第19回参議院議員通常選挙政策

『すべての人に公正であるために』
7つの改革・21の重点政策

民主党ネクスト・キャビネット

― 民主党は実現します ―

いよいよ21世紀を迎えました。20世紀は戦争と対立の世紀と言われましたが、この新しい21世紀こそ市民が平和に暮らし、自立と共生、ゆとりと豊かさの中で人々の個性と活力が生かされる社会を築き上げる、「創造の世紀」とすることが人類共通の課題ではないでしょうか。

そのためにも、私たちは自分たちの世代、親たちの世代、子どもたちの世代、祖父母や孫たちの世代の営みを確かなものとし、「戦後」に終止符を打ち、日本という国のかたちを正しい姿へと変えていかなくてはなりません。

民主党は、自民党的政治が約50年かけてたい積させた、中央集権、利権構造というよどみを解消し、透明・公平・公正なルールにもとづき、「市民・市場・地方」の三つの視点に根ざした新しい政策路線の確立をめざします。

民主党は、21世紀において、国民と共に、「国民主権・基本的人権の尊重・平和主義」という憲法の基本精神をさらに具現化し、発展させることをめざします。

私たちは、2001年に実施される第19回参議院議員通常選挙において、国民とともに自民党政治の終焉と新しい政治の創造をめざし、参議院における自民党を中心とした政治勢力を過半数割れに追い込み、衆議院の早期解散・総選挙実施の中で政権を国民の手に取り戻します。

民主党がめざすもの、それは自立と共生にもとづく、市民が主役の社会です。“すべての人に公正であるために”47都道府県それぞれの地域から発議し、参議院で与野党逆転を実現させ、そして政府を代えましょう。


― 目  次 ―


民主党は提案します。――日本を変える7本の柱

- 第1の柱―分権改革
- 第2の柱―公共事業改革
- 第3の柱―社会保障改革
- 第4の柱―雇用環境改革
- 第5の柱―学校改革
- 第6の柱―財政構造改革
- 第7の柱―IT革命

民主党と市民の共同事業――21の重点政策 (78KB)



民主党は提案します。――日本を変える7本の柱

私たちは、20世紀後半に積みかさねた「豊かさ」の一方で、漠然とした、しかし、強烈な「不安」の中に生きています。21世紀を「創造の世紀」とするためには、この「不安」を解消することが不可欠です。

「不安」の第1は、老後の不安です。年金・医療・介護という老後を支える三本柱が、不十分なだけでなく、少子高齢社会の到来で、その根本が揺らいでいます。

第2の「不安」は財政です。国と地方を合わせて七百兆円にも達しようという財政赤字は、いずれ、私たち納税者の負担として跳ね返ってきます。老後の不安も、高齢社会を支えるべき国家財政が破綻するのではないか、という財政の不安によって、ますます高まることになります。

第3の「不安」は経済・雇用です。バブル崩壊から10年。国家財政を破綻の縁に追いやりながら、「過去最大」の景気対策を繰り返しても、経済は立ち直りません。もはや、失業・倒産は、一部の人の問題ではなく、すべての国民を不安にさせています。

経済の不安も、その根本原因は、老後と財政にあります。老後を国に頼ることができない。将来の増税がちらついている。だからこそ、国民の財布の紐が固く締まり、個人消費を冷え込ませ、それが雇用不安を深刻化させているのです。経済・雇用の不安を解消するためには、老後の不安と財政の不安を小さくする以外にありません。

私たちは、こうした不安を解消するために、7つの提案をします。所得保障への不安でもある老後と雇用の2つの不安に対して一対一体の政策としてすすめるべき「社会保障改革」と「雇用環境改革」。財政を立て直すための中心となるべき「公共事業改革」とトータルな「財政構造改革」。こうした不安の払拭をめざすとともに、経済の未来を切り拓く「IT革命」と未来を担う子どもたちを育てる「学校改革」の推進。これらの改革をすすめていくために不可欠な手段であり、新しい国の形を創造するための「分権改革」です。

これらの改革は、それぞれ独立したものではありません。全体が相互に補完しあって、老後、財政、経済・雇用の不安を解消し、未来への希望を創り出すものです。
私たちは、一日も早く民主党を基軸とした政権をつくり、7つの提案を実現に移すことを、すべての国民に約束します。


第1の柱―分権改革

地域のエネルギーを再興します。

 ゆきすぎた中央集権体制は、全国のあらゆる自治体に画一的行政を強い、地域の自主性を奪ってきました。中央政府が権限と財源の多くを握りしめているために、地方は中央からコントロールされ、地域が本来もっているエネルギーを枯渇させてきました。

 民主党は、もう一度地域のエネルギーを再興するために、権限と財源を地方へ移譲し、自治体と地域に根ざして生活している住民が、権限と責任をもち、自ら決定できるよう大胆な地方分権をすすめます。住民に身近なサービスは基本的に全て市町村が行い、現在の都道府県では対応できない課題については、都道府県を道州として広域的な行政主体に再編成します。中央政府は、外交・防衛・通貨制度など、国家として共通性が求められる役割のみを担うこととし、地域のニーズと時代の変化に対応できるスリムな組織に転換します。

 ただし、現行制度から道州制へのいきなりの転換は現実的ではなく無理も生じます。そこで民主党は以下に掲げる段階を踏みながら、その実現を着実に図ります。


  1. 補助金は「一括交付金」に改革します。
     〜地域のことは、地域で決める〜


     先ず、第1段階として、現行の都道府県・市町村の二層制の自治制度を前提として、国と地方の役割分担を見直します。この見直しに伴って、本来は国ではなく地方で担うべき事業に対して支出されている補助金の大部分については、使途の限定されない「一括交付金」に改革します。例えば、1号線から58号線以外の国道、農業農村整備事業、都市計画事業、さらには義務教育費、福祉関係費などに関する補助金・負担金などは、省庁の枠を超えて一括化し、自治体に交付します。
     この改革により、今までのように細かく制限・限定されていた縦割りの事業ではなく、自治体が必要な事業を効率的かつ的確に行うことができるようになります。


  2. 所得税の一定割合を地域の税源へ移します。
     〜地域のことは、地域で責任をもつ〜


     次に、第2段階として、所得税の一定割合を、住民が暮らしている自治体の自主税源へと移譲し、自治体の判断で必要な事業を選択できる前提となる財源確保が行えるように改革します。
     現在、国と地方の仕事量は、おおよそ1:2となっていますが、税収の比率はおおよそ2:1と逆転しています。この税源移譲により、税収比率を1:1とし地方の自主税源を増やすとともに、このことにより、住民が暮らしている自治体から受けるサービスと、自治体へ支払う税負担の関係を明確にします。
     自治体間の財政調整制度は、税源移譲による不交付団体(交付税の交付を受けないで済む団体)の増加を前提に、規模を縮小します。さらに現在の複雑な地方交付税制度を簡素・透明を基本として、自治体の自助努力を反映できるシステムに改めた上で、真に支援の必要な自治体に限り、適切な財政調整を継続します。そして最終的には「一括交付金」を含めた新たな財政調整制度を創設します。


  3. 市町村合併、コミュニティ創生を行います。
     〜地域の力を強くする〜


     第1段階、第2段階の改革を行うことと並行して、市町村合併とコミュニティー創生のための施策をすすめます。補助金を一括交付金化し、国から地方へ税源を移譲することにより、基礎自治体である市町村の役割は今よりさらに重要なものとなり、それに見あった規模や態勢が必要となります。市町村合併を強制するのではなく、適切な情報公開のもと、住民自ら自治体の規模を判断し、決定できるような仕組みを住民と共に創り出していきます。民主党が法案を提出している住民投票制度もその一つの有効な手段として積極的に活用していきます。
     しかし、市町村合併だけでは、地域に暮らす住民にとって本当の分権とは言えません。身近な行政については、さらに住民の意見を反映できるよう住民参加を促進するとともに、地域コミュニティーを創生し、地域のさまざまな課題に対して、行政とコミュニティーが協力しながら解決を図れるようにします。


  4. 将来的に道州制を導入します。
     〜分権連邦型国家へ「国のかたち」を変える〜


     以上の改革を行った後、第3段階として道州制の導入を行い、国のかたちを分権連邦型国家へと変えます。道州制の導入については、先ずその段階で改めて国と地方の役割分担を見直します。例えば、原則として全ての公共事業は地方の事業に移管します。各都道府県では対応できない問題については、一定ブロックごとに都府県知事、都府県議会議員からなる委員会を構成し、都道府県の枠を越えた広域的な政策策定・調整を行います。これに伴い、税財源の配分を共同税などの導入も含めて、抜本的に改革します。以上のような過程を経た後、道州制を導入し最終的には道州内の有権者が、道州議会の議員や道州の知事を直接選挙で選出し、それぞれの道州を運営していくことをめざします。
     コミュニティーの集合体として身近な行政サービスを行う市町村、市町村では対応することができない広域的な政策策定・調整を行う道州、外交など国家としての統一的事項を担う中央政府、それぞれの役割を責任をもって果たす国のかたちに大きく転換します。



第2の柱―公共事業改革

国民の税金を食いものにする公共事業の癒着構造にメスを入れます。

 国民生活の利便性向上や国際競争力ある産業構造の構築のために、社会インフラの整備は今後も欠かすことはできません。しかし現在の公共事業には費用対効果分析の視点や他の予算とのバランスが著しく欠如しています。景気対策という美名の下で高コスト体質、利権体質、談合体質が温存され、ムダなものも多く、莫大な財政赤字の温床となっています。民主党は、抜本的な公共事業改革を断行することによって、国民にとって本当に必要なインフラ整備を効果的に行い、削減分を財政再建や社会保障の充実、雇用対策などに充当して財政構造改革を推進します。


  1. 5年で3割の公共事業費を削減します。 
     〜量的削減こそが公共事業改革の第1歩〜


     日本の公共投資額は対GDP比で約6%なのに対し、他の先進国はほぼ2〜4%の水準です。しかも日本の公共投資額は社会保障費(公費負担分)の約2倍ですが、他の先進国では社会保障費の約半分にすぎません。また、日本の公共事業は談合などによる高コスト体質で、ムダも多く、景気対策という名目で常に“アクセル全開”の状態です。
     民主党は、談合体質を根絶させることによるコスト削減、二重投資や無駄な公共事業のカット、PFI(民間資金活用)の積極的な導入などによって、必要な社会インフラ整備の量を維持しつつ、5年で3割の公共事業費を削減します。


  2. 民間の資金と知恵でインフラ整備を進めます。
    〜PFI(民間資金活用)を大胆に推進〜


     公共施設の建設・運営を民間にまかせることで、民間資金やノウハウを活用し、財政に負担をかけることなく良質なサービスを供給するPFI制度を積極的に活用します。また地方自治体におけるPFIの積極活用を促進するため、国によるモデル事業の展開や、ガイドラインの確立、PFI推進の数値目標を定めます。さらにPFI促進を阻害する法律・政省令・条例等の改正をすすめます。
     PFIが増えることで、公共事業費削減のデフレ効果が減殺されることになります。


  3. 公共事業中止による混乱をなくします。
     〜中止後の法的アフターケアシステムを確立〜


     ダムなどの大規模公共事業を中止した場合、当該地域には大きな影響を与えます。その悪影響を排除するため、住民の生活対策のインフラ整備の継続や個別世帯に対する補償など、当該自治体や関係住民に対するアフターケアシステムを法的に整備します。
     また、公共事業削減に伴う雇用不安に対処するため、職業教育・職業訓練など技能向上のための助成措置や、産業構造改革による新規雇用の創出、農業振興策の拡充による農家担い手対策などを推進します。


  4. コンクリートダムから緑のダムへ。
     〜計画中・建設中のダムを一旦すべて凍結、見直し〜


     森林のもつ保水機能や土砂流出防止機能に着目し、森林の再生、つまり緑のダム化を進めることによって、コンクリートのダムにできる限り頼らない治水対策を確立します。そのため、現在計画中または建設中のダムについては、これを一旦すべて凍結し、2年以内をメドにその必要性の再検討をすみやかに行います。
     また林業従事者への直接払い政策(デカップリング)を導入することで、現在荒廃状態にある人工林の間伐・植林を積極的に推進し、中山間地域における新たな雇用を創出します。切り出された間伐材は、建材としての活用や木質バイオマス発電への利用などに用い、有効活用を図ります。


  5. 地域で必要な公共事業は、地域が決める仕組みに改めます。
     〜国の関与を大幅に限定〜


     現在は、地域の個別の公共事業計画にまで、国が金を出す代わりに口まで出します。中央官庁にとって都合の良い事業の実施、国へのおつきあいだけで自治体は財源がなくなり、単独でやりたい事業の多くは手つかずのままです。民主党は、公共事業にかかる補助金を一本化するとともに、他の分野も含め使途に制限のない「一括交付金」の形で自治体に交付します。これにより国が口をはさまず、地域が主体的に公共事業を推し進めることのできる環境をつくります。国が直接的に行う公共事業は、例えば国道1〜58号線の整備、複数の府県をまたがる河川、主要な空港・港湾、森林整備などに限定し、それ以外は地方に任せます。したがって、国の出先機関である国土交通省の地方支分部局を廃止します。さらに将来はすべて地方が行うように変えていきます。箇所付けや優先順位も自治体が独自に決めることができるようになるとともに、住民投票などを通じて住民の意向が反映されやすい仕組みを整備します。


  6. 道路特定財源制度など公共事業関連税制を抜本的に見直します。
     〜公共事業の縦割り固定予算を廃止〜


     現在、公共事業の予算面での裏づけは、分野ごとに分けられた16本の中長期計画で担保されています。つまり道路・空港・河川・公園・下水道・治山・住宅などの計画が別々にあり、予算もそれぞれに存在しています。したがって鉄道や道路、空港整備を交通体系の見地から総合的に考えたり、治山・治水を一体とみなして事業を行う視点が全く欠落していますし、行政は予算を使い切ることしか頭にありません。
     このような弊害をなくすため、計画ごとの予算枠をなくし、公共事業全体でひとつの予算として、異なる役所によって行われる二重投資をなくし、かつ総合的な見地に立った公共事業の執行体制を確立します。当然、道路特定財源制度など公共事業関連税制のあり方について抜本的に見直します。


  7. 農業再生のための事業に大転換します。
     〜政官業の癒着構造を打ち破る〜


     多くの農家のみなさんが減反に苦しむ中、新たに農地を造成しようとする「土地改良事業」など農業土木の多くは、時代に逆行した無駄な事業と言わざるをえません。このように農業関係には無駄や非効率が目立ちます。その理由は、農業関係の公共事業の目的が農業の再生にあるのではなく、関係業者や官僚が天下りした公益法人を救うことにあり、さらには自民党の選挙基盤であるこの組織を維持することにあるからです。
     民主党は公共事業そのものの改革と同時に、官僚の天下り、公益法人制度などを抜本的に改めます。そして、農業関係の公共事業を、税金を使った自民党の選挙維持システムから真剣に農業に取り組む人にとって本当に役に立つものへと変えていきます。

  8. 野放図な公共事業の拡大を阻止します。
     〜建設国債を廃止〜


     国の借金である「国債」の発行は、財政法の規定によって原則的に禁止されていますが、公共事業の財源調達については「建設国債」が認められています。これは公共インフラについては将来世代にわたる財産であることから、それにかかる借金については長期間かけて返済するのも理にかなうという考え方にもとづいています。しかし現在では、財政法では認められていない「赤字国債」が特別立法によって毎年発行され、建設国債とあわせて膨大な借金となってしまいました。
     すでに今日においては、公共事業のためだからといって国債の発行が特別扱いで許される状況にはありません。財政法の改正により建設国債と赤字国債の区分を撤廃し、野放図な公共事業の拡大をくい止めます。


  9. 談合・ペーパーカンパニーを根絶します。
     〜入札・資格審査制度を抜本的見直し〜


     公共事業の高コスト体制を是正するためには、頻発する談合や贈収賄事件を根絶するための入札制度改革を行う必要があります。独占禁止法改正によって課徴金を大幅に増額し、刑法改正によって違反業者に対する罰則を強化し、さらには入札参加停止期間の大幅延長などの罰則強化によって談合の根絶をめざします。
     また談合の温床となっている指名競争入札を例外なく廃止し、すべての公共工事において一般競争入札を導入するため、地方自治法や会計法の改正を行います。また入札価格の事前公表の義務付け、ペーパーカンパニーの根絶をめざした経営事項審査の抜本見直し、天下りの制限と官製談合の防止など、入札にかかる根本的な見直しを断行します。



第3の柱―社会保障改革

年金を充実して、医療・介護をみんなで分かち合う社会保障制度をつくります。

 年金・医療・介護など社会保障に対する不安は、将来不安の中心であり政治不信の大きな原因です。21世紀の少子高齢社会に対応できる社会保障制度を確立するには、若年世代を中心に渦巻く年金不信を払拭することが最優先です。
 民主党は、年金や生活保護その他の低所得者対策などの所得保障を国の責任でしっかり行います。その上で、医療は都道府県、介護等は市町村と、より身近な地域に分権化し、保険料・一部自己負担などは国民みんなで分かち合う総合的な社会保障制度を確立します。


  1. 基礎年金の税方式化を進めます。
     〜最低限の年金は、国の責任で〜


     現在、基礎年金の財源は2/3が保険料、残り1/3が国庫負担(税)となっていますが、2004年までの間に保険料を税に切り替え「全額税方式」に移行します。これにより、逆進性の強い国民年金の定額保険料(月額13,300円)は不要となり、「年金空洞化」が解消されて順次すべての国民に現行水準(月額67,017円)の年金が保障されます。また、被用者年金では厚生年金保険料が17.35%(労使折半)から約4%の引き下げになります。
     保険料に代わる財源については、行財政改革の進展を踏まえつつ、いくつかの試算を策定して国民的議論をすすめることとします。
     また、全額税方式に移行する以前であっても、公共事業費などムダな歳出削減により、国庫負担を1/3から1/2への引き上げに取り組みます。
     なお、無年金障害者の問題は、基礎年金の税方式化が成熟すれば解消しますが、それまでの対策として福祉的措置を講じます。


  2. 厚生年金支給水準を維持します。
     〜勤労者の年金支給額を確保〜


     勤労者の厚生年金は、基礎年金と合算して現役時代の月収の6割程度という現行の水準を守ります。基礎年金の税方式化に加え、高齢在職者の年金額の調整、モデル年金をもらうための拠出期間の延長、年金積立金の活用などの工夫によって、保険料率を現在以上に引き上げることなく支給水準を維持します。また、支給開始年齢のさらなる延長は行いません。
     3階部分の企業年金については、受給権保護のための方策を講じます。


  3. 「3時間待ちの3分間診療」を解消します。
     〜効率的な医療と質の高い医療を両立〜


     医療提供機関を、その役割に応じて、「病院」「専門医」「家庭医」の3つに明確に区分し直します。「家庭医」は、内科、外科、小児科など幅広い研修にもとづき、普通の軽い疾病に対応するとともに、必要な場合には病院や専門医を紹介する窓口となります。
     「病院」「専門医」は、重度・高度の医療提供を重点とします。現在の日本の病院は、病床数が人口比で欧米の2倍に達しているにもかかわらず、入院患者1人当りの職員数は半分以下となっており、このことも起因して平均入院日数は倍以上というのが実態です。こうしたヒューマンパワーの不足が看護職員などの過重労働を生み、医療事故多発の一因にもなっています。質の高い医療を可能にするために、病院の設置基準と診療報酬を大幅に改訂し、病床あたりの医師・看護婦等の数を現在の倍以上にすることで治療効果を飛躍的に向上させ、病床数や平均入院日数を半減させます。
     こうした医療体制の整備により、まずは待たずに診察を受けられる身近な「家庭医」に相談し、必要があると診断された場合には「病院」「専門医」の高度な治療を受けるという仕組みが明確になり、患者にとって便利であるだけでなく、ムダな医療コストを省き、医療費の増大に歯止めをかけることが可能になります。
     また、併せて無医地区の解消や救急医療体制等の整備を進め、国民が安心と信頼を持てる医療制度への抜本改革を推進します。


  4. 老人医療に、ムダづかいチェック体制を組み込みます。
     〜高齢者医療制度を改善〜


     現在の「老人保健制度」は、全国一本で、チェックのためのシステムも競争も存在しないため、薬漬け・検査漬けに加えて、「社会的入院」の温床となっています。そこで現行制度を廃止し、それぞれの現役時代に加入していた保険制度でOB・OGの老後の医療を支える制度に改めます。その際、各保険者によって、加入者の年齢構成が違うなどの不公平が生じないよう、これを調整するシステムを設けます。
     また、高齢者にも保険料負担と利用時の定率1割負担を求めることで、コスト意識に基づく患者本人によるチェックも促します。この場合、現在の生活保護制度のほかに医療費補助制度や貸付制度を新設することで、低所得者に配慮します。
     以上の制度改革に取り組むと同時に、健康相談や健康教育、健康診査など疾病予防・健康づくりもあわせて進め、高齢者医療の効率的な運営につなげます。
     患者・家族のニーズに応えることを可能にする介護基盤の充実を前提として、高コストの老人病員は介護施設に転換を促し、「社会的入院」をゼロにします。


  5. 薬漬け・検査漬けを防ぎ、財政破綻を防ぎます。
     〜医療における保険者機能を強化〜


     医療保険の財政が破綻に瀕しているのは、高齢化の進展だけではなく、医療費の水増請求や薬漬け・検査漬けをチェックできていないことも原因となっています。本来、こうしたチェックは、健康保険組合や、国民健康保険を所管する市町村など保険者の役割ですが、現実にはそのための体制も、また必要な権限も不十分です。
     そこで、現行の診療報酬体系の改革と併せて、診療報酬請求の内容をチェックしやすいように、コンピューター化を義務付けるとともに、患者・被保険者の立場から医療機関の評価や情報開示を行うことや、診療明細領収書の発行を医療機関に働きかけることなど、保険者としての機能を強化します。さらに当面、高齢者医療を現役時代の医療保険に継続して加入する仕組みに改めた上で、中長期的には、小さすぎる国民健康保険については合併で、全国一本の政府管掌健康保険については分割で、いずれも都道府県を単位に再編し、組合健康保険は適正規模への統合・再編をすすめ、保険者としての役割をきちんと果たせるようにします。各保険加入者の年齢構成などの違いによる財政格差について制度間の財政調整を検討します。
     また、カルテの開示や、診療費明細書の発行義務化などを盛り込んだ「患者の権利法」を制定して、十分な説明と患者自身の納得に基づいた医療を確立し、患者自身によるチェックと医療機関の選択を可能にします。


  6. 介護基盤の整備を最優先で進めます。
     〜より良い介護保険制度の確立〜


     介護保険は導入されましたが、その基盤整備が不十分なままではさまざまな矛盾が噴出します。財政の厳しい状況ではあっても、介護サービスの充実は地域に雇用を生み、地域の活性化を実現する効果をもたらします。また、介護基盤の整備は土木型公共事業に比べて約2倍の経済・雇用効果が期待できるとの指摘もあります。
     こうした前提に立って、民主党は、財政支出の中で、介護基盤整備を最優先ですすめます。とくに、在宅介護を推進するため、ホームヘルパーやケアマネージャーの増員や質の改善、グループホームや宅老所の増設などを速やかに行います。
     また、要介護認定の正確化や家事援助と身体介護の区分見直し、低所得高齢者に対する支援措置、ホームヘルパーやケアマネージャーの待遇改善、苦情処理の円滑化、オンブズパーソンの設置など、現場で明らかになった問題点に速やかに対応する体制を整備します。


第4の柱―雇用環境改革

雇用の安定、創出を図るとともに、働き方のルールを確立します。

 雇用不安の解消は、経済はもとより、社会の安定にとって基盤となるものです。そのためには、政府が構造改革政策の推進と同時に雇用安定に対しても積極的な役割を果たすことが求められており、将来に対して安心感がもてる経済と雇用環境をつくるべきです。 民主党は、経済と財政の抜本的構造改革を推進するとともに、積極的な労働市場政策を打ち出し、雇用不安解消・失業率引き下げをめざして、積極的な雇用創出を図ります。併せて、ワーキングルールの構築をすすめるとともに、雇用の流動化に対応した労働者保護法制を整備し、セーフティーネットの確立をすすめます。
 また、ILO(国際労働機関)の「雇用及び職業についての差別待遇に関する条約」(第111号)をはじめ、国際労働基準にかかわる諸条約の批准を実現するとともに、国内の労働基準・労働法制対策を推進し、21世紀にふさわしい雇用環境の整備につとめます。


  1. 分権・バリアフリー・環境など積極的に新雇用分野を創出します。
     〜構造改革の推進による雇用創出・安定〜


     地方分権の推進により、地域のニーズにあった事業の実施とそれに伴う新たな雇用を創り出します。バリアフリーの推進により障害者や高齢者の社会進出の拡充と同時に、官民ともに新たな労働市場の形成を育成支援します。IT革命の推進や環境リサイクル促進、緑のダム構想におけるデカップリング政策などによる新たな雇用分野の創造を誘導します。


  2. ワークシェアリングをすすめます。
      〜ゆとり労働と労働の多様化による仕事の創出〜


     仕事と家庭の両立支援による男女共同参画の推進、労働時間の短縮、多様な雇用・労働形態の推進にもとづき、ワークシェアリング(仕事の分かち合い)とゆとり労働の実現をめざし、失業抑制を積極的にすすめます。


  3. 若者の雇用を確保します。
     〜きめ細かい就業支援〜


     失業率が深刻で、しかも定着率の悪い若年層を中心に、学校での職業訓練を積極的に支援します。職業紹介事業の規制緩和と官民の協力を通じ、事業者のニーズにあった職業教育・職業訓練による技能と能力の向上、インターン制度の導入、時間をかけたカウンセリング、きめ細かい情報提供などを積極的にすすめます。


  4. 中高年差別禁止と能力開発をすすめます
     〜公正な労働市場の確立と在職職業訓練〜


     「募集・採用等雇用における年齢差別禁止法案」を提案し、特に中高年の再就職希望者に大きく立ちはだかる年齢を理由とする画一的な対応をなくし、公正な労働市場の確立に努めます。また、在職中からの自発的な職業能力の向上をバックアップするための訓練、失業者が保有する職業能力をアップさせるための訓練など、はば広い職業訓練の拡充を図るとともに、そうした職業訓練と紹介等が一体となった地域サービスの創出を検討します。さらに、IT分野など最新の専門性の高い職業能力を身につけるため、民間活力を最大限活用する「能力開発バウチャー制」の導入などを図ります。


  5. 公正・安心なセーフティネットを構築します。
     〜雇用対策法の強化など労働法制の充実〜


     不合理な解雇の禁止等を図る視点から「整理解雇四原則」(人員削減の必要性・人員削減の手段としての整理解雇(指名解雇)を選択することの必要性・被解雇者選定の妥当性・手続の妥当性)の法制化検討をすすめるとともに、離職予定者数事前届出要件の強化や再就職支援の義務づけなど雇用対策法の改正作業を行い、事業主にも安易な解雇抑制を要請、誘導するとともに、離職を余儀なくされた場合の再就職支援などを強化します。



第5の柱―学校改革

どの子にも、人生のチャンスを広げる教育を確立します。

 学校現場では学級崩壊、不登校、いじめ、学力低下などの深刻な問題を抱え、苦悩しています。その原因の一つとして、社会が急激に変化し、家庭や地域そして社会そのものが教育力を失ったこと、そして中央集権的、画一的な教育の限界があげられます。子ども達一人ひとりを大切にする柔軟できめ細かな教育が必要とされています。
 また高等教育では、世界的水準からの遅れが指摘され、学力低下は小中学校から大学に至るまで問題視されています。「学びの場」の空洞化は深刻であり、現行の教育制度では対処できないところまで来ています。
 民主党は、子どもたちが人間として自立し、他者と共存できる知恵を養い、感受性や創造性豊かな人材として育つ「学びの場」を再生します。
 まず、教育は国が行うものという受身の意識を改革し、家庭、地域に教育を取り戻します。そのために、保護者と教職員が地域において互いに協力し、その創意を生かして学校現場を自主的に改善・改革、運用できる仕組みをつくり出します。
 緊急の課題であるいじめ、学級崩壊等の問題に当面対応するために、少人数学級の実現、体験学習を促進します。
 高等教育においては、改革をうながすために国立・私立間の公平な競争をさせ、民間のインセンティブが大いに活かされる仕組みへと転換します。また、希望者には誰にでも何度でも学べる機会を提供します。



  1. 権限を地方自治体と学校に移行します。
     〜文部科学省の一部を廃止〜


     文部科学省のうち教育に関わる部局を廃止し、これに代わって独立行政委員会としての「中央教育委員会(仮称)」を設置します。国=「中央教育委員会」の役割は、各年齢段階の最低基準・基本方針を定めることに限定し、その他の権限は最終的に地方自治体が行使できるものとします。

     全国統一の必須科目を限定し、それ以外は、地域ごと学校ごとに、独自の授業内容を選択できるようにすることで、特色ある学校づくりを可能とします。一方で、必要最小限の基礎知識・基礎能力については、年齢段階ごとに到達目標を定め、標準学力認定を設けることによって、最低限の教育水準を維持します。


  2. コミュニティースクールを設置します。
     〜地域や保護者が主体的に教育に参画できる機会を保障〜


     従来の公立学校に加えて、「コミュニティスクール」という地域のニーズにもとづいて運営される、新しいタイプの学校が設置できるように法律を整備します。「コミュニティスクール」は、現在の小・中学生を対象とする学校で、各自治体が市民から公募した校長のイニシアティブの下に、保護者や地域住民の意思を取り入れながら運営されます。

     「コミュニティスクール」の設置を可能にすることにより、地域や保護者が主体的に教育に参画できる機会を保障し、学校選択の幅を広げるとともに、公教育全般の活性化を図ります。


  3. 体験学習を推進します。
     〜ふれあいを重ねて共生と自律の息吹を〜


     子どもたちの自律性を引き出しながら、命をいつくしむ心、他者や自然と共生する知恵を養なう機会をつくるため、体験学習を推進します。共同生活、職業体験、異年齢間交流、都市と農山村地域の交流、国際交流、自然体験、農業体験、社会奉仕体験など、子ども達が自ら考えたプログラムを尊重しつつ、教職員、保護者、地域住民や児童生徒で構成する「学校運営協議会」がサポートするかたちで体験学習を実行します。
     主体性・自律性を重んじ、国の強制による「奉仕の義務化」とはまったく逆の発想による学習方式を導入します。


  4. 少人数学級を実現します。
     〜分かる授業、行きたい学校を実現〜


     学校の第一の本分は基礎学力の定着です。民主党は、「30人学級法案」を提出するなど、一貫して小人数学級の実現を目指してきましたが、学力低下や不登校に対応するには、なにより分かる授業を実現することが先決です。少人数学級を原則とし、一人ひとりの子どもに目がとどく教育をめざします。
     各科目や学年、理解度に応じて少人数制をはじめ色々なクラスを提供し、「分かるまで教える」ことが可能な授業を実現します。こうしたクラス運営、授業方法、教員の配置などについては、「学校運営協議会」が主体になることで、保護者・児童生徒・地域の声が反映され、「行きたい学校」の実現を可能にします。
     また、子ども達にとってよき教師を確保するため、教員養成の段階で心の問題、学級崩壊を防ぐ具体的な方法等の科目をさらに重視し、クラス運営、教授法など実証的な研究を推進します。子ども達の悩みや苦しみに的確に対応しきれない教師に対しては、そうした研究の成果にもとづく研修プログラムを含めた支援態勢を用意し、教師が疎外され苦悩の中で切り捨てられることなく、子どもたちの悩みと苦しみに的確に対応できるシステムをつくります。


  5. 国立大学のあり方を見なおします。
     〜国立大学を改革〜


     21世紀に相応しい国際的な競争力のある高等教育へ改革します。そのために、当面国立大学の抜本的改革のための条件を整備します。
     国立大学への手厚い保護が国立・私立間の公平な競争を阻害し、非効率的な経営をもたらしています。そこで、現在の国立大学は将来、地方立(公設民営など)や私立大学に移行することも視野に入れ抜本的に見直します。
     大学教育に対する国の支援は、原則として民間のインセンティブが働きにくい基礎研究などを行う少数の大学院大学に限定します。研究開発のうち、短期的な市場価値は低いものの、学術的に必要な研究については、学校への支援ではなく、個別の研究プロジェクトに対する補助システムを導入して、その水準を確保します。


  6. 希望者全員が受けられる奨学金制度を実現します。
     〜誰でも、いつでも、どこでも学べる高等教育〜


     大学生・大学院生に対する奨学金制度を大幅に改め、希望する人なら、誰でも、いつでも利用できるようにします。学費のみならず、最低限の生活費も貸与することで、いったん社会人となった人でも、また、親の支援を一切受けなくても、意欲があれば学ぶことができるシステムをつくります。
     新奨学金制度の普及にあわせて、大学・大学院そのものへの助成は、順次縮減します。この結果、表面的には学費が高くなりますが、奨学金の充実で資力がないために進学できない事態を阻止します。税金と親の負担で学ぶ大学から、意欲を持った者が、みずからの将来の負担で学ぶ大学へと意識改革を促し、真に学問の府へと改革します。



第6の柱―財政構造改革

「安心の社会」と「活力ある経済」を創造するための「強い財政」を構築します。

 財政破綻は、社会的弱者に最も大きな影響を与え、さらに経済状況を悪化させ、国民生活そのものを破綻させます。このような事態を回避し、必要な人に必要なサービスを継続的に提供する「安心の社会」と「活力ある経済」を構築することが、民主党の改革政策の基本理念です。
 その上で、「橋本改革」(橋本内閣ですすめられた財政改革)のような一律的な削減ではなく、「官から民へ」「国から地方へ」を実現する構造改革を進める中で、歳出の効率化を大胆に行うことを基本原則としています。また現在の行政の「単年度使い切り主義」「省庁の縦割り」等の構造が歳出を肥大させる圧力になっています。そこでこの行政のあり方を見直し、外部委託、民営化、PFI(民間資金活用)等を導入し、また支出の節約を評価する制度を創設し、行政の仕組みの中に効率を高めるシステムを埋め込みます。
 我が国の財政状況は極めて危険な状態にありますが、既得権益に縛られ、税金を自らの選挙対策に使う現在の与党は、改革の先送りを繰り返すばかりです。この最大の被害者は国民です。民主党は、財政を持続可能な状態に回復させるために、政権をとったその日から財政構造改革に全力で取り組みます。



  1. 5年後に基礎的収支の均衡を実現します。
    〜歳出の見直しを徹底〜


     財政構造改革は、その取り組みが遅れるほど実現を困難にします。そこで民主党は、経済状況を勘案しながら、取り組み開始から原則5年後に基礎的収支(プライマリー・バランス=公債費を除いた歳出と、公債発行による収入を除いた歳入についての財政収支)の均衡を達成することを目標とし、そのために以下のような見直しを行います。但し「安心の社会」「活力ある経済」の創造のために必要な政策分野については、重点化をすすめます。また収入確保策として、国有財産売却、公営競技収入の配分の再検討などをすすめます。

    • 不要不急な事業の中止を含めた見直し、入札制度改革等によるコスト削減の実現により、5年間で公共事業関係経費を3割削減します。特にダム事業・農業関係公共事業については、全面的な見直しを行います。

    • 天下りの温床となっている特殊法人のあり方を、廃止・民営化を含めて根本的に見直し、これらに対する出資金、補助金等を削減します。また、公益法人についても同様の見直しを行います。

    • 年金については基礎年金に対する国庫負担割合を高める一方で、歳入庁構想の検討等をすすめ、間接経費の削減を実現します。

    • 医療保険、介護保険については提供するサービスを充実させる一方で、間接経費の削減、健康促進策拡充による高齢者医療費の抑制、在宅介護拡充による負担軽減等をすすめます。また国立病院は政策医療を担う一部の病院を除き、原則民営化します。

    • 地方への税源移譲、「一括交付金」の創設、地方交付税制度の見直しにより、自治体財政の自立性を高めます。また地方自治体の行政改革を支援することによって、国の財政負担を軽減します。

    • 我が国を取り巻く状況の変化に対応する中で、自衛官定数や正面装備の見直しに積極的に取り組みます。

    • ODAならびに各種拠出金、分担金のむだを省き、ハードからソフトへの転換をすすめる中で、総額を削減します。

    • 複雑で非効率となっている中小企業支援策を、中小零細企業者が使いやすく簡素なものへと改め、予算の効率執行をすすめます。

    • エネルギー安全保障を確保しつつ、原油の自主開発、備蓄等のエネルギー政策について見直し、資金の有効活用をすすめます。

    • 教育の分権化に伴う財源の地方移譲により、義務教育費国庫負担制度、国立学校のあり方の見直しをすすめます。

    • 農業関係の歳出構造を見直し、環境保全や所得政策に政策の重点をシフトします。

    • 地方分権や行政の効率化、民営化の推進などにより、国家公務員定数の削減をすすめ、行政経費を大幅に削減します。


  2. 行政に民間の手法を導入します。
    〜行政経費の効率化を推進〜


     対前年度増分主義、縦割り主義等によって行政経費を常に硬直化・肥大化させる現在の行政のあり方を根本から見直し、民間企業のノウハウを可能な限り行政に取り入れる「ニュー・パブリック・マネージメント(公共部門の効率化や透明性の向上のために導入される民間企業的な新しい行政管理手法)」を大胆に導入します。これはイギリスなどで成功した行政改革の手法で、具体的には現在の行政を民営化、外部委託、PFI等の形で民間に開放することです。こうして行政経費の効率化を常に模索するシステムを組み入れます。さらに地方分権の推進等、行政の構造そのものを改革することで財政状況の改善を実現します。


  3. 会計制度の透明化・簡素化を推進します。
    〜国民が直接財政状況を監視できる環境を実現〜


     財政構造改革を実現するには、国民の理解と協力が不可欠です。そこであまりにも複雑で、普通の市民には理解不能となっている現在の会計制度を抜本的に改めます。具体的には以下の施策に取り組みます。

    • 国のバランスシートを、特殊法人等の周辺部分を含めて、わかりやすく、継続的に公開します。

    • 「財政透明化法」を制定し、国民にわかりやすい形で、財政の情報公開をすすめます。

    • 国の財政をわかりにくくしている特別会計制度等の抜本的な改革をすすめます。

    • 「縦割り」「建設国債と赤字国債の区分」等弊害の目立つ会計制度を改めます。

    • 実効ある「政策評価制度」を義務づけます。

    • 国会に「行政監視院(日本版GAO)」を設置します。

     以上のような改革を通じて、国の会計制度の透明性を高めることによって、国民が直接財政状況を監視できる環境を整えます。


  4. 安易な補正予算を禁止します。
    〜緊急の事態に限定〜


     政府与党は、景気対策と称して毎年のように安易に補正予算を編成してきました。しかしこの補正予算は財政危機を深刻化するばかりで、一向に景気浮揚効果は見えてきません。民主党は法律の定める原則に戻り、大規模自然災害、金融危機等国家的な必要性のない限り、補正予算を編成しないことを原則とします。また財政構造改革は、景気に対して柔軟な姿勢で実施していきますが、経済対策は主として規制緩和等の制度改革で対応し、公共事業バラマキは行いません。
     現在の政府与党の中には、自分たちが財政状況を悪化させた責任を忘れ、インフレや日銀の国債引き受けによって、財政を維持しようとする主張があります。しかし、これらは国民生活を直接破滅させるものであり、民主党はこのような選択は行いません。


  5. 透明で公平な税制を確立します。
    〜まずは信頼の再生から〜


     収入の確保について最も重要なのは、国の最大の収入源である税制に対して、国民の信用を高めることです。そのためにはまず消費税に代表される税の滞納に対する強力な防止策を講じます。また消費税については、簡易課税制度や免税点の見直し、インボイスの導入等の制度改革を通じて、信頼性を高めていきます。さらに「納税者番号制度」の導入等による総合課税化を進めることによって、透明で公平な税制を確立していきます。

    〜国有財産も有効活用〜

     巨額な借金残高による金利や償還の負担を軽減するために、国の持っているNTT株や民営化する特殊法人の株、遊休土地等を売却し、また情報化社会の到来によって価値の高まってきた周波数割当の入札実施等を行うなど積極的な収入確保策を推進します。



第7の柱―IT革命

IT革命を地方分権、行政改革、教育改革につなげ、全ての人のための情報福祉社会をつくります

 世界最高水準の低廉・高速インターネット社会をめざします。
 民主党は、インターネットをはじめとするIT(情報通信)革命が、官主導から民主導へ、中央政府中心から地方政府中心へと社会を転換し、人間の生き方、生活のあり方を根本から変えるものと位置づけます。
 ブロードバンド(通信の高速・広帯域化)革命、知的財産権革命、リテラシー(情報読解力)革命と一体となったIT革命をすすめ、行政改革、教育改革などの構造改革につなげていきます。そのため、最優先事項として、通信分野における競争を促進し、2003年までに世界最高水準の低廉・高速インターネットをめざします。
 さらに、パート雇用やSOHO(在宅勤務を含めた小規模オフィスでの勤務形態など脱組織型の就労形態)が法制面で不当に差別されることがないよう、民主党が政府の「IT基本法」に盛り込ませた雇用流動化への対応策の具体化を急ぎ、雇用対策、情報格差(デジタルディバイド)解消策、ネット犯罪・トラブル対策についても万全を期していきます。


  1. 1ヵ所で住民が行政サービスを受けられる仕組みをつくります。
    〜ITによる行政の効率化・透明化〜


     IT革命が国民生活向上につながるよう、従来の役所・税務署・病院・図書館・警察署(自動車運転免許更新業務)などの住民に直接かかわる行政サービス業務に関して、ITを活用して1ヵ所で、必要な全てのサービスが受けられるワンストップサービス等で、住民が最小限の行政コストで最速・最大限の行政サービスを受けられるような社会の建設を進めます。そのため、「行政サービス電子化法」を制定し、行政サービスをネット上で提供することを義務付けます。また、あらゆる行政情報をネット上で判り易く公開することを義務付ける「電子情報公開法」を制定し、各事業における入札の実態や公共事業の箇所付けなどを国民の前に明らかにし、真の民主主義確立の前提としての情報開示をすすめます。
     さらに図書館等だれもが気軽に立ち寄れる地域の情報拠点を多数整備するなどして、地方自治体の電子化に対する住民ニーズへの対応力を高めていきます。


  2. 誰にもチャンスが保障される人間中心の雇用環境を創ります。
    〜IT社会に対応した基本技能の修得支援、SOHOやテレワークを推進〜


     労働基本法制の改正を2001年中に実現し、雇用の流動化と就労形態の変化に対応する基本的な体制を確立しつつ、全ての人が情報社会での生活と労働に必要なIT技能(スキル)を身に付けられるよう社会環境を整えます。
     また時限的に、地域図書館、職業訓練所や企業等に資金的支援をして、研修環境の整備を推しすすめていきます。
     学校の他図書館等の情報環境を人材と機器の両面から整備し、これを活用した社会人向けIT研修を推進します。
     また、SOHO(在宅勤務を含む脱組織型の就労形態)やテレワーク(遠隔地勤務)を促進し、女性や高齢者・身障者を含めた雇用機会とビジネスチャンスの拡大をはかります。
     職業紹介に関する規制緩和を促進し、インターネットを通じた職業紹介を全面解禁します。


  3. IT公正競争監視委員会を設置します。
    〜競争政策を推進〜


     誰もが皆、世界最高水準の低廉・高速インターネットを利用できるよう、通信と放送の融合を制度面からも推し進めるとともに、通信分野における大胆な競争政策をすすめます。そのため、中立的な裁定機関として、「IT公正競争監視委員会」(=日本版FCC)を創設します。この委員会は行政法上の3条委員会として強力な権限をもたせ、公正な競争ルールの策定や下、国際競争も含めた幅広い観点から民間事業者間の競争を監視・裁定します。また、公正取引委員会の強化を図りつつ通信分野における独占禁止法の厳正な運用等につとめます。
     同時に地域通信市場への新規参入を促進し、電気通信サービスのより一層の低廉化や多様化をすすめるため、光ファイバー等の電気通信設備を有する総ての事業者に対し、公正なルールの下、他事業者への適正な価額での設備開放の徹底を図ります。さらに、第一種(設備をもっている事業主)・第二種(設備をもっていない事業主)規制等も廃止し、経済的・効率的なネットワーク構築のための環境を整備します。


  4. 地域とNPOが主役になる情報社会を実現します。
    〜NPO支援税制の確立、生活密着型のネットワーク支援〜


     ホームヘルパーの資格に情報読解力(情報リテラシー)研修の受講を組み入れて、身近な人による高齢者へのサポート体制を整えます。
     NPOや地域コミュニティへの寄付を税控除する支援措置を講じるとともに、企業だけに認められている100万円までの情報機器の取得に対する税の優遇措置をNPO・コミュニティの任意団体にも適用範囲を拡大します。
     自治体などによる福祉・医療、環境教育・資源循環、文化・芸術など生活密着型のネットワークづくりを支援します。
     NPOが中小企業、商店街などの地域ビジネスと情報交流を行ったり、NPOと市民を結ぶプロバイダを設立したりするための資金を融資する制度を創設します。
     グローバルな市民対話を実現させるため、国際的なNPOの活動を支援することを目的に、多数の異なる言語を同時に高速処理する技術開発や、超軽量超小型の自動翻訳機・自動通訳の実用化をはじめ、途上国の情報化を妨げる障害(バリア)の除去を進める研究を促進させます。

  5. 世界の優秀なIT技術者を日本に呼び込みます。
    〜数次ビザの発給要件の緩和〜


     アジア諸国をはじめとした世界の優秀なIT技術者がわが国で活躍できる環境をつくり、日本のIT革命の基盤強化を図るためにも、海外のIT専門家の数次ビザの発給条件の緩和等につとめます。また、日本で働きたい技術者が現地国でも日本語習得や日本文化等の学習を円滑に行えるよう、支援措置を講じます。


  6. 生徒一人に1台のパソコン配備とIT教員を配置します。
    〜ITによる教育改革〜


     教師および生徒一人に一台のパソコン配備と、全生徒がストレスを感じずにネット利用できる高速アクセス網の整備を早急に完了させます。 情報読解力(情報リテラシー)を生徒たちに教授できるようにとの観点から、教員免許制度にIT教育に関する項目を追加します。またITを教えられる社会人の教師への登用も積極的にすすめていきます。さらに、時々刻々と進展する最先端のIT関連知識をタイムリーに学生たちに教授できるよう、大学教育レベルでの産学連携を積極的に推進します。あわせて、大学のノウハウの水平展開を促進するため、大学間の連携強化を図ります。


  7. 誰もが使いこなせる情報通信環境を整備します。
    〜「ITバリアフリー法」の制定〜


     障害者も含めてすべての人々が使いやすい情報通信機器を設計する「ユニバーサルデザイン」の思想を普及させ、情報バリアフリー社会を確立します。そのため、障害を持つ政府等の職員が電子事務機器を利用できることを保障する、政府に納品する機器は身障者に配慮したものに限られる、メーカーは障害者向けの機器を用意する義務を負うこと等を規定した「ITバリアフリー法」を制定し、職場のバリアフリー環境の整備をすすめていきます。


  8. ネット犯罪防止と個人情報保護の法律を制定します。
    〜安心の情報通信ネットワーク整備〜


     利用者が安心して情報通信を利用できるように以下の対策を講じます。
     ネットワーク・システムの破壊行為(意図的にシステムを破壊したりパスワードを盗んだりするクラッカーによる犯罪)などネット犯罪を包括する「インターネット犯罪防止法」(サイバー法)を制定し、ネット運営主体への情報開示請求手続きや発信者の匿名性の制限、安全配慮義務や作為義務など管理責任を明確化します。
     また、他人の個人情報の違法収集に対する刑罰適用や、個人が自己の情報をコントロールできる権利(=情報流通権)の明確化も含めた「個人情報保護法」を制定します。
     さらに、電子契約・仲介者責任・情報財取引などについて電子民事立法を推進するとともに、司法の迅速化を推進する観点から、裁判によらずに第三者の任意機関を活用して紛争解決を図る「裁判外紛争処理制度」(=ADR)を導入します。
 

2001年3月23日 戻るホーム民主党文書目次