2000年10月24日衆法務委 戻るホーム民主党文書目次

与党3党提出「少年法等改正案」に対する民主党修正案の趣旨説明

 ただいま議題となりました修正案について、提出者を代表して、その趣旨及び概要を御説明いたします。

第一は、検察官への送致を可能とする年齢を14歳以上とする改正に対する修正であります。与党3党案では、14・15歳の場合と16歳以上の場合に何らの差を設けないこととなっておりますが、本修正案では、14・15歳のいわゆる年少少年については特に可塑性が高いと認められることから、検察官送致を決定できる場合を、罪質が重大で、かつ、刑事処分以外の措置によっては矯正の目的を達することが著しく困難であると認められる場合に限定することとしております。また14・15歳は、防御能力に極めて乏しいことに鑑み、家庭裁判所は、検察官送致を決定するには、少年に弁護士である付添人を付さなければならないとしております。

第二は、16歳未満の少年については、少年刑務所に代えて少年院において刑を執行できることとする改正に対する修正であります。刑事処分を科された少年を、矯正を目的とする少年院に収容することは矛盾でもあり、受刑者でない少年院収容者との関係でも種々の問題を生じさせるおそれがあります。本修正案では、16歳未満の受刑者に対しては、少年刑務所において、所定の作業に代えて必要な教育を授けるものとすることにより、憲法の義務教育規定との調和を図っております。

第三は、16歳以上の少年が故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪を問われる場合は検察官への送致を原則とする、いわゆる原則逆送を導入する改正に対する修正であります。原則逆送という考えは、教育的措置によって少年を矯正し、もって再犯率を低く抑えるという少年法の精神と矛盾し、少年事件について第一次的責任を有する家庭裁判所の判断権を制約するものであります。本修正案は、殺人の故意があるという特に凶悪な犯罪の場合に限り、家庭裁判所は、調査の結果、刑事処分以外の措置を相当と認めるときを除き検察官に送致できることとするものであり、家庭裁判所に判断権を保持させつつ、検察官送致の範囲を拡大しております。

第四は、事実認定手続に関する改正に対する修正であります。与党3党案では、現行の少年審判制度に検察官が関与できることとなっておりますが、予断排除原則や厳格な証拠法則といった刑事手続の根本原則を前提としないで検察官の関与を認めてしまえば、少年審判制度は少年にとって著しく不利なものとなり、少年審判の場が、少年を矯正する場から少年を糾弾する場へと変質するおそれがあります。本修正案は、事実認定を適正に行うため、保護事件の審判に関与した裁判官以外の裁判官によって構成される家庭裁判所による事実認定手続を創設するものであります。この事実認定手続を行う裁判所を事実認定裁判所と呼ぶこととしておりますが、この事実認定裁判所における手続では、検察官が非行事実の立証を行っていくほか、刑事訴訟手続に準じた証拠法則にのっとった手続をとることとしたうえで、少年法の精神に鑑み、これを非公開としております。さらに、非行事実の有無及び内容について認定する決定は、事実認定手続の開始決定の日から50日以内にこれをするよう努めなければならないとしております。
 この事実認定裁判所による事実認定手続の創設に伴い、与党案における検察官の関与に関する改正規定、裁定合議制度の導入に関する規定、観護措置期間の延長に関する改正規定については削除することとしております。

 以上が、本修正案の趣旨及び概要であります。
 委員会における十分な御審議の上、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。


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