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5.農林水産・環境エネルギー


【農林水産】

 農林水産業政策・食料政策は、暮らしの安心と安全にとって重要な課題です。にもかかわらず、わが国の農林水産業・農山漁村は、戦後著しく衰退し、食料自給率は低く、食料の品質・安全性については信頼が地に落ちてしまいました。政府・与党・業界団体によって決定されてきた施策は、自給率の向上や競争力の強化どころか、利権構造の固定化や一次産業不信にしかつながりませんでした。民主党は、このような硬直かつ不透明な政策から脱却し、消費者に目を向け、消費者の信頼によって生産者の利益と経営の安定を実現する政策を確立します。そのため、「食品安全体制の確立」「食料自給率の向上」「持続的経営支援」「エネルギー供給源としての農林水産業」を政策の軸としてすすめます。

食料自給率の向上
 世界の食料需要は供給量を上まわりながら増加しています。もしも天候異変などによる不作が起きれば、最初に経済力の弱い途上国の食料調達が困難になります。日本の購買力が継続し、供給物があれば食料を輸入することもできますが、世界の食料需給安定のためには、各国が一定の食料自給率を維持することが最も重要です。実際に先進7カ国でも、イギリスの71%を除けば90%台後半から140%近くを確保しています。現在、日本の供給熱量換算食料自給率は40%に過ぎませんが、当面の食料自給率目標を50%とし、輸入と組み合わせた食料供給体制を構築します。

食料安全保障
 現在の日本の食料自給率では、天候要因による不作、海外農産物市場の需給関係の変調、海外情勢による輸入困難などが生じれば、国内の食料供給体制は危機に陥ります。国民の生活と生命を守るために、現在の食料需要にあわせた農作物生産への転換と農地の有効利用体制の確立をすすめ食料自給率の向上に取り組むとともに、緊急時に食料増産ができる体制と滞りなく供給できる制度をつくります。

森林の多面的機能と整備の必要性
 国土の6割を占める森林が、木材生産だけではなく、温暖化対策・治山治水機能・エネルギー源などの新たな機能面で注目されています。しかし、戦後日本の森林・林業政策が木材生産・供給に偏在したなかで、国産材は外材の価格と用途にあわせた質の向上の前に競争力を失いました。結果として生産の場である森林は放置され荒廃した状態にあります。しかし、多様な機能を発揮するために、積極的な整備促進に着手するとともに、有効な資源として活用する政策を推進します。

環境保全型農業の促進
 農業は緑のある産業としてとらえられています。しかし農薬の多使用は農業者・周辺住民の健康被害や残留農薬による食品安全の問題に、化学肥料の多投入は土壌の荒廃による再生産力の低下など環境に影響を与えます。また家畜糞尿も限度を超えた排出を行えば、土壌・水を汚染します。民主党は、環境に配慮した持続的な生産が可能な農業生産方式に取り組む農家に財政支援を行うとともに表示制度を設けて、その拡大を促します。

所得補償政策
 海外産と国内産の農産物価格の差が指摘されています。農地面積、労働賃金、生産コストが価格差要因とされます。しかし、輸出型農業国には農業生産高にかかわらず所得が補償されるために、農産物価格の高低を気にせず農業ができる制度があるという事実は知られていません。日本においても、農林予算の構成を所得補償政策中心に変更することとし、農産物価格は市場において輸入農産物との競争によって形成されるようにします。 所得補償へ移行した上で、生産調整に関連する国の関与は完全に廃止します。

国内産業の維持
 2001年にネギ、生シイタケ、イグサを対象としてセーフガードの暫定発動が行われました。この発動に対して賛否両論がありましたが、WTOにおける国際的な取り決めのなかでも、国内の生産者が急増する輸入によってその経営に甚大な影響を被る可能性がある場合、セーフガードが認められています。発動にあたっては将来見通しを明確にし、一層の努力が求められますが、ルールに則った手段を活用しつつ、国内産業の維持と育成を行います。

農業団体改革
 全中・全農を頂点とするピラミッド型の農業協同組合系統は、民間分野と比べて事業再構築が遅れており、事業面でも専門企業と競う力がない状況にあります。協同組合の精神に基づく運営方針については尊重すべきところがありますが、硬直化した現在の組織のあり方は根本的に改め、地域の農協が自ら考え行動し農業の振興を行うシステムを確立します。

都市型農業
 農業は地方の農村で行うものという意識があります。しかし、消費地である都市近郊の農地で生産された農産物を供給することには、鮮度の高さ、輸送にかかるコストの軽減といったメリットがあるとともに、農地が都市の緑地帯等としての役割を果たすという効用もあります。また、食品廃棄物の飼・肥料化によるリサイクルも都市近郊農業の方が取り組みやすいという利点があります。このような利点を活かすためにも都市型農業の振興をすすめます。

水産業の多面的機能
 海難事故が起きた時に、近辺の漁船はボランティアとして救助に協力していることは意外と知られていません。また、日常的な操業によって、異変が起きた時の監視機能を果たしています。意識しないながらも、食料の供給以外にも水産業が継続しているからこそ果たされる機能について評価をし、水産業振興を行います。

農業経営再建特別措置法案
 国の施策に沿って経営規模拡大・農地改良に取り組みながら、農産物価格の下落などによって経営負債の償還が困難な状況に陥っている農家が増加しており、その経営再建は喫緊の課題です。効率の高い農業経営基盤の活用は食料自給率の向上にも必要です。このような観点から民主党は2001年の通常国会に「農業経営再建特別措置法案」を提出しました。この法案は、財政支援や農地の買い入れなどの策を講じ、農業経営の再建及び優良農地の保全を図る内容となっています。同法案の成立をめざし、農業の発展及び農村の振興をすすめます。

環境調和型養殖の推進
 養殖に使用される薬剤は、行政の指導によって環境負荷の少ないものであることが定められています。しかし、値段は安く効果は高くという欲求が、自らの生産の場である海を汚染する禁止薬品の使用を野放しにし、結果として生産を低迷させる原因をつくり出しています。自然環境と調和した持続的生産となるように薬剤使用を規制する法律を提案します。



【環境】

 森林伐採・開発などによる自然環境の破壊や生態系の破壊、化学物質の拡散、化石燃料や金属類資源の枯渇など、人間の活動に起因する環境負荷の増大により、「環境の許容限度」や「人体の許容限度」が限界に近づいています。このような環境問題に対応するために、現在の「大量生産、大量消費、大量廃棄」社会から、持続可能な社会へと変革し、将来世代にツケを残さないようにしなければなりません。民主党は、持続可能な社会をめざし、環境容量内での循環型社会システム構築に向け、積極的に取り組んでいます。

持続可能な社会
 地球温暖化をはじめとする地球規模の環境問題がその規模を拡大しています。また、自然破壊や土壌汚染など、地域での環境問題もあとを絶ちません。環境の悪化とそれに伴う脅威は増大し続けています。美しい自然や生命を育む地球を将来の世代に受け継いでいくことは、いまを生きている私たちの責任です。環境問題を解決し、持続可能な社会をつくるためにも、環境意識の向上・市民参加・情報公開・公正な市場構築・良好な自然の保全・NGO中心の国際貢献などの施策を推進します。

地球温暖化対策
 地球温暖化の進展を食い止めるためにも、世界の温室効果ガスの5%を排出している日本の責任は非常に大きいと言わなければなりません。ところが、政府の地球温暖化対策方針である「地球温暖化対策推進大綱」は、実効性の乏しい施策が記載されているだけです。民主党は、国内における人為的排出の削減を原則として、エネルギーの需要抑制、省エネルギーの推進、再生可能エネルギーの普及促進のために、環境税等の経済的措置の導入による実効性のある地球温暖化対策を行うべきであると主張しています。

オゾン層破壊・フロン回収
 フロン類はオゾン層破壊や地球温暖化の原因となるなど、地球環境に大きな負荷を与えることから、その回収破壊・代替物質への転換が重要になります。民主党がかねてから主張していたフロンの回収義務化法がようやく2001年に成立しましたが、スプレー缶や断熱材への使用規制が行われていないなどの問題があります。民主党は、今後も環境負荷の少ない代替物質への転換や使用規制などを強力にすすめるべきであると考えています。

地球環境問題
 開発途上国を中心とした人口の急増と貧困等により、地球環境の悪化が各地で顕在化しています。開発途上国への環境保全技術の積極的な援助、被援助国の民主化促進、環境マインドを育むための「人づくり」支援強化、森林保全・水環境の保全・砂漠化防止などの自然環境保全への支援強化などを積極的にすすめ、日本が環境分野でのリーダーシップを発揮すべきであると考えます。また、支援の際の国際的な環境基準の設定を国際社会に積極的に働きかけるべきであると考えます。

これからの化学物質対策
 日本国内で流通している化学物質は約5万種類あると言われ、また、毎年数百種類の化学物質が新たに製造・使用されています。人工の化学物質が環境中に排出された場合の影響が十分に把握されていないことを考えれば、予防を基本としたリスク対策が必要であると考えます。民主党では、「化学物質の審査及び製造に関する法律」を改正し、化学物質の製造から廃棄までの全体を包括的に管理し、製造規制・表示の徹底・使用後の回収など、リスクに応じた化学物質対策をすすめるべきであると考えています。

化学物質対策(これまでの取り組み)
 民主党では、現在の化学物質対策が不十分であるとして、様々な法案を提案してきました。化学物質排出移動登録(PRTR)法の審議の際には、政府案では情報公開の範囲や内容などが不十分であるとして対案を提出しました。また、ダイオキシン対策では、環境基準の設定と対策を内容とするダイオキシン対策法案と焼却炉対策をさらに強化した廃棄物処理法改正案を提案し、これによりダイオキシン対策の法律が制定されることになるなど、化学物質対策に積極的に取り組んできました。

廃棄物・リサイクル対策
 現在の大量生産・大量消費・大量廃棄の社会を省資源型の循環型社会へと転換させるために、また、不法投棄や不適正処理を防ぐためにも、現在の法制度を変える必要があります。民主党では、(1)廃棄物・リサイクル法制度の統合、(2)有価・無価に影響されない廃棄物の定義、(3)リサイクル施設に対する環境規制の適用、(4)製造者の製品引取義務(拡大生産者責任)の明記、(5)埋立税・焼却税の導入(経済的措置)を内容とする「資源循環・廃棄物管理法案」の成立をめざしています。

デポジット制度
 環境負荷の少ない持続可能な社会を築くためには、事業者・消費者などの各主体が自主的に取り組むことが重要ですが、それが十分に行われない場合には、経済的措置による誘導や法的規制により環境への負荷を低減する必要があると考えます。製品の販売にあたり預り金(デポジット)を価格に上乗せし、回収の際にそれを返却するデポジット制度は、不法投棄の防止や回収率の引き上げのために一定の効果が認められることから、民主党が作成している「資源循環・廃棄物管理法案」のなかでも位置づけるとともに、飲料容器の再使用促進のための制度として検討をすすめています。

環境教育
 先進国と途上国間の不公平、現世代と将来世代間の不公平、自然と人間の間の不公平を解決し、持続可能な社会を構築するためには、ライフスタイルの変革や意識改革が不可欠であり、環境教育の推進が極めて重要になります。民主党では、(1)環境教育の原則の確立、(2)計画的な環境教育の推進、(3)学校における環境教育の推進、(4)NGOの参加、(5)教員に対する研修制度などを内容とする「環境教育法」の制定を検討しています。

野生生物保護
 干潟や湖沼などの湿地は多様な生物の生息地となっていますが、開発などにより多くの湿地が失われています。湿地の開発を抑制し、保全を図る法律の制定をすすめなければなりません。また、農作物の被害対策や狩猟を優先する現在の鳥獣保護法では、野生生物の保護・生物多様性の保全は十分ではありません。野生生物の生息区域の保全を含めた野生生物保護法の制定をめざします。また、生態系を破壊する外国からの移入種対策を行う法律の制定をめざしています。

自然環境保護、里地・里山の保全
 人の手の入らないありのままの原生的自然を将来世代のために保全していくことは言うまでもありませんが、人が手を入れることによって維持されてきた里地や里山の自然が、過疎化の進展や廃棄物処分場の建設などにより急速に破壊されている現状にも対応が求められています。地域にある文化や伝統を活かし、地域の循環を基本とした経済システムをつくることで、世界に誇ることのできる日本の里地・里山の自然を保全する必要があります。地域の経済・物質循環を推進するための施策についても検討をすすめていきます。

公害対策
 日本は、たび重なる公害による大気汚染・水質汚濁等を、様々な技術により解決してきました。そして、公害対策では世界一の技術立国となっています。その一方で、大気の窒素酸化物や湖沼における水質汚濁など、環境基準を上まわる状況が今なお続くなど、対策が進展していない部分も残されています。民主党では、排出基準の強化や規制対象の拡大を、経済的措置の導入などにより、大気・水・土壌などの環境基準を速やかに達成すべきであると考えています。

環境税
 地球環境問題を解決するためには、地球環境がタダで無限に使うことのできる自由財であるという考え方を見直し、経済活動の地球環境に与える影響(外部費用)を内部化し、適正な市場経済における価格決定システムに組み入れる必要があります。民主党が提案している「資源循環・廃棄物管理法案」でも、埋立税・焼却税・デポジット制度などの経済的措置の導入を提案しています。また、地球温暖化問題を解決するためにも、二酸化炭素の排出に応じた経済的負担を課す「炭素税」の導入が不可欠です。民主党では、炭素1トンあたり、3,000円を課税することが現時点では適当であると考えています。

アセスメント・市民参加
 現在の環境アセスメント制度は事業アセスであり、計画自体の見直しや代替案の検討、累積的な環境影響への配慮をより効果的に行うためには、政策立案・計画段階から環境に対する影響を評価する「戦略的環境アセスメント」の導入が不可欠です。計画段階でのアセスメント導入により、市民参加・市民合意がより早期の段階で図られることから、環境と開発の調和を図ることが可能となります。民主党としては、国レベルでの戦略アセスメント導入をめざしています。

【エネルギー】

 一元的かつ戦略的なエネルギー政策を推進します。COP3(気候変動枠組条約第3回締約国会議)における京都議定書などの公約達成に向け、資源循環型社会を確立し、省エネルギーを国民運動としてすすめます。国の責任においてエネルギーの安定確保に努めます。再生可能エネルギーの開発・導入を積極的に推進し、天然ガス利用の普及促進等により、石油依存度の低減を図ります。原子力政策は安全性を最優先に過渡的エネルギーとして慎重に推進します。

国民参加の戦略的な政策づくり
 戦略的なエネルギー政策を推進するため、各省庁のエネルギー関連部門を内閣府に移管して、エネルギー政策に携わる一元的な機関を設置します。国家と市場の役割等を総合的に考慮し、国民の意見を十分反映した国家エネルギー戦略を構築します。エネルギー基本計画を国会承認事項とするとともに、計画策定にあたっては、地方公共団体や広く国民の意見を聴くための場を設定します。また、エネルギーに関する情報公開を一層促進します。

脱石油・燃料転換の促進
 石油に過度に依存した化石エネルギー政策を転換し、セキュリティー向上、環境保全などを優先させる新しい政策を構築します。中東依存度低減を図るとともに、産油国との関係強化を図ります。国の関与は必要不可欠なものにとどめ、中核的な企業グループの育成を図るなど、効果的、効率的な自主開発政策を推進します。天然ガスへの燃料シフトをすすめるほか、ガス・コジェネ(ガス燃料による熱電供給)、ガス冷房、マイクロガスタービンの普及促進等を図っていきます。

省エネ政策
 地球温暖化防止、COP3における国際公約の達成に向け、エネルギー多消費のライフスタイルや経済活動を見直すため、環境重視の省エネルギー教育の啓発・徹底など省エネを国民運動として位置づけ、省エネ型産業構造への転換、省エネ型ライフスタイルの普及促進に努めます。環境税を含む経済的措置の具体化、自助努力を促進する省エネ減税、クリーンエネルギー自動車やコジェネシステム、省エネ型住宅建築などの技術開発に対する支援策強化などに取り組みます。

新エネルギー・未来エネルギー
 風力、太陽、バイオマスなど再生可能エネルギーの一次エネルギー総供給に占める割合をEUにおける導入目標をふまえ2012年までに10%程度をめざし、大幅に引き上げます。民主党の「自然エネルギー発電促進法案」でも提案した、再生可能エネルギーによる電気の買い取りを積極的に推進し、必要な法整備を行うとともに、関連予算を増額します。燃料電池、鉛電池よりも効率的なNAS(ナトリウム硫黄)電池や石炭ガス化複合発電などの技術開発に対して重点的支援を行います。

エネルギー源としての第一次産業振興
 間伐材を利用した木質バイオマス発電やエネルギー作物(なたね、ひまわりなど)から抽出したアルコールの利用等が注目されています。耕作放棄された田畑でエネルギー作物の栽培を行い、利用されていなかった間伐材を利用することも、今後のエネルギー政策のなかで位置づけを行う必要があります。農林水産物のエネルギー利用は、化石燃料の使用と比べて環境負荷が少ないため、早期の技術確立とコスト削減のための利用拡大を図ります。

原子力政策
 原子力政策は、安全性を最優先させ、万一に備えた防災体制を確立したうえで、過渡的エネルギーとして慎重に推進します。発電所における自主点検作業記録の不正問題を重く受けとめ、再発防止と原子力に対する国民の信頼回復につとめます。安全チェック機能の強化のため、国家行政組織法第3条による独立性の強い原子力安全規制委員会の創設に向け、民主党提出の法律の成立をはかります。住民の安全確保に関しては、国が責任をもって取り組む体制を確立します。原子力発電所の経年劣化対策などのあり方について、議論を深めます。プルトニウム再利用はMOX(ウラン・プルトニウム混合)燃料、高速増殖炉などの研究開発用として使用計画のある分量のみを抽出し、その他の使用済み燃料は中間貯蔵します。

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