2003年4月22日(火) 戻るホーム記者会見目次

菅 直人代表/定例記者会見要旨

○松浪議員の行動は、国会議員として許されるものではない
○小泉総理である限り株価が下げ止まらないという現実は、経済無策を象徴
○米中朝協議には大きな意義、日中首脳間にコミュニケーションがないのは残念
○自衛官募集に住民基本台帳情報:個人情報保護法の審議に大きな課題
○ORHAへの要員派遣は、一定条件の下で、選択肢の一つとして考えてもいい

松浪議員の行動は、国会議員として許されるものではない

【代表】保守新党の松浪健四郎代議士の問題で、保守新党は役職停止でお茶を濁そうということのようであります。前の保守党の扇元党首は、当然辞任すべきだということを言われておりましたが、党首が次々と変わっており、現保守新党では、党首・幹事長含めて擁護する姿勢のようであります。

もちろん言うまでもないことですが、保守新党は現在の政権与党でありまして、また、いまおこなわれている選挙でも、それぞれ保守新党が推薦する候補者が東京6区や茨城の衆・参で立候補しているわけです。

そういう保守新党が松浪健四郎代議士を守る、さらに加えて今日の報道では、官房長官までも何か、暴力団も有権者だ、といったような発言で擁護しようということが伝わってきております。今回の問題の焦点は非常にはっきりしておりまして、つまりは暴力団の組員である人物が経営する会社から献金を受け取ったばかりでなく、指名手配中のその人物から頼まれて捜査情報を聞き出そうとした。完全にどういう人物か分かった上で、国会議員という職責を使って協力したということであります。

そういった点では、その問題がどういう意味をもつのか、これは誰の目にも明らかでありまして、これを官房長官まで、つまりは小泉政権中枢である官房長官までが一緒になって擁護しようというこの姿勢は、まったく信じられない許し難い行動だと思います。

わが党を含む野党4党だと思いますが、明日には松浪議員に対する辞職勧告決議案を提出する予定にいたしております。

とにかく暴力団というものの持っているひとつの根の深さというのは、実は不良債権の問題とか、かつてのバブルの時代のいろいろな出来事、あるいは最近のヤミ金融などを考えますと、そういったものと政治家が手を結ぶというのは、最も戒めなければならない立場にあるのが政治家であります。

確かに一人ひとり誰が暴力団員かということを、始めから知ることはできませんが、少なくともこの松浪健四郎議員の行動は、その人物がどういう人であるか、つまりは暴力団関係者であるということが分かった上で、更にヤミ献金を受け取り、また指名手配ですから、どういう人かということを考えるのは当然ですが、そういう指名手配を受けた段階で、日をおいて捜査情報を聞き出そうとした。

そういう点では社会常識から照らしても、国会議員としてまったくふさわしくない許されない行動だ。まさに扇千景大臣とはこの点では私はまったく同感でありまして、みずから身を処すべきでありますが、そうでない以上は国会の決議で意志を明確にしていきたいと考えております。

小泉総理である限り株価が下げ止まらないという現実は、経済無策を象徴

【代表】小泉内閣が誕生してもうすぐ満2年が経とうとしています。明日のQTでも少し触れたいとは思っていますが、ちょうど2年目に近づいた今日の株価が、一時バブル崩壊後の最安値を更新し、最終値は少し戻したようですが、7700円台に落ちております。

結局いろいろな数字がありますけれども、小泉総理が続く限りは株価は下げ止まらないというのが現実の姿であり、またそのことが小泉総理の、とくに経済における無策というものを象徴していると、改めて申し上げておきたいと思います。

米中朝協議には大きな意義、日中首脳間にコミュニケーションがないのは残念

【代表】先週中国に行ってまいりました。中国で記者会見もいたしましたが、記者会見後、李肇星外務大臣にもお会いして、いろいろ話をいたしました。明日から始まりますアメリカと北朝鮮と中国の三国協議についても、それぞれ話をしました。

やはり最大のポイントは、改めて申し上げたいのですが、つまりは北朝鮮という国と、ある意味で対峙している国が韓国であり、日本であり、アメリカであるわけですが、その北朝鮮をある意味で支えている国の最大の大物が中国であります。中国は北朝鮮に対するエネルギーや食料の不足分というか、相当の援助をしているわけです。その中国が、北朝鮮の核開発について、自分たちが容認できないんだ、従来核開発をしてきたことは自分たちも知らなかった。それを容認してきたわけではないんだ、ということを明確に、私たち代表団に胡錦涛総書記が言われ、また李外務大臣もその趣旨のことを明言されました。

そういう立場でこの三国の協議が始まりました。北朝鮮の方は、場を作ってくれたのが中国で、実質はアメリカとの二国間協議だと言っていますが、私はまったく違う。ある意味では北朝鮮と対立した関係にあるアメリカと、従来は支えてきた中国とは、(韓国や日本を含めて)同じ立場、つまりは北朝鮮が核兵器を持つこと、核開発には反対だという共通の立場で、ある意味では挟み撃ちにする形でこの会談をおこなうということは、私は大変大きな意義のあることだと思っております。

それにつけても、重要な会議があるときに、日本の総理大臣が、一方のアメリカ大統領とは話をし、あるいは米日韓の協議も事務レベルでおこなわれているわけですが、残念ながら中国の首脳とわが国の首脳がまったくコミュニケーションがはかれないというのは、こういう事態において大変、日本の外交あるいは日本が北朝鮮に対して主張すべきことをきちっと伝える上で、大変残念な形だということを申し上げておきたいと思います。

この点についても、中国に行く前にも、また帰ってからも、小泉総理には、何とか両国首脳が会えるように努力されたほうがいいのではないですか、といろいろ水を向け、あるいはその旨を胡錦涛総書記にも伝えながら、総書記からの話もお伝えしたのですが、結果的に従来どおりふさわしい雰囲気があるかという胡錦涛総書記の話と、小泉総理が、いや私はいつだってという話ですれ違いのままで今日まで来ている。

国益のことを考えたときにどういう行動をとるべきか、総理はきちんと考えられるべきだと、このことも明日のQTでも時間があればと言いましょうか、一つの議題として取り上げてみたいと思っております。

<質疑応答>

自衛官募集に住民基本台帳情報:個人情報保護法の審議に大きな課題

【記者】今日の毎日新聞の一面に、防衛庁の自衛官募集にあたって住民台帳の情報提供の問題がかなり大きく報道されていましたが、この件について代表はどのように見ていらっしゃるのか。また今後のそれを踏まえた個人情報の仕組みについて、どのようにすべきとお考えでしょうか。

【代表】もともと住民基本台帳そのものが4項目だと言われながら、その目的も含めて他の目的に使われ、他の情報がさらに付け加えられて、他の目的に使われるのではないかという、そういう懸念も含めて住基ネットに反対をしてきたところです。

そういった意味では、今回の報道が事実だということを前提として言えば、まったく私たちが心配していたとおりのことが現実におこなわれている。つまりは住所・氏名等の4項目以外に、健康状態とか両親のことなど、つまりは自衛隊にリクルートする上での必要な情報をそこから取り出していた、あるいは自治体から取り寄せていた、ということでありますから、まさにあってはならないことが起きたわけであります。

もともと個人情報のあり方について、この個人情報保護法が本当の意味での保護となっていることが前提になって、住基ネットということが許される形になっていたわけですが、そういった意味では、個人情報保護法の審議にも大変大きな影響というか課題が新たに出てきた。

私が聞いているところでは、委員会等で防衛庁長官を呼んで、どういう経緯だったのか、どういう実態だったのか、真相を防衛庁長官の方からきちっと説明をさせる、そういう審議がおこなわれることが、少なくともこの個人情報保護法の審議に欠くことのできないプロセスだという姿勢で臨んでいくと聞いておりますし、私もそうあるべきだとこのように考えております。

住基ネット稼働そのものについては、自治体とも連携して運動を進めたい

【記者】いまの話に関連して、住基ネット稼動そのものに対して影響があるでしょうか。

【代表】これも住基ネットそのものに対する廃止法案などについても、従来から何度か出しているのですが、また改めて今回の問題を踏まえて、いまの状況がどのようになっているのか、細かいところまではきちっと記憶しておりませんが、少なくとも個人情報保護法と住基ネットそのものの反対と並行してやっていかなくてはならない。

わが党が推薦する市長あるいは市長候補の中には、住基ネットについて、接続を切る、あるいは選択制にするとか、そういう市長も次々と出てきていますので、そういう自治体からのいわば反対というものも併せて連動しながら進めていきたいと思っています。

ORHAへの要員派遣は、一定条件の下で、選択肢の一つとして考えてもいい

【記者】先週の岡田幹事長の会見で、復興人道支援への要員派遣について、幹事長は前向きな発言をされていますが、代表はどのようにお考えでしょうか。

【代表】いまイラクという国の状況というのは、皆さんもご承知のように、従来のフセイン政権というものが倒れたわけですが、それに代わる政権がきちんと生まれていない状況です。もともと日本とイラクは国交があるわけですし、大使館の建物はバグダッドにあるわけですが、いまは爆撃などを受けて使用されていないようです。

そういうことを考えますと、戦後復興を考えるときに、わが国の基本的な立場からすれば、政権はいまのところ空白であるけれども、少なくとも従来からの経緯で国交があったわけです。その日本の大使館機能を回復させながら、どういう形の復興支援が、どこと協議をしていけば協力ができるのか。

こういう形を考えることが、あるいは一番自然な形ではないかと思います。ただバグダッドの治安状況などがありますので、私もあるべき形は言えますが、それが本当に安全などの問題で可能なのかどうなのかというところまでは、この場では判断できません。

ORHAに対する文民派遣の問題について言えば、いろいろ理論の立て方によって、アメリカ国防総省の機関でありますから、その機関そのものに誰かが所属するということは、私は基本的には法律的にもあり得ない形だろう。

つまり、日本の文民がアメリカの国防総省に雇われるということは、一般的にはあり得ないだろうと思っています。ただ日本国政府の指揮の下に、たとえばアメリカの大使館と接触するのと同じように、アメリカの一機関と接触して、日本としての援助の仕方について、いわば情報交換をおこなうということが、すべて出来ないことであるのかどうかといえば、私はそれは出来る部分も一定条件の下ではあるのではないかと考えております。

もう少し実質的なことで言えば、私たち民主党としては、あるいは私としては、本来は戦争が始まるときもそうでしたが、国連決議ないままの武力行使に反対いたしましたし、復興支援についても本来なら改めて何らかの国連の関与ということをきちっと位置付けた上で、その国連を軸にした中で、わが国が協力するのが、あるべき形としては一番好ましいと思っています。

ただそういう形になるのが、どの時点なのかまだはっきり予測はつきません。つまりアメリカが軍事占領した状況がどこまで継続していくのか、それが国連に代わる時期が来るのか、来るとしてもいつなのかよくわかりません。そういうことを考えますと、人道的立場からの復興援助というものを、国連が関与することが望ましいけれども、それまで一切の関わりを持たないでいくのか、現実的にアメリカのそういう部門と接触を持ちながら、将来的には国連に振り変わるにしろ並行するにしろ、あらかじめそういうところに人を連絡的に派遣して対応を進めるのか、それは両方の考え方があると思います。

そういった点で、現時点で人を送ることについて、多少問題がありますが、一つの選択肢としては考えてもいいのではないかと思っております。

議員の立場を利用して捜査情報を入手したことを庇うのは、まったく理解できない

【記者】松浪議員の事件について、与党の幹部から擁護する発言が出ていることについて、代表はどう見ていらっしゃいますか?

【代表】先ほど申し上げたように、官房長官の談話がここに来ているくらいですから、多分皆さんの方が知っておられると思いますが、つまり暴力団も有権者で国民だということを言って、松浪議員の行動を庇った。もちろん暴力団といえども有権者であり国民であることは、もちろんのことであります。

ただ国会議員という、ある意味で公職にある立場の人が、そのある意味での公職である立場を利用して、暴力団の組員である人物の捜査情報を入手するといった行動が、許されることなのかどうか。そのことが、なぜこういう庇うような言葉になってくるのか、まったく私には理解できません。

日本でも見えるところ、見えないところがありますが、かつてよくアメリカの映画などではいわゆるマフィア的な社会と政治家との癒着が題材になっていますが、日本でも昔からそういう部分から断ち切られているわけではないと言われてきたわけで、そういう点では、こういった問題がきちっとケジメをつけることによって、そうした不明朗な関係の拡大を防ぐことになると考えています。

明日の党首討論では、小泉政権丸2年、イラク・北朝鮮問題などを総理にただしたい

【記者】明日のQTで先ほどいくつか代表が言われたのですが、改めてどのようなテーマで臨みたいとお考えですか?

【代表】あまり言うとサプライズでなくなるので・・・(笑)。一つは、丸2年経つということが一つと、イラク・北朝鮮問題、あるいは中国といった問題を中心に、総理の見解をただしながら、私の考え方を申し上げていきたいと思っています。

一般的に言えば、憲法論についても大いに積極的に議論をすればいい

【記者】与野党の幹事長が対談をしまして、岡田幹事長が、PKOに参加した自衛隊の武器使用基準についてなど、憲法論についてかなり踏み込んだ発言をしたようですが、それについて代表はどのようにお考えでしょうか。

【代表】ちょっとちゃんと読んでなくて申し訳ないですね。詳しくその記事を読んでいないのですが、割と中身の濃い問題が含まれていますので、あまり思いつきのコメントは避けたいと思います。

一般的に言えば、いろいろな議論をわが党は避けて、逃げて通るという考え方はありませんので、大いに積極的な議論をすればいいと思います。ですから幹事長という立場というのは、もちろん重要ですが、同時に一議員としていろいろな見解をある程度述べていくことは、当然それぞれの責任の範疇でいいと思いますし、私も時折そういう発言をいたしております。

ですからあまり、いまのいくつかの指摘については、もう少しゆっくりしたときにでも取材していただければ、私は私なりの考え方を申し上げますけれども、いますぐ、部分部分をコメントするのはあとで誤解を生み出してもいけないので、一般的な答えで留めておきます。

編集/民主党役員室


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