2003年9月18日 民主党政策集―私たちのめざす社会 戻る政策集目次

【8】外交・安全保障

外交/安全保障


【8】外交・安全保障

<外交>

 冷戦後、国際社会は劇的な変化を遂げていますが、生活資源と安全を世界に大きく依存する日本にとって、平和で安定した国際環境は、まさに国家と国民生活の存立基盤そのものです。民主党は、「国際社会の利益と調和させつつ、わが国の安全と主体性を実現していく『外交立国・日本』」を基本政策としています。地球社会の一員として、自立と共生の友愛精神に基づいた信頼される国をめざし、「平和を享受する日本」から「平和を創造する国・日本」に向けて主体的な外交を展開します。そのために、日米関係の成熟化、アジア近隣諸国との信頼醸成、予防外交の積極的な展開、軍縮や地球環境、人権、貧困問題等への取り組み、国連平和維持活動など国連の場を重視した平和秩序の構築、途上国支援など非軍事的貢献としてODAの活用やNGO支援などを重視します。

予防外交
 民主党は、紛争の発生を未然に防止する「予防外交」を外交活動の柱とします。国際社会での対話と信頼醸成を推進することで「アジア不戦共同体」のような紛争に至らないための国際環境を築くこと、対立は火種のうちに和解を図ること、地域紛争やテロの背景にある経済的困難及び貧困や社会的不平等の解決に向けてNGOや国際機関等と連携して開発協力や人道支援などを積極的に行うことなど、総合的な外交力で平和の創造に貢献していきます。

外務省改革
 報償費汚職など一連の不祥事が続いてきたにも拘わらず、改めて会計検査院から「支援委員会」等についての無駄が指摘されるなど、政府による改革は遅々として進みません。民主党は、この悪循環を断ち切る根本的な外務省刷新を求め、2000年4月、民間大使の積極的な登用などを盛りこんだ民主党の人事刷新案を発表しました。さらに、政府・与党が「改革」看板のかけ替えに終始するなか、2002年7月に「外務省刷新:7つの柱」(外交のあり方と組織使命、組織、人的資源、経理・業務監査、海外援助と国際開発、情報収集・情報公開、外交戦略の刷新)を提示し、外交の再建に全力で取り組んでいます。また、特命全権大使・公使の任命について同意人事案件とし、委員会による事前チェックができるよう「外務公務員法の一部を改正する法律案」の提出を検討します。

機密費(報償費)の改革
 一連の不祥事の温床となった報償費を、抜本的に改革するため、(1)国の安全や外交等に係る本来の「機密費」と一般経費を峻別し、厳しい用途制限を課す、(2)「機密費支払い記録書」の作成と、決算行政監視委員会(衆)、行政監視委員会(参)に設置する小委員会での非公開審議、(3)特に機密性の高いものは25年、それ以外は10年経過後に公表を義務づける、等を内容とする「機密費の使用に係る文書の作成、公表等に関する法律案」(仮称)の成立をめざします。

日米関係
 米国は、政治、経済、安全保障、文化・人的交流など多様な分野での重要なパートナーです。地球的な問題や国際社会の平和と安全、自由経済の推進や各国の民主化支援など様々な政治・経済上の課題に対し、日本は、米国との間に質の高い政策協議と協調行動を積み重ねていくべきです。日米安全保障体制を基軸に据えつつ、そのあり方については、米国との緊密な協議と意思疎通を図り、国際情勢の変化にあわせて絶えず主体的に検証していきます。

日米地位協定の見直し
 民主党は、沖縄に集中する在日米軍基地の縮小をめざすとともに、2000年5月に「日米地位協定の見直し案」を策定し、政府に改正を迫ってきました。特に、一定の凶悪犯について起訴前に日本の司法当局に引き渡しを認める刑事手続きへの修正、米軍施設等への日本法令適用の確認、環境保全条項の新設等を「平成の条約改正」と位置づけ、早急な改定を求めています。

日露関係
 ロシアは、冷戦後の国際社会において、プーチン大統領の下、国際テロ対策での協調、アメリカとの核軍縮、NATOとの連携強化、先進国首脳会議(サミット)への正式参加、印パ紛争への仲介努力等、新たな秩序構築に向けて着々と外交実績を積み上げています。日本は、核兵器廃棄への支援、経済・文化交流、民間交流等を継続しつつ、平和条約締結交渉や鈴木宗男議員の関与等で歪められた北方領土返還交渉について、抜本的に建て直します。

北方領土返還交渉
 ロシアとの北方領土返還交渉は、北方四島支援事業での外務省不祥事などで頓挫しています。民主党は、北方四島の一括返還をめざし、2000年8月の羽田孜幹事長(当時)による初の総理経験者の北方領土訪問をはじめ、野党として問題解決に積極的に取り組んできました。今後とも、経済・文化交流等の一層の活性化を通じて信頼醸成に努め、ロシア国民の理解を深め、領土返還に向けて粘り強く交渉に臨みます。

日中関係
 2003年3月に新指導部体制が発足した中国は、政治、経済の両面で、ますます国際社会における存在感を高めています。改革開放路線やWTO加盟、ARF(アセアン地域フォーラム)等への積極的な関与をはじめとした外交姿勢は歓迎しますが、一方で、在瀋陽日本総領事館事件やODAのあり方等についての懸案も存在し、その解決が急がれます。本年4月、菅代表は小泉総理に先駆けて胡錦濤国家主席と会談し、アジアの地域協力の方向性、北朝鮮の瀬戸際政策で緊張する地域情勢等について緊密に協議しました。今後とも、国交正常化30周年を経た両国のさらなる友好関係を発展させていきます。

台湾問題
 民主党は台湾の一方的な独立を支持せず、同時に中国の台湾に対する武力行使については断固反対します。わが国は、台湾海峡をめぐる緊張が生じないように中国・台湾にあらゆる予防的働きかけを行うことを最重要課題の一つに位置づけるべきです。その際には、1972年の日中共同声明が前提となることは当然のことです。

日韓協力のさらなる推進
 韓国との間では、安全保障や経済上の共通の利害を踏まえた協力を深めるとともに、国民間の心の交流を推進します。

日朝関係
 1998年8月の北朝鮮による弾道ミサイル(テポドン)発射以来、2000年12月には民主党訪朝団を派遣するなど、民主党はわが国の安全保障に直接影響を及ぼす北朝鮮問題に真剣に取り組んできています。2002年9月17日の日朝首脳会談で「日朝平壌宣言」が署名され、日朝国交正常化交渉が再開されました。その際、北朝鮮は日本人拉致の事実を認め、その後、核開発の事実が明らかになりました。拉致事件及び大量破壊兵器の開発・保有問題は、わが国の主権と国益、国民の生命と人権に関わる重大な課題であり、民主党はこれらの解明・解決を最優先課題とします。2003年に入り、北朝鮮は、瀬戸際政策をエスカレートさせ、「平壌宣言」は行き詰まりを見せており、北東アジアの安全保障は憂慮すべき状況に置かれています。日米韓を中心に、中国、ロシア、EU等関係各国が緊密に連携し、北朝鮮の姿勢を慎重に見極めながら、日本と北東アジア地域の平和と安全に資するよう取り組みます。その意味でも、6者会談の充実を図りながら、この地域の信頼醸成及び協力のための枠組(北東アジアフォーラムなど)の創設に取組みます。

北朝鮮脱出難民
 2002年の在瀋陽日本総領事館への北朝鮮脱出者の駆け込み事件は、外務省の態勢や体質ばかりでなく、わが国の難民等への対応全体の見直しを迫るものでした。北朝鮮にはかつての在日韓国・朝鮮人や日本人配偶者、その家族が20万人はいるとの推計もあります。民主党有志による議員連盟を設立し、韓国・中国・米国・国際機関やNGOなどとも協議しつつ、中朝国境の北朝鮮からの脱出難民に対する人道的な救済策を含め、総合的に取り組んでいきます。

日本人拉致事件
 北朝鮮による日本人拉致事件は、主権と人権・人道上の重大問題です。拉致被害帰国者の支援に万全を尽くすとともに、北朝鮮に残された家族の早期帰国、被害者や家族に対する北朝鮮の謝罪と補償、被害者の全面解放と永住帰国による原状回復、責任者の処罰、再発防止、未認定の拉致疑惑を含めさらなる徹底調査による拉致事件の全容解明などについて、北朝鮮の具体的かつ誠意ある対応を強く迫りつつ、完全解決に向けて全力で取り組みます。2003年2月、民主党訪米団は、拉致事件に関する書簡を携え、米政府や議員、有識者の理解と支持を強く求め、その直後の拉致被害者家族の方々等による米国訪問と連携する努力をしました。今後とも、拉致事件の解決につき、国連決議を求めるなど国際世論にも強く働きかけていきます。

欧州・EUとの関係
 ユーロ通貨統合やEU拡大など、欧州が新たな動きを見せるなか、わが国と欧州各国やEUとの関係は、政治的にも経済的にもますます重要になっています。民主党では、欧州政策検討プロジェクトで、欧州における政策動向についての理解を深めるとともに、国際テロ対策での協調、WTO交渉、環境問題等について、ASEM(アジア欧州会合)や先進国首脳会議などの場を通じて、相互の連携の強化と深化を図っていきます。

南西アジア地域との関係
 南西アジア地域各国とわが国とは、文化・経済・外交等、親密で友好な関係を築いてきましたが、残念ながらインド・パキスタン両国の緊張が続いています。民主党はこの状況を憂慮し、党幹部や女性議員団等の両国訪問を通じて、両国に対して自制と対話、和解を強く求めてきました。特に、両国の核兵器の保有については自制と核軍縮を粘り強く訴えています。民主党は今後とも、南西アジア地域の安定のために積極的に取り組みます。

アフガニスタン復興支援
 アフガニスタンの復興支援は、アフガニスタン国民のためばかりでなく、中央アジア地域の安定と国際テロや麻薬の取り締りなど国際社会の観点からも重要です。民主党は、いち早くこの点を指摘し、多くの皆様にご協力を頂きながら、現地や日本のNGOと連携して人道支援、復興支援に取り組んできました。これらをふまえて、2002年11月には民主党主催のアフガニスタン女性支援会議を実施するなど、とくに女性や子女教育支援などを重視しつつ、アフガニスタンの復興支援に積極的に取り組んでいます。

中東情勢
 イスラエルの軍事攻勢とパレスチナの自爆攻撃との応酬は、とどまるところを知りません。2003年初めには米国による中東和平の「ロードマップ」(行程表)が公表されましたが、武力衝突が続くなど予断を許しません。政府は、イスラエル軍の自治区からの撤退とともに、パレスチナ自治政府が自爆攻撃停止のために具体的な措置を取るよう、国連等と連携して働きかけるべきです。米国がイスラエルに対して影響力を行使し、平和的にパレスチナ国家の樹立ができるよう、わが国としてもねばり強く働きかけます。

イラク戦争
 
民主党は、イラクの大量破壊兵器開発問題について、国連安保理等を通じた国際協調体制が重要であり、武力行使によらない平和的解決を訴えてきました。イラクに対しては、累次の国連決議の履行、特に大量破壊兵器の完全廃棄を強く要請し、米国等に対しても、国連憲章に定める武力行使に関する国際法の原則に基づき、単独主義的な行動の自制を促しました。2003年3月、米国等が国連安保理での問題解決を放棄し、武力行使に至った際、国連憲章など国際法に照らし問題があるとして、民主党は対イラク攻撃に反対しました。ただし、戦争が事実上終了し、政権崩壊に至った現状においては、被災したイラク国民に対して、人道的見地から、医療・教育・経済分野等において積極的な復興支援を行うべきと主張しています。

イラク特別措置法
 
民主党は、与党に先駆けて派遣した民主党イラク調査団の報告も踏まえつつ、現地ニーズ、占領軍への協力という性格や海外での武力行使の可能性といった憲法上の問題、対イラク・中東政策に関する戦略性等の総合的観点から検討した結果、イラク特措法について、自衛隊の活動に関する項目を削除した修正案を衆議院に提出しました。また、対イラク攻撃支持の根拠とした大量破壊兵器が発見されず、米英両国での情報操作疑惑が深まる中、参議院においては関係大臣等の問責決議案を提出するなど、廃案を目指した取り組みを強化しました。米兵を狙った襲撃などが絶えず、「戦闘地域」と「非戦闘地域」を峻別することが困難であるほか、連合国暫定統治機構(CPA)と統治評議会の関係に関する問題等、民主党は、特別委員会等の場で自衛隊派遣にまつわる問題点をあげ、政府提出法案に反対しました。

アジア太平洋地域協力の推進
 日米中にまたがるアジア太平洋地域が世界経済に果たす役割は、相互依存関係を高めるうえでも極めて大きいものです。アジア太平洋経済協力会議(APEC)の強化及び自由貿易協定(FTA)の推進などにより、地域貿易の自由化を押し進めます。また、様々な民間の経済交流の場等を通じて、開かれた公正で自由な経済活動の場として、アジア太平洋地域の経済活動の環境整備と協力を推進します。また、アジア経済危機の教訓を踏まえ、国際的な投機の監視等を実施し、アジア金融システムの整備と安定にむけて積極的に取り組みます。

国際経済システムへの貢献
 自由で公正、安定した国際経済システムは、グローバル化した世界で、共存共栄をめざすわが国に不可欠です。システムの恩恵を享受するばかりでなく、世界経済の健全な発展をめざして、各国及び世界銀行(IBRD)、国際通貨基金(IMF)、世界貿易機関(WTO)などの国際経済機関と緊密に協力・連携し、安定した国際金融・通貨システムと、環境や人権にも配慮した公正な貿易ルールの確立に積極的に取り組みます。

国連改革
 国連は、紛争解決能力の限界や非効率な運営などの問題が指摘されています。本年3月、米国などが安保理決議を経ずに対イラク攻撃を行ったことにより、国連安保理の機能不全、そして国連の権威の失墜が明らかになりました。国連外交を大きな柱とする日本は、国連が国際の平和、安全と繁栄に一層よく機能するように、国連改革に主体的・積極的な役割を果たすべきです。安全保障理事会の構成や拒否権の見直し、敵国条項の撤廃とともに、国内世論と加盟国の支持を前提にわが国の常任理事国入りをめざします。国連との連携強化という観点からも、日本人国連職員の増加を求めていきます。また、経済社会理事会の審議権限を強化し、開発や社会的な問題での総合調整機能を高めるよう努めます。

ODA(政府開発援助)
 ODAには、様々な疑惑や外交政策としての効果への疑問が呈されてきました。民主党は、ODAを予防外交・人道・人間の安全保障といった外交政策の新たな柱として位置づけ、基本法の制定をも検討しつつ、内容と執行方法を抜本的に改革することが必要と考えます。政府は、「ODA大綱の見直し」を策定し、2003年7月には原案を示しましたが、政府の見直し案は21世紀を見据えた改革案と言えるものか検討が必要です。情報公開や事業評価を徹底させ、透明性・効率性を確保し、インフラやハコモノ等ハード重視型から、教育・人材育成や技術支援、医療・福祉、保健衛生、環境といった人や生活、ソフト面重視型とし、NGOとの連携をさらに強化します。また、包括的・効率的、そして戦略的視点にたった援助が実施できるよう国際開発庁(仮称)の設置について、検討します。

地球規模の問題
 今や私たちの生活は、一国だけでは解決できない地球規模の問題に脅かされています。環境問題、貧困、人権侵害、テロ、麻薬、難民、感染症、地雷除去など、人類の安全保障に関わる国際社会の諸課題への対処は、紛争を予防し和解を図る上でも不可欠です。民主党は、国連の諸機関の改革やODAの活用、NGOとの連携等を図り、各国と協調してその解決に全力で取り組みます。

難民問題
 戦争や紛争のたびに、人種、宗教、政治的意見等を理由とする迫害を怖れ、大量の難民が生じています。日本は他国に比べて難民の受け入れに厳しい実態が、アフガン難民の申請や在瀋陽日本総領事館事件で改めて浮き彫りにされました。人道的見地から難民認定制度の抜本的な見直しと地域社会での受け入れ態勢の整備に着手します。また、そもそも難民が生じないよう、国際的な支援活動や予防外交を積極的に推進します。

ジュネーブ諸条約・追加議定書
 ジュネーブ諸条約等では戦時捕虜や戦傷病者、文民等の戦争犠牲者の人道的な保護が謳われています。文民の保護は、条約中の「民間防衛」の項で住民の避難等として列挙されていますが、わが国は、ジュネーブ諸条約を補完する「追加議定書」に未加入で、有事関連法制においても政府は検討を避けています。民主党は、日本が早急に追加議定書に加入し、人道的見地からジュネーブ諸条約・追加議定書に基づく国内法を整備することを求めています。

国際刑事裁判所(ICC)
 2002年7月1日、国際刑事裁判所の設立条約が発効しました。集団殺戮や人道上の重大犯罪、戦争犯罪、侵略を裁くための国際機関です。従来、戦争等に乗じて重大な犯罪行為が繰り返されながら、内政不干渉の原則等によって具体的な解決を阻まれてきました。日本は、国内法の未整備を理由に批准に至っていません。国際的に看過できない犯罪を裁くという趣旨から、日本は、条約を批准するとともに関連国内法を早急に整備し、ICCが機能するよう国際社会に働きかけていくべきです。

核軍縮政策
 北朝鮮やイラクによる核開発問題、核保有国であるインド、パキスタン間の緊張、ロシアからの核物質・技術の流出等の危険など、核拡散の脅威が指摘されています。核保有国による核軍縮への取り組みと、実効性のある査察体制の確立を含む核不拡散体制の強化が必要です。わが国は被爆国として、非核保有諸国やNGO等と連携をとりつつ、核軍縮の先頭となって国際社会に働きかけていくべきです。

多層・多次元外交
 NGO・民間・地方公共団体等のネットワークと連携し、幅広く厚みのある総合的な外交をめざします。平和と共生をめざす日本のあり方を国民全体で世界に発信していけるように、留学生支援や若者・青少年交流、スポーツ交流等の国際交流活動、NGOや青年海外協力隊等の地道な国際協力活動と連携し、日本の伝統・芸術・文化・技術・考え方などを積極的に発信し、「顔」の見える総合的な外交を展開します。


<安全保障>

 冷戦構造の崩壊後、2001年9月11日の米国における同時多発テロを経て、各国は新たな安全保障の秩序構築に様々な模索をしています。平和への脅威も、従来の大規模な国家間紛争より、国内・地域紛争、テロやゲリラが増え、小型兵器や核・生物化学兵器、サイバー攻撃など形態も多様化し、新たな安全保障のあり方が問われています。民主党は、安全保障対話と信頼醸成による紛争の予防・和解を第一義とし、国連による国際協調体制を常に追い求めつつ、特に、アジア地域での安全保障枠組みの構築をめざして、ARF(アセアン地域フォーラム)等を充実させます。今後とも、日米安全保障体制を基軸としつつ、新たな脅威も含め、わが国と国民の平和と安全・主権・人権が脅かされるような緊急事態に対処できるよう法制・態勢を整備します。

日米安全保障体制
 日米安全保障条約の下で、日米が緊密な同盟関係にあることは、わが国の国益だけでなく、NATOのような集団安全保障の枠組みを持たないアジア・太平洋地域の平和と安定に大きく寄与しています。2001年9月の米国同時多発テロや2003年3月のイラク攻撃以来、米国の行動に変化も見られます。同盟国としての信頼関係を基礎にして、米国が国際法の諸原則を尊重し、国際社会の理解を得られる行動をとるよう、率直な協議を通じて日米安保体制の実効性を高めていきます。

在日米軍基地問題
 冷戦後のアジア太平洋地域の安全保障における米軍のあり方や在日米軍基地の位置づけなど中長期的な視点に立って検討を行い、地域における信頼醸成と安全保障枠組みの構築とともに、在日米軍基地のあり方を不断に見直します。戦後半世紀を経てもなお、過度に沖縄に集中し多くの負担と犠牲を強いている現状を直視し、沖縄米軍基地の国内外への移設を含め、その整理・縮小の実現に積極的に取り組みます。

思いやり予算
 日米安保条約、日米地位協定及び特別協定によるいわゆる「思いやり予算」で在日米軍基地労働者の労務費、光熱費、訓練移転費等を日本が負担しています。近年、本来の目的を逸脱している事例が散見され、不十分ながら米軍の節約努力、光熱費等の削減等の措置が採られました。アジア・太平洋地域の平和といった中長期的な観点から、日米の経費負担のあり方、公私の区分等について、より厳格な執行と不断の検証を求めていきます。

防衛庁改革
 防衛庁は、個人情報リストを違法に作成したことで国民の厳しい批判を浴び、人権意識の欠落と組織的な隠蔽体質を露呈しました。実力組織として、より厳しい規律が要求されるにもかかわらず、調達疑惑等一連の不祥事等の反省が生かされておらず、これでは、「省」への格上げどころか、安全保障に対する国民の信頼が得られません。隊員の意識改革、再発防止の徹底など防衛庁の刷新にきびしく対応していきます。

防衛の基本原則
 民主党では、1999年策定の「安全保障基本政策」で以下の原則を確認しています。(1)個別的自衛権の行使を超えた海外における武力行使は行わない、(2)専守防衛の堅持、(3)実力の保持は個別的自衛権のための必要最小限度、(4) 憲法解釈の変更により集団的自衛権を行使しない、(5)核・生物・化学兵器等の大量破壊兵器を保持しない、(6)自衛権の発動は、急迫不正の侵害で他に適当な手段がない場合で必要最小限度の実力行使に限る、(7)徴兵制は採用しない、(8)文民統制、(9)武器輸出三原則、(10)非核三原則など、国会審議を通じて戦後確立された諸原則の尊重。この原則にもとづき、2003年6月党内に再設置された憲法調査会での議論も踏まえて、今後とも、不断の見直しをすすめます。

中期防衛力整備計画
 政府の中期防は、安全保障環境に基本的な変化はないとの認識のもと、個別装備品の是非論に終始し、同時多発テロの発生や朝鮮半島情勢の変化に対応する新たな安全保障の将来像を示していません。軍事情報技術革命、サイバー攻撃対策、テロ・ゲリラや核・生物・化学兵器対処能力の向上、ミサイル防衛、人的基盤の充実等についてはハード面の整備が中心で、運用態勢整備への施策が不十分です。国際情勢に即応した政策とすべく不断の見直しを求めていきます。

緊急事態法制 
 2003年通常国会において、民主党の主張を大幅に採り入れた武力攻撃事態法等が成立しましたが、冷戦が終結した現在においては、テロ攻撃やミサイル飛来、原子力事故や大規模自然災害など、国民が直面する危機の形態はさまざまに変化しています。これら緊急事態に関しては、国の責務や対処指針を明確にするとともに、国家権力の濫用・暴走を防ぐため、侵してはならない基本的人権や民主的統制の原則が担保される必要があります。民主党はこれらの点を明記した「緊急事態基本法」を制定するとともに、緊急事態への迅速な対応を可能とする日本版FEMA(危機管理庁)の設置をめざします。

国民保護法制 
 有事の際には、自衛隊等が武力攻撃事態に対処する一方で、国民・住民に被害が及ぶ可能性が生じます。現在、政府が検討している国民保護法制には、住民の避難・救援・被害最小化などが定められることになっていますが、国民の基本的人権が侵害されないよう、必要な措置の実施を行うよう求めていきます。また日本版FEMA(危機管理庁)の設置により、これら国民保護のための措置が円滑に行われるようにします。

不審船・武装工作船問題
 武力攻撃事態法等が成立しましたが、拉致の手段、様々なスパイ工作、麻薬等の禁制品の密輸等に使われた疑いのある不審船や武装工作船に対しては、毅然たる対応が必要です。不審船に対する警戒態勢、重武装をした工作船に対する武器使用基準、官邸の危機管理体制のあり方、海上保安庁、警察庁と防衛庁及び外務省との連携等について、さらなる検証を行います。

国際テロへの対応
 2001年9月11日の米国同時多発テロ以降、テロ撲滅への国際社会での協調が進んでいます。憲法上、海外での自衛隊の活動は慎重でなくてはいけませんが、わが国も国際社会と協調して、憲法の枠内で毅然とした対応が必要です。一方、テロの背景には、社会的格差や不平等などがあり、わが国としては、紛争予防の観点で、テロの原因を取り除くために、国際的な対話や協力の促進、貧困問題や人間の安全保障、中東和平への取り組み、人道援助、復興開発支援等など、日本の特性を活かした外交努力を第一義とするべきです。

テロ対策特別措置法による自衛隊派遣
 
民主党は、「テロ特別措置法」には、自衛隊の海外派遣への民主的統制の観点から、国会の事前承認を求めて反対しました。しかし、2001年11月の自衛隊による「対応措置」は、期間・活動範囲等が妥当と判断し承認しました。政府は、2度の延長後、12月、イージス艦の派遣を決定しましたが、民主党は、派遣の必要性、憲法・法律上の疑義、イラク問題等との関係、現地での運用の問題点、国会での説明、派遣決定の手続き等を総合的に判断し、シビリアン・コントロールの観点から反対しました。

テロ対策特別措置法の延長問題
 
イージス艦の派遣も加え政府は、テロ対策特別措置法に基づく「協力支援活動」を継続し、2003年5月に再延長しました。アフガニスタンにおける作戦行動も事実上収束に向かったと見られることから、もっぱら海上における給油活動に主眼を置く活動が妥当なのかについて、検討が必要です。政府はイラク特別措置法の提出に併せ、11月初めに期限を迎えるテロ特措法の延長を敢えて第156国会に提出しましたが、民主党は、改めて自衛隊派遣の継続も含めた抜本的な見直しが必要であると主張し、政府案は継続審議となりました。

弾道ミサイル防衛構想への対応
 ブッシュ政権は、対弾道ミサイル(ABM)制限条約の破棄や大陸間弾道弾の核弾頭削減をする一方で、ミサイル迎撃システムの再構築など新たなミサイル防衛構想に踏み出しています。「日米共同技術研究を引き続き推進」とのわが国の立場も、大幅な修正を迫られる可能性があります。弾道ミサイル防衛は、抑止的、政治的効果や日米同盟強化の側面と技術的可能性や費用面から慎重な検討が必要ですが、緊迫する北朝鮮情勢もあり、検討を放置すべきではありません。事態の推移を見極めた上での積極的な対応が必要です。

情報収集・分析体制の強化
 専守防衛を国是とするわが国は、情報収集・分析・対応能力の向上が喫緊の課題です。不審船・武装工作船やミサイル発射の意図を知るのも、専門家による継続的かつ徹底的な情報収集・分析が前提です。十分なチェック機能を付与したうえで、情報収集衛星の主体的な運用、情報本部の充実、国連、各国政府、NGO等との連携を積極的に進めるべきです。

国連平和維持活動(PKO)
 PKOは、国民の間にも理解と支持が定着しており、東ティモールにも、かつてない規模でPKOを派遣しています。紛争停止・武装解除の監視、緩衝地帯における駐留・巡回等のPKF活動が法改正によって認められたことを受け、今後は、武器使用基準のあり方の検討も含め、国際的な平和の維持に対して貢献していくべきです。また、発展するPKOの要請に応ずべく積極的な検討を重ねていきます。中東情勢等が不透明ななか、NGOなどとも連携し、経済面、行政面での復興協力等を検討することが重要です。

安全保障対話の促進
 米国、アジア諸国、ロシア、EU、豪州などと、安全保障関係者の交流、基地や施設への相互訪問、演習などの事前通報・情報公開、通信連絡手段の設置などの信頼醸成措置を積極的に実現していきます。また国際テロや海賊情報も含めて安全保障情報の共同管理や情報交換、情報衛星の共同運営の提案などについて、憲法の枠内で主体的・積極的なイニシアティブを果たすべきです。

アジア地域の安全保障枠組み
 アジア太平洋地域の安全保障では、日米安保体制を柱としつつ、多国間安全保障対話の枠組み構築をめざします。アセアン地域フォーラム(ARF)、ASEAN+3など、既存の仕組みを充実・発展させるとともに、いまだ枠組みのない東アジア地域において「北東アジアフォーラム」等の構築に向けて、同地域における信頼醸成を高め、安全保障対話を進めるようリーダーシップを発揮していきます。

国連の安全保障
 国連の安全保障に対しては、安全保障理事会の改革、拒否権行使のあり方について検討する一方、国連のPKO、紛争予防・和解等の活動には、日本も主体的・積極的に取り組むことが重要です。今回、米国のイラク攻撃に際し、国連安保理のあり方が問題にされたところであり、改めて、国際の平和の維持に関する安保理の役割について、再検討するとともに、国内世論と加盟国の支持を前提に日本の安保理常任理事国入りをめざします。


2003年9月18日 戻る政策集目次