2003年10月05日 民主党政権政策/マニフェスト 戻る目次前へ次へ

五 国民の命と健康を守る つよい社会を実現します。

社会全体の安全性が低下し、私たちの身の周りが危険に囲まれています。生命と健康が尊ばれ、国内外でモラルが行き届く社会を再建して、国民の命と健康を守ります。

1 健やかさを保つ生活へと改善します。

(1) 早期発見・治療で安心の医療を実現します。診療報酬改定プロセスの透明化をすすめます。

受診抑制を解消し、早期発見、早期治療を促進するためにも、平成18年の診療報酬改定時点で、健保本人の医療費自己負担は2割に引き戻すとともに、医療制度改革、高齢者医療制度改革を進めます。

また、診療報酬改訂時には、薬、医療材料、医科点数、歯科点数、訪問看護等についてのデータや価格データの公表を行うとともに、パブリックコメントに付すこととします。また、診療報酬改訂作業を行う中央社会保険医療協議会の委員構成を診療側、支払側、公益側(患者側を含む)それぞれ同数とし、その議事録を公開します。これらの改革は平成17年度から順次、すすめます。

(2) 350カ所の小児救急センターを整備し、小学生卒業までの医療負担を1割に軽減します。

小児救急医療体制を整備し、政権取得後3年以内に、全国で350カ所以上の小児救急センター病院を指定して、いざという時の受け入れ体制を確立します。

また、小児医療に関する診療報酬の適正化を図る一方、健康保険における小児医療の患者負担を、3歳未満については2割から1割へ、3歳から小学校卒業年次までは3割から1割負担へと軽減するため、平成17年度までに改正案を国会に提出します。必要な国の予算は約450億円と見込まれます。国費については冗費の振替で行い、健保については財政状況に配慮します。

(3) カルテ開示・医療費明細書発行の義務化を実現します。

患者と医師の信頼関係と協力をさらに良好なものとするため、患者に対するカルテの開示と医療費明細書の発行を義務付ける法律案を、16年度中に国会に提出します。

(4) 「食」の安全を一元的に厳しくチェックします。

輸入食品検査や食品流通規制、食品表示制度などを一元的に扱い、食品の安全規制を強化するため、平成19年度までに、農水省と厚労省に分かれている「食品リスク管理」業務を内閣府設置の「食品安全委員会」に一本化して、公正取引委員会並みの権限を付与し、消費者代表の委員選任など抜本的な強化をすすめます。予算は平成19年度において約200億円を必要としますが、厚生労働・農水両省の予算を振替ます。

(5) 安全を最優先し、原子力行政の監視を強めます。

原子力に関する行政機関を推進と規制に明確に分離し、安全を最優先させます。原子力の安全規制機関を経済産業省から切り離して、内閣府に独立した行政機関を新たに設置し、強力かつ一元的なチェック体制を築きます。

平成17年に国会に法案を提出し、18年度よりの施行をめざします。


2 犯罪に厳しく対処し、安全な地域を取り戻します。

(1) 警察官の3万人増員により、落ち込んだ検挙率を回復させます。

5年間で48%に落ち込んだ凶悪犯罪の検挙率を5年前の水準である84%に回復させることを目標とし、4年間で地方警察官を3万人以上増員して、「地域・刑事・生活安全」警察機能の拡充、防犯パトロール体制の強化と「空交番」解消をすすめます。平成16年から4年間、毎年6000〜7000人を増員し、毎年約400億円ずつ、4年後には1600億円の予算を確保します。

また、市民の声を警察行政に反映させます。平成17年通常国会に警察法改正案を提出し、都道府県公安委員会に、独自の事務局を持った市民・有識者等のオンブズパーソンからなる「苦情処理委員会」の設置をめざします。

(2) 仮釈放のない「終身刑」を創設し、凶悪犯罪の罰則を強化します。

罰則が軽すぎると批判のある凶悪犯罪について罰則を強化し、仮釈放のない「重無期刑」の創設を図るとともに、刑罰全体の見直しをすすめ、政権獲得後3年以内の刑法改正をめざします。

(3) ドメスティック・バイオレンス(DV)防止法を強化します。

平成16年中に、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(通称:DV防止法)の改正案を国会提出し、保護命令対象を元配偶者・子ども・親族などに広げます。脅迫行為や電話による接触の禁止、退去命令や接近禁止命令の期限延長など、保護命令制度の改善を図るとともに、警察改革による相談体制等の強化をすすめます。

自立支援体制の強化とともに民間シェルターに対する事業支援を増額することとし、年間約25億円の予算を平成16年度から確保します。

3 国連中心主義で世界の平和を守ります。

(1) 自立的な外交と国連機能強化をすすめます。

受け身の外交姿勢を改め、日本を明確な外交意思をもつ国に変えます。

日米同盟を本当の意味で進化させるために、「協力すべきは行う、言うべきは言う」ことを対米関係の基本姿勢とし、日米関係を成熟した同盟に強化します。

アジア地域における相互協力と信頼醸成をすすめ、FTA(自由貿易協定)の締結促進など経済協調の推進、地域的安全保障、そして環境や教育、犯罪対策などを含めて、アジアの一員としての連携と協力を強化します。

国連の人道支援、環境対策、教育や人権、紛争予防活動などに対して積極的な貢献をすすめながら、国連改革に積極的に取り組み、国内世論と加盟国の支持を前提に日本の安保理常任理事国入りをめざします。

国民の間にも理解と支持が定着しているPKOに関しては、発展するPKOの要請に応ずべく、派遣される隊員の武器使用基準の見直し、参加条件・規模・期間等に関する国会の関与のあり方等について積極的に検討を進め、日本として、国際平和の維持・構築に正面から関与できるようにします。

(2) 拉致事件の解決など北朝鮮問題に正面から取り組みます。

拉致事件の解決は、日本の主権、人道上の見地から早急な解決が重要です。被害者家族のすみやかな帰国、事件の全容解明を北朝鮮に強く迫るとともに、国連をはじめ国際世論に広く働きかけます。また、脱北者問題に積極的に取り組むとともに、不審船等による覚醒剤事件の取締りなど海上警備体制の強化を図ります。

核・大量破壊兵器の問題は、地域の安全にとって重大であり、6者協議の国際的取り組みを評価し、将来この地域での信頼醸成機構に発展させることを展望するとともに、さらに国連を加えた取り組みを充実させます。

(3)改めてイラクへの復興支援のあり方を見直します。

米国等のイラクへの武力行使は、国連憲章など国際法に違反するものであり、容認できません。戦闘が続くイラクへの自衛隊派遣を規定しているイラク特措法については、戦闘地域と非戦闘地域との区別もつかないこと、実質的に米英軍による戦闘・占領行為を後方支援することになることなどの観点から、これに基づく自衛隊の派遣は行わず、廃止を含め見直しを図ります。

しかし、政権崩壊に至った現状の下、被災したイラク国民に対して、医療・教育・経済分野等の人道・復興支援については、積極的に取り組みます。速やかにイラクに主権を委譲していこうという国連等の取り組みを支援し、復興支援を目的とする国際的な取り組みに対しても、その拠出先・使途・運用などに照らした適切な財政支援を含め、積極的に関与します。

イラク国民による政府が樹立され、その要請に基づき安保理決議がされた場合には、わが国の主体的判断にもとづいて憲法の範囲内でPKO、PKFの派遣基準を緩和し、自衛隊の活用も含めた支援に取り組みます。

(4) 犯罪対策の強化など「日米地位協定」の改定に着手します。

わが国の外交安全保障の基軸である日米同盟を健全に運営するため、凶悪犯罪容疑者について起訴前に日本の司法当局に引渡しを認める原則や、米軍施設への日本法令の適用原則、環境保全条項などを盛り込むことをめざし、日米地位協定の改定に着手し、3年を目途に結論を出すことを目標にします。なお、協定改定の交渉中も、アジア情勢等を踏まえつつ、在日米軍基地の整理・縮小を追求します。

(5) 大使等の民間登用率を2割に向上させます。

「日本の顔」として柔軟かつ効果的な外交を展開するため、大使等(特命全権公使を含む)の任用を、学者、NGO関係者、首長や政治家経験者などに広げ、日本人の顔の見える活力ある外交を推進します。大使等の民間人登用を、現在の6%から当面20%を目標とし、政権獲得後の4年間で達成します。

(6) 地球環境保全に向けた基本法を制定し、環境外交を展開します。

人類と自然との共生の理念にもとづいて、日本が世界に貢献する戦略的外交課題として、地球環境保全活動をすすめます。平成17年度末までに、「地球全体の環境保全」という理念を明確にし、地球環境保全に向けた基本法案を国会提出し、その成立をめざします。

(7) 国民を守ることができる防衛力整備への転換を図ります。

平成17年中に新しい防衛構想を策定して、ミサイルの脅威やテロなど多様な危機に柔軟に対応できるようにします。

新しい防衛構想では、(1)陸上自衛隊の削減、(2)テロなどに対処する特殊部隊導入強化、(3)予備自衛官の拡充、(4)機甲師団の廃止、戦車、火砲の20%縮減、(5)陸海空3自衛隊の統合運用強化、(6)軍事技術のハイテク化・IT化、(7)ミサイル防衛力の向上―などを5年以内に実現することをめざします。

また、弾道ミサイル防衛については、その必要性を踏まえ、費用対効果など総合的観点から検討を進めます。

これらに必要な予算は約5000億円となりますが、従来の防衛予算の中での振替で対応します。


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