1980年11月16日 第二回全国大会

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あらためて市民の党として

 社会民主連合第二回全国大会は十一月十六日午前十一時、東京トラック事業健保会館で開かれた。大会は結成以来二年八カ月ぶりで、全国各地から二百名が参加して熱心な議論を繰り広げた。

 大会は栗原一郎総務委員長の開会の辞のあと、議長に菊地光治(北海道)、今西良一(大阪)、山田俊作(福岡)の各氏を選出し、田英夫代表が「結成以来二年八カ月ぶりに一つの使命感をもって緊張を覚えつつ本大会を開いた。新たなる連合の再構築と市民の政治への参加を課題にして国民の期待にこたえたい」とあいさつ。

 来賓としては、加藤シヅエさん「女性にも開かれた組織づくりを」、鈴木健勝氏(商業労連)「社民連は私たちの運動と波長が合います」、岩根邦雄氏(生活クラブ生協)「これからの運動は組織の大小ではなくどこに問題をみつめるかだ」と、三氏から励ましの言葉があり、また大和製缶労組の中山五十二委員長、上林与市郎氏(元代議士)が紹介された。

 続いて楢崎弥之助書記長の「活動経過報告」、阿部昭吾財務委員長の「決算報告があり、質疑応答の後承認。また秦豊副書記長から参議院選挙における全国の同志の支援と協力に謝意が表明された。

 午後、規約改正につづき「八〇年衆参同時選挙後の新局面における政治方針」「第一、第二小委員会の提案」「八一年度予算案」が提案され、熱心な討議が行われた。「政治方針」について原田代議員(東京)より修正案が堤案されたが、満場の拍手で原案通り承認。

 大会決議は「カンボジア難民救援のために」 「金大中氏救援に幅広い力の結集を」「冷害対策」が採択。

 最後に役員改選が和田役員選考委員良より報告され、選考委員会で選ばれた役員を満場一致で承認。新役員を代表して田代表は「いろいろな意見を一つにまとめて、みんなの力として前進することが一番大切である。今大会を新しいスタートにして日本の政治変革の先頭に立つ決意をちかいあいたい」と力強く決意を表明。

 江田五月副代表が「日本の政治はいま大きな混迷の中にあり、私たちも模索していかなければならない。大会が無事終了したことに対し心からお礼を申しあげる」と閉会の辞をのべ、第二回大会の幕を閉じた。

 大会論調

質問 一人年千円の本部会費以外の、県、市組織の会費割当はどうなるのか。

答弁 「分権」と「自治」にもとづいて、それぞれの社民連で決めていただきたい。

質問 政治方針を文書化する時は、中道四党間の関係を配慮すべきだ。

答弁 大きな連合をくんでいく場合十分配慮し、相互理解を深めていきたい。

 政治方針については、原田代議議員が修正案を提出。これによると「連合政権構想は……保守勢力と先行的に連携することはしない」「院内交渉会派の問題は全面削除」という内容。

 これに対し楢崎書記長が次のように答弁した。
 ――院内交渉会派の問題については、夏期研修会でも提起したが、政治は固定化したものではなく、非常に流動的であり、特に八〇年代は激動、流動の時代といわれている。そのつど政治情勢がかわっていく。

 従ってわれわれは的確な目標、戦略はもちながら、その時どきの政治情勢に適合した戦術をとらざるをえない。

 まず連合の考え方については、結党の時も含めてこれまで連合の考え方、視点、理念はこうであると、ずいぶんくわしく提起してど賛同をいただいてきている。

 例えば院内交渉会派と連合への位置づけはどうなるのか、選挙協力から選挙協定、政策共闘から政策協定へと、連合との関係はどういうことか、整理をしてみなさん方のご理解を得てきたつもりだ。

 その積み重ねの上に立って言えば、今日の政治情勢ではこの目標に対してこういう道筋以外にないのではないのか、選択はいろいろあるけれども一つの実験としてこういう道筋もあるが実証してみようではないか、ということで選択をしたわけだ。

 いつの日か、どの政党かは別として、この実験は経なければならない大連合へのステップになる。私どもはそれをやってみよう。従って院内会派を一にすることも大連合への一つの道筋となる。

 本部に対する要望と意見
 「党の機関以外にも会員の意見を聞く場をつくってほしい」
 「組織の大小にかかわらず代議員権を与えるべきだ」
 「大都市中心の党運営ではなく小さな地方にもっと目を向けて欲しい」
 「文書、機関紙にむずかしい言葉は使わない方がよい」
 「手づくりの党をめざし市民委員会の提案を生かせ」
 「具体的な運動を地域で行って交流を深めよう」
 「婦人の声が届くような運動方針をのぞむ」
 楢崎書記長は、これらの要望や意見について新執行部で十分配慮して対応したいと答えた。


  役 員

代   表
副 代 表
  同
  同
書 記 長
運営委員
  同
  同
  同
  同
  同
  同
  同
  同
 田   英 夫
 大 柴 滋 夫
 江 田 五 月
 菅   直 人
 楢 崎 弥之助
 阿 部 昭 吾
 秦  豊
 栗 原 一 郎
 貴 島 正 道
 西 風 勲
 安 東 仁兵衛
 桜 井 康 信
 大 亀 幸 雄
 三 上  隆
運営委員
  同
  同
  同
  同
  同
調整委員長
調整委員 
  同
  同
  同
監査委員
  同
  同
 川 島  実
 三ツ松  要
 矢 野 凱 也
 原 田 勝 夫
 片 岡   勝
 小 山 康 夫
 守 谷 吉 男
 菊 池 光 治
 北 田   繁
 今 西 良 一
 吉 永 正 人
 杉 本 武 夫
 的 場  茂
 平 柳 尚 志

代表挨拶(要旨) 設定すべき二つの課題
田 英 夫

 結党以来、すでに二年半、率直にいってこの間、われわれ社民連は生きのびるのが精一杯でありました。

 しかし、いま社民連はこうした消極的立場ではなく、積極的な意欲に燃えていると確信しています。

 社民連への期待は、新しい機関紙に多くの有識者から寄せられているように、圧力団体中心の政治を改め、「生活者の政治」を重視すること、ポスト産業社会を展望して「エコロジー」に着目すること、「市民参加の新しい民主主義」を確立すること、「自由」を政治改革の中心に据えることなど、貴重で、かつ鋭い問題が提起されています。

 それらはいってみれば、既成の政党にない新しい価値観と問題意識、そしてフレッシュな感覚をもった党への期待であります。

 私たちが結党以来めざしてきた「市民の政治」「市民の党」という旗じるしがこの二年余の試練を経て、確かなものとなりつつあることを誇りにしたいと思います。

 前回の衆参ダブル選挙の野党の敗北で連合は一時遠退いたかに見えますが、私たちは連合再構築へむけて次の二つの課題を設定したいと思います。

 第一は、新たなる連合の再構築は、社公民連合の枠を超える改革的保守との提携という広がりを抜きにして、国民の現実的な信頼をえることはできません。

 私たちは「社会民主主義勢力を基軸とした改革的保守との提携」という課題を設定しましたが、私はかりにこれを連合構築の横軸と呼びたいと思います。

 しかしもう一つ、いわば縦軸ともいうべき課題が必要だと思います。それは市民の政治への参加と登場であり、その活性化であります。新しい連合という新しい革袋に盛られるべき新しい血潮――それは市民の政治への参加と登場であります。

 この縦軸と組み合わされるとき、政党連合という軸も裾野を広げ、生き生きとしたものになるでありましょう。

 次に、最近の社会党に触れたいと思います。

 学者グループの提言をある程度とり入れ、「道」の改訂の討論が開始されようとしていますが、しかし、この提言は、長い間この党を歪めてきたさまざまなマイナスを修正されているとはいえ、いま求められている新しい問題意識や方向性を見出すことはできません。

 例えば、社会民主主義への転換という確認がありません。また、「自由」「エコロジー」「生活者」「市民」等々の問題意識や、ポスト産業社会における社会改革のビジョンを見出すこともできません。

 われわれが社会党に心から期待することは、歴史的な転換であり、再生であります。

 ゴーデスベルク綱領制定に踏み切った西ドイツ社民党、解党を賭して新しい党に生まれかわったフランス新社会党に匹敵する改革であります。

 冒頭、私の考えている問題意識を述べさせていただきました。少ない時間ではありますが、皆様の熱心なご討議をお願いして挨拶といたします。


1980年

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