1980年 ’80参議院選挙〜ダブル選挙

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参議院選挙政策(T)

外交・防衛政策  積極的な平和のための投資を!

 いかなる理由をつけようと、今回のソ連のアフガン侵略には反対です。このように他国の主権を侵害し、武力によって政変を企てることは許せません。

 他方、アフガン問題に対するアメリカの対応も、これを全面的に支持するわけにはゆきません。オリンピックボイコットを始めとするカーター大統領の政策は、いわば過剰反応というべきです。

 世界の大勢は依然として緊張緩和(デタント)であり、かつてのような冷戦状態ではありません。またそうさせてはならないのです。この点で、西ドイツやフランスなどヨーロッパ各国政府の態度は冷静です。ソ連のやり方を批判しながらも、平和的話し合いで問題解決を追求しているからです。

 われわれは、アフガン問題を逆用して、対ソ強硬外交を主張したり、軍事力増強を要求する動きに反対です。アメリカの“軍事費をGNPの一%にせよ”という要求に反対します。

 わが国の平和と安全は、軍事力だけに頼っていては保障できません。それよりも、普段から近隣諸国との友好関係をつくりあげ、軍事紛争の生じるのを未然に防ぐことの方がはるかに重要です。日本はすでに経済大国です。その経済力を使って、「平和のコスト投資」をすべきです。

 具体的に提案します。

(1) 北朝鮮に積極的な経済援助を!
 極東における唯一の緊張の源は朝鮮半島であり、三八度線です。いま南北鮮の経済格差は大きい。日本は北朝鮮に経済援助をして、その成長を保障し、南北対話のできる経済的条件をつくるべきです。これは平和のための投資となるでしょう。

(2) アジア開発銀行への援助の強化!
 アジア開銀につよい経済援助をして、ASEAN諸国の経済発展に尽力すべきです。

 以上の二つの援助費として五千億円をとりあえず投資すべきだと思います。アメリカは日本の防衛費をGNPの〇・二%ふやせといっていますが、〇・二%は約五千億円です。軍事力に投資でなく、「平和の投資」とすべきです。

(3) 国連機関を日本へ招聘しよう!
 スイスやオーストリアは、小国ながらさまざまな平和のための努力をしています。

 その一つが国連などの国際機関を誘致して、国際的和解と交流の場をつくっています。日本にも国連その他の諸組織をつくって、平和の環境づくりをすべきです。すでにある国連大学をもっと充実するとか、国連のアジア機関をつくるとか、技術開発の組織をつくるなどいろいろ考えられます。

 わが国の経済力をそうした方向に有効に使うことが、一番知恵のある平和外交となるのです。

(4) ベトナム難民へ支援を!
 べトナム難民への援助をつよめるべきです。難民うけ入れの予算は僅か十八億円であり、焼け石に水の状態です。難民の日本定住枠(現在五百人)を拡大し、もっと予算もふやすべきだし、血の通った救援活動が必要です。

(5) 宇宙船「地球号」的外交を!
 現在、世界は資源・環境・食糧といった、どの面からみても、国際的相互依存関係にあり、対立や軍事的紛争を極力避けなくてはなりません。小さな紛争でもたちまち国際問題に発展し、各国民の経済生活を混乱させかねないからです。

 私たちは、平和で調和のとれた新しい国際秩序をつくり上げなくてはならないのです。これが日本の外交の基本路線でなくてはならないと思います。そのためには、先進国が軍備で資源を浪費したり、石油・エネルギーを無限に消費するという経済活動を改め、南北格差をなくして、地球的規模での公正で平等な社会を創ってゆかなくてはならないのです。


物価をめぐる三つの提言  料金値上げの情報を公開せよ!

 物価問題は当面、国民生活にとって最も重要な課題です。もしも物価上昇がこのままつづき、インフレにでもなれば、せっかく上むいてきた景気にかげりが生じ、不況にすらなるかも知れないからです。

 政府は物価上昇率を六・四%に抑えたいと言っていますが、大丈夫でしょうか。

 公共料金の値上げラッシュがつづくので心配です。すでに、米価や電力・ガス料金の値上げは決まりましたが、これから、煙草、国鉄運賃、健康保険料、NHK料金、郵便料金等の値上げがひかえています。恐らく公共料金が軒並み上がってゆくと、それが再び物価にはねかえり、全体として二%ほど物価を底上げすると指摘されています。

 私たちはこうした状況のなかでの便乗値上げを警戒し、石油ショックのときのような混乱を起こさせない必要があると思います。私たちは、いま公共料金値上げを前にして次のような政策を提言いたします。

(1) 値上げの根拠となる情報の公開!
 先の電力・ガス料金値上げのときにもそうでしたが、経営の情報が国民や消費者に十分に知らされているとはいえません。物価審議会の内容もほとんど公開されていません。公聴会をもっとふやし、消費者の意見を反映させることを保証すべきです。 NHK料金問題では民放との比較で秦豊が若干の分析をしています。

 消費者には四つの権利があるとされています。(a)「安全」、(b)「選択する権利」、(c)「情報を知る権利」、(d)「アクセス権」です。

 私たちは闇くもに値上げ反対といっているのではなく、これらの権利を保証する合理的システムをつくり、消費者の納得ゆく値上げをしなくてはならないということです。その第一の保証は「情報の公開」です。

(2) 独禁法を強化して便乗値上げを防げ!
 公共料金は市場メカニズムとなかなか噛み合わず、事実上のカルテルになりかねない。カルテルによる便乗値上げを防ぐためにも、独占禁止法を強化して経営体をチェックする必要があると思います。

(3) 低所得層の低料金化!
 真の公正を実現するためには、公共料金にナショナルミニマム制を導入し、その範囲内の料金を安くすることである。そしてそれを上まわる消費に対しては一定の高料金とするという制度の確立である。これこそ率先して政治がやらなくてはならない物価政策です。


参議院選挙政策(II)

エネルギー政策
 21世紀へむけて“生き方”と“社会システム”を変えよう
 (脱石油とソフト・エネルギーへの転換)

 石油大量消費を前提にした高度成長の時代は確実に終わった。石油依存型の経済から脱却し、省エネルギーを着実に進め、経済の安定成長の実現こそこれからの課題だ。ここ数年間、わが国の石油消費は横ばいとなり、ほぼ安定化した。人びとのエネルギーに対する考え方も大きく変わり、大量浪費型意識から脱けだしつつある。企業の側の省エネ努力も次第につよまり、そのための設備投資も進んだ(省エネ率九・八%)。

 だが、長期的展望にたつエネルギー政策はまだ確立されてはいない。原子力発電が代替エネルギーの主力となりうるかのような幻想や、石油火力発電を増設(石油の四〇%しか電力とならない火力発電は国際的にも非難の的となっている)しようとする計画がいまなおあるからである。

 われわれは21世紀にむけてのエネルギー政策の転換は、かなり大胆でなくてはならないと考える。その基本軸は、ソフト・エネルギーの大幅な実用化と石油・原発などハード・エネルギーからの大胆な撤収政策の採択である。

 以下に、われわれの21世紀へむけてのエネルギー政策を提案する。

一、長期エネルギー政策は、(1)国際摩擦を避け、適正な石油資源の配分・供給という秩序形成を目指し、(2)環境破壊を防止するという枠組みのなかで策定されなくてはならない。

二、21世紀を展望した長期エネルギー戦略は次の通り。

(1) 石油消費量は三億キロリットルにとどめ、一九八〇年代前半で石油ゼロ成長を実現する。一九九〇年代には石油輸入縮小過程に入り、二〇〇〇年には輸入を一億五千万キロリットルに半減させる。

(2) 一九八五年には、ソフト・エネルギーを実用化し(発電で四千万キロワット、熱利用で数十万キロリットル程度)、次第にその比重を高め、一九九〇年代に発電におけるソフト・エネルギーの比率を二分の一、熱利用のなかでのソフト・エネルギーの比率を三分の一にする。

(3) 一九八〇年代はハード・エネルギー依存から脱却することを目指し、原発・石油火力の現状凍結、石炭火力の漸増策をとる。一九九〇年代後半より発電部門はハード・エネルギーからの撤収に入る。

三、日本経済の特徴からみて、社会資本の充実や住宅都市政策の充足のため、今後十年〜十五年はエネルギー消費の伸びを必要とするから、その需要増はソフト・エネルギー開発と省エネルギー政策の強力な推進で補う(省エネ率一五%)ことにする。

四、ソフト・エネルギーの開発を強力に推進し、エネルギー源の多様化・分散化・小型化を推進し、早期実用化をはかる。

(1)発電用ソフト・エネルギー利用の21世紀早々における実現目標
  中小型水力発電  四、〇〇〇〜五、〇〇〇万kw
  風力発電           二、〇〇〇万kw
  太陽・地熱・波力など     二、〇〇〇万kw
  計        八、〇〇〇〜九、〇〇〇万kw

(2)熱・液体燃料その他の利用形態のソフト・エネルギー利用目標(21世紀)
  太陽熱(ソーラーハウス他)  六、〇〇〇万kw
  バイオマス・廃棄物等     三、〇〇〇万kw
  計              九、〇〇〇万kw


五、ソフト・エネルギーヘの転換における地方自治体のイニシアティブは大きい。ソフト・エネルギーは比較的小型であり、地域的条件によっていかなるエネルギー源の選択が適切かが決まるという特色をもつから、地方自治体のイニシアティブと住民の参加によってそれが促進される可能性をもつ。また産業用エネルギーは、当分ハード・エネルギーに固執するだろうから、まず、民生部門をソフト・エネルギーに切り替える先導部門とする。この点でも自治体の果たす役割は大きい。

〈 地方自治体の課題 〉
(1)最終エネルギー消費形態の調査・分析
(2)当該地方におけるソフト・エネルギーの供給計画作製
(3)ソフト・エネルギー開発のための行政指導・誘導政策・住民教育活動の展開個別的政策

六、個別的政策
(1)産業用エネルギー(六〇%)
(a) 発電では、原子力と石油火力の増設は中止し、現状で凍結する(モラトリアム)。故障つづきのいくつかの欠陥原発は廃炉処分とする。産業用エネルギー全体の省エネルギー策の強化。
(b) ソフト・エネルギーを開発し、それによる発電を実用化し、その比率を急速に高めてゆく。石炭火力はこの間のつなぎとして、一定期間、漸増して利用する。

(2)輸送用エネルギー (一六%)
(a) 公共交通機関の拡充とマイカー規制で消費を削減する。
(b) バイオマスの開発でガソホールの実用化を急ぐ。

(3)民生用エネルギー(二四%)
(a) 省エネルギー策と節電を強化し、またそのための技術開発を推進する。
(b) ソーラーハウス等太陽熱利用、バイオマス利用、廃棄物の再生資源化の促進を強力に進める。


物価政策  物価問題への三つの対応

一、公共料金対策
 当面の物価問題の焦点は、公共料金値上げによる国民生活の圧迫とそれに伴う消費者物価全体への波及効果である。公共料金の決定に当たっては、次の三点が保証されなくてはならない。

(1) 料金値上げの根拠となる情報の公開
 公共企業体や公益企業の経営内容に関する情報、石油値上がりによる料金アップの具体的根拠についての情報を公開することが必要である。料金値上げの審議内容の公開、公聴会の開催をすべきである。この場合、公聴会には、消費者代表や地方自治体の代表を必ず参加させなくてはならない。

(2) 独禁法強化による便乗値上げの防止
 公共料金は必ずしも市場メカニズムと噛み合わず、事実上のカルテルになりかねないため、便乗値上げ防止には独禁法を強める必要がある。公共企業体や公益企業の経営内容により料金格差が生じるのは当然であり、料金に地方差のでるのも止むを得ない。要は、国民の信頼のえられる合理的料金決定過程をつくりだすこをある。カルテル的料金値上げこそ、根拠なき値上げや便乗値上げの原因となり、国民生活を圧迫する。

(3) 低所得層の低料金制の導入と累進的料金制
 真の公正を実現するために、公共料金にナショナル・ミニマム制を導入し、その基準までは低料金とする。この基準を越える消費に対しては、累進的に率を高めた料金を課す制度をつくるべきである。


二、土地・地価対策
(1) 土地税制の抜本的強化
 (a)土地譲渡所得税率を格段に高率化し、(b)実現しないキャピタル・ゲインに対しても、新税を創設して高い税率の税を課す。
 土地の実質価格と公示価格とを一致させ、土地保有税を高率化(五〇%)する。この場合、三〇〇〜五〇〇平方メートル以下の宅地や教育施設など公共的施設は例外として、右の新しい課税対象から除外する。

(2) 農地の選択的保有と農地の宅地並み課税
 三大都市圏で十四万ヘクタール(東京圏で六万ヘクタール)にのぼる市街化区域内の農地が、土地・住宅問題解決の中心問題である。また地価対策の焦眉の課題でもある。

 これらの農地に宅地並み課税をすることによって土地放出を促進し、地価安定をはかることが急務である。ただし、農民には農業を営む権利は保証し、将来三十年にわたって農業を選択する意志がある場合は例外として、これらの農地には宅地並み課税はしない。

(3) 土地利用の公的(国・自治体)管理
 (a)国・自治体が一定区域内の土地の先買権を確立する、(b)国・自治体はこれらの土地に、長期的都市計画に基づき、生活関連資本を投資する、(c)形成された宅地を需用者に譲渡する(公的機関は土地所有を自己目的としない)、(d)以上の財源は、土地譲渡所得税及び土地保有税を目的税化することによって創りだす。さらに地方自治体の場合は、地方債発行をもって財源に当てる道も考慮する。

三、消費者物価対策
 当面、総需要を抑制し、需給バランスを安定させて物価便乗値上げの条件をとり除くことに全力をあげる。必要があれば公定歩合をもう一度アップする。

 消費者物価の急上昇や買い占め、便乗値上げが開始された場合には、物価二法(「国民生活安定緊急措置法」「生活関連物資等の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法」)を発動して、立ち入り検査などの措置をとり、消費者物価の値上がりを抑える。また物価動向に関する情報を正確かつ迅速に国民に公開し、心理的動機からインフレの生じることを極力抑制する。


政治腐敗防止対策
  腐敗政治を一掃する改革を!(悪を斬る扱治の実現)

 一九七六年のロッキード事件は、わが国の政治腐敗の根の深さを余すところなく露呈した。ここに政界・財界・官界一体となった構造汚職の片鱗がはしなくも明るみに出るとともに、国民の憤激は頂点に達した。だが、この事件すら未だ解決しないうちに、ダグラス・グラマン事件が発覚し、さらに鉄建公団、KDDの不正が暴露され、腐敗の根の深さはとどまることを知らない。

 これらの政治腐敗は、金力と権力に依存し、「密室」のなかで展開される政治の生みだしたものであり、特殊には余りにも長くつづいた「五五年体制」がそれを助長させてきた。また金のかかりすぎる選挙が、政治家の金銭感覚や道義的観念を麻痺させ、不正な政治へのなれ合いを生みだしてきた。

 国民の多くが政治不信に陥り、政党への信頼感を低下させているのは、こうした底知れない政治の腐敗を見ているからである。だが、このような不幸な状況に終止符をうち、政治の根本的転換をはからなくては、わが国の政治に未来はない。われわれは、腐敗した政治を改革するために真正面から挑戦する。「悪を斬る政治」が今日ほど求められている時はないからだ。

 われわれは、これから始まる政治の改革は、明治以来放置されてさた政治体質の抜本的切開であり、たんなる制度の手直しにとどまらないと判断する。それ故に、改革の基礎視点には、これまで無権利のまま放置されてさた国民の「市民的権利の拡充」というモチーフが貫かれなくてはならないと考える。

 以下に、そのための改革案を提唱する。

一、情報公開法の実現(市民の知る権利の拡充)
 市民の「知る権利」を確立してゆくことは、「密室での取り引き」すなわち公共の利益の私物化を防ぐ最良の手段である。「人に知られている」あるいは「見られる可能性がある」ということが「権力」を委ねられている人々の行動をチェックし、公共の利益の公正な分配を保証するからである。

 さらに、市民が自らの責任に応えつつ有効な参加を実現していくためにも、為政者側の手に集中している情報を共有せねばならない。

 こうした観点から、われわれは知る権利の確立、言い換えれば、市民が知ろうと思えば知れる制度の確立を、まず提案する。これは政策決定者および政策策定過程の公開主義の推進、そして、市民が政策策定に参加する機会の制度化を進めるための条件となろう。

 具体的には、アメリカで「情報の自由に関する法−Freedom of Information Act 」と呼ばれているものである。それによれば、連邦政府のどの省・庁を問わず、そこで保持している資料を、誰でも、コピーであれ、ファイルであれ、書類であれ、手に入れる権利をもつ。政府職員が故意に情報を隠匿すれば、処罰の対象になる。一般市民がこの法に基づいて資料を請求すれば、四十日以内に答えなければならない、というような制度である。

二、行政の無駄をなくす――行政改革の原則
 現在、社会で問題視されているものに、行政機構の「肥大化」と行政の「怠慢」さがあろう。

 行政機関は、その時々の社会的要請によって新設されてきている。ところが、社会の変貌の中で、当初期待された役割がすんだ後にも、それが存続し、結果的に、行政の肥大化、形骸化を促進している場合が少なくない。

 今までにも、何回となく行政機関の統廃合、機構の簡素化が叫ばれてきたが、いっこうに改善された跡がみられない。その一つの理由に、官僚にとってみれば、新しい機関を作ることは手柄になっても、廃止することを名誉とする風潮は、残念ながらないということがあろう。それに、機関、組織といったものは、いったんできると、その存続自体を自己目的化する性質をぬぐいきれないものである。

 そこで、そうした弊害を避けるために、行政機関を設置するにあたっては、あらかじめ、期限つきで設置することも解決策の一つであろう。この方法の採用をわれわれは提案する。具体的には、サンセット法の制定を提案する。

三、公正な選挙の実現――議員の所得公開
 私たちは議員が公共のために議員活動(立法・表決)することを前提に、選挙によって政治を信託している。

 議員は決して、いかに間接的であれ、私的利害関係のために活動することを期待されているわけではない。

 しかし、現実の政治に目を向ける時、議員が政治を左右する金の力に毒されているという不信感をぬぐい去ることはできない。

 否、むしろいかに金の力が浸透しつつあるかを、ワイロ事件を通じて知らされている。

 立法にたずさわる議員が、それによって生ずる利害関係から自由であること、これは市民に対する責任であり、それを市民に対して明確にしなければならない。

 その具体的な方法の一つは、自らの所得源、資産を公開することである。そうすることによって、議員が公共のために活動していることを、市民と相互確認しあうことができるのである。私たちはアメリカにおいて、大統領が就任する時と辞める時に行う資産公開の習慣を、日本でも各議員が自主的に行うことが望ましいと考える。

四、企業情報の公開――政治献金、各種団体への寄付の公開
 「現代は企業社会である」と言われるように、企業の占める社会的役割、そして社会に及ぼす影響は大きい。われわれの消費生活はもちろんのこと、他のあらゆる分野において、企業との係り合いなしにすますことは、もはや不可能である。

 しかし、社会の分業が進み、企業の巨大化が進展している現在、しかも「商品」が複雑な市場を介して供給されている状況を考える時、企業とわれわれ市民の間の適切な情報の交換は、いよいよ重要なものになってきていると言える。それが企業論理を市民がチェックすることに通じよう。

 具体的には、まず現行の企業情報公開制度の再検討が必要であろう。現在、商法、証券取引法のもとで義務づけられている情報公開制度の主眼とするところは、株主、投資家を対象として、財務に関する情報に限られている。現行の財務諸表公開(Disclosure)については、主として企業の側に立った場合、過公開(Over-Disclosure)であるとの意見もあるが、少なくとも税法上の特典、その他の行政上の恩恵を受けている企業については、現行以上に詳しい情報の公開を義務づけるべきである。

 さらに、企業の通常の業務に関する以外の費用の使途、たとえば「政治資金」や各種団体組織への寄付行為については、詳しい情報の公開がなされる必要があろう。そうすれば、企業の社会的評価を高め得ることにつながる可能性もある。

五、政治汚職防止の具体策
(1) 刑法の改革
 汚職防止のためには、現行の「時効」を延長すること、「職務権限」の拡大が絶対に必要である。

(2) 「政治資金規正法」の強化と、「公選法」の抜本的改正を行う。とくに後者に関しては、公営選挙を拡大し、普通の市民が政治に参加できる機会をふやさなくてはならない。

(3) 国会の改革
 「議院証言法」の強化、懲罰委員会の倫理委員会への改組、「国政調査権」の拡大を実現する。

(4) アメリカのSECに匹敵するような行政機関の設置、会計検査院の権限拡大、オンブズマン制度の導入を行う。


高齢化社会対策  高齢化社会の社会保障

 わが国は、八〇年代に高齢化社会の入口に到達する。現在、総人口に占める高齢者の比率は八・九%であるが、四十年後には約二〇%になると予想され、高齢化社会のピークを迎える。

 これほど急速なテンポは世界に類をみず、高齢化社会のもたらすさまざまな問題は、場当たり的でなく、長期的展望にたった社会保障制度の確立が必要である。

 年金・医療制度、雇用・定年制、住宅、地域社会、環境、そして生きがい論と、あらゆる分野において整合的改革が不可欠であるが、その中心課題は、やはり老後にゆとりある生活ができる所得保障(年金問題)、高齢者の能力を社会に活用さす雇用政策、健康を維持し回復させる医療制度であろう。

 急速な高齢化と、長期的視野を欠いたこれまでの政策によって、わが国はこれらを同時に、解決しなければならない。

 「老人は、多年にわたり、社会の進展に寄与してさた者として敬愛され、かつ健全で安らかな生活を保障されるものとする」(老人福祉法)という基本理念を実現し、ゆとりある高齢化社会をめざして次のように提言する。

 ◎年金の格差解消をはかり、基礎年金制度でナショナルミニマムの保障を!

 現行年金制度は、さまざまな矛盾をかかえている。八種類に分立された複雑な制度、年金受給者の格差を拡大する官民・民民格差、婦人の年金権、低額な福祉年金。そして高齢化社会にともなう年金受給者の急増により、年金財源は、近い将来、破綻に瀕している。高齢化社会の入口である八〇年代こそ、既存の年金制度を抜本的に改革して、公平で生活できる年金を確立しなければならない。

一、年金制度の格差解消
(1) 官民格差
 各種共済年金と、民間の厚生年金、国民年金とでは、給付開始年齢、受給資格、給付率、国庫負担割合において大きな格差がみられる。

 しかし、共済年金財政は、このままの制度を続けると、年金受給者の過渡の.増加と、給付条件の高さにより破綻は必至である。共済年金制度を厚生年金の水準に調整し、共済年金財政の健全化をはかるとともに、官民格差を解消し、被傭者保険の一元化をめざす。

(2) 民民格差
 民間部門勤労者において、従業員五人以上企業の勤労者(厚生年金)と五人以下の勤労者(国民年金)は、就業時の賃金格差の上に、老後の年金においても格差がある。

 国民年金加入者の五人未満企業の勤労者に厚生年金を適用し、制度適用差別をなくす。

 なお、中小零細事業主の事業負担分にたいしては、必要に応じた助成を、また低賃金者については保険料の減免をはかる。

(3) 国民年金の地域加入者は、保険料が定額なため、給与率が低い。保険料制を改め、厚生年金の標準月額報酬と保険料率を適用し、保険料は、加入者が選択する。

二、基礎年金構想で、ナショナル・ミニマムの保障を!
 以上のように、各年金間の格差を解消して、各制度を通じてナショナル・ミニマムを保障する基礎年金部分と、支払った保険料に比例した付加年金部分に分ける。

(1) 基礎年金は、月額、平均給与の五〇%(夫婦)、三〇%(単身)を保障する。

(2) 基礎年金に付加年金を上積みする。
 二十八年加入の場合、夫婦で十一万円、単身者九万円。

三、その他の年金
(1) 遺族年金
 基礎年金、付加年金の合計を八〇%とする。

(2) 障害年金
 基礎年金を保障し、障害に応じて加算する。

(3) 福祉年金
 基礎年金の七〇%とする。

四、賃金スライド制の導入
 経済変動のもとで年金受給者の生活水準を保障するため、物価スライド制だけでなく、賃金スライド制を導入する。

五、年金の受給開始時期
 定年制の延長とからませて、給付開始時期を同一にする。


ゴミ政策
「資源ゴミ」のリサイクル社会をつくろう!(一九八○年代のゴミ・資源対策)

 東京都のゴミ戦争宣言(一九七一年九月)以来、九年を経た今日、各地方自治体の努力や住民運動によって、ゴミ対策は部分的成果を上げつつある。だが、その抜本的解決策は未だ確立されず、とくに政府のゴミ施策は貧困きわまりない。いまや八〇年代はゴミ問題の解決を鋭く求められる時期となっているし、それは避けては通れない課題となりつつある。

 ゴミ問題の解決には、まず、長らく続いた高度成長期の大量生産、大量消費という資源浪費型の社会システムやそれに慣らされた思考の反省から出発しなくてはならない。大量消費はゴミの大量生産を必然化し、その廃棄物処理に巨大なエネルギーを必要とするという悪循環をつくりだした。こうしてこの十年間に、ゴミ処理費は約四倍となり、自治体の財政を圧迫している。

 現在、わが国では国民一人が一日七百グラムのゴミをだし、一年間では二百五十キログラム、全国でだされるゴミは年間三千二百万トンにのぼる。

 各地の自治体は、この巨大なゴミと日夜格闘している。可燃ゴミを焼却し、不燃ゴミは埋め立てるという方法が一般化しているが、この方式は、焼却炉建設の困難、埋め立て地新設の困難、さらには環境問題といった隘路をもっており、このままの延長はいずれ物理的限界にすら到達する。

 この現実を前にして、われわれは以下のようなゴミ対策を提案する。

一、基本的な対応策
 われわれは全国各地の先進的ゴミ処理問題を検討した結果、ゴミ問題解決は基本的には次のような立場にたつ以外はないと判断する。

 現在捨てられているゴミの大部分は、資源として再利用できる(「資源ゴミ」)。再生可能なゴミまで放棄しているために、ゴミの量はいたずらに彪大化しているが、ゴミの四〇%までは再生可能であり、それは一つの資源でもある(この再生ゴミを回収すればゴミの量は五〇%減)。生ゴミのコンポスト化(堆肥化)が実用化すれば、さらに四〇%以上が有機肥料として利用できる(ゴミ量は四〇%減)。こうしてこれら「資源ゴミ」を再利用するならば、純粋なゴミは現在量の一〇%以下に抑えられる。

 したがって、再利用可能な「資源ゴミ」を確実に回収するならば、各自治体を苦しめているゴミ処理費用を大幅に軽減させることができ(例えば秦野市では、民間業者の「資源ゴミ」回収が進んでいるために、年間約六千七百万円の市財政が軽減されている)、かつまた、資源を再利用し浪費を止めるという一石二鳥の効果をあげうることになる。このように、消費→ゴミの再生→資源として利用というリサイクル型社会をつくることが、痛切に求められている。

 八〇年代には右のような合理的リサイクル型社会をつくりだし、市民がコミュニティづくりの一環として、このようなシステムづくりを運動化する必要があろう。それは分権化の推進ともなり、新しい質の生活を創造してゆくことにも通じる。

 現在、各地ではすでにゴミの分別回収が行われており、再生可能なゴミ(古紙、空カン、空ビンなど)は、再生資源として利用される例もふえてさている。だが、このような地方自治体の努力でも限界があることが判明してきている。

 最大のネックは、「資準ゴミ」回収のネットワーク(逆流通機構)がまだ確立されていないこと、回収物の価格が不安定であるために回収率が変動することなどである。システムとしての回収路がつくられなくてはならない。また粗大ゴミや「危険ゴミ」(塩ビを含むものなど)の最終処理の見通しがたっていないことである。

二、具体的提案
(1) 「資源ゴミ」を回収する逆流通機構確立のために
 メーカーに対してあらかじめ付加金を課し、空ビンや空カンを回収し、再利用した場合には、これに対してわり戻しを行う。
 付加金はそのための準備金として積み立てられる。このインセンティブにより、資源回収、再利用のリサイクル運動を誘導する。

(2) 粗大ゴミ、「危険ゴミ」対策
 粗大ゴミ、「危険ゴミ」に関しては、メーカーに回収を義務づけ、回収負担金を課する(一九七六年の東京の粗大ゴミ―T・V、冷蔵庫、洗たく機、家具―は七十四万個、十二万トン)。発泡スチロールトレーなどは、店先での回収を義務づける。

(3) 再資源化の技術開発推進
(a)再資源化の技術開発はほとんど地方自治体の創意に任されているが、そのノウハウ開発に政府は本腰をいれるべきである。本格的技術開発のプロジェクトをつくり、総合的研究開発を行うべきである。この場合、地方自治体の一部をも参加させ、開発された技術は各地の自治体に提供される。

(b)ゴミ対策全般に対する政府の補助率アップなど、対策強化がのぞまれているが、特にゴミ焼却発電(東京・横浜など)やゴミ焼却地域暖房(札幌市)のような省資源・無公害型エネルギー利用に対しては補助制度を強め、特別の優遇措置により、誘導効果を上げるべきである。

(4) 中央政府の情報活動
 各地におけるゴミ処理の状況、「資源ゴミ」回収の実態やその価格などについて、現在では情報を集め統括するところもない。したがって、ゴミ処理や回収については、統一基準に基づいた統計すら発表できない状態である。この種の情報活動は中央の政府が責任をもって行うべきであるし、それは地方自治体に対する最大の援助ともなるだろう。


1980年

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