1987/09/01 核問題・軍縮問題に取り組む

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平和・民主主義のため野党結集を 楢崎弥之助顧問に聞く
一%枠突破・国家機密法は断固反対


 中曽根政権の“数の力”警戒
――楢崎顧問のいない国会は「迫力がない」と言われてきましたが、今回復帰されたことで、対政府論争への気構え、決意をお聞かせ下さい。

楢崎 国会ではいろんな資料を元に対政府論戦を挑まなければなりません。これまで私たちは、このようにして政府の確定解釈を積み重ねてきました。

 しかし中曽根内閣は何の反省もなく、これらの確定解釈を破っています。このままの野党質問は、何の意味もありません。もう一度政府答弁の重みを認識させるよう、政府に厳しく迫っていきます。

 中曽根内閣は従来の自民党政権の中でもタカ派的路線を歩んできましたが、今回の同日選挙で三百を超える議席を持ったことで、そのことを背景に従来にも増して強硬姿勢を取ると考えられます。つまり今までのいろんな歯止めがことごとく破られる可能性があるわけです。私は非常に警戒していますよ。

――栗原防衛庁長官は防衛費一%枠突破を既成事実化しようとしていますが、長い国会論戦での経過を踏まえ、一%枠の意義と見通しについてお考えを。

楢崎 栗原新長官は「一%程度」と言っているわけですね。「程度」という、非常に曖昧な表現で実質的に歯止めをなくそうとしていることは、はっきりしています。「一%枠」を確立する際、当初「めど」にしようとした。

 しかしそれは絶対ダメということで、「以内」を明確にした経緯があるわけですよ。「程度」とは一体どこまでなのか、一〜一・三%くらいなら「程度」になるわけですから、絶対認めるわけにはいきません。

 栗原長官が「程度」と言い出したのは、今度の人事院勧告が行われれば、確実に一%枠は突破されます。そのための予防線ではないでしょうか。

 それに栗原長官は『大綱』の早期完全達成を主張していますが、防衛力は漸進的に増強すべきであって、急いではいけません。「速度」の問題は非常に重要で、栗原長官は急ぎ過ぎます。

 『大綱』の基礎資料になったのが、昭和四十八年の田中内閣の時の『平和時における防衛力』という政府公式文書です。この中には「GNP一%の範囲内で、適切に規制されることを予想し無理なく整備されるものでなければならない」とある。急速な膨張を戒めているわけですよ。

 ある野党の幹部は「〇・〇〇一%超えても、そうめくじらをたてる必要はない」と発言していますが、これは大きな誤りで、いったん超えてしまったらもう歯止めがなくなります。いずれにしても今度の臨時国会の焦点の一つになるわけで、もう一度防衛力についてキチンとした議論をすべきです。

――トマホーク搭載戦艦ニュージャージーが佐世保に入港し、核持ち込みの疑惑が持たれています。「非核三原別」は実際には空洞化しているのではないでしょうか。

楢崎 トマホークに核と非核の両方があるといっても、「核トマホーク」搭載は常識で、非核では意味がないんです。「事前協議がなかったから、核は搭載していない」という政府見解は詭弁以外の何ものでもない。

 問題は「非核三原則」のうち「持ち込ませず」の「イントロデュース(Introduce)」という非常に曖昧な表現です。ライシャワー・大平会談で、この「イントロデュース」には「寄港・通過」は含まない、という合意があった。米国は「持ち込み」を「核基地を作る」ことだと解釈している。例えば、沖縄のメースBとか……。

 しかし現代では、その種の「持ち込み」は必要ないんです。今の核軍事体系ではトライデントとかSLBMが主体ですから、もし「寄港・通過」を認めると完全に一つがなくなって「非核二原則」になる。


 “疑わしきは拒否”が大切
 重要なことはニュージーランド政府がとっているように「疑わしきは拒否する」ということです。アメリカの国是は「核の有無は表明しない」ということですから「持ち込む時には相談がある」という、日本政府の見解は全くナンセンスです。

 それからファンクス(日本ではCIWSと言っている)上いう機関砲を護衛艦「くらま」に装備しようとしています。これは本来タングステン弾を使うわけですが、タングステンが高いため、安い低ウラン弾の使用を防衛庁は考えています。まさに放射能を軍事的に利用しようとしているわけです。

 それから昭和四十年代に、川崎重工が原子力潜水艦の建造を研究していたことがある。私が国会で追及して中止させましたが、それが最近復活している――という報道もある。

 今、わが国は非常にきわどい処に来ている、という危惧を感じています。

――中曽根内閣の右傾化・軍国主義化が際立ってきました。平和と民主主義を守るため、今私たちは民主主義を守るため、今私たちは何をなすべきか、御意見を伺いたいと思います。

楢崎 中曽根首相は、我々が今まで平和と民主主義を守る立場から長年かけて確立してきたものを、一つひとつ確実に撤廃しようとしている。その最たるものが「国家機密法(スパイ防止法)」の制定です。これは歴代の自民党内閣が誰も提出できなかった、まさに戦前の治安維持法と同じ、民主主義を根本から否定する悪法です。

 前国会では、私たちだけでなくマスコミや弁護士連合会などの強い反対があって手直ししましたが、本質は何ら変わっていない。今回大議席を獲得したことで、この「国家機密法」は確実に出てくると思います。

 こうしてみると、平和や民主主義は、具体的問題で「風前の灯」と言えるわけです。

 平和と民主主義を守るため野党が出来ることは唯一です。現在の国会内結集だけではダメで、共産党を除く全ての勢力が新党結成するしかありません。社会党や民社党は個々に選挙敗北の反省をしていますが、野党全体としての反省・分析が今こそ必要です。

 私たち社民連は、その実験として今回、社会党、民社党との間でそれぞれ統一会派を結成しました。野党が何か具体的にやらなければ、どうしようもなくなるでしょう。

     (1987年9月1日)


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