第二章 遊びと友達と勉強と 目次前へ次「ファイアストーム事件」

  生徒会活動

 高校時代のことも先走りして書いてしまったが、高校入試のための勉強は、直前にまとめ程度のことをやっただけだった。当時岡山県立高校の入試は、県下一斉のアチーブメントテストをやり、その翌日、志望を出す。岡山市内の普通高校は朝日、操山の二校だが、一番が朝日なら、二番は操山という具合に、本人の希望とは無関係に割り振りされることになっていた。私の行き先きは岡山朝日高校だった。

 これが当時でも有名な受験校だった。入学式の前日に、全入学者を集めて、英語と数学のテストをやる。その成績に従って生徒を二分し、入学級のうち四学級を成績の良い生徒だけ、残り四学級は残った生徒だけで編成した。しかも成績の良い生徒のクラスは、二年で三学級、三年で二学級と絞っていくのである。

 成績の良い方の学級では、受験に焦点を当てた徹底的な指導が行なわれる。しかも脱落者が出るのは確実だから、生徒は一年の時から努力する。受験校としての実績を上げるには、これほどの制度はないかも知れない。しかし最初から良いクラスに入れなかったり、途中で振り落とされたりすると、大学受験での好成績は期待できないという烙印を押されたようなものだ。いわば意識的に落ちこぼしを作るシステムといえる。事実、脱落したため非行に走り、退学処分となる生徒もいた。

 高校三年の時のことになるが、私は生徒会の総務をやっていた。生徒会長の制度はなく、三人の総務の合議で運営していく制度で、社会市民連合の代表制度と同じなのも妙な偶然だ。そのとき中学の時から親しくしていた一年後輩が退学になるらしいと聞いた。せっかく岡山朝日高校に入れたのに、成績の良い方の学級に入れなかった。一年のときはある程度努力したようだが、二年になるとき一学級減らすのだから、約五十人が上から下へと落ちる中で、逆に上がっていくのは極めて稀なケースだ。結局ダメで、意欲を失い、何か問題を起こしたのだ。それを知ったときは、その問題についての職員会議の最中だった。なんとか退学だけは避けたいと思って、私たちは生徒会総務として、生徒会担当の教師に面会を求めた。

 「彼が問題を起こしたのは、あまりに受験一本槍で、しかも成績の良い生徒ばかりを重視する制度があるためだ。学校で原因を作っておいて、事が起こると退学で処理するというのは、教育の放棄ではないか」というのが、私たちの主張だった。

 さらに 「この問題は生徒会に預けてくれないか。現在の学校運営が正しいかどうか、職員会議でも検討してもらわなければならないが、生徒会でも考えてみたい。他方では生徒会として彼に反省を求める。何ヵ月か経過してもダメだったら、そのときは生徒会としても処分に従う」と提案して食い下がった。結局彼は退学処分となった。しかし、私たちのやったことは無駄ではなく、その後成績別編成は改められたと聞く。この職員会議の翌日から一学期の期末試験で、私の成績はガタガタだった。彼と親しかっただけに、いろいろ思い悩み、勉強が手につかなかったのだと思う。今になって考えると、こういうケースは、本人自身にも受験優先、成績至上主義が極めて強いことから起こるということも指摘できるだろう。


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