民主党 参議院議員 江田五月著 国会議員わかる政治への提言 ホーム目次
第1章 国会議員の実像−資金と特権

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金帰火来で田の草とり

 閣僚や政党幹部、あるいは参議院の比例代表及び旧全国区選出議員を除く与野党議員の大半が、国会開会中は、「金帰火来」。この点ではみな行動のパターンは似たようなものだ。

 両院で常任委員会が開かれるのが火曜から金曜にかけて、本会議の定例日は衆院が火、木、金、参院が月、水、金だから、議員の大多数は火曜の朝上京して金曜帰郷する。そこで「金帰火来」という言葉ができているのだが、月平均四往復する議員たちが選挙区で何をするか。これが「田の草とり」なのである。

 日本はさすがに瑞穂の国だけあって、政界用語にも稲に関する言葉は多い。選挙区を「票田」と呼ぶのはすでに日常語と化している。その「票田」に食い込んできた他陣営を、はびこる雑草にたとえ、雑草をむしるように影響力を排除しようとするのが 「田の草とり」というわけだ。

 なんとも選挙民を馬鹿にした言葉ではある。しかし、自分の選挙区の人々との人間関係を大切にし、この人々から官僚的手法とは別の情報、つまり庶民が毎日の生活の中で何を願い何を嘆いているかを知ることは、政治家として大切なことだ。そこには政治家の、官僚では果たせない固有の役割があるのだから。

 さて、国会議員は選挙区でどういう活動をしているのだろうか? 「選挙活動に決まってるじゃないか」と答える人がほとんどだろう。では、代表的な選挙活動は? ときけば、「自分の名を宣伝すること」と答えるだろう。たとえば葬儀や結婚式に出席。それが駄目なら花輪や祝電――。

 ところが、祝電は公職選挙法に違反しないが花輪は違反となる。「でも、国会議員の花輪はほうぼうに出ていますよ。あれは全部公選法違反なのですか」と、みなさんびっくりされるに違いない。

 だがこれは、違反でもあり、違反でもなし。実にあいまいなのだ。つまり、花輪の代金を議員個人が払えば違反で、議員の後援会など別の団体が出せば違反でないというのだ。

 公職選挙法では、議員は、自分の選挙区内では、慶弔費や寄付等を支出することは禁止されている。そうしなければ、花輪の大きさや金一封の金額の競争になるからだ。現実には守られていないが、守る努力はしなければならない。

 私も、時には盛花をお届けすることがある。だから他人のことを批判できないのだが、その対象はあくまでも、あえて違法のとがめを受けても、自分の気持として、何かしないではいられない場合に限っている。故人に 「そんな違法はやめなさい」と叱られるのではないかと心配しながら……。

 政治と金のつながりは、議員個人とその政治団体の関係、選挙活動と政治活動等、いくつかの要素がからみ合い、ある時は表が出、ある時は裏が出るといった具合で、政治の金はわからないというのが定評になっている。


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